咲き始めた梅=大阪市中央区で、小関勉撮影
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例年より早く満開の便りが届いている今年の「梅」。凜(りん)と咲く花に、亡き人への思いや忘れられない古里の景色を重ねた投稿などを紹介します。
祖母の愛 息子思う一輪 主婦・藤田克美・70(大阪府)
瀬戸内海のひなびた漁村の波打ち際で、祖母は一輪の梅を半紙に包みそっと流した。幼い私が「なぜ」と聞くと「海の中じゃあ、花見もできんじゃろう」と言い、波間に漂う梅をいとおしそうに見つめていた。祖母は漁師だった長男を2月の海で亡くしていたのだ。
祖母は、お遍路さんや「ほいとさん」(物乞い)が「水を飲ませてもらえんかの」と訪ねてくると「湯屋でゆっくりぬくもりゃええで」と勧め、温かい食事も用意し「一晩泊まっていかれんね」と優しくもてなした。