内容説明
子どもとして生まれてくるはずであったのにもかかわらず、母胎の内外で生きているのにもかかわらず、死産児に包摂されてしまう存在。その生々しく生きる生に迫る。少なからぬ死産児は人為的に生成されている。精確にいうならば、生きているのに「死にゆく胎児」とみなされ、新生児と承認されない。こうした「死にゆく胎児」の来し方と行方を生命倫理的に検討し、現代の生命倫理学において看過されている“死産児”という領域―「死にゆく胎児」の存在をも明確にした―を顕在化させるとともにその重要性を明示する。
目次
死産児の来し方(“死産児”という空白の研究領域;フランスにおける死産児と生命倫理 ほか)
第1章 「生命のない子ども」の条件およびその証明(生まれる前に死んだ子の証;「生命のない子どもの証明書」と「生存可能性」基準 ほか)
第2章 医学的人工妊娠中絶(IMG)と「死産」の技法(生きて生まれる中絶胎児;日本における人工妊娠中絶 ほか)
第3章 死産児の死体―行方と処遇(“人”の死体の概念;二〇〇五年の「管理を忘れ去られた三五一の胎児」事件―その概要と胎児の死体の行方 ほか)
結論と今後の課題
著者等紹介
山本由美子[ヤマモトユミコ]
1971年生まれ。南山大学外国語学部フランス学科卒業、名古屋大学大学院医学系研究科博士前期課程修了、立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程単位取得満期退学。博士・Ph.D.(学術)。現在、東海学院大学専任教員、立命館大学生存学研究センター客員研究員。専攻は生命倫理・ジェンダー・医療社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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