研究報告 2-1 – 障害学会第14回大会

原田はらだ和明かずあき（はらだかずあき）
（社しゃ福ぶく）大阪おおさか手しゅをつなぐ育成いくせい会かい/中部学院大学ちゅうぶがくいんだいがく

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#報告ほうこく題目だいもく

知的ちてき・発達はったつ・精神せいしん障害しょうがいのある未決みけつ拘禁こうきん者しゃ処遇しょぐうにおける，障害しょうがい者しゃ差別さべつ解消かいしょう法ほうの効果こうかについての一いち考察こうさつ

#報告ほうこくキーワード

触法しょくほう障害しょうがい者しゃ / 差別さべつ的てき取扱とりあつかいの禁止きんし / 合理ごうり的てき配慮はいりょ

#報告ほうこく要旨ようし

１．研究けんきゅう目的もくてき
本ほん研究けんきゅうは、主おもに知的ちてき障害しょうがい，発達はったつ障害しょうがい，精神せいしん障害しょうがいがある未決みけつ拘禁こうきん者しゃの処遇しょぐうについて，障害しょうがい者しゃ差別さべつ解消かいしょう法ほう施行しこうによる差別さべつ的てき取扱とりあつかいの禁止きんしや合理ごうり的てき配慮はいりょといった効果こうかが及およんでいるかを検討けんとうし，刑事けいじ司法しほうにおける障害しょうがい者しゃ差別さべつ解消かいしょう法ほうの及およぼす影響えいきょうを検証けんしょうする。

２．倫理りんり的てき配慮はいりょ
本ほん研究けんきゅうでは事例じれいの検討けんとうも行おこなっているるが、守秘しゅひのため必要ひつよう最小限さいしょうげんの事柄ことがらのみを提示ていじし、さらに研究けんきゅうに差さし障さわりが無ない程度ていどの加工かこうを施ほどこしている。

３．本ほん研究けんきゅうにおける知的ちてき障害しょうがいのある者もの，発達はったつ障害しょうがいのある者もの，精神せいしん障害しょうがいのある未決みけつ拘禁こうきん者しゃの定義ていぎ
（知的ちてき障害しょうがいのある未決みけつ拘禁こうきん者しゃの定義ていぎ）
知的ちてき機能きのうの障害しょうがいが発達はったつ期き（おおむね18歳さいまで）にあらわれ，日常にちじょう生活せいかつに支障ししょうが生しょうじているため、何なんらかの特別とくべつの援助えんじょを必要ひつようとする状態じょうたいにある被疑ひぎ者しゃ被告人ひこくにんで刑事けいじ施設しせつに勾留こうりゅう中ちゅうの者もの。なお，鑑定かんてい留置りゅうち中ちゅうの者ものを含ふくむ。
（発達はったつ障害しょうがいのある者ものの定義ていぎ）
注意ちゅうい欠陥けっかん多た動どう障害しょうがい(ADHD及およびADD、HDそれぞれの優勢ゆうせい型がたも含ふくむ)、広汎こうはん性せい発達はったつ障害しょうがい(PDD 自閉症じへいしょう、アスペルガー障害しょうがい、特定とくてい不能ふのうの広汎こうはん性せい発達はったつ障害しょうがい)、学習がくしゅう障害しょうがい(LD)があり、日常にちじょう生活せいかつに支障ししょうが生しょうじているため、何なんらかの特別とくべつの援助えんじょを必要ひつようとする状態じょうたいにある被疑ひぎ者しゃ被告人ひこくにんで刑事けいじ施設しせつに勾留こうりゅう中ちゅうの者もの。なお，鑑定かんてい留置りゅうち中ちゅうの者ものを含ふくむ。
（精神せいしん障害しょうがいのある者ものの定義ていぎ）
統合とうごう失調しっちょう症しょう，精神せいしん作用さよう物質ぶっしつによる急性きゅうせい中毒ちゅうどく又またはその依存いぞん症しょう，精神病せいしんびょう質しっその他ほかの精神せいしん疾患しっかんがあり，日常にちじょう生活せいかつに支障ししょうが生しょうじているため、何なんらかの特別とくべつの援助えんじょを必要ひつようとする状態じょうたいにある被疑ひぎ者しゃ被告人ひこくにんで刑事けいじ施設しせつに勾留こうりゅう中ちゅうの者もの。なお，鑑定かんてい留置りゅうち中ちゅうの者ものを含ふくむ。

４．本ほん研究けんきゅうにおける未決みけつ拘禁こうきん者しゃの定義ていぎ
未決みけつ拘禁こうきん者しゃとは，刑事けいじ処分しょぶんがまだ確定かくていせず，拘置こうち施設しせつや留置とめおき施設しせつといった刑事けいじ施設しせつにに身柄みがらを拘束こうそくされている被疑ひぎ者しゃ・被告人ひこくにんをいう。

５．研究けんきゅう方法ほうほう
ケーススタディーとして，支援しえん実践じっせんを行おこなった知的ちてき障害しょうがい，発達はったつ障害しょうがい，精神せいしん障害しょうがいのある未決みけつ拘禁こうきん者しゃの事例じれいについて，障害しょうがい者しゃ差別さべつ解消かいしょう法ほう施行しこう前まえと施行しこう後ごそれぞれ各かく障害しょうがい１事例じれいについて実践じっせん結果けっかやクライエントからの聴取ちょうしゅ内容ないようを比較ひかく検討けんとうし，障害しょうがい者しゃ差別さべつ解消かいしょう法ほう施行しこうによる未決みけつ拘禁こうきん者しゃへの処遇しょぐうに効果こうかが及およんでいるかを検証けんしょうする。

６．考察こうさつ
障害しょうがい者しゃ自立じりつ支援しえん法ほう施行しこう後ごにおける刑事けいじ施設しせつでの処遇しょぐうは，居住きょじゅう環境かんきょうへの配慮はいりょ，福祉ふくし関係かんけい者しゃの面会めんかい時間じかんなどについて，一定いってい配慮はいりょがなされている。しかし十分じゅうぶんではない。障害しょうがいに応おうじた個別こべつ的てきな対応たいおうはなされておらず，また，矯正きょうせい施設しせつと異ことなり福祉ふくし専門せんもん職しょくの配置はいちもなく，十分じゅうぶんなものとは言いえない。刑事けいじ施設しせつにおける処遇しょぐうについての公開こうかいがなされておらず不ふ明確めいかくである。また，被疑ひぎ者しゃについては，刑事けいじ施設しせつでの処遇しょぐうだけではなく，取調とりしらべ時じにおける差別さべつ的てき取扱とりあつかいの禁止きんしや合理ごうり的てき配慮はいりょについて不ふ明確めいかくである．

７．本ほん研究けんきゅうの継続けいぞく的てき課題かだい
本ほん研究けんきゅうにおいては障害しょうがい者しゃ差別さべつ解消かいしょう施行しこう後ごの事例じれいが少すくなく多面ためん的てきな考察こうさつができていない。今後こんご，多おおくの事例じれいで比較ひかく検討けんとうを継続けいぞくする必要ひつようがある。

参考さんこう文献ぶんけん
加藤かとう博史ひろふみ、水みず藤ふじ昌彦まさひこ編著へんちょ「司法しほう福祉ふくしを学まなぶ」ミネルみねるヴァ書房ぁしょぼう、2013
刑事けいじ立法りっぽう研究けんきゅう会かい編へん　「非ひ拘禁こうきん的てき措置そちと社会しゃかい内ない処遇しょぐうの課題かだいと展望てんぼう」現代げんだい人文じんぶん社しゃ、2012
浜井はまい浩一こういち、村井むらい敏邦としくに編著へんちょ「発達はったつ障害しょうがいと司法しほう龍谷りゅうざく大学だいがく矯正きょうせい・保護ほご研究けんきゅうセンター叢書そうしょ第だい11号ごう」現代げんだい人文じんぶん社しゃ、2010
藤原ふじわら正範まさのり、古川ふるかわ隆司たかし編著へんちょ「司法しほう福祉ふくし」法律文化社ほうりつぶんかしゃ、2013