NBAで活躍かつやくした渡邊わたなべ雄太ゆうたのBリーグ・千葉ちばジェッツへの入団にゅうだん発表はっぴょうされた。どうチームには現在げんざい、Bリーグのかおとなる選手せんしゅのひとりでもある富樫とかし勇樹ゆうきというアイコンがいる。かねてから日本にっぽんバスケを牽引けんいんしてきた2人ふたりあいだにある“かくれたきずな”とは。《ぜん2かいの2かい最初さいしょからむ》

 渡邊わたなべ雄太ゆうたがBリーグりを宣言せんげんして以降いこう、B1のほとんどのチームが獲得かくとく名乗なのりをげ、4おくえんとも6おくえんともわれるような年俸ねんぽうでオファーをしたという。それがNBA選手せんしゅ価値かちである。

 そもそも、世界せかいのアスリートのなかで、給料きゅうりょう広告こうこく収入しゅうにゅうなどをふくめた年間ねんかんそう収入しゅうにゅうランキングのトップ100にもっともおおくの選手せんしゅおくりだしている競技きょうぎはバスケットボールだ。NBAをれいにとるとわかりやすいが、試合しあいすうが80試合しあい以上いじょうありながら、年間ねんかんかかえる選手せんしゅは1チームあたり15にん程度ていど収入しゅうにゅうられる試合しあいすうがある程度ていど担保たんぽされていながら、1チームあたりの選手せんしゅすうすくなくてすむ競技きょうぎだから、1人ひとりあたりの収入しゅうにゅうえるのだ。

 資本しほん主義しゅぎ国家こっかである以上いじょうこう待遇たいぐう用意よういされた世界せかい優秀ゆうしゅうひとたちがあつまるのは当然とうぜんのこと。渡邊わたなべ効果こうかはすでにあらわはじめている。

10月から千葉ちばジェッツはしんアリーナも

 千葉ちばジェッツは10がつにスタートするしんシーズンから、新設しんせつされたLaLa arena TOKYO-BAYの使用しよう開始かいしする。しんアリーナでは1まんにん以上いじょう収容しゅうようできるため、これまでよりも観客かんきゃく収容しゅうよう人数にんずうが5000にん以上いじょうえる予定よていだ。

 ホームゲームは年間ねんかん最低さいてい30試合しあいえたぶんのチケット単価たんか平均へいきんで4000えん仮定かていすると、こんな計算けいさんつ。5000にん×4000えん×30試合しあい=6おくえんだ。実際じっさいには、ビジネスラウンジなどもそなえているから、チケット単価たんかはもっとたかいはず。渡邊わたなべのグッズがすじ商品しょうひんになるのは間違まちがいないし、これをにスポンサーになりたいとかんがえる企業きぎょうおおいだろう。

 そう、かり渡邊わたなべとしぼうが6おくえんでもおつりがくるくらいなのだ。

 経済けいざい効果こうかはジェッツだけにとどまらず、Bリーグ全体ぜんたいおよぶ。現在げんざいジェッツの「かお」でもある富樫とかし勇樹ゆうき高校こうこう3年生ねんせい渡邊わたなべが2年生ねんせいはじめて代表だいひょうりしたとき、2人ふたり世話せわやくってていた公認こうにん会計士かいけいし資格しかく岡田おかだゆうかいという選手せんしゅがいる。

 かれはバスケかいのご意見いけんばんとして、Xのアカウントにこんな投稿とうこうをした。

<「渡邊わたなべ雄太ゆうたれますよ」というパワーワードをすべてのひと無料むりょう使つかえるという経済けいざい効果こうか

 もっとも、渡邊わたなべがジェッツをえらんだ理由りゆうはおかねではないだろう。

 Bリーグりを表明ひょうめいしたで、過去かこ優勝ゆうしょう経験けいけん給料きゅうりょうではなく、「ぼく本気ほんきしてくれるチーム」にこだわるとかれかたっていた。今回こんかい、それをしめせたのがジェッツだったということだろう。

いさむいつきとは『日本にっぽんかえってきたら一緒いっしょにやろう』と…」

 昨年さくねんなつ富樫とかし所属しょぞくする事務所じむしょ主催しゅさいした富樫とかし渡邊わたなべによるオンライントークイベントで、こんなやりりがあった。

 ファンからの質問しつもんこたえるかたち口火くちびったのが富樫とかしだった。

「どこのくにっても、優勝ゆうしょうってやはり全然ぜんぜんちがうから。たとえば、雄太ゆうた日本にっぽんのチームにいるとなって、そこにはいったら優勝ゆうしょうかくりつたかいとおもったら、そして(自分じぶんがそのチームに)けるんだったら、絶対ぜったいおれくからね(笑)。『雄太ゆうたたおしてこそ……』みたいな感情かんじょうひとも、もちろんいるだろうけど、やはり優勝ゆうしょうしたいから」

 渡邊わたなべもこうおうじていた。

いさむいつきとはずっと、『日本にっぽんかえってきたら一緒いっしょにやろう』というはなしはしとるもんな! どこになるか、場所ばしょはわからんけど……」

 さらに、2人ふたりには第三者だいさんしゃにはえないきずながある。

 NBAでのさくシーズン終盤しゅうばん渡邊わたなべがメンタルめんくるしんでいたとき、頻繁ひんぱん連絡れんらくしてきたのが富樫とかしだったという。世間せけんにはそういう素振そぶりはせず、ひとにつかないところで使つかうのが富樫とかしなのだ。

 ただ、さきのイベントで渡邊わたなべはこんな苦言くげんていしていた。

いさむいつきとごはんっても、こいつは携帯けいたいしかさわらんのよ、ホンマに、ずーーっと携帯けいたいさわっとる。こっちがしゃべりかけても『うん』とかしかわない(笑)」

 そんなふうわれる富樫とかしなのに、いや、まえにいる相手あいてとスマホのさきにいる相手あいてと2にん同時どうじにコミュニケーションをれる富樫とかしだからこそ、それだけ頻繁ひんぱん渡邊わたなべ連絡れんらくれたのかもしれない。

 まえにはパリ五輪ごりんひかえているが、それがわれば、渡邊わたなべたいというファンが、ジェッツのホームゲームにもアウェーゲームにも殺到さっとうするだろう。チケット争奪そうだつせんがやってくるのは間違まちがいない。ただ、そこまで注目ちゅうもくされるのは、それだけおおくのものを渡邊わたなべ言葉ことば背中せなか表現ひょうげんしたからにならない——。

日本にっぽんではなが時間じかん出場しゅつじょうすることになるだろうから」

 そういえば今年ことしの5がつ30にち、リーグも協力きょうりょくして、華々はなばなしくおこなわれたもと日本にっぽん代表だいひょうのニック・ファジーカスの引退いんたい試合しあいでのこと。渡邊わたなべはそこにサプライズゲストとして参加さんかしたのだが、NBAでプレーした経験けいけんのあるファジーカスから、こうつたえられている。

「これからは相当そうとうつかれるとおもうよ。ぼくもそうだったけど、NBAではそれほどなが時間じかん出場しゅつじょうしていなくても、日本にっぽんではなが時間じかん出場しゅつじょうすることになるだろうからね。大変たいへんだよ(笑)」

 10月5にち、ジェッツにとって2024−25シーズンはじめての試合しあいは、しんアリーナでのホームゲームだ。むかえる相手あいていさむふとし江島えじままこと所属しょぞくする宇都宮うつのみやブレックスである。

 きっと世間せけんはなっておかない。渡邊わたなべは10月13にちには30さいになるが、日本にっぽんちゅう期待きたいよろこびを一心いっしんけながら、まわるような30だいをスタートさせることになる。

ぶん=ミムラユウスケ

photograph by (L)JIJI PRESS、(R)FIBA