ビャンビャン麺めん

麺めん （麵 / 面めん）
種類しゅるい	中国ちゅうごくの麺めん
発祥はっしょう地ち	中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく
地域ちいき	陝西せんせい省しょう

ビャンビャン麺めん
繁体字はんたいじ	麵 𰻞𰻞麵
簡体字かんたいじ	面めん 𰻝𰻝面めん
漢語かんご拼音	biángbiángmiàn
発音はつおん記号きごう 標準ひょうじゅん中国語ちゅうごくご 漢語かんご拼音 biángbiángmiàn ウェード式しき piang2-piang2-mien4 IPA [pjɑ̌ŋ.pjɑ̌ŋ.mjân] イェール式しき ロろーマ字まじ byángbyángmyàn 国語こくごロろーマ字まじ byangbyangmiann 注ちゅう音符おんぷ号ごう ㄅ⁠ㄧ⁠ㄤ⁠ˊ   ㄅ⁠ㄧ⁠ㄤ⁠ˊ   ㄇ⁠ㄧ⁠ㄢ⁠ˋ
油あぶら溌扯麺めん
繁体字はんたいじ	油あぶら潑扯麵
簡体字かんたいじ	油あぶら泼扯面めん
漢語かんご拼音	yóupō chěmiàn
発音はつおん記号きごう 標準ひょうじゅん中国語ちゅうごくご 漢語かんご拼音 yóupō chěmiàn ウェード式しき yu2-pʻo1 chʻê3-mien4 IPA [jǒʊ.pʰwɔ́ tʂʰɤ̀.mjân] イェール式しき ロろーマ字まじ yóupwō chěmyàn 国語こくごロろーマ字まじ youpo cheemiann 注ちゅう音符おんぷ号ごう ㄧㄡˊ   ㄆㄛ ㄔㄜˇ   ㄇㄧㄢˋ

ビャンビャン麺めん（ビャンビャンめん、𰻞𰻞麺めん、中国ちゅうごく語ご:𰻞𰻞麵 / 𰻝𰻝面めん）は中国ちゅうごくの陝西せんせい省しょうでよく食たべられている幅広はばひろの手て延のべ麺めん。標準ひょうじゅん中国語ちゅうごくごではbiángbiángmiàn、ビアンビアンミエン、西安しーあん方言ほうげんではbiángbiǎngmiān、ビアンビアンミエンと発音はつおんする。

概要がいよう

原料げんりょうは小麦粉こむぎこで、水みずと食塩しょくえんを加くわえてこねて生地きじを作つくり、ゆでる直前ちょくぜんに両手りょうてで伸のばし、2 - 3センチメートルの幅はばに平ひらたく伸のばして成形せいけいする。日本にっぽんのほうとうやうどんに似にた食しょく感かんを持もつが、切きって成形せいけいするものではない。長ながさは伸のばす台だいの長ながさによって決きまり、1メートルになるものもある。「陝西せんせい十じゅう大だい怪かい」の1つにも挙あげられるこの麺めんは、その長ながさと広ひろい幅はばのために「麺めん条じょう賽さい腰帯こしおび」とベルトに例たとえられている。

陝西せんせい省しょうの咸陽市し周辺しゅうへんでは、「油あぶら溌扯麺めん」（ゆはつしゃめん、ヨウポー・ツォーミェン、簡体字かんたいじ: 油あぶら泼扯面めん; 繁体字はんたいじ: 油あぶら潑扯麵）とも言いわれる、ゆでた麺めんの上うえに唐辛子とうがらしや刻きざみ葱ねぎをかけ、それに熱ねっしたピーナッツ油ゆなどの油あぶらをかけて香かおりを出だし、和あえて食たべる方法ほうほうが主流しゅりゅうで、特とくに冬ふゆになると唐辛子とうがらしを大量たいりょうにかけて食しょくする。酢す、塩しお、醤油じょうゆ、唐辛子とうがらし、花はな椒はじかみなどの調味ちょうみ料りょうやもやし、コリアンダー、肉にくなどの具ぐ材ざいを加くわえてあえて食たべることも、酸味さんみと辛からみのあるスープに入いれることもある。調味ちょうみ料りょうだけで具ぐのないものは田舎いなかに住すむ貧民ひんみんの食事しょくじであったが、近年きんねんではその風変ふうがわりな名前なまえや表記ひょうきから脚光きゃっこうを浴あび、西安しーあん市しなどの近郊きんこう都市としだけでなく、中国ちゅうごく各地かくちの都市とし、さらには海外かいがいでも提供ていきょうされるようになった。

名称めいしょう

「ビャン」の漢字かんじ

ビャンビャン麺めんという名称めいしょうとその表記ひょうきに使つかわれる漢字かんじ「」の起源きげんは諸説しょせつあり、確定かくていしていない。

名称めいしょうについての説明せつめいとして、平ひらたいことを意味いみする「扁ひらた扁ひらた」が訛なまったものという説せつがある。陝西せんせいを含ふくむ西北せいほく方言ほうげんでは、地方ちほうによって標準ひょうじゅん北京ぺきん音おんの「an」が「ang」と発音はつおんされる場合ばあいがある。この地方ちほう名めいが現物げんぶつとともに中国ちゅうごく各地かくちに伝つたわる過程かていで原義げんぎが忘わすれられ、音おとだけが残のこったものというのである。このほか、調理ちょうり時じに麺めんが発はっする音おとや販売はんばい時じの拍子木ひょうしぎの音おとなどの擬音ぎおんに由来ゆらいする様々さまざまな民間みんかん語源ごげん説せつがある。

陝西せんせい方言ほうげんの研究けんきゅう者しゃ任にん克かつは『関せき中ちゅう方言ほうげん詞し語ご考こう釈しゃく』で「餅もち餅もち麺めん（繁体字はんたいじ: 餅もち餅もち麵、簡体字かんたいじ: 饼饼面めん）」という字じにbiángbiǎngmiānとの読よみを記しるしている。名称めいしょうの由来ゆらいとして、西安しーあん市し雁かり塔とう区くには「水餅みずもち子こ」というゆでた平ひらたい麺類めんるいがあり、「餅もち餅もち麺めん」も『斉ひとし民みん要よう術じゅつ』に見みえる「水引みずひき餅もち」や、漢かん代だいの『釈しゃく名めい』にも見みえ、宋そう代だいに出産しゅっさん祝いわいの宴会えんかいに用もちいられた「湯ゆ餅もち」が変化へんかしたものとし、「餅もち餅もち」と呼よんでいた物ものに、後ごから接尾せつび語ごの「麺めん」が付ついたとする。また、この場合ばあいの餅もちは、「麺めん餅もち」、すなわち、小麦粉こむぎこを水みずでこねて伸のばした加工かこう品ひん全般ぜんぱんを指さす。西安しーあん方言ほうげんで「餅もち」は一般いっぱん的てきにはbìngのような発音はつおんだが、biángと発音はつおんするのは伝つたわった時代じだい差さによる白文はくぶん異い読と呼よばれる現象げんしょうとする。

表記ひょうきに用もちいられる「」は方言ほうげん字じのひとつである。ただし、清きよし代だいの康かん熙字典じてんに見当みあたらず、20世紀せいきまでに出版しゅっぱんされた陝西せんせい方言ほうげんの研究けんきゅう書しょや漢字かんじ研究けんきゅう書しょにもみられないため、かなり新あたらしく作成さくせいされたものと考かんがえられる。

2021年ねんの三省堂さんせいどう国語こくご辞典じてん第だい八はち版はんに「ビャンビャン麺めん」が収録しゅうろくされた。

漢字かんじ

ビャンビャン麺めん専門せんもん店てんの例れい

筆画ひっかく

1900年ねん以前いぜんの「ビャン」の小篆しょうてん

名称めいしょうに用もちいられている漢字かんじ「」は58画かくで構成こうせいされ、現代げんだい使用しようされている漢字かんじの中なかではきわめて複雑ふくざつである。また、中国ちゅうごくで常用じょうようされているポケットサイズの『新しん華はな字典じてん』はもとより、『康かん熙字典じてん』や『中華ちゅうか大だい字典じてん』のような大型おおがた字書じしょにも載のっていない。なお、この文字もじよりも筆画ひっかくが多おおく複雑ふくざつな漢字かんじとして、「龍りゅう」を4つ並ならべた「𪚥」（、テツ、64画かく）などがあり、和製わせい漢字かんじの「𱁬」（、たいと、84画かく）も知しられている。

覚おぼえ方かた

「」の書がき順じゅん

前述ぜんじゅつの通とおり「」という字じは余あまりに複雑ふくざつなため、陝西せんせい省しょう居住きょじゅう者しゃの間あいだでは字じの書かき方かたを思おもい出だす手助てだすけとなる短みじかい詩しがいくつか存在そんざいする。

そのうちの一ひとつは、右みぎに「刂」ではなく「丁ひのと」と書かく異体いたい字じの説明せつめいであるが、「一いち点てん儿冲上天じょうてん，黄河こうが两道湾わん，八はち字じ大だい张口，言げん字じ往里走はし，东一“扭”西一にしいち“扭”，左ひだり一いち长右一いち长，中ちゅう间坐个马大王だいおう，心こころ字じ底そこ月がつ字じ旁つくり，楔くさび个钉子こ挂衣裳いしょう，坐すわ个车车到咸阳。」といい、日本語にほんご訳やくは「点てんが天辺てっぺんに飛上とびあがり、黄河こうが両端りょうたんで曲まがる、八はちの字じが大おおきく口くちを広ひろげ、言げんの字じが中なかへ入はいる。東ひがしに一いちひねり、西にしに一いちひねり、左ひだりに長ちょう一ひとつ、右みぎに長ちょう一ひとつ、中間ちゅうかんに馬うま大王だいおうが座すわる。心しんの字じが底そこに、月つきが傍かたわらに、釘くぎを打うってそこに服ふくをかけ、車くるまに乗のって咸陽へ向むかう。」。

この他ほかに日本にっぽんのお笑わらい芸人げいにん篠宮しのみや暁あきらが創作そうさくした覚おぼえ歌かがある。: 「穴あな言ごと・くムくム・長ちょう馬うま長ちょう・月がつ刂・心しん・⻌（アナゴン くムくム チョウバチョウ ゲツリ シン シンニョウ）」。なお正ただしい書がき順じゅんに則のっとるならば「チョウバチョウ」ではなく「バチョウチョウ」である。

文字もじコード

「」は、JIS X 0208やJIS X 0213などの日本にっぽんの符号ふごう化か文字もじ集合しゅうごうには含ふくまれておらず、また、国際こくさい符号ふごう化か文字もじ集合しゅうごうUnicodeにも長ながらく含ふくまれていなかった為ため、この字じを表示ひょうじ・入力にゅうりょくできる環境かんきょうは限かぎられている。

2017年ねん11月22日にちにこの字じがCJK統合とうごう漢字かんじ拡張かくちょうGの一部いちぶとしてUnicodeに登録とうろく申請しんせいされ、2020年ねん3月がつのUnicode 13.0に収録しゅうろくされた。コード位置いちはU+30EDD（簡体字かんたいじ）、U+30EDE（繁体字はんたいじ）であり、第だい三さん漢字かんじ面めんに収録しゅうろくされている。

印字いんじする際さいには紙質かみしつにより文字もじが潰つぶれるため、調整ちょうせいが必要ひつようとなる。

構成こうせい

IDCで書かくと次つぎの通とおり: ⿺⻌⿳穴あな⿲⺼⿱⿲幺言幺⿲長ちょう馬うま長ちょう刂心。

異体いたい字じのひとつならば: ⿺辶⿳穴あな⿲⺼⿱䜌⿲長ちょう馬うま長ちょう刂心。

他た地域ちいきでの普及ふきゅう

腰帯こしおび麺めん（ビャンビャン麺めん）

北京ぺきんではビャンビャン麺めんのチェーン店てんで取とり扱あつかっている。華南かなんにおいても扱あつかう店みせが出現しゅつげんしはじめている。

日本にっぽん

日本にっぽんでは2019年ねんごろから首都しゅと圏けんを中心ちゅうしんに「ビャンビャン麺めん」を扱あつかう中華ちゅうか料理りょうり店てんが増ふえ始はじめたという。東京とうきょう周辺しゅうへんの個別こべつの店みせでビャンビャン麺めんと称しょうして幅広はばひろの麺類めんるいを提供ていきょうする例れいがあるが、陝西せんせい省しょうのものとは風味ふうみが異ことなる。大阪おおさか市内しないの西安しーあん料理りょうり店てんでは「腰帯こしおび麺めん（ビャンビャン麺めん）」との表記ひょうきで提供ていきょうされている例れいがある。

2020年ねん、セブンイレブンは「西安しーあん風ふううま辛からし香油こうゆ麺めん ビャンビャン麺めん」の商品しょうひん名めいで販売はんばいを開始かいしした。当初とうしょは東京とうきょう都とのみでの販売はんばいだったが、11月から首都しゅと圏けん（東京とうきょう都と、神奈川かながわ県けん、千葉ちば県けん、埼玉さいたま県けん）および宮城みやぎ県けん、山形やまがた県けん、福島ふくしま県けん、東海とうかい（愛知あいち県けん、岐阜ぎふ県けん、三重みえ県けん、静岡しずおか県けん）、近畿きんきに拡大かくだいしている。2022年ねん8月がつに再ふたたび「黒くろ酢すと八角はっかく香かおるビャンビャン麺めん」という名前なまえで販売はんばいされた。

2021年ねんにはレストランチェーンのバーミヤンで「ビャンビャン麺めん」が提供ていきょうされた。また、2021年ねんからカルディコーヒーファームで麺めんが取とり扱あつかわれるようになった。2022年ねんには、サンヨー食品しょくひんから「ビャンビャン麺めん風ふう」と称しょうするカップ麺めんが、日清食品にっしんしょくひんからは冷凍れいとうタイプの麺めんがそれぞれ発売はつばいされた。