テスラコイル

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テスラコイル英語えいご: Tesla coil)は、高周波こうしゅうはこう電圧でんあつ発生はっせいさせる共振きょうしん変圧へんあつである。ニコラ・テスラによって考案こうあんされた。

ニコラ・テスラによって考案こうあんされたものは、そらしんしき共振きょうしんコイルとスパークギャップをもちい、コイルの共振きょうしん利用りようして高周波こうしゅうはこう電圧でんあつ発生はっせいさせるものである。スパークギャップとコイルたいからなり、コイルたい巻数かんすうすくないいちコイルと多数たすうげたそらしんコイル、そして放電ほうでんきょくである容量ようりょうだまから出来上できあがっている。容量ようりょうだま大小だいしょうによりコイルの共振きょうしん周波数しゅうはすう調整ちょうせいする。浮遊ふゆう容量ようりょうによる影響えいきょうおおきく、強力きょうりょく放電ほうでんをさせようとした場合ばあい再現さいげんせいわるいことから不明ふめいてんおおいコイルとされる。テスラコイルの改良かいりょうがたとして、半導体はんどうたい駆動くどう回路かいろ使用しようしたSSTC(Solid State Tesla Coil)や共振きょうしんコイルをべつもうけて昇圧しょうあつするマグニファイヤーなどがある。

テスラコイルのこうあつ発生はっせい原理げんり[編集へんしゅう]

コイルじょう発生はっせいする進行しんこう[編集へんしゅう]

コイルじょうられるたくさんの共振きょうしん周波数しゅうはすう

テスラコイルにおいてはコイルのまきせんあいだ発生はっせいする寄生きせい容量ようりょうコイルのインダクタンスとが分布ぶんぷ定数ていすうじょうになっているために遅延ちえん回路かいろ形成けいせいされている。このためスパークギャップしきにおいてはコイルじょうおおくのていざいなみ混在こんざいしている。これは、コイルのいちコイル近傍きんぼう結合けつごう)から放電ほうでんごく放電ほうでんだま)にかって時間じかんおくれをともな進行しんこう存在そんざいするためであり、この進行しんこう放電ほうでんきょく結合けつごうとのあいだ反射はんしゃかえして共振きょうしんする。この共振きょうしんモードは1/4λらむだ共振きょうしんモードを基本きほんとして多数たすう存在そんざいするのでテスラコイルのコイルには多数たすうていざいなみ(1',2',3',…)が混在こんざいした状態じょうたいとなっている。またいちコイルとコイルとのあいだ結合けつごううと結合けつごうであるが、がわ容量ようりょう成分せいぶん共振きょうしんさせることでみつ結合けつごう(磁界じかい調ちょうしょう結合けつごう)がはたらいている。この磁界じかい調ちょうしょう結合けつごうは1',2',3',…の周波数しゅうはすう発生はっせいする。SSTCにおいては1'の周波数しゅうはすう(1/4λらむだ共振きょうしんモード)で駆動くどうすることにより効率こうりつてき強力きょうりょく放電ほうでんられる。

共振きょうしん変圧へんあつ原理げんりもとづく昇圧しょうあつ[編集へんしゅう]

共振きょうしん変圧へんあつ 簡易かんい等価とうか回路かいろ
Z:放電ほうでんインピーダンス、Cs:容量ようりょうだま寄生きせい容量ようりょう、Ls:短絡たんらくインダクタンス

おおきなまきせん変成へんせい)のトランスによってこう電圧でんあつようとした場合ばあいいち-コイルあいだ絶縁ぜつえん都合つごうじょう、また、コイルの構造こうぞうじょう結合けつごう係数けいすうひくくならざるをない。そのため、一般いっぱんいちコイルとコイルとにくさりかわする相互そうご磁束じそく(しゅ磁束じそく)を形成けいせいすることが困難こんなんで、れインダクタンスおおきくなるとともに相互そうごインダクタンスちいさくなりぎて電力でんりょく伝達でんたつわるくなる。一方いっぽう、トランスのコイルに電流でんりゅうながれるとそれによって磁界じかい発生はっせいするが、がわけい共振きょうしん状態じょうたいにあるときは、コイルにははん共振きょうしん並列へいれつ共振きょうしん 1)と共振きょうしん直列ちょくれつ共振きょうしん 1')がたいになってあらわれる。このうちの共振きょうしん周波数しゅうはすう直列ちょくれつ共振きょうしん周波数しゅうはすう 1')でいちコイルを駆動くどうするといちがわ回路かいろがわ誘導ゆうどうせいインピーダンス激減げきげんし、コイルの共振きょうしん電流でんりゅう発生はっせいする磁界じかいいちコイルが発生はっせいする磁束じそく磁界じかい位相いそう同期どうきして磁界じかい調ちょうしょう状態じょうたいになる。これはいちコイルの発生はっせいする磁束じそくコイルにまれていち-あいだ非常ひじょうつよ結合けつごうしょうじる現象げんしょうであり、この状態じょうたいになると相互そうご磁束じそく(しゅ磁束じそく)が大幅おおはば増加ぞうかし、鉄心てっしんなどにより磁束じそくめる工夫くふうをすることたか結合けつごう効果こうかることが出来でき[1]。すなわちいちコイルにあたえる電圧でんあつ周波数しゅうはすうがわけい共振きょうしん周波数しゅうはすうであれば、本来ほんらいトランスはたんいちのコイルを適当てきとうちかくに設置せっちした程度ていど状態じょうたいでも効率こうりつよく電力でんりょく伝達でんたつできる。また、短絡たんらくインダクタンスLsがわ浮遊ふゆう容量ようりょうCsとの共振きょうしんきる磁界じかい調ちょうしょう結合けつごうによって昇圧しょうあつ効果こうか期待きたいできる。テスラコイルではいちがわあたえるこの共振きょうしん周波数しゅうはすう交流こうりゅう電圧でんあつるために回転かいてんがたGapをもちいる[2]。この回転かいてんがたGapによって火花ひばな放電ほうでんのインパルス電流でんりゅう発生はっせいさせ、広帯域こうたいいき交流こうりゅう共振きょうしん回路かいろあたえて振動しんどうさせている。また、回転かいてんがたGapの回転かいてんすう調整ちょうせいすることによりいちコイルにあたえる周波数しゅうはすう調整ちょうせい実現じつげんしている。

もっともシンプルな電流でんりゅう共振きょうしん駆動くどうのSSTC

なお、テスラコイルでは共振きょうしん要素ようそ相当そうとう部分ぶぶん浮遊ふゆう容量ようりょうなので共振きょうしん周波数しゅうはすう不安定ふあんていであり、設置せっちじょうきょうなどにより周波数しゅうはすう調整ちょうせいする必要ひつようがある。この欠点けってん克服こくふくするため、SSTCではコイルのGNDがわ発生はっせいするコイル電流でんりゅう位相いそうをもとにいちコイルを駆動くどうする方法ほうほう(電流でんりゅう共振きょうしん駆動くどう)をおこなって放電ほうでん効果こうか安定あんていさせている[3][4][5]

解析かいせき[編集へんしゅう]

テスラコイルにおいては進行しんこう共振きょうしん変圧へんあつ原理げんり両方りょうほうはたらいているとかんがえられるが、コイルの分布ぶんぷ定数ていすうせいまでを考慮こうりょしてあつかうことが困難こんなん場合ばあい、これを集中しゅうちゅう定数ていすうとしてあつかって[6]もほぼちかかいられる。

テスラコイルにかんする情報じょうほうおよび写真しゃしん[編集へんしゅう]

ちょう小型こがたのテスラコイル(原理げんりおう用品ようひん)1
  • Bill Beaty による Nikola Tesla Page, Tesla Coilsおおくのリンクおよび写真しゃしん紹介しょうかいされている。
  • NIC.FUNET.FI - こちらもおおくのテスラコイルの写真しゃしん動画どうがなど公開こうかいされている。
  • NIC.FUNET.FI - うえ内容ないようおなじだが、こちらはFTPである。

テスラコイルの応用おうよう[編集へんしゅう]

ちょう小型こがたのテスラコイル(原理げんりおう用品ようひん)2
  • 教材きょうざいとして火花ひばな放電ほうでんコロナ放電ほうでん)の観察かんさつもちいられることがある。
  • 現在げんざいでも蛍光けいこうかん出荷しゅっか検査けんささい検査けんさ装置そうちとして利用りようされる。
  • HIDランプCDM, HIQ)の点灯てんとう起動きどう回路かいろイグナイター)に応用おうようされている。
  • 液晶えきしょうバックライト使つかわれているひや陰極いんきょくかん点灯てんとうさせるためにもちいられるひや陰極いんきょくかんインバーター変圧へんあつフェライト・コアをもちいて小型こがた実現じつげんしたテスラコイルである[7]
  • いちコイルとコイルあいだ結合けつごうひくいにもかかわらず、たか効率こうりつコイルに電力でんりょく伝送でんそうされる原理げんりコイルのたか共振きょうしんQ関係かんけいしているとされており、電磁でんじかい共鳴きょうめい方式ほうしきワイヤレス電力でんりょく伝送でんそう開発かいはつしゃであるマリン・ソーリャチッチ(Marin Soljačić)やその開発かいはつしゃらにおおくのヒントをあたえているところから、ワイヤレス電力でんりょく伝送でんそうもテスラコイルの原理げんりひとつの応用おうようであるとかんがえてもい。
  • また、テスラコイルの出力しゅつりょく改造かいぞう楽器がっきとしてもちいられることもあり、2006ねんよりアメリカのパフォーマンスグループであるArc Attackが「Singing Teslacoil」として披露ひろうしている。以降いこう放電ほうでんおん利用りようして楽曲がっきょく演奏えんそうする人々ひとびとおお存在そんざいする[8][9][10]楽器がっきとなったテスラコイルは「ミュージカル・テスラコイル」としてZeusaphoneしゃより販売はんばいされており[11]2009ねんよりミュージシャンである平沢ひらさわすすむ楽曲がっきょく演奏えんそう[12]2011ねんにはミュージシャンであるBjork自身じしん楽曲がっきょくThunderbolt」でミュージカル・テスラコイルをれている。

疑似ぎじ科学かがくとの関係かんけい[編集へんしゅう]

テスラコイルは「UFOの原動力げんどうりょくとして使つかわれている」とう疑似ぎじ科学かがく文脈ぶんみゃく頻出ひんしゅつする。これは、テスラコイルの作者さくしゃであるニコラ・テスラが「宇宙うちゅうじん交信こうしんしている」とうかい発言はつげん数多かずおおのこしていること原因げんいんだとおもわれる。

関連かんれんする特許とっきょ[編集へんしゅう]

テスラの特許とっきょ[編集へんしゅう]

テスラ以外いがい特許とっきょ[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ ただし、結合けつごう係数けいすう定義ていぎじょう結合けつごう係数けいすうたかくなったわけではない。結合けつごう係数けいすうけい共振きょうしんしているかかにかかわらずコイルあいだ位置いち関係かんけいによってまる数値すうちである。
  2. ^ 現在げんざい技術ぎじゅつでは半導体はんどうたいえることも可能かのうである。
  3. ^ 電流でんりゅう共振きょうしん駆動くどう回路かいろれい
  4. ^ Class E SSTC
  5. ^ halfbridge sstc: 30cm/12" sparks
  6. ^ 1と1'の周波数しゅうはすうのみを考慮こうりょして解析かいせきする[1]
  7. ^ フェライト・コアをもちいているため、そらしんのコイルであるという定義ていぎ矛盾むじゅんするが、これもテスラコイル原理げんりおう用品ようひんであるとかんがえられる。
  8. ^ コンタケ (2017ねん5がつ11にち). “テスラコイルの放電ほうでんおん演奏えんそうする「セルリアンのテーマ」におどろきのこえ これがセンボルトペンギンか……”. ねとらぼ. https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1705/11/news139.html 2021ねん8がつ23にち閲覧えつらん 
  9. ^ 米津よねつげんの『LOSER』を“放電ほうでんで”演奏えんそうしてみた。かみなりきざむビートのカッコよさに「キレイ」「平沢ひらさわすすむじゃん」としびれるひと続出ぞくしゅつ!”. ニコニコニュースオリジナル. (2019ねん6がつ22にち). https://originalnews.nico/194189 2021ねん8がつ23にち閲覧えつらん 
  10. ^ Andrew Liszewski (2021ねん4がつ6にち). 巨大きょだいなテスラコイルでダフト・パンク演奏えんそうしてみた”. GIZMODE. https://www.gizmodo.jp/2021/04/playing-daft-punk-on-tesla-coil.html 2021ねん8がつ23にち閲覧えつらん 
  11. ^ Zeusaphone Musical Tesla Coils | World Class High Performance Tesla Coils. Buy Musical Tesla Coils” (英語えいご). 2024ねん3がつ23にち閲覧えつらん
  12. ^ PHONON 2551 VISION | 平沢ひらさわすすむ公式こうしきサイト / Susumu Hirasawa Official Site”. susumuhirasawa.com. 2022ねん10がつ28にち閲覧えつらん
  13. ^ History of Wireless By Tapan K. Sarkar, et al. ISBN 0471783013
  14. ^ A Multifrequency electro-magnetic field generator that is capable of generating electro-magnetic radial fields, horizontal fields and spiral flux fields that are projected at a distance from the device and collected at the far end of the device by an antenna.

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]