IrDA

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
赤外線せきがいせん通信つうしんから転送てんそう
携帯けいたい電話でんわのIrDA

IrDA(アイアールディーエイ、Infrared Data Association)は、赤外線せきがいせんによるひかり無線むせんタ通信たつうしん規格きかくしている団体だんたいであり、またその規格きかくそのものの名称めいしょうである。とく規格きかくかんしては、 IrDA DATAぶ。

概要がいよう[編集へんしゅう]

IrDA規格きかくは、赤外線せきがいせん通信つうしんすべてを意味いみしているわけではなく、情報じょうほう機器ききとう通信つうしんさだめたものである。通信つうしん必要ひつようインターネットLANなどの通信つうしん規格きかく同様どうように、いくつかのレイヤー(ハードウェアそう・データリンクそう・プロトコルそう規格きかくかれており、パソコンようものでは、USBRS-232Cポートに接続せつぞくして利用りようする様式ようしきノートパソコン携帯けいたい情報じょうほう端末たんまつでも、オペレーティングシステムうえからはそうなっているように認識にんしきされている)が一般いっぱんてきである。

学習がくしゅうリモコンへの応用おうよう[編集へんしゅう]

家電かでん製品せいひんリモコンなどで使つかわれている赤外線せきがいせん通信つうしんは、各々おのおの独自どくじさだめた仕様しようによるものであり、IrDAとは関係かんけいがない。しかしIrDA通信つうしん可能かのうな、ある程度ていど送受信そうじゅしん速度そくどがある機器ききじょうからこれら赤外線せきがいせんリモコンの通信つうしん場合ばあいに、一定いってい通信つうしん信号しんごうパターンとして観測かんそくできる。これを利用りようして、携帯けいたい情報じょうほう端末たんまつやノートパソコンを、学習がくしゅうリモコンとして擬似ぎじてき機能きのうエミュレート)させるソフトウェア存在そんざいする。その場合ばあいはIrDAの規格きかくじょう専用せんようのリモコン装置そうちくらべやや反応はんのうおとるものの、家庭かていない氾濫はんらんするリモコンを一元化いちげんかさせること可能かのうである。

なお、携帯けいたい電話でんわのリモコンアプリは規格きかくじょう受信じゅしんした通信つうしん信号しんごうのパターンを取得しゅとくできないので、学習がくしゅうリモコンアプリをつくることはできないとされる。

採用さいよう[編集へんしゅう]

IrDA規格きかく策定さくていされた当初とうしょはノートパソコンなどに一部いちぶ搭載とうさいされていただけで、通信つうしん距離きょりがおおむね30cm - 1m程度ていどみじかく、プロトコル汎用はんようてきなものではないといった問題もんだいから、あまり普及ふきゅうしていなかった。しかし、NTTドコモ携帯けいたい電話でんわ標準ひょうじゅんてき採用さいようされるようになり、auSoftBankきゅう・ボーダフォン)の携帯けいたい電話でんわでも採用さいようされていった。これにわせて、IrDAを使つかった多様たようなサービスが展開てんかいされはじめた。

また1990年代ねんだいすえ流行りゅうこうした携帯けいたい情報じょうほう端末たんまつでは、携帯けいたい便利べんり電源でんげんはいりがすぐできる、つまり、電源でんげんれた瞬間しゅんかん使用しよう可能かのうでバッテリーが1~2週間しゅうかん程度ていどち、使つかわったらスイッチをるだけであるこれらの機器ききで、まず簡単かんたんなメモをり、そのどう機能きのう搭載とうさいしたノートパソコンとう赤外線せきがいせん通信つうしん情報じょうほう交信こうしんし、ノートパソコンじょう加工かこうするというスタイルもられた。また一部いちぶ機種きしゅでは名刺めいし交換こうかんのようにPDA同士どうし通信つうしんさせ、おたがいの住所じゅうしょ連絡れんらくさき住所じゅうしょろくデータとして交換こうかんする機能きのう実装じっそうされている(Palmなど)。

近年きんねん携帯けいたい電話でんわ携帯けいたい情報じょうほう端末たんまつではカメラ機能きのうそなえ、撮影さつえいした写真しゃしんをノートパソコンがわおくこと可能かのう製品せいひんられる。カメラのこう精細せいさいともないデータサイズがおおきくなり、IrDAの高速こうそくもとめられてきていたが、4Mbpsばん搭載とうさい本格ほんかくするとともに、高速こうそくプロトコル IrSimple搭載とうさいはじまり伝送でんそう速度そくど急速きゅうそく高速こうそくされつつある(通常つうじょう赤外線せきがいせん通信つうしん実効じっこう速度そくどは10kB/s程度ていどで、IrSimpleの場合ばあいは400kB/s程度ていどである。)。携帯けいたい電話でんわから写真しゃしんプリンタへの赤外線せきがいせん高速こうそく伝送でんそうは、とく撮影さつえい直後ちょくごのちょっとした印刷いんさつ使つか勝手がって今後こんご普及ふきゅう期待きたいされる用途ようとである。また、さらに次世代じせだいUFIR (Ultra Fast IR) も開発かいはつがほぼ完了かんりょうしており、今後こんご一気いっきに100Mbpsまで高速こうそくがはかられる可能かのうせいもある。

パソコンからの利用りようというめんでは、ICカード公衆こうしゅう電話でんわにIrDA赤外線せきがいせんポートがあるので、出先でさきでのネットワーク接続せつぞく利用りよう可能かのうとなっていたが、携帯けいたい電話でんわ普及ふきゅう公衆こうしゅう電話でんわ自体じたい利用りようり、ICカード公衆こうしゅう電話でんわ自体じたいも、あまり利用りようしゃえなかった。さらに、これの利用りよう期待きたいされた携帯けいたい情報じょうほう端末たんまつのほうも携帯けいたい電話でんわってわられてしまったことから、ICカード公衆こうしゅう電話でんわは2006ねん廃止はいしされた。

規格きかく一覧いちらん[編集へんしゅう]

IrPHY (IrDA Physical Signaling Layer)
ハードウェア規格きかくで、送受信そうじゅしん素子そしあかがいこう通信つうしん速度そくど通信つうしんできる距離きょりとうさだめられている。1.0から1.4まであり、通信つうしん速度そくど通信つうしん距離きょりがそれぞれことなる。
規格きかくめい 通信つうしん距離きょり 通信つうしん速度そくど
IrDA DATA1.0 1m 115kbps
IrDA DATA1.1 1m 1Mbps / 4Mbps
IrDA DATA1.2 0.3m 115kbps
IrDA DATA1.3 0.3m 1Mbps / 4Mbps
IrDA DATA1.4 1m 16Mbps

通信つうしん距離きょり0.3mはローパワーオプションばれ、小型こがた携帯けいたい機器ききけに消費しょうひ電力でんりょくおさえた規格きかくである。

SIR(1994ねん
  • 通信つうしん速度そくど : 2.4k / 9.6k / 19.2k / 38.4k / 57.6k / 115.2kbps
  • EIA-232(RS232C)(スタートビット (1bit) /データビット (8bit) /ストップビット (1bit))よりフレームを構成こうせいあかがい発光はっこうえ。Low(発光はっこう)、High(消灯しょうとう)で発光はっこう時間じかん通信つうしんレートの3/16または1.63us(115.2kの3/16)
  • フレーム構成こうせい : BOF (=C0) [DATA (address/control/information (Nbyte)) FCS (CRC-16-CCITT)] EOF (=C1)
  • []ないのC0(=7D E0) / C1 (=7D E1) / 7D(=7D 5D) は2byteに変換へんかん
MIR(1994ねん
  • 通信つうしん速度そくど : 0.576M /1.152Mbps
  • HDLC方式ほうしきあかがい発光はっこうえ。発光はっこう時間じかん通信つうしんレートの1/4
  • フレーム構成こうせい : STAx2 [DATA (address/control/information (Nbyte)) FCS (CRC-16-CCITT)] STO
FIR(1995ねん
  • 通信つうしん速度そくど : 4Mbps
  • 4PPM変調へんちょう方式ほうしき
  • フレーム構成こうせい : PAx16 STA [DATA (address/control/information (Nbyte)) FCS (CRC-32-IEEE802.3)] STO
VFIR(1998ねん
  • 通信つうしん速度そくど : 16Mbps
  • HHH変調へんちょう方式ほうしき
  • フレーム構成こうせい : PAx10 STA [DATA (address/control/information (Nbyte)) FCS (CRC-32-IEEE802.3)] FB STO NULL
UFIR(2006ねん
  • 通信つうしん速度そくど 100Mbps
  • 8B10B変調へんちょう方式ほうしき
Giga-IR(2009ねん
  • 通信つうしん速度そくど 1Gbps

通信つうしん距離きょり[編集へんしゅう]

SP
Standard Power
LP
Low Power
  • SP ←→ SP : 0 - 1.0m
  • SP ←→ LP : 0 - 0.3m
  • LP ←→ LP : 0 - 0.2m

通信つうしん角度かくど[編集へんしゅう]

±15 - 30

ソフトウェア規格きかく[編集へんしゅう]

IrLAP (Infrared Link Access Protocol)
ソフトウェア規格きかく通信つうしん確立かくりつさい通信つうしん対象たいしょう発見はっけんする。
IrLMP (Infrared Link Management Protocol)
ソフトウェア規格きかく
IrTTP (Infrared Tiny Transport Protocol)
ソフトウェア規格きかく

歴史れきし[編集へんしゅう]

IrDA規格きかく1993ねんヒューレット・パッカードIBMマイクロソフトシャープ中心ちゅうしんとするメーカー主導しゅどう策定さくてい推進すいしんされたものである。これらは1990年代ねんだいつうじて、ワイヤレス接続せつぞくによる様々さまざま機器きき簡便かんべん利用りよう目指めざし、ノートパソコン・デスクトップパソコン・携帯けいたい情報じょうほう端末たんまつプリンターひとしにパッケージされたハードウェアとしてまれた。

Bluetooth登場とうじょう以降いこう、こちらへえるうごきもあったが、Bluetooth自身じしん互換ごかんせい問題もんだいや、初期しょき接続せつぞく作業さぎょう繁雑はんざつさが問題もんだいになりIrDAとおな用途ようとをカバー仕切しきれないことがわかってきた。このため、Bluetoothは携帯けいたい電話でんわハンズフリー用途ようと中心ちゅうしんとして普及ふきゅうし、IrDAは携帯けいたい電話でんわ同士どうし情報じょうほう交換こうかん中心ちゅうしんとした用途ようと普及ふきゅうするなど用途ようとけがすすんでいる。2007ねん現在げんざい携帯けいたい電話でんわ赤外線せきがいせん機能きのう認知にんちされ、人々ひとびとがおたがいのメールアドレスや携帯けいたい番号ばんごう交換こうかんにIrDAを利用りようする姿すがた普通ふつうられる。

モジュールされたIrDAは改良かいりょうすすんでおり、小型こがた携帯けいたい機器きき近距離きんきょり通信つうしんにおいては、一対一いちたいいち通信つうしん機能きのう開発かいはつしやすいため、1990年代ねんだい後半こうはんごろからは携帯けいたいがたゲームにも搭載とうさいされるようになった。2000年代ねんだい以降いこう電波でんぱによる通信つうしん移行いこうしつつあり、赤外線せきがいせん通信つうしんおも電子でんしゲームばれる小型こがた機種きしゅもちいられる傾向けいこうにある。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]