ポスター報告ほうこく 12

堀ほり 智久ともひさ （ほり ともひさ）
名寄なよろ市立しりつ大学だいがく

#報告ほうこく題目だいもく

＜地域ちいきの学校がっこう＞へ行いく／を問とう
: 障害しょうがい児じを普通ふつう学校がっこうへ・全国ぜんこく連絡れんらく会かいの運動うんどうとその前史ぜんし

#報告ほうこくキーワード

障害しょうがい児じを普通ふつう学校がっこうへ・全国ぜんこく連絡れんらく会かい / 就学しゅうがく運動うんどう史し / 地域ちいきの学校がっこう

#報告ほうこく要旨ようし

1. 目的もくてき
　本ほん研究けんきゅうの目的もくてきは、1981年ねんに結成けっせいされた「障害しょうがい児じを普通ふつう学校がっこうへ・全国ぜんこく連絡れんらく会かい（以下いか、全国ぜんこく連絡れんらく会かい）」の運動うんどうの歴史れきしを取とり上あげ、その前史ぜんしとなる1970年代ねんだいにおける就学しゅうがく運動うんどうとの関連かんれんにおいて、いかにしてそれまでの運動うんどうの蓄積ちくせきを継承けいしょうしてきたのか、あるいはいかなる新あらたな問題もんだい提起ていきや実践じっせんを行おこなってきたのかを明あきらかにすることである。本ほん研究けんきゅうでは、1980年代ねんだい以降いこう、日本にっぽんの就学しゅうがく運動うんどうの集約しゅうやく的てきな機能きのうを果はたしてきた全国ぜんこく連絡れんらく会かいの運動うんどうの歴史れきしを中心ちゅうしんに取とり上あげることから、養護ようご学校がっこう義務ぎむ化かを挟はさんで日本にっぽんの就学しゅうがく運動うんどうの性格せいかくがいかなる変容へんようを遂とげてきたのか、その一端いったんを浮うき彫ぼりにするとともに、いじめや不ふ登校とうこうの問題もんだいと比較ひかくして、就学しゅうがく運動うんどうに特徴とくちょう的てきな＜地域ちいきの学校がっこう＞に対たいする批判ひはんの視点してんを詳つまびらかにする。

2. 方法ほうほう
　全国ぜんこく連絡れんらく会かいは、1981年ねん8月がつ、「“障害しょうがい児じが普通ふつうに学校がっこうに行いけるように”を共通きょうつうの願ねがいとして、会員かいいん相互そうごのネットワークづくりと情報じょうほうの共有きょうゆうを目的もくてきに結成けっせいされ［る］」（障害しょうがい児じを普通ふつう学校がっこうへ・全国ぜんこく連絡れんらく会かい [2001]2008: 165）。
　本ほん研究けんきゅうでは、全国ぜんこく連絡れんらく会かいの歴史れきしを考察こうさつするにあたって、この会かいが発行はっこうしてきた文献ぶんけん資料しりょうを用もちいている。具体ぐたい的てきには、1.全国ぜんこく連絡れんらく会かい会報かいほう『障害しょうがい児じを普通ふつう学校がっこうへ』のほか、2.ブックレット、3.全国ぜんこく連絡れんらく会かい編集へんしゅうの図書としょ（障害しょうがい児じを普通ふつう学校がっこうへ・全国ぜんこく連絡れんらく会かい 1985, 2004, [2001]2008）等とうである。また、本ほん研究けんきゅうでは、文献ぶんけん調査ちょうさと並行へいこうして、全国ぜんこく連絡れんらく会かいの活動かつどうに深ふかく関かかわった経験けいけんのある会員かいいんにインタビュー調査ちょうさを行おこなっている。具体ぐたい的てきには、古川ふるかわ清治きよじ氏しおよび片桐かたぎり健司けんじ氏しにインタビュー調査ちょうさを依頼いらいし、実施じっししている。
　なお、本ほん研究けんきゅうの遂行すいこうにあたっては、「日本にっぽん社会しゃかい学会がっかい倫理りんり綱領こうりょう」および「日本にっぽん社会しゃかい学会がっかい倫理りんり綱領こうりょうにもとづく研究けんきゅう指針ししん」を遵守じゅんしゅしている。

3. 結果けっかと考察こうさつ
　全国ぜんこく連絡れんらく会かいの運動うんどうは、それ以前いぜんの1970年代ねんだいの就学しゅうがく運動うんどうの蓄積ちくせきに負おうところが大おおきい。まず、全国ぜんこく連絡れんらく会かいの結成けっせいは、1981年ねんの国際こくさい障害しょうがい者しゃ年ねんに代表だいひょうされる国際こくさい的てき潮流ちょうりゅうの影響えいきょうは無視むしできないものの、1970年代ねんだい後半こうはん以降いこうの養護ようご学校がっこう義務ぎむ化か阻止そしを掲かかげる就学しゅうがく運動うんどうの結集けっしゅうや国会こっかいでも取とり上あげられるほどの騒さわぎとなった金井かない康治こうじ就学しゅうがく闘争とうそうがなければ成なし得えなかったことである。とりわけ、全国ぜんこく連絡れんらく会かいの運動うんどうは、東京とうきょう「54年度ねんど養護ようご学校がっこう義務ぎむ化か」阻止そし共闘きょうとう会議かいぎに代表だいひょうされる関東かんとうの就学しゅうがく運動うんどうの影響えいきょうを強つよく受うけており、また全国ぜんこく連絡れんらく会かいの結成けっせいとその後ごの運動うんどうは、それまで一部いちぶの地域ちいきでのみ活発かっぱつに取とり組くまれていた運動うんどうを、全国ぜんこくレベルの運動うんどうにまで押おし上あげる重要じゅうような役割やくわりを果はたしている。また、こうした1970年代ねんだいの就学しゅうがく運動うんどうおよび1980年代ねんだいの全国ぜんこく連絡れんらく会かいの運動うんどうの基底きていにあるのが別べつ学がく体制たいせいを差別さべつと捉とらえる視点してんであり、それは就学しゅうがく時じ健康けんこう診断しんだんの受診じゅしんの拒否きょひをその戦術せんじゅつの中心ちゅうしんとする実力じつりょく就学しゅうがく闘争とうそうのスタンスにも表あらわれている。そして、全国ぜんこく連絡れんらく会かいではそこに独自どくじの法律ほうりつ解釈かいしゃくを加くわえることから、そのスタンスをより徹底てっていさせている。
　だが、こうした別べつ学がく体制たいせいを差別さべつと捉とらえる視点してんにおいて、近代きんだい公こう教育きょういく制度せいどそのものは批判ひはんの対象たいしょうにはなっていない。なぜなら、そこで問題もんだいにされたのは近代きんだい公こう教育きょういく制度せいどそのものというよりは、教育きょういくの場ばや教育きょういく内容ないよう等とうを含ふくむ通常つうじょう教育きょういくと障害しょうがい児じ教育きょういくとのあいだのダブルスタンダードであり、この点てんで通常つうじょう教育きょういくそのものは問とわれていないからである。
　これに対たいして、全国ぜんこく連絡れんらく会かいの運動うんどうでは、養護ようご学校がっこうのみならず、＜地域ちいきの学校がっこう＞の差別さべつ性せいもまた問とわれている。その背景はいけいには、1980年代ねんだい以降いこう、行政ぎょうせいが障害しょうがい児じを普通ふつう学級がっきゅうに就学しゅうがくさせてから締しめ出だすように排除はいじょの仕方しかたを変かえたことがあり、全国ぜんこく連絡れんらく会かいの運動うんどうでは、いじめや不ふ登校とうこうと共通きょうつうする問題もんだいとして＜地域ちいきの学校がっこう＞の差別さべつ性せいが捉とらえられている。その一方いっぽうで、全国ぜんこく連絡れんらく会かいでは、こうした＜地域ちいきの学校がっこう＞の差別さべつ性せいに自覚じかく的てきでありながらも、＜地域ちいきの学校がっこう＞にこだわり、そこで「共ともに学まなぶ」ための工夫くふうや取とり組くみもなされており、とりわけ、この時期じきには普通ふつう学級がっきゅうでの障害しょうがい児じの介助かいじょに関かんする議論ぎろんや誰だれもが一緒いっしょに参加さんかできる授業じゅぎょうのあり方かたの模索もさくが活発かっぱつになされている。
　この点てんで、いじめや不ふ登校とうこうの問題もんだいと比較ひかくして、就学しゅうがく運動うんどうにおいては、＜地域ちいきの学校がっこう＞の差別さべつ性せいに自覚じかく的てきでありながらも、＜地域ちいきの学校がっこう＞を生活せいかつ空間くうかんとして肯定こうてい的てきに捉とらえ直なおし、そこで共ともに学校がっこう生活せいかつを送おくることに強つよくこだわってきた点てんで特徴とくちょう的てきであるといえる。当日とうじつの報告ほうこくではさらに踏ふみ込こんで、1980年代ねんだい以降いこう、日本にっぽんの就学しゅうがく運動うんどうの性格せいかくがいかなる変容へんようを遂とげてきたのか、その一端いったんを浮うき彫ぼりにしながら、就学しゅうがく運動うんどうに特徴とくちょう的てきな＜地域ちいきの学校がっこう＞に対たいする批判ひはんの視点してんを論ろんじたい。

4. 文献ぶんけん
障害しょうがい児じを普通ふつう学校がっこうへ・全国ぜんこく連絡れんらく会かい，1985，『なぜこの学校がっこうに行いけないの』八はち月がつ書房しょぼう．
――――，2004，『障害しょうがい児じが学校がっこうへ入はいってから』千せん書房しょぼう．
――――，[2001]2008，『障害しょうがい児じが学校がっこうへ入はいるとき――特別とくべつ支援しえん教育きょういくに抗こうして 新版しんぱん』千せん書房しょぼう．