マイナンバーをめぐるトラブルが収まらない。政府は原因と再発防止策を探る総点検を始め、河野太郎デジタル相がその中核を担っている。しかし、河野氏の強気な言動が各所に波紋を広げ、無用の炎上を巻き起こすこともあった。なぜ、河野氏は対応に失敗したのか。デジタル庁担当記者の私には、守勢を苦手とする河野氏の弱点が露呈したように見える。
河野氏の「本音」は?
5月からデジタル庁担当になって以降、毎日のようにマイナンバーをめぐるトラブルを報じてきた。担当閣僚である河野氏は記者会見などで「申し訳ない」と繰り返しているものの、その表情から悪びれた様子はあまり感じとれない。
国民の怒りが渦巻く中、なぜ、ひょうひょうとしていられるのか。それが不思議だった。その謎を解くヒントが垣間見られたのが6月7日の臨時記者会見だった。その中で、マイナンバーと公的給付金の受取口座をひも付ける際、家族など他人名義の口座が多数、登録されていたことを明らかにした。
会見で河野氏は、他人の口座をひも付けたのは「あえて家族の口座を登録した」利用者本人だと強調。こうした「イレギュラーな操作」がミスの原因のため、「(現状の)システムでは防げなかった」と釈明した。
この問題では自治体の担当者が本人に代わって口座を登録する際、手続きに使う窓口のパソコンの操作を誤り、前に手続きした人の口座がひも付けられるミスも発覚している。別の会見で原因を問われた河野氏はこう答えた。「(自治体担当者が)マニュアルを逸脱してやった」
マイナンバーの基幹システム自体に問題はない。トラブルが続出しているのは、利用者や、自治体など外部のミスによるものだ――。発言から見え隠れするのは、こうした本音だ。
カード普及を最優先
岸田政権は、マイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」と位置付ける。2022年8月にデジタル相に就任した河野氏もマイナカードの意義を盛んに強調してきた。
最優先すべきはマイナカード普及だとの思いが、言葉の端々から感じられる。この思いがカード推進に前向きな話には力を込め、後ろ向きな話題になると淡々と切り上げる落差を生んでいるように見える。
7日の閣議後会見でもそれが表れていた。マイナカ…