ポスター報告ほうこく 17

早野はやの 禎二ていじ (はやの ていじ)
東海とうかい学園がくえん大学だいがく   

#報告ほうこく題目だいもく

精神せいしん障害しょうがいしゃ文化ぶんか」にかんする考察こうさつ
: 「気遣きづかい」と「やさしさ」の文化ぶんか

#キーワード

精神せいしん障害しょうがいしゃ文化ぶんか / 「やさしさ」

#報告ほうこく要旨ようし
 ほん報告ほうこくでは、精神せいしん障害しょうがいしゃには、「気遣きづかい」と「やさしさ」の「精神せいしん障害しょうがいしゃ文化ぶんか」があり、それが、どのようなプロセスで形成けいせいされてくるのかをべ、そのような文化ぶんか意味いみろんじていきたい。
 報告ほうこくしゃは、精神せいしん障害しょうがいしゃの「気遣きづかい」と「やさしさ」の文化ぶんかは、つぎのようなプロセスのなか形成けいせいされてくるとかんがえる。ひと社会しゃかい生活せいかつしていくうえで、様々さまざま役割やくわりっているが、それは「ペルソナ」(仮面かめん)をつけてきていくことでもある。それぞれの場面ばめんで「職場しょくばでのかお」「家庭かていでのかお」などふさわしい「ペルソナ」をこうむることによってひと社会しゃかい生活せいかつ適応てきおうしていくことができる。また、ひとは、自分じぶん外部がいぶさかいに「まく」のようなものをち、その「まく」があることによって、他者たしゃ過剰かじょう自己じこ侵入しんにゅうしてくるのを防御ぼうぎょし、感情かんじょう過剰かじょう表出ひょうしゅつおさえ、社会しゃかい生活せいかつおくることができる。
 しかし、精神せいしん障害しょうがいしゃ自分じぶん外部がいぶあいだの「まく」がよわく、うすいために、ひと接触せっしょくする場面ばめん他者たしゃ自分じぶんなか過剰かじょうはいってくるという緊張きんちょう不安ふあんにさらされ、感情かんじょう露出ろしゅつしてしまう。その結果けっか、その適切てきせつな「ペルソナ」でもって振舞ふるまうことができず、トラブルがしょうじてしまうのではないかとかんがえられる。職場しょくばなどでは、過度かど感情かんじょう露出ろしゅつは、ふさわしくないものとされ、感情かんじょうをコントロールし、適切てきせつ役割やくわり遂行すいこうもとめられる。しかし、精神せいしん障害しょうがいしゃは、このようなことを苦手にがてとしているひとおおく、職場しょくばでの仕事しごと継続けいぞく困難こんなんにしているひとつの理由りゆうとなっているのではないかとかんがえる。
 しかし、このようなめんはマイナスばかりではなく、「まく」のうすさは他者たしゃおもっていることを敏感びんかんにキャッチすることを可能かのうにし、他者たしゃたいする「気遣きづかい」や「やさしさ」のみなもとともなる。「よわさ」が「やさしさ」となる文化ぶんか精神せいしん障害しょうがいしゃっていると報告ほうこくしゃかんがえる。
 このような「気遣きづかい」と「やさしさ」の「精神せいしん障害しょうがいしゃ文化ぶんか」は、現在げんざい競争きょうそう社会しゃかい成長せいちょう路線ろせん経済けいざい社会しゃかいなか疲弊ひへいし「きづらさ」をかかえている人々ひとびと精神せいしん障害しょうがいしゃのみならず、健常けんじょうしゃふくめて、この時代じだいきる人々ひとびと―のしんやわらげ、まわりのひととの関係かんけいや、現在げんざい支配しはいてき価値かちかん見直みなお機会きかいをもたらす。
 報告ほうこくしゃは、このような「精神せいしん障害しょうがいしゃ文化ぶんか」は、「精神せいしん障害しょうがいしゃ」と「健常けんじょうしゃ」というわくにとらわれないあらたなひとひととの共生きょうせい文化ぶんか地域ちいきなかつくっていく潜在せんざいてき可能かのうせいっており、現在げんざい支配しはいてき価値かちかんとはことなるあたらしい価値かちかんもとづく社会しゃかい形成けいせいにつながっていくのではないかとかんがえる。
 
倫理りんりてき配慮はいりょについて
 
 ほん報告ほうこく作業さぎょうしょ福祉ふくし職員しょくいんからのヒアリングにもとづいて、報告ほうこくしゃ理論りろん仮説かせつこころみたものである。福祉ふくし職員しょくいんはなしは、経験けいけんもとづく一般いっぱんてきなレベルのものであり、個人こじんあるいは作業さぎょうしょ特定とくていされるような内容ないようふくまれていない。