-「多目的たもくてきコホート研究けんきゅう（JPHC研究けんきゅう）」からの成果せいか-

私わたしたちは、いろいろな生活せいかつ習慣しゅうかんと、がん・脳卒中のうそっちゅう・心筋梗塞しんきんこうそくなどの病気びょうきとの関係かんけいを明あきらかにし、日本人にっぽんじんの生活せいかつ習慣しゅうかん病びょう予防よぼうや健康けんこう寿命じゅみょうの延伸えんしんに役立やくだてるための研究けんきゅうを行おこなっています。平成へいせい２年ねん（１９９０年ねん）と平成へいせい５年ねん（１９９３年ねん）に、岩手いわて県けん二に戸こ、秋田あきた県けん横手よこて、長野ながの県けん佐久さく、沖縄おきなわ県けん中部ちゅうぶ、東京とうきょう都と葛飾かつしか区く、茨城いばらき県けん水戸みと、新潟にいがた県けん長岡ながおか、高知こうち県けん中央東ちゅうおうひがし、長崎ながさき県けん上五島かみごしま、沖縄おきなわ県けん宮古みやふる、大阪おおさか府ふ吹田すいたの１１保健所ほけんじょ管内かんないにお住すまいだった方々かたがたのうち、がんや循環じゅんかん器き疾患しっかんになっていなかった４０～６９歳さいの男女だんじょ約やく９万まん人にんを、平成へいせい２３年ねん（２０１１年ねん）まで追跡ついせきした調査ちょうさ結果けっかにもとづいて、習慣しゅうかん的てきコーヒー摂取せっしゅと全ぜん死亡しぼう・主要しゅよう死因しいん死亡しぼうとの関連かんれんを調しらべました。その研究けんきゅう結果けっかを論文ろんぶん発表はっぴょうしましたので紹介しょうかいします。American Journal of Clinical Nutrition 2015年ねん101巻かん1029－1037ページ）。

これまでに欧米おうべいを中心ちゅうしんに行おこなわれたコーヒーと死亡しぼうの関連かんれんを調しらべた20のコホート研究けんきゅうの統合とうごう解析かいせき（メタアナリシス）により、男女だんじょともゆるやかな死亡しぼうリスクの低減ていげんが認みとめられています。しかしながら、コーヒー摂取せっしゅと主要しゅよう死因しいん死亡しぼうとの関連かんれんについての研究けんきゅうはアジア人じんを対象たいしょうとした集団しゅうだんではほとんどなく、日本人にっぽんじんの５大だい主要しゅよう死因しいんとの関連かんれんについての研究けんきゅうはまだありません。そこで、コーヒー摂取せっしゅと全ぜん死亡しぼうおよび主要しゅよう死因しいん死亡しぼうとの関連かんれんを検討けんとうすることを今回こんかいの研究けんきゅうの目的もくてきとしました。

コーヒーを摂取せっしゅする群ぐんにおいて、全ぜん死亡しぼうリスク及および心こころ疾患しっかん、脳のう血管けっかん疾患しっかん及および呼吸こきゅう器き疾患しっかんによる死亡しぼうリスクが減少げんしょう

研究けんきゅう開始かいし時じにコーヒーを飲のむ頻度ひんどに関かんする質問しつもんへの回答かいとうから、ほとんど飲のまない、１日にち１杯はい未満みまん、毎日まいにち１～２杯はい、毎日まいにち３～４杯はい、毎日まいにち５杯はい以上いじょう飲のむという５いつつの群ぐんに分わけて、その後ごの全ぜん死亡しぼう及およびがん、心こころ疾患しっかん、脳のう血管けっかん疾患しっかん、呼吸こきゅう器き疾患しっかん、外因がいいんによる死亡しぼうとの関連かんれんを分析ぶんせきしました。本ほん研究けんきゅうの追跡ついせき調査ちょうさ中ちゅうには、12,874人にんの死亡しぼうが確認かくにんされました。

コーヒーをほとんど飲のまない群ぐんを基準きじゅんとして比較ひかくした場合ばあい、1日にち１杯はい未満みまん、１日にち１～２杯はい、１日にち３～４杯はい、１日にち５杯はい以上いじょうの群ぐんの危険きけん度ど（９５％信頼しんらい区間くかん）は、それぞれ全ぜん死亡しぼうで0.91 (0.86 ～0.95)、0.85 (0.81～0.90)、0.76 (0.70～0.83)、0.85 (0.75～0.98)となっていました（図ず１）。すなわち、コーヒーを1日にち３～４杯はい飲のむ人ひとの死亡しぼうリスクは、全まったく飲のまない人ひとに比くらべ２４％低ひくいことが分わかりました。さらに、飲のむ量りょうが増ふえるほど危険きけん度どが下さがる傾向けいこうが、統計とうけい学がく的てき有意ゆういに認みとめられました（図ず１）。研究けんきゅう開始かいしから5年ねん以内いないの死亡しぼう例れいを除のぞいた場合ばあいや、男女だんじょ別べつの場合ばあいも検討けんとうしましたが、コーヒーと死亡しぼうリスクとの間あいだには同様どうようの関連かんれんがみられました。  

＊性別せいべつ、年齢ねんれい、保健所ほけんじょ地域ちいき、喫煙きつえん習慣しゅうかん、飲酒いんしゅ習慣しゅうかん、BMI,高血圧こうけつあつ・糖尿とうにょう病びょう既往きおう、運動うんどう習慣しゅうかん、緑茶りょくちゃ・中国ちゅうごく茶ちゃ・紅茶こうちゃ・炭酸たんさん飲料いんりょう・ジュース摂取せっしゅ、総そうエネルギー摂取せっしゅ量りょう、果物くだもの・野菜やさい・魚さかな・肉にく・乳製品にゅうせいひん・米飯べいはん・味噌汁みそしる摂取せっしゅ及およびベースライン調査ちょうさ時じの雇用こようの有無うむで調整ちょうせい。

死因しいん別べつに調しらべたところ、がん死亡しぼうの危険きけん度どには有意ゆういな関連かんれんがみられませんでしたが、心こころ疾患しっかん死亡しぼう、脳のう血管けっかん疾患しっかん死亡しぼう、呼吸こきゅう器き疾患しっかん死亡しぼうについては、コーヒー摂取せっしゅによる危険きけん度どの有意ゆういな低下ていかがみられました。１日にち１～２杯はい、３～４杯はいの群ぐんの心しん疾患しっかん死亡しぼうの危険きけん度ど（９５％信頼しんらい区間くかん）は、0.77（0.65～0.90）、0.64（0.50～0.84）であり、1日にち１杯はい未満みまん、１日にち１～２杯はい、１日にち３～４杯はいの群ぐんの脳のう血管けっかん疾患しっかん死亡しぼうの危険きけん度ど（９５％信頼しんらい区間くかん）は、それぞれ0.84（0.72～0.98）、0.77（0.64～0.92）、0.57（0.41～0.78）となっていました。さらに呼吸こきゅう器き疾患しっかん死亡しぼうでは、1日にち１杯はい未満みまん、１日にち１～２杯はい、１日にち３～４杯はいコーヒーを摂取せっしゅする群ぐんの危険きけん度ど（９５％信頼しんらい区間くかん）は、それぞれ0.78（0.64～0.94）、0.63（0.50～0.79）、0.60（0.41～0.88）でした（図ず2）。  

コーヒーと死亡しぼうリスクとはどう関係かんけいしているのか

なぜコーヒー摂取せっしゅで死亡しぼうリスクの低下ていかが見みられるのでしょうか。第だい一いちに、コーヒーに含ふくまれるクロロゲン酸さんが血糖けっとう値ちを改善かいぜんし、血圧けつあつを調整ちょうせいする効果こうかがある上うえに、抗こう炎症えんしょう作用さようがあるといわれています。第だい二にに、コーヒーに含ふくまれるカフェインが血管けっかん内皮ないひの機能きのうを改善かいぜんする効果こうかがあるとされています。また、カフェインには気管支きかんし拡張かくちょう作用さようがあり、呼吸こきゅう器き機能きのうの改善かいぜん効果こうかがあるのではないかと言いわれています。これらの効果こうかが、循環じゅんかん器き疾患しっかんや呼吸こきゅう器き疾患しっかん死亡しぼうにつながる危険きけん因子いんしの調整ちょうせいに寄与きよしているのかもしれません。

本ほん研究けんきゅうではがん死亡しぼうについては有意ゆういな関連かんれんが見みられませんでした。部位ぶい別べつに行おこなわれた先行せんこう研究けんきゅうでは、コーヒー摂取せっしゅと肝きもがん、膵がん、女性じょせいの大腸だいちょうがんと子宮しきゅう体たいがんのリスク低下ていかとの関連かんれんが示唆しさされていますが、全ぜんがん死亡しぼうでは他たの部位ぶいのがんも総合そうごうして分析ぶんせきを行おこなったため、有意ゆうい差さがなくなった可能かのう性せいが考かんがえられます。

今回こんかいの結果けっかから、一いち日にち４杯はいまでのコーヒー摂取せっしゅは死亡しぼうリスク低下ていかと有意ゆういな関連かんれんがあることが示唆しさされました。この研究けんきゅうで用もちいた質問しつもん票ひょうでは、缶かんコーヒー、インスタントコーヒー、レギュラーコーヒーを含ふくむコーヒーの摂取せっしゅ頻度ひんどを尋たずねており、またカフェインとカフェイン抜ぬきコーヒーを分わけてはいませんので、この点てんをご留意りゅういください。