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9-1. 被子植物の系統樹と分類
9-1. 被子植物ひししょくぶつ系統けいとうじゅ分類ぶんるい
9-1-1. 分類ぶんるいけい

たね[species]は、(1)形態けいたい遺伝子いでんし特徴とくちょう、(2)交配こうはい可能かのうせい、(3)起源きげん単一たんいつせいなどの基準きじゅんによってまとめられる(と同時どうじたねとは区別くべつされる)個体こたいあつまりをす。

被子植物ひししょくぶつ現生げんなましゅは、記載きさいしゅすうで25まんえ、記載きさいしゅごうわると30~35まん推定すいていされている。

1つのたね複数ふくすうたねない分類ぶんるいぐん(亜種あしゅまたは変種へんしゅ)にけられている場合ばあいがある。亜種あしゅ変種へんしゅたね同様どうよう基準きじゅんでまとめられる(と同時どうじ区別くべつされる)が、別々べつべつたねとするほどではない個体こたいあつまりをす。

たね亜種あしゅ変種へんしゅは、

  1. たねぞく
  2. 変種へんしゅたねぞく
  3. 亜種あしゅたねぞく
  4. 変種へんしゅ亜種あしゅたねぞく

のように、階層かいそうてきに(じょうに)まとめられる。1はしゅない分類ぶんるいぐんけない場合ばあい、2と3はける場合ばあい(2と3のどちらかをめる基準きじゅんはない)、4はじゅうける場合ばあいで、かなら亜種あしゅ変種へんしゅ上位じょういる。

さかいつなたね変種へんしゅ
さかいつなたね変種へんしゅ
さかいつなたね変種へんしゅ
ドメインもんぞく亜種あしゅ
さかいつなたね変種へんしゅ
もんぞく亜種あしゅ
さかいつなたね変種へんしゅ
ドメインもんぞく亜種あしゅ
さかいつなたね変種へんしゅ
もんぞく亜種あしゅ
ドメインもんぞく亜種あしゅ
もんぞく亜種あしゅ
高次こうじ分類ぶんるいぐんたねたねない分類ぶんるいぐん
ツユクサ




ツユクサぞく
ツユクサ
ツユクサ
マルバツユクサ
マルバツユクサ
ムラサキツユクサぞく
ムラサキツユクサ
ムラサキツユクサ
ノハカタカラクサ
ノハカタカラクサ
イボクサぞく
イボクサ
イボクサ
ヤブミョウガぞく
ヤブミョウガ
ヤブミョウガ





ホテイアオイぞく
ホテイアオイ
ホテイアオイ

うえ内容ないようは、したのようにあらわすこともできる

このように、たね階層かいそうてき整理せいりしたものを「分類ぶんるいけい」(または、「分類ぶんるいシステム」「分類ぶんるい体系たいけい」)という。分類ぶんるいけいは、おおきくけて、2つの役割やくわりっている。

  1. 生物せいぶつ多様たようせいふくんでいる膨大ぼうだい情報じょうほういちさつほんにたとえると、分類ぶんるいけいはその目次もくじ索引さくいんのような役割やくわりをする
  2. さまざまなデータから推定すいていされた生物せいぶつ系統けいとう関係かんけい要約ようやくして言葉ことばにしたものであり、多様たようせい研究けんきゅうするにあたっての枠組わくぐみをあたえる

たねぞくに、あるいはぞくにまとめる「グルーピング」の基準きじゅんは、つぎの2つだ。

  1. 形質けいしつ共有きょうゆう 「はっきりとした共通きょうつうせいがあるものどうしをまとめる」
  2. 系統けいとうてききんえんせい共通きょうつう祖先そせんから分岐ぶんきした年代ねんだいあたらしいものどうしをまとめる」

共通きょうつう祖先そせん形質けいしつ(特徴とくちょう)は、その子孫しそんへとがれていく。共通きょうつう祖先そせんからの分岐ぶんきあたらしいほど、いだ特徴とくちょうおおくが子孫しそん共有きょうゆうされる。系統けいとう推定すいていは、このことを逆用ぎゃくようしておこなう。だから、形質けいしつ共有きょうゆうによるグルーピングと系統けいとうてききんえんせいによるグルーピングとは、かさなり部分ぶぶんおおきい。

一方いっぽう形質けいしつ共有きょうゆうによるグルーピングと系統けいとうてききんえんせいによるグルーピングがちがうこともある。

これらのことは、形質けいしつもとづく系統けいとう推定すいてい間違まちがいをもたらす要因よういんにもなる。

単純たんじゅんすると(実際じっさいには、理論りろんてきにも実際じっさいてきにも、たいへん複雑ふくざつ経過けいかをたどった)、歴史れきしてきには形質けいしつ共有きょうゆうによるグルーピングが先行せんこうし、しだいに系統的けいとうてききんえんせいによるグルーピングが併用へいようされるようになり、さらに、後者こうしゃだいいち基準きじゅん前者ぜんしゃ後者こうしゃ矛盾むじゅんしない範囲はんい使つかわれるようになっていった。

グルーピングに使つかわれる形質けいしつデータも、しつりょうともに変化へんかする。肉眼にくがん容易ようい観察かんさつできる特徴とくちょうからはじまり、組織そしき細胞さいぼう特徴とくちょう生化学せいかがくてき特徴とくちょうくわわり、あとべるように、1990年代ねんだい以降いこうはDNAの塩基えんき配列はいれつ集中しゅうちゅうてき使つかわれるようになった。どのような種類しゅるいのデータであれ、植物しょくぶつ種類しゅるいやし、けていたデータをめる努力どりょく連綿れんめんつづけられてきた。

グルーピングの基準きじゅんわり、あらたなデータが使つかわれるようになると、分類ぶんるいけいわっていく。

被子植物ひししょくぶつ全体ぜんたいあつかった分類ぶんるいけいも、古代こだいからの「」「くさ」の区別くべつ用途ようとによる分類ぶんるいから、しべ・はなばしらかずによってグルーピングしたリンネ[Carl von Linné]の「せい体系たいけい」[The Sexual System](c.1729~)など数々かずかず変遷へんせんて、DNAの塩基えんき配列はいれつもとづく系統けいとうじゅをベースとした「APG分類ぶんるいけい」[The APG system](1998, 2003, 2009)にいたっている。

9-1-2. 系統けいとうじゅたん系統けいとうぐん

現在げんざいでは、系統けいとうじゅもとにして分類ぶんるいけいがつくられる。また、特定とくてい特徴とくちょう(たとえば、はないろ)の進化しんかパターンを推定すいていする場合ばあい地理ちりてき分布ぶんぷ変遷へんせん分析ぶんせきする場合ばあいにも、系統けいとうじゅ特徴とくちょう分布ぶんぷかさわせる。

したは、説明せつめいよう架空かくう系統けいとうじゅだ(左右さゆうともおなじ)。時間じかんひだりからみぎながれ、左端ひだりはし共通きょうつう祖先そせんで、こちらを「系統けいとうじゅ基部きぶ」という。系統けいとうじゅみぎはしのボックス1~16は系統けいとうじゅ末端まったんで、分析ぶんせき対象たいしょうとなる個々ここ単位たんいる。たねである場合ばあいもあれば、ぞく場合ばあいもあり、個体こたい場合ばあいもある。このれいでは1~16はしゅとして説明せつめいする。

1 A B C   L 
a
2N
b
3
c4D
d5
6
l
7EKM
e
8
9   
J
k
10I
j11FH
12
if
13
h14
15GN
g
16
たん系統けいとうぐん

系統けいとうじゅにおいて、ある共通きょうつう祖先そせん子孫しそんすべてがふくまれるあつまりをたん系統けいとうぐん[monophyletic group](あるいはクレード[clade])という。たん系統けいとうぐんは、共通きょうつう祖先そせんにあたる系統けいとうじゅえだを1ヶ所かしょる」だけで、系統けいとうじゅから「す」ことができる。

たとえば、たん系統けいとうぐんBは1・2・3の3しゅふくみ、bのあたりでえだ切断せつだんすることで、系統けいとうじゅから一体いったいとして分離ぶんりできる。A・E・Gのような2しゅのみをふくちいさなたん系統けいとうぐんもあれば、1~16のすべてをふくたん系統けいとうぐんLもある。もちろん、たん系統けいとうぐんなかたん系統けいとうぐんがあることもある。

たん系統けいとうぐんBにられ、周辺しゅうへんほかぐんられない特徴とくちょうは、系統けいとうじゅのbのあたりで進化しんかし、その子孫しそんがれたと推定すいていすることができる。むすめのような特徴とくちょうたん系統けいとうぐんBの共有きょうゆう派生はせい形質けいしつ[shared derived character]という。

この系統けいとうじゅには、12のたん系統けいとうぐん(A~L)がある。また、末端まったん単位たんい(この場合ばあいは1~16)も、たん系統けいとうぐんなしてあつかうので、それをふくめると28のたん系統けいとうぐんということになる。

系統けいとうぐんがわ系統けいとうぐん

みぎ系統けいとうじゅしめすMとNは、どちらもたん系統けいとうぐんではない。

Mは系統けいとうじゅじょうではひとまとまりになっているが、Mを構成こうせいする7~10の共通きょうつう祖先そせんはkで、kの子孫しそん(たん系統けいとうぐんK)のうちたん系統けいとうぐんHがふくまれていないので、たん系統けいとうぐんではない。つまり、Mはたん系統けいとうぐんKからたん系統けいとうぐんHをのぞいたものだ。このように「たん系統けいとうぐんから1つか少数しょうすうたん系統けいとうぐん(あるいは末端まったん単位たんい)をのぞくことでできるたん系統けいとうぐんでないグループ」をがわ系統けいとうぐん[paraphyletic group](グレード[grade])とぶ。

Nは系統けいとうじゅじょう複数ふくすう場所ばしょらばるグループで「系統けいとうぐん」[polyphyletic group]とばれる。研究けんきゅう結果けっか以前いぜんにまとめられていたグループが系統けいとうぐんだと判明はんめいした場合ばあいは、複数ふくすう分割ぶんかつされることになる。

系統けいとうぐんは「たん系統けいとうぐんから多数たすうたん系統けいとうぐん(あるいは末端まったん単位たんい)をのぞくことでできるたん系統けいとうぐんでないグループ」ということもできる。系統けいとうぐんがわ系統けいとうぐんちがいは量的りょうてきなものなので明確めいかく境界きょうかいはない。両者りょうしゃ区別くべつは、ある程度ていど感覚かんかくてき恣意しいてきになる。
系統けいとうじゅベースの分類ぶんるいけい
たねぞく
1 P W L
2
3
4Q
5
6
7RX
8
9SY
10T
11U
12
13
14
15V
16

系統けいとうじゅもとづく分類ぶんるいけいでは、ぞくなどの分類ぶんるいぐん[taxa]がたん系統けいとうぐん(クレード)となるようにグルーピングされる。は、まえ系統けいとうじゅからみちびかれる分類ぶんるいけいれいだ。


9-1-3. 被子植物ひししょくぶつ系統けいとうじゅ全体ぜんたいぞうと3つのグループ

1980年代ねんだいわりごろから、地球ちきゅうじょうのさまざまな生物せいぶつぐん系統けいとうじゅ推定すいていする研究けんきゅうしつりょうともにおおきく進展しんてんした。原動力げんどうりょくとしては、つぎの4つがたがいに影響えいきょうしながら同調どうちょうするように向上こうじょうしたことがおおきい。

  1. DNAの塩基えんき配列はいれつ解読かいどくする技術ぎじゅつ
  2. 系統けいとうじゅ推定すいてい理論りろん手法しゅほう・ソフトウェア
  3. コンピュータの計算けいさん速度そくど
  4. データベースだい規模きぼ共同きょうどう研究けんきゅう

被子植物ひししょくぶつ系統けいとう関係かんけいも、1980年代ねんだいまでは、さまざまなせつがあって植物しょくぶつ学者がくしゃあいだ意見いけんかれていたが、じゅう世紀せいきわりまでに、おおまかな全体ぜんたいぞうかんしては、おおくの研究けんきゅうしゃ合意ごういするようになった。

被子植物系統樹

べつページに、現時点げんじてん推定すいていされている被子植物ひししょくぶつレベルの系統けいとう関係かんけいあらわした系統けいとうじゅしめす。被子植物ひししょくぶつ系統けいとう関係かんけいにかかわる膨大ぼうだい情報じょうほう集積しゅうせき公開こうかいしているAngiosperm Phylogeny Website (ミズーリ植物しょくぶつえん)によるものだ。

骨組ほねぐみ」だけをしめしたのがみぎで、左上ひだりうえすみ被子植物ひししょくぶつ起源きげんみぎいたせんはしには「モクレン」「ユリ」など、レベルのグループがある。このようなでは、ふとせん(えだ[branch])のつながりかたによって、推定すいていされた進化しんか経路けいろあらわしている。

アムボレラもと



うえ
もの
そう


るい
スイレンなど
シキミなど
センリョウ(Chl)
モクレンなど(Mag)
マツモ(Cer)
真正しんしょうそう子葉しようるい(EuD)
たん子葉しようるい(Mo)
DNAから推定すいていされた現生げんなま被子植物ひししょくぶつ系統けいとう関係かんけい略図りゃくず
真正しんしょうそう子葉しようるいたねの3/4以上いじょうを、たん子葉しようるいが2わり以上いじょうふくむ。

みぎじょう系統けいとうじゅを、たん系統けいとうぐんをひとまとめにすることで、さらに簡略かんりゃくしたものが左上ひだりうえ系統けいとうじゅだ。このように、被子植物ひししょくぶつは、2つのたん系統けいとうぐん(クレード)と1つのがわ系統けいとうぐん(グレード)、けい3つにおおきくけられる。

  1. たん子葉しよう植物しょくぶつ(たん子葉しようるい)[monocotyledons; りゃくしてmonocots]("Mo"のわくしめす)
    以前いぜんからの「たん子葉しようるい」と一致いっちするたん系統けいとうぐんで、現生げんなましゅかずうと被子植物ひししょくぶつやく2わりになる。「子葉しようが1まい子葉しよう基部きぶはいほか部分ぶぶんつつむさやとなる」という被子植物ひししょくぶつられない特徴とくちょうつ。
  2. 真正しんしょうそう子葉しよう植物しょくぶつ(真正しんしょうそう子葉しようるい)[eudicots]("EuD"でしめす)
    現生げんなましゅかずうとやく3/4をめるたん系統けいとうぐん。「花粉かふんつぶさんみぞつぶ、あるいはさんみぞつぶから進化しんかしてできたタイプの花粉かふんつぶ(さんあなつぶ三溝さみぞあなつぶ多孔たこうつぶみぞあなつぶなど)をつ」という特徴とくちょう共有きょうゆうする。
  3. 基部きぶ被子植物ひししょくぶつ[basal angiosperms]または原始げんしてき被子植物ひししょくぶつ[primitive angiosperms]=被子植物ひししょくぶつから真正しんしょうそう子葉しようるいたん子葉しようるいのぞいたがわ系統けいとうぐん("Mo""EuD"をのぞいた部分ぶぶん)
    現生げんなましゅかず%ていど。

コブシ原始げんしてき被子植物ひししょくぶつたんみぞつぶ―コブシ(モクレン)

アマリリスたん子葉しようるいたんみぞつぶ―アマリリス(ヒガンバナ)

シナレンギョウシナレンギョウ
真正しんしょうそう子葉しようるいさんみぞつぶ―シナレンギョウ(モクセイ)のさんみぞつぶよこからたところと、きょくがわからたところ。

そう子葉しよう植物しょくぶつでも子葉しよういちまいしかない種類しゅるいがあるが、基部きぶはさやにならないし、また、おなじグループに子葉しようが2まいあるものがいるので、たん子葉しようるいとは別個べっこ子葉しよう1まいという特徴とくちょう進化しんかしたものと推定すいていされている。

いわゆる「そう子葉しよう植物しょくぶつ」[dicotyledons; りゃくして dicots]は、真正しんしょうそう子葉しようるい基部きぶ被子植物ひししょくぶつ総称そうしょうで、被子植物ひししょくぶつからたん子葉しよう植物しょくぶつのぞいたがわ系統けいとうぐんだ。

系統けいとうじゅから「3つのグループ」にけることが必然ひつぜんてきみちびかれるわけではない。3つのてん加味かみされている。

基部きぶ被子植物ひししょくぶつは、比較的ひかくてきおおきなたん系統けいとうぐんのモクレンぐん[Magnoliids]("Mag"でしめす)、マツモ("Cer")、センリョウ("Chl")、そして、最初さいしょ分岐ぶんきした3つのえだをまとめた「ANITAグレード」("ANITA")、の4つにけられる。

マツモ("Cer"でしめす)とセンリョウ("Chl")は、研究けんきゅうによって系統けいとうじゅじょう位置いちおおきくちがう(から分岐ぶんきしたのちおおきなDNA配列はいれつ変化へんかこったことによるとかんがえられている)。マツモ真正しんせいそう子葉しようるいはいっていない、また、センリョウがモクレンぐんはいっていないのは、このためだ。

真正しんしょうそう子葉しようるいのうち、とりわけおおきなたん系統けいとうぐんを「コア真正しんせいそう子葉しようるい」[Core Eudicots]("CoEuD")、さらに、そのなかにある2つのおおきなたん系統けいとうぐんを「バラぐん」[Rosids]("Ro")、「キクぐん」[Asterids]("As")とぶ。また、コア真正しんせいそう子葉しようるいをのぞく真正しんせいそう子葉しようるい("EuD-CoEuD")を「基部きぶ真正しんせいそう子葉しようるい」[Basal Eudicots]とぶ。

これらのグループにふくまれるおもは、被子植物ひししょくぶつ全体ぜんたい系統けいとうじゅ参照さんしょう

グループめい うえ系統けいとうじゅにおける記号きごう たん系統けいとうか?
原始げんしてき被子植物ひししょくぶつ
(基部きぶ被子植物ひししょくぶつ)
全体ぜんたい-Mo-EuD
(ANITA+Mag+Cer+Chl)
N

ANITAグレード ANITA N
モクレンぐん Mag Y
マツモ Cer Y
センリョウ Chl Y
たん子葉しようるい Mo Y
真正しんしょうそう子葉しようるい EuD Y

基部きぶ真正しんせいそう子葉しようるい EuD-CoEuD N
コア真正しんせいそう子葉しようるい CoEuD Y

基部きぶコア真正しんせいそう子葉しようるい CoEuD-Ro-As N
バラぐん Ro Y
キクぐん As Y
9-1-4. 基部きぶ被子植物ひししょくぶつ真正しんしょうそう子葉しようるいたん子葉しようるい比較ひかく
キク群の花バラ群の花基部コア真正双子葉類の花基部真正双子葉類の花
単子葉類の花うえ: 真正しんしょうそう子葉しようるいはな
ひだり: たん子葉しようるいはな
した: 基部きぶ被子植物ひししょくぶつはな
基部被子植物の花

真正しんしょうそう子葉しようるいたん子葉しようるい基部きぶ被子植物ひししょくぶつおも特徴とくちょうくらべると、したひょうのようになる。ただし、どの特徴とくちょうにもかならずとっていいほど例外れいがいがあり、なかには区別くべつてんっていいかまようものもある。基部きぶ被子植物ひししょくぶつは、たん子葉しようるい特徴とくちょう真正しんしょうそう子葉しようるい特徴とくちょうわせ傾向けいこうがある。

かくぐん比較的ひかくてきおお特徴とくちょう
真正しんしょうそう子葉しようるい基部きぶ被子植物ひししょくぶつたん子葉しようるい
子葉しよう2まい1まい基部きぶはい部分ぶぶんつつ
葉脈ようみゃく網目あみめじょう(網状もうじょうみゃく)平行へいこうせんじょう(平行へいこうみゃく)
形成けいせいそう成長せいちょうありなし
くきの維管たばつつじょう断面だんめん散在さんざい
けいしゅがわけい(例外れいがい)ひげけい
はな4-5すうせい3すうせい
はなはなびらとがくへん
(例外れいがい)
外花とばなへん内花うちはなへん
花粉かふんつぶさんみぞつぶまたは
その派生はせいがた
たんみぞつぶまたはその派生はせいがた

Angiosperm Phylogeny Website: Largest Families(2012/07/20現在げんざい、ただし2007ねんごろから更新こうしんされていない)によると、被子植物ひししょくぶつは44313208ぞくふくまれる261750しゅからなり(裸子植物らししょくぶつは1482ぞく947しゅ)、たねすうじゅん被子植物ひししょくぶつならべると、上位じょういつぎのようになる。

順位じゅんいしん分類ぶんるいきゅう分類ぶんるいぞくかずたねかず作物さくもつれい
1そうそうごうキクAsteraceae162022750ヒマワリ・レタス
2たんランOrchidaceae88021950バニラ
3そうそうはなれマメFabaceae73019400ダイズ・エンドウ・ソラマメ
4たんイネPoaceae66810025イネ・コムギ・トウモロコシ
5そうそうごうアカネRubiaceae600+10000+コーヒー
6そうそうごうシソLamiaceae2367175エゴマ・ハッカ
7そうそうはなれトウダイグサEuphorbiaceae2185735トウゴマ・キャッサバ
8そうそうはなれノボタンMelastomataceae1885005
9そうそうはなれフトモモMyrtaceae1314625フトモモ
10そうそうごうキョウチクトウApocynaceae4154555
11たんカヤツリグサCyperaceae984350パピルス
12そうそうはなれアオイMalvaceae2434225オクラ
13たんサトイモAraceae1064025タロイモ
14そうそうごうツツジEricaceae1263995ブルーベリー
15そうそうごうイワタバコGesneriaceae1473870
16そうそうはなれセリApiaceae4343780ニンジン・パセリ・セロリ
17そうそうはなれアブラナBrassicaceae3383710ナタネ・ダイコン・キャベツ
18基部きぶそうはなれコショウPiperaceae53600コショウ
19そうそうごうキツネノマゴAcanthaceae2293500
20そうそうはなれバラRosaceae952830リンゴ・サクランボ・アーモンド
21そうそうごうムラサキBoraginaceae1482740
22そうそうはなれイラクサUrticaceae542625ラミー/カラムシ(苧麻からむし)
23そうそうはなれキンポウゲRanunculaceae622525
24基部きぶそうはなれクスノキLauraceae502500アボカド
25そうそうごうナスSolanaceae1022460ジャガイモ・トマト・トウガラシ

上位じょうい真正しんせいそう子葉しようるいたん子葉しようるいめ、基部きぶ被子植物ひししょくぶつはコショウ(18)とクスノキ(24)のみだ。また、主要しゅよう作物さくもつのほとんどは真正しんせいそう子葉しようるいたん子葉しようるい特定とくてい由来ゆらいする。

基部きぶ被子植物ひししょくぶつは、モクレンの仲間なかま・クスノキ・タブノキ・シキミ・カンアオイ・センリョウ・スイレン・ドクダミなど、なじみふか植物しょくぶつふくんでいるけれど、全部ぜんぶわせても被子植物ひししょくぶつ現生げんなましゅのほんのわずかをめるにぎない。

基部きぶ被子植物ひししょくぶつふくまれるグループ(うえしめした系統けいとうじゅえだ)は、たねすうてんではそれほどおおきいグループではない。しかし、そのひとひとつが、真正しんしょうそう子葉しようるいたん子葉しようるい以上いじょうふるくから独立どくりつした系統けいとうとしていまいたっている。だから、被子植物ひししょくぶつ原始げんし姿すがた(被子植物ひししょくぶつ全体ぜんたい祖先そせんがどのようなかたちをしていて、どのようにきていたか)を推定すいていする場合ばあいには、基部きぶ被子植物ひししょくぶつふくまれるグループのそれぞれが真正しんせいそう子葉しようるい全体ぜんたいたん子葉しようるい全体ぜんたい対等たいとうおもみをつ。だから、基部きぶ被子植物ひししょくぶつ共通きょうつうする特徴とくちょうは、被子植物ひししょくぶつ初期しょきからがれた特徴とくちょうである可能かのうせいたかい。

はなれいにとると、基部きぶ被子植物ひししょくぶつおおくは、つぎのような特徴とくちょうつ。

モクレン属の園芸種モクレン属の園芸種
モクレンぞく(モクレン)の園芸えんげいしゅはなちいさな甲虫かぶとむししべをらしている。

シキミ
シキミシキミ(マツブサ)のはなひだりはじめのめすせい左下ひだりしたしたゆうせい
シキミシキミ

ふうなかだちや、ハチやチョウ・ガによるおくこなは、よりおそ進化しんかした特徴とくちょうだということになる。はな化石かせきても、ふうなかだちやハチやチョウ・ガによるおくこなてきしたものは、そうでないものにくらあたらしくあらわれたとかんがえられている。また、昆虫こんちゅう化石かせきからも、ハチやチョウ・ガの化石かせきは、甲虫かぶとむしなどよりあたらしくあらわれたとかんがえられている。

1990年代ねんだい以降いこう系統けいとう推定すいてい進展しんてんくわえて、植物しょくぶつ化石かせき研究けんきゅうもかつてないほどしん発見はっけん相次あいつぎ、被子植物ひししょくぶつ初期しょき進化しんかのようすは、急速きゅうそく解明かいめいすすんでいる。

9-1-5. ふる分類ぶんるいけい

図鑑ずかん植物しょくぶつ関係かんけい書籍しょせきおおく、また、小学校しょうがっこうから大学だいがくにいたるまでの理科りか生物せいぶつ採用さいようしているのは、ドイツの植物しょくぶつ学者がくしゃエングラーによる分類ぶんるいけい細部さいぶ変更へんこうした「エングラー分類ぶんるいけい(エングラー・システム)」または「しんエングラー分類ぶんるいけい」とばれる分類ぶんるいけいだ。この分類ぶんるいけいでは、被子植物ひししょくぶつそう子葉しよう植物しょくぶつたん子葉しよう植物しょくぶつ二分にぶんし、そう子葉しよう植物しょくぶつはなれべんはなるい合弁ごうべんはなるい二分にぶんする。図鑑ずかんるいでは、(あくまで便宜べんぎてき区分くぶんとして)さらに「」と「くさ」をけてあることもおおい。

」と「くさ」の区別くべつは、ふるくから日常にちじょう生活せいかつなか定着ていちゃくしていた。西洋せいようでも東洋とうようでももっと上位じょうい分類ぶんるい基準きじゅんとして使つかわれていた。くさちがいは系統けいとう一致いっちしない場合ばあいおおく、両方りょうほうふくむグループはバラ・マメをはじめ、大変たいへんおおい。つまり、くさくさ進化しんか被子植物ひししょくぶつなかなんかいかえこっている。

木本もくほん草本そうほん
そう子葉しよう植物しょくぶつはなれべんはなるいクスノキ・シイ・サクラなどユキノシタ・エンドウなど
合弁ごうべんはなるいツツジ・スイカズラなどキュウリ・ナス・ヒマワリなど
たん子葉しようるいタケ・ヤシなどイネ・ユリなど

図鑑ずかん植物しょくぶつ関係かんけい書籍しょせきは、のレベルの分類ぶんるいもエングラー分類ぶんるいけいにしたがっているものがだい多数たすうめる。

そう子葉しよう植物しょくぶつたん子葉しよう植物しょくぶつ

そう子葉しよう植物しょくぶつ(そう子葉しようるい)とたん子葉しよう植物しょくぶつ(たん子葉しようるい)の区別くべつは、イギリスの生物せいぶつ学者がくしゃジョン・レイの著作ちょさく―『植物しょくぶつ分類ぶんるいほうしんろん』(1682)など―によって導入どうにゅうされ、ひろ使つかわれるようになった。たびたびてきたように、そう子葉しよう植物しょくぶつたん子葉しようるいには、さまざまな形態けいたいじょうちがいがある。これは、たん子葉しようるい起源きげんにおいておおきな形態けいたい進化しんかこったことをしめしている。すでにべたように、系統けいとうじゅじょうではたん子葉しようるいたん系統けいとうぐんとなるのにたいして、そう子葉しようるいは「被子植物ひししょくぶつからたん子葉しようるいったのこり」としか定義ていぎできず、あたらしい分類ぶんるいでは複数ふくすうのグループに分割ぶんかつされている。

合弁ごうべんはなれべん

そう子葉しよう植物しょくぶつ合弁ごうべんはなるいはなれべんはなるい区分くぶんすることは、トゥルヌフォール『植物しょくぶつがく基礎きそ』(1694)から分類ぶんるいれられるようになった。

トゥルヌフォール『植物しょくぶつがく基礎きそ (京都きょうと大学だいがく図書館としょかん)
離弁花・合弁花
はなれべんはな(ひだり)と合弁ごうべんはな(みぎ)のしき

合弁ごうべんは、はな発生はっせい初期しょき段階だんかいに、はなびらのはらはじめはらはじめあいだ成長せいちょうすることで形成けいせいされるとかんがえられている。

エングラー分類ぶんるいけいでは、ツツジ・ツバキのように合弁ごうべんはなはなれべんはな両方りょうほうふくむものがある。しかし、そういうときに1つの合弁ごうべんはなるいはなれべんはなるい両方りょうほうけるようなことはしない。ツツジ合弁ごうべんはなるい、ツバキはなれべんはなるいれられている。だから、合弁ごうべんはなつ≠合弁ごうべんはなるいはなれべんはなつ≠はなれべんはなるい注意ちゅういしなくてはいけない。

また、このことは、はなれべん合弁ごうべん合弁ごうべんはなれべん進化しんかは(おそらく送受そうじゅ様式ようしき対応たいおうして)なんかいかえこったことをしめしている。そう子葉しよう植物しょくぶつ合弁ごうべんはなつグループ(合弁ごうべんはなるい)とはなれべんはなつグループ(はなれべんはなるい)にけることは、進化しんか歴史れきしとのずれがおおきい。

たん子葉しよう植物しょくぶつでも合弁ごうべんはなはなれべんはな区別くべつできるが、合弁ごうべんはなるいはなれべんはなるい分類ぶんるいすることはしない。

カラミザクラ
カラミザクラ(バラ)。はなびらは、ばらばらに、いちまいずつ「る」。

ヤブツバキ
ヤブツバキヤブツバキ(ツバキ)のはなはなびらどうし、しべどうし、そしてはなびらとしべはつながりあっていて、まるごとぽとりとちる合弁ごうべんはな

サカキの花サカキ(ツバキ|モッコク): はなれべんはな。ツバキは、合弁ごうべんはなつものもふく便宜べんぎてきはなれべんはなるいれられている。

サツキ
サツキ園芸えんげいひん(ツツジ): 合弁ごうべんはな

ホツツジホツツジ
ホツツジ(ツツジ): はなれべんはな。ツツジは、はなれべんはなつものもふくめて合弁ごうべんはなるい分類ぶんるいされる。

ツツジ園芸品
ツツジの園芸えんげい品種ひんしゅでははなれべんはなつものがあり、「さいき」とばれる。このことは、はなれべん←→合弁ごうべん移行いこう比較的ひかくてき単純たんじゅん遺伝いでんてき変化へんかでもたらされることをしめすのかもれない。
ふる分類ぶんるいけい意義いぎ

図鑑ずかん教育きょういくで、研究けんきゅう進展しんてんわない「ふる分類ぶんるい」が使つかわれているのは、さまざまなメリットがあるためだ。それらは、裏返うらがえすと、あたらしい分類ぶんるいけいのデメリットということになる。

  1. ふる分類ぶんるい基準きじゅんほうが、少数しょうすう容易ようい判断はんだんできる特徴とくちょうもとづいているため、実際じっさい種類しゅるい調しらべるときに便利べんりだし、おしえやすい。
  2. あたらしい分類ぶんるいは、あたらしいがゆえに、研究けんきゅう進展しんてんとともにさらに改訂かいていされる運命うんめいにある。あたらしい分類ぶんるい反映はんえいするためには、図鑑ずかんるいはひんぱんに種類しゅるいならかたえた改訂かいていばん必要ひつようとなる。使つかほうも、れたならかたててふたたおぼなおさなくてはならなくなる。
  3. たん子葉しよう」「そう子葉しようはなれべん」「そう子葉しよう合弁ごうべん」とけると、被子植物ひししょくぶつは、わりとバランスく3分割ぶんかつされる。たとえば、たねすう上位じょういの10たん子葉しよう2はなれべん4合弁ごうべん4かれる。

だから、現在げんざいかんがえられている植物しょくぶつ系統けいとうとは一致いっちしない(したがって、進化しんかのパターンや背景はいけい分析ぶんせきするときには、使つかえない)ことはあたまれたうえで、たん子葉しようそう子葉しようはなれべん合弁ごうべんのようなふる分類ぶんるいっている必要ひつようがある。


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