研究けんきゅう報告ほうこく 1-2

高森たかもり あきら(こうもり あきら)
無所属むしょぞく

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#報告ほうこく題目だいもく

はたらけないもの」と「はたら意欲いよくがないもの」の分離ぶんり生成せいせい
: P.オルデン『失業しつぎょうしゃ:国家こっかてき問題もんだい』(1905)をがかりにして

#報告ほうこくキーワード

分類ぶんるい(classification) / 雇用こよう不能ふのうしゃ(the unemployable)

#報告ほうこく要旨ようし

ほん報告ほうこく目的もくてきは、20世紀せいき初頭しょとうのイギリスにおける労働ろうどう政策せいさくかんする議論ぎろんなかで、「障害しょうがいしゃ」というカテゴリーが生成せいせいし、労働ろうどう政策せいさく対象たいしょうから排除はいじょすべき対象たいしょう認識にんしきされるにいたった歴史れきしてき経緯けいいあきらかにすることである。同時どうじに、「障害しょうがいしゃはなぜ労働ろうどう市場いちばから排除はいじょされたのか」という初期しょきイギリス障害しょうがいがくいにたいして、社会しゃかい政策せいさくがわから提示ていじできるこたえの1つを提示ていじすることが目指めざされている。
報告ほうこくしゃ注目ちゅうもくしたのは、20世紀せいき初頭しょとう失業しつぎょう対策たいさく活発かっぱつ議論ぎろんされていた失業しつぎょうしゃ分類ぶんるいである。失業しつぎょうしゃ分類ぶんるいは、失業しつぎょうしゃ状況じょうきょうおうじて適切てきせつ処遇しょぐう、「労働ろうどう可能かのうしゃ」と「労働ろうどう不能ふのうしゃ」の選別せんべつおこなうために便宜べんぎてき作成さくせいされた分類ぶんるい(classification)の指標しひょうであった。失業しつぎょうしゃ分類ぶんるい必要ひつようとしたのは、生活せいかつ困窮こんきゅうしゃ分類ぶんるい処遇しょぐう必要ひつようとされた救貧きゅうひんほう委員いいんかい監督かんとくいんどう時期じき職業しょくぎょう訓練くんれんになった労働ろうどうコロニーの運営うんえいしゃであるキリスト教きりすときょう組織そしき生活せいかつ困窮こんきゅうしゃなかから救済きゅうさいあたいするものあたいしないもの選別せんべつおこな慈善じぜん事業じぎょう組織そしき救貧きゅうひんほう委員いいんかい連携れんけいをしながら失業しつぎょう対策たいさく実務じつむにな公的こうてき機関きかん(地方ちほう当局とうきょく困窮こんきゅう委員いいんかいなど)であった。そして、1903ねん以降いこう失業しつぎょうしゃ分類ぶんるいをめぐる議論ぎろん、そして雇用こようには適格てきかくとされた「雇用こよう不能ふのうしゃ」の処遇しょぐうかんする議論ぎろん活発かっぱつした。「雇用こよう不能ふのうしゃ」というカテゴリーのがりは、失業しつぎょう対策たいさくになたちのあいだに「雇用こよう不能ふのうしゃ」を放置ほうちしておいてはならず、なんらかの処遇しょぐうおこなうべき対象たいしょうであるという認識にんしきひろがったことを意味いみする。そして、「雇用こよう不能ふのうしゃ」の下位かい分類ぶんるいとして「障害しょうがいしゃ」というカテゴリーが導入どうにゅうされるということは、「障害しょうがいしゃ」が失業しつぎょう対策たいさくにおいて特別とくべつ処遇しょぐう必要ひつようとする人々ひとびとであったと認識にんしきされたことにならない。
のちにナショナルミニマムの提唱ていしょうしゃとして歴史れきし名前なまえのこすことになったW.ベヴァリッジも1904ねん以降いこう失業しつぎょうしゃ分類ぶんるいと「雇用こよう不能ふのうしゃ」の処遇しょぐうかんする議論ぎろん積極せっきょくてき発言はつげんするようになった。しかし、ベヴァリッジが1904ねん論文ろんぶん提示ていじした失業しつぎょうしゃ分類ぶんるいは、1909ねん主著しゅちょ失業しつぎょうろん』とはことなり、「雇用こよう不能ふのうしゃ」の下位かい分類ぶんるいはたらけないもの」と「はたら意欲いよくがないもの」というカテゴリーけは存在そんざいしない。すくなくとも、1904ねんのベヴァリッジ論文ろんぶんでは、不健康ふけんこう(心身しんしん疾患しっかん損傷そんしょう機能きのう不全ふぜん)と不道徳ふどうとく一体いったいされており、区別くべつされないまま議論ぎろんされていたことになる。同様どうようのことはウェッブ夫妻ふさいにもえ、1897ねん主著しゅちょ産業さんぎょう民主みんしゅせいろん』では「雇用こよう不能ふのうしゃ」の病理びょうりがくてき理解りかいしめしているが、「はたらけないもの」と「はたら意欲いよくがないもの」という下位かい分類ぶんるい導入どうにゅうされたのは、1909ねんの『少数しょうすう報告ほうこく』からであった。
いったい、「雇用こよう不能ふのうしゃ」カテゴリーの下位かいに「はたらけないもの」というカテゴリーを最初さいしょ導入どうにゅうしたのはだれなのだろうか。報告ほうこくしゃおもにベヴァリッジの『失業しつぎょうろん』を主題しゅだいとした先行せんこう研究けんきゅうがかりに、この下位かい分類ぶんるい最初さいしょ提唱ていしょうしゃがペルシー・オルデンであり、主著しゅちょ失業しつぎょうしゃ:国家こっかてき問題もんだい』(1905)に最初さいしょ記載きさいがあることを確認かくにんした。オルデンは、ロンドン貧困ひんこん地域ちいきウェストハム地区ちくみ、地域ちいき失業しつぎょう対策たいさく従事じゅうじしたソーシャル・ワーカーであり、1903ねん以降いこうは、イギリス国内こくない中部ちゅうぶヨーロッパの失業しつぎょう対策たいさくみを調査ちょうさした人物じんぶつであった。フェビアン協会きょうかいへの出入でいりもあり、そこでベヴァリッジおよびウェッブ夫妻ふさいとの接触せっしょくがあったことも推測すいそくされる。社会しゃかい政策せいさくにおいては、ベヴァリッジ、ウェッブ夫妻ふさいかげかくれた存在そんざいであるが、「障害しょうがいしゃ」カテゴリーの生成せいせいという観点かんてんかられば、ベヴァリッジ、ウェッブ夫妻ふさい失業しつぎょう対策たいさくにも重大じゅうだい影響えいきょうあたえた社会しゃかい政策せいさくろんしゃということになるだろう。しかし、先行せんこう研究けんきゅうではベヴァリッジの『失業しつぎょうろん』に影響えいきょうあたえた人物じんぶつとして簡単かんたん紹介しょうかいされることがおおく、オルデン自身じしんがどのような調査ちょうさ実態じったい把握はあくもとづき、失業しつぎょうしゃ分類ぶんるいなかに「はたらけないもの」というカテゴリーを導入どうにゅうしたのかはあきらかにされていない。
そこで、本稿ほんこうではオルデンの主著しゅちょ失業しつぎょうしゃ』をがかりにして、オルデンがどのような調査ちょうさ実態じったい把握はあくもとづき、その失業しつぎょうしゃ分類ぶんるいなかに「はたらけないもの」というカテゴリーを導入どうにゅうしたのかをあきらかにしようとした。分析ぶんせきはオルデンの著作ちょさく中心ちゅうしんすすめることになるが、必要ひつようおうじて、ベヴァリッジのろん稿こうにも言及げんきゅうしたい。

おも参考さんこう文献ぶんけん
Alden,P,1905,The Unemployed:A National Question,London,P.S.KING&SON
Alden,P. &Hayward,E.,1908,The Unployable & Unemployed,London: Headley
Beveridge,W.H,February 1905, “A National Question”, The Toynbee Record, Volume 17, No.5, pp.75-pp.77, London: The Toynbee Hall
Beveridge,W.H.,1909,Unemployment:A Problem of Industry,London:Longmans,Green,
and co.
Harris,J.,1972,Unemployment and Politics:A Study in English Scial Politics 1886-1914,
Oxford:Oxford at the Clarendon press
小峯こみね あつし,2007,『ベヴァリッジの経済けいざい思想しそう』,昭和堂しょうわどう

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