ひまわり (絵画かいが)

『ひまわり』

フランス語ふらんすご: Les Tournesols オランダ語ご: Zonnebloemen
作者さくしゃ	フィンセント・ファン・ゴッホ
製作せいさく年ねん	1888年ねん
種類しゅるい	油彩ゆさい
寸法すんぽう	92.1 cm × 73 cm (36.3 in × 29 in)
所蔵しょぞう	ナショナル・ギャラリー、ロンドン

『ひまわり』（フランス語ふらんすご: Les Tournesols、オランダ語ご: Zonnebloemen、英語えいご: Sunflowers）は、1888年ねん8月がつから1890年ねん1月がつにかけてフィンセント・ファン・ゴッホによって描えがかれた、花瓶かびんに活いけられたヒマワリをモチーフとする複数ふくすうの絵画かいがの名称めいしょうである。

ファン・ゴッホにとってのヒマワリは、明あかるい南仏なんふつの太陽たいよう、ひいてはユートピアの象徴しょうちょうであったと言いわれている。 アルル滞在たいざい時じに盛さかんに描えがいたひまわりを、精神せいしん病院びょういんでの療養りょうようが始はじまってからは描えがいていないこともその根拠こんきょとされる。

作品さくひん群ぐんとしての『ひまわり』とその点数てんすうについて

ファン・ゴッホの制作せいさくした「花瓶かびんに挿さされた向日葵ひまわりをモチーフとした油彩ゆさいの絵画かいが」という定義ていぎであれば、7点てんが制作せいさくされたことが広ひろく認みとめられている。このうち6点てんが現存げんそんしている。

この他ほかに、パリにおいて制作せいさくされたものを含ふくめて合計ごうけいで11点てん（または12点てん）とする定義ていぎがあるが、これは花瓶かびんに挿さされていない構図こうずも含ふくめている。この項こうでは主おもに前者ぜんしゃの「花瓶かびんに挿さされた向日葵ひまわり」というほぼ同様どうようの構図こうずをとる作品さくひん群ぐんについて述のべる。

同様どうようの構図こうずの作品さくひんが複数ふくすうある理由りゆうについては、アルルでの生活せいかつ・制作せいさくの拠点きょてんであった「黄色きいろい家いえ」の部屋へやを飾かざるためであったとする説せつがある。

ファン・ゴッホは、『ルーラン夫人ふじんゆりかごを揺ゆらす女おんな』という作品さくひんを中央ちゅうおうにして、『ひまわり』（ミュンヘン、ロンドン、アムステルダム、東京とうきょうにある4点てん）の何いずれか2点てんを両側りょうがわに展示てんじするというアイデアを手紙てがみに記しるしている。従したがって、これらの作品さくひん群ぐんは習作しゅうさく、不出来ふできのもののやり直なおしというよりは、やはり複数ふくすうが揃そろっていることに意味いみがあったものと思おもわれる。これは2003年ねんに損保そんぽジャパン東郷とうごう青児せいじ美術館びじゅつかん（現げん・SOMPO美術館びじゅつかん）の企画きかく展てんで実現じつげんした。

7点てんの「ひまわり」

7点てんとも構図こうずはほぼ同様どうようであるが、向日葵ひまわりの本数ほんすうは3本ほん、5本ほん、12本ほん、15本ほんと異ことなっている。画像がぞうの列れつのソートボタンで元もとの順序じゅんじょに戻もどる。

画像がぞう	F番号ばんごう	ひまわり の本数ほんすう	制作せいさく時期じき	所蔵しょぞう	参考さんこう
1	F453	3本ほん	1888年ねん8月がつ	/米べい/個人こじん蔵ぞう （アメリカ）	最初さいしょに制作せいさくされたと考かんがえられている。
2	F459	5本ほん	1888年ねん8月がつ	/日本にっぽん/焼失しょうしつ （山本やまもと顧彌太ふとし旧きゅう蔵ぞう）	2番目ばんめの作品さくひんとされる。1920年ねん（大正たいしょう9年ねん）に実業じつぎょう家かの山本やまもと顧彌太ふとしが、白樺しらかんば派は美術館びじゅつかんの設立せつりつを考かんがえていた武者小路むしゃのこうじ実篤さねあつの依頼いらいにより、スイスにて7万まんフラン（当時とうじの為替かわせレートで約やく2万まん円えん、現在げんざいの価格かかくに換算かんさんすると約やく2億おく円えん）で購入こうにゅうした。1921年ねん（大正たいしょう10年ねん）、東京とうきょう京橋きょうばしの星ほし製薬せいやくビルで展覧てんらん会かいが行おこなわれている。1920年ねん前後ぜんこうの同どうビルでは、多おおくの芸術げいじゅつ展覧てんらん会かいが開ひらかれており、当時とうじの公開こうかいにおいても「ファン・ゴッホのひまわり」が評判ひょうばんの作品さくひんとして扱あつかわれていたことが分わかる。1924年ねん（大正たいしょう13年ねん）、大阪おおさかで通算つうさん3回かい目めの展覧てんらん会かいが開ひらかれたが、美術館びじゅつかん設立せつりつの構想こうそうが頓挫とんざしたため、以降いこう、兵庫ひょうご県けん芦屋あしや市しの山本やまもとの自宅じたくに飾かざられていたが、太平洋戦争たいへいようせんそう末期まっきの1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）8月がつ6日にち、アメリカ軍ぐんの空襲くうしゅう（阪神はんしん大だい空襲くうしゅう）を受うけて焼失しょうしつした。 2003年ねん（平成へいせい15年ねん）に兵庫ひょうご県立けんりつ美術館びじゅつかんで開催かいさいされた「ゴッホ展てん」において「芦屋あしやのひまわり」というテーマで特集とくしゅうされた。大塚おおつか国際こくさい美術館びじゅつかんが原寸げんすん大だいの陶板とうはんで本ほん作さくを再現さいげんし、2014年ねん（平成へいせい26年ねん）10月がつ1日にちから展示てんじしている。
3	F456	12本ほん	1888年ねん8月がつ	ノイエ・ピナコテーク （ミュンヘン）	3番目ばんめの作品さくひんとされる。
4	F454	15本ほん	1888年ねん8月がつ	ナショナル・ギャラリー （ロンドン）	ファン・ゴッホ自身じしんが気きに入いった「12本ほんのひまわり」（ミュンヘン作品さくひん）をもとに制作せいさくした4番目ばんめの作品さくひんとされる。2022年ねん10月がつ15日にち、環境かんきょう団体だんたいジャスト・ストップ・オイルの2人ふたりが、この絵画かいがに対たいして、トマトスープを投なげつけた事件じけんが発生はっせいした。しかし、絵画かいがの表面ひょうめんは、ガラスが覆おおわれていたため額縁がくぶちが損傷そんしょうした程度ていどで済すみ、絵画かいが自体じたいの被害ひがいは無なかった。（ヴァンダリズムを参照さんしょう）
5	F457	15本ほん	1888年ねん12月- 1889年ねん1月がつ	/日本にっぽん/SOMPO美術館びじゅつかん （東京とうきょう）	1888年ねん12月の「耳みみ切ぎり事件じけん」直前ちょくぜんに描えがかれたとする説せつもある。 ドイツ系けいユダヤ人じん銀行ぎんこう家かパウル・フォン・メンデルスゾーン＝バルトルディが所有しょゆうしていたが、1930年代ねんだいにナチス・ドイツによる略奪りゃくだつを避さけるため本ほん作品さくひんを含ふくむ美術びじゅつ品ひんコレクションを手放てばなした。 1987年ねん3月がつに安田火災やすだかさい海上かいじょう（現げん損害そんがい保険ほけんジャパン）が、ロンドンのクリスティーズで2250万まんポンド（当時とうじの為替かわせレートで約やく53億おく円えん）で落札らくさつした（最終さいしゅう的てきな購入こうにゅう金額きんがくは手数料てすうりょう込こみで約やく58億おく円えん）。 当時とうじの代表だいひょう取締役とりしまりやくであった後藤ごとう康男やすおがバブル期きとはいえ無理むりをして購入こうにゅうを推進すいしんした理由りゆうは、先々さきざき代だいの社長しゃちょう時代じだいから世界せかい的てきな名画めいがが不在ふざいであった東郷とうごう青児せいじ美術館びじゅつかん（現げんSOMPO美術館びじゅつかん）の入館にゅうかん者しゃが少すくなすぎる事ことが社内しゃないで問題もんだい視しされていたからである。1997年ねん（平成へいせい9年ねん）10月に英紙えいし『サンデー・タイムズ』の報道ほうどうで、エミール・シェフネッケルによる模作もさくであるとする疑惑ぎわくが持もたれたが、1999年ねん（平成へいせい11年ねん）の研究けんきゅう調査ちょうさによりゴッホの真筆しんぴつと断定だんていされた。以降いこうも贋作がんさく説せつが囁ささやかれたものの、ゴッホ美術館びじゅつかんの学芸がくげい員いん・修復しゅうふく技官ぎかんらが再度さいど調査ちょうさを行おこなった結果けっか、やはり真筆しんぴつであると報告ほうこくされている。 2022年ねん12月13日にちには元もとの所有しょゆう者しゃである銀行ぎんこう家かの遺族いぞくで相続そうぞく人じんが本ほん作品さくひんの所有しょゆう権けんの返還へんかんまたは時価じか相当そうとう額がく、さらに約やく7.5億おくUSドル（約やく1000億おく円えん）の損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめ、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくイリノイ州しゅうの連邦れんぽう裁判所さいばんしょにSOMPOホールディングスを相手取あいてどり提訴ていそした。
6	F458	15本ほん	1889年ねん1月がつ	ファン・ゴッホ美術館びじゅつかん （アムステルダム）	ファン・ゴッホが病院びょういんから「黄色きいろい家いえ」に戻もどって、東京とうきょう作品さくひんを模写もしゃしたものと考かんがえられている。振動しんどうや気温きおん・湿度しつどの変化へんかによる損傷そんしょうを避さけるため、館かん外がいへの貸かし出だしを禁きんじる措置そちがとられている。
7	F455	12本ほん	1889年ねん1月がつ	/米べい/フィラデルフィア美術館びじゅつかん （フィラデルフィア）	アムステルダム作品さくひんと同どう時期じきに、ミュンヘン作品さくひんを模写もしゃしたものとされる。

登場とうじょうする作品さくひん

アニメ

• GetBackers-奪還だっかん屋や- - 作中さくちゅうにおいて、『ひまわり』を始はじめとする絵画かいがを巡めぐる戦たたかいがある。

映画えいが

• 名めい探偵たんていコナン 業火ごうかの向日葵ひまわり - 鈴木すずき次郎吉じろきちが自みずから購入こうにゅうしたファン・ゴッホ自身じしんが描えがいたとされる2枚まい目めの『芦屋あしやのひまわり』を含ふくめた7つの『ひまわり』を展示てんじする「日本にっぽんに憧あこがれた向日葵ひまわり展てん」と題だいした展覧てんらん会かいを行おこなう。そこへ『ひまわり』を怪盗かいとうキッドが盗ぬすむと予告よこくし、作品さくひんのタイトル通どおり中心ちゅうしん的てきな役割やくわりを果はたしている。鍵かぎとなる『芦屋あしやのひまわり』は現実げんじつでは兵庫ひょうご県けん芦屋あしや市しに対たいする空襲くうしゅうにより焼失しょうしつしたが、本ほん作さくでは芦屋あしやの邸宅ていたくで大工だいくとして住すみ込こみで働はたらいていた男おとこが命いのちと引ひき替かえに遺のこし、戦争せんそうから守まもるため海外かいがいに持もち出だされた後のち隠かくされ、アルルで発見はっけんされたことになっている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 吉屋よしや敬たかし『青空あおぞらの憂鬱ゆううつ――ゴッホの全ぜん足跡あしあとを辿たどる旅たび』評論ひょうろん社しゃ、2005年ねん。ISBN 978-4566050693。 

関連かんれん項目こうもく

• フィンセント・ファン・ゴッホの作品さくひん一覧いちらん