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中山なかやま元はじめ

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フ-コ-入門にゅうもん (ちくま新書しんしょ 71) 新書しんしょ – 1996/6/1

中山なかやま元はじめ (著ちょ)

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ISBN-10

4480056718
ISBN-13

978-4480056719
出版しゅっぱん社しゃ

筑摩書房ちくましょぼう
発売はつばい日び

1996/6/1
言語げんご

日本語にほんご
本ほんの長ながさ

238ページ

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出版しゅっぱん社しゃ ‏ : ‎ 筑摩書房ちくましょぼう (1996/6/1)
発売はつばい日び ‏ : ‎ 1996/6/1
言語げんご ‏ : ‎ 日本語にほんご
新書しんしょ ‏ : ‎ 238ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4480056718
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4480056719

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ぱすと〜る
それはほんとうに本当ほんとうなのか
2021年ねん10月がつ13日にちに日本にっぽんでレビュー済ずみ
Amazonで購入こうにゅう

人間にんげんとは何なにか。唯一ゆいいつの正解せいかいはない。いくつもの答こたえがある。そして、それは、解答かいとう者しゃの属ぞくする歴史れきしにもよるだろう。けれども、「真理しんりという概念がいねんは、この歴史れきし性せいを隠蔽いんぺいして、なにものかの『本質ほんしつ』であるかのように振ふる舞まうものである」。しかし、「『真理しんり』とは論駁ろんばくされないという特徴とくちょうをもつ誤謬ごびゅうにすぎず、歴史れきし的てきな価値かちをもつものにすぎない」(p.128)。

　「直角ちょっかく三角形さんかっけいの斜辺しゃへんの二に乗じょうは、他たの二に辺へんそれぞれの二に乗じょうの和わに等ひとしい」という命題めいだいは（おそらく）どの時代じだいのどの場所ばしょでも正ただしいであろうが、「子こどもには洗礼せんれいを受うけさせてはならない」という一部いちぶのキリスト教会きょうかいの考かんがえ方かたはそうではない。

　では、そのようなものに過すぎない「真理しんり」が人ひとびとに刻きざみ込こまれてされていくのだろうか。「そのための一ひとつの手段しゅだんが試験しけんであり、これは近代きんだいの特権とっけん的てきな〈真理しんりの保証ほしょう〉である。試験しけんを受うける個人こじんは、試験しけんによって資格しかくを付与ふよされ、等級とうきゅうを定さだめられ、資格しかくの否定ひていという強制きょうせい手段しゅだんによって、処罰しょばつされる」(p.143)。

　「試験しけんと評価ひょうかに合格ごうかくしたものは、〈真理しんり〉に近ちかづくと自みずから感かんじるようになるのであり、他たの人々ひとびとに対たいして自分じぶんの〈真理しんり〉への近ちかさを誇ほこり、他者たしゃに対たいする力ちからの威力いりょくを味あじわう」(p.144)。

　直角ちょっかく三角形さんかっけいの辺あたりの件けんはどんなときでも正ただしい。歴史れきし性せいを帯おびた相対そうたい的てきなものではない。しかし、たとえば、現在げんざいの日本にっぽんの学校がっこうは、人間にんげんの生なま全体ぜんたいのすべてを扱あつかっているわけでもなく、したがって、試験しけんも人間にんげんや世界せかいの限定げんていされた領域りょういきからの出題しゅつだいに留とまる。そして、その領域りょういきで速はやく計算けいさんができる者ものが優秀ゆうしゅうと見みなされる。

学校がっこうの勉強べんきょうという限定げんてい領域りょういきにおいて高こう得点とくてんを挙あげた者ものたちは、自分じぶんたちは〈真理しんり〉に近ちかいと錯覚さっかくする。官僚かんりょうなどが好例こうれいだろう。学校がっこうで学まなぶ領域りょういきもどんな時代じだいでも場所ばしょでも妥当だとうなものというよりは、恣意しい的てきなものであろう。

　「フーコーは、哲学てつがくのつとめは、真理しんりが自明じめいなものでも普遍ふへん的てきなものでもなく、歴史れきし的てきに作つくられたものであることを暴露ばくろすることによって、その真理しんりの絶対ぜったい性せいを崩壊ほうかいさせることにあると考かんがえていた。絶対ぜったい的てきな真理しんりが存在そんざいするのではなく、個々ここの真理しんりは自由じゆうな主体しゅたいの行為こういとしてしかあり得えない」(p.231)。

　数学すうがくや物理ぶつりや化学かがくなどの分野ぶんやではどんな場合ばあいでもあてはまる命題めいだいはありうるだろうが、性せい、病気びょうき、善悪ぜんあく、人権じんけん、宗教しゅうきょうの教義きょうぎなどにおいては、フーコーのこの提起ていきは重要じゅうようであろう。

　すべてのものを疑うたがうことは難むずかしいが、疑うたがう範囲はんいを拡大かくだいすべきだろう。とくに、文献ぶんけん解釈かいしゃく、歴史れきしの記述きじゅつ、倫理りんり、政治せいじなどの領域りょういきにおいては、疑念ぎねんのアンテナをつねに立たてておくべきだろう。

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17人にんのお客様きゃくさまがこれが役やくに立たったと考かんがえています

役やくに立たった

レポート
本ほんの虫太郎むしたろう
良書りょうしょにして難解なんかい
2017年ねん8月がつ17日にちに日本にっぽんでレビュー済ずみ
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極きわめて，簡潔かんけつに又また限かぎられた紙かみ数すうの中なかでフーコーの思想しそうを紹介しょうかいしているのだと思おもいます。
しかし，正直しょうじきに言いって，難解なんかいです。分わかったようなつもりになっているだけという，不完全ふかんぜん燃焼ねんしょう感かんが残のこります。
再読さいどくしても，離はなれ解かいができるかは不明ふめいです。
だが，この価格かかくにして，この内容ないようは，おそらくベストの作品さくひんではないでしょうか。

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18人にんのお客様きゃくさまがこれが役やくに立たったと考かんがえています

役やくに立たった

レポート
菅沼すがぬま　豊ゆたか
読よみ応ごたえ
2019年ねん10月がつ5日にちに日本にっぽんでレビュー済ずみ
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難むずかしい

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3人にんのお客様きゃくさまがこれが役やくに立たったと考かんがえています

役やくに立たった

レポート
こういちろう
たいへん読よみやすかった。
2017年ねん2月がつ15日にちに日本にっぽんでレビュー済ずみ
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構造こうぞう主義しゅぎからポスト構造こうぞう主義しゅぎへ、絶たえず減価げんかし続つづけたフーコーの思想しそうを、ここまでたいへんわかりやくまとめているのはさすがです。「ハイデガー入門にゅうもん」とかは、「存在そんざいと時間じかん」そのものを読よむほうがよほどわかりやすかったので、驚おどろきでした。

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18人にんのお客様きゃくさまがこれが役やくに立たったと考かんがえています

役やくに立たった

レポート
ぴゃぴゃぴゃ
全体ぜんたい的てきに難解なんかいでした。
2022年ねん12月19日にちに日本にっぽんでレビュー済ずみ
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フーコー関せき連続れんぞくの入門にゅうもん書しょを続つづけて読よんでいて、本書ほんしょは3冊さつ目めでした。本書ほんしょも全体ぜんたい的てきに難解なんかいでした。
マークしていた箇所かしょを見返みかえして、いくつか抜粋ばっすいしたものが下記かきになりますが、見返みかえしてみてもやっぱり難むずかしい。雰囲気ふんいきだけはかろうじて理解りかい出来できたというのが正直しょうじきなところです。

・『狂気きょうきの歴史れきし』の重要じゅうようなテーマは、外的がいてきな抑圧よくあつからの解放かいほうというみかけのもとで、実じつは内的ないてきな支配しはいと隷属れいぞくの強化きょうかが進すすめられる場合ばあいがあるということ
・フーコーにとっては理性りせいの定さだめた限界げんかいを〈侵犯しんぱん〉することが重要じゅうような課題かだい。人間にんげんが「正常せいじょうである」という規範きはん的てきな考かんがえ方かたを受うけ入いれるように強制きょうせいするものを暴あばきだし、人間にんげんの〈本質ほんしつ〉という思考しこうそのものを侵犯しんぱんしようと試こころみること
・真理しんりとは、誰だれがそれを真理しんりとして信しんじるかによって、大おおきく意味いみを変かえるもの。
・人間にんげんは身体しんたいをもちながら認識にんしきし、思考しこうするのではない。身体しんたいがあることで初はじめて認識にんしきが可能かのうになるのであり、人間にんげんの認識にんしきは身体しんたいによって条件じょうけんづけられている
・「自由じゆうを発見はっけんした啓蒙けいもう時代じだいは、調教ちょうきょうも考案こうあんした」ということ。〈自由じゆうな社会しゃかい〉が形成けいせいされるのは、自由じゆうな個人こじんによってではなく、身体しんたいを調教ちょうきょうされ、精神せいしんを監視かんしする大おおきな〈眼め〉を魂たましいの内部ないぶに埋うめ込こまれた主体しゅたいである。
・身体しんたいを契機けいきとして個人こじんに道徳どうとく的てきな主体しゅたいを形成けいせいさせ、その主体性しゅたいせいによって身体しんたいを拘束こうそくするという近代きんだいの〈規律きりつ権力けんりょく〉においては、司法しほうそのものよりも精神せいしん医学いがく、精神せいしん分析ぶんせき、心理しんり学がくなどの人間にんげん科学かがくが、人間にんげんの服従ふくじゅう主体しゅたいの形成けいせいにおいて重要じゅうような役割やくわりを果はたす
・フーコーは、哲学てつがくのつとめは真理しんりが自明じめいなものでも普遍ふへん的てきなものでもなく、歴史れきし的てきに作つくられたものであることを暴露ばくろすることによって、その真理しんりの絶対ぜったい性せいを崩壊ほうかいさせることにあると考かんがえていた。絶対ぜったい的てきな真理しんりが存在そんざいするのではなく、個々ここの真理しんりは自由じゆうな主体しゅたいの行為こういとしてしかあり得えないと考かんがえると、すべての主体しゅたいは自分じぶんなりの真理しんりの確立かくりつに参加さんかすることができる。

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7人にんのお客様きゃくさまがこれが役やくに立たったと考かんがえています

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レポート
pushuca
これ自体じたいが名作めいさく
2014年ねん1月がつ23日にちに日本にっぽんでレビュー済ずみ
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大変たいへん苦労くろうして、フーコーを咀嚼そしゃくされていることが窺うかがえる。力作りきさくだと思おもう。無論むろん原典げんてんを読よむことは必要ひつようだが、その良よいガイドになってくれた。これなしでは私わたしはこの短期間たんきかんでフーコーを読解どっかいすることは不可能ふかのうだったと確信かくしんしている。入門にゅうもん書しょとして最良さいりょうの作品さくひんになっている。

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カーマイン
真理しんりは歴史れきしによって作つくられる？
2013年ねん12月12日にちに日本にっぽんでレビュー済ずみ
　フランスの哲学てつがく者しゃであるミシェル・フーコー（1926−1984）の解説かいせつ書しょ。
　曰いわく・・・
　眼めの構造こうぞうには眼め自体じたいを見みることができないという盲点もうてんがあるが、読よむという行為こういにもある読よみ得えない盲点もうてんが存在そんざいする。読よむ対象たいしょうとして構成こうせいされず気きづかれない領域りょういきがある。カントは理性りせいの限界げんかいを明あきらかにしようとしたが、フーコーにとっては理性りせいの定さだめた限界げんかいを侵犯しんぱんすることが重要じゅうような課題かだい。人間にんげんが正常せいじょうであるという規範きはん的てきな考かんがえ方かたを受うけ入いれるように強制きょうせいするものを暴あばき、人間にんげんの本質ほんしつという思考しこうそのものを侵犯しんぱんする。
　精神せいしん医学いがくは、その社会しゃかいにおける政治せいじ的てき実践じっせんという側面そくめんがある。正常せいじょうと異常いじょうを判定はんていし、異常いじょうを排除はいじょすることにより社会しゃかい秩序ちつじょを確保かくほするという実践じっせんに結むすびつくという点てんにおいて。
　１７世紀せいき半はんごろ、狂気きょうきは性病せいびょうと同おなじく、何なんらかの「罪つみ」を犯おかしたものと考かんがえられ、狂気きょうきの治療ちりょうという医学いがく的てき行為こういには、罪つみを罰ばっするという道徳どうとく的てきな行為こういが含ふくまれていた。狂気きょうきかどうかを判定はんていすることには道徳どうとく的てきな要素ようそがある（同性愛どうせいあい、親不孝おやふこう者しゃ、娼婦しょうふ、錬金術れんきんじゅつ師し・・・）。ちなみに道徳どうとく的てき理由りゆうではない＜本物ほんものの＞狂者きょうしゃは、フランス革命かくめいまでは見みせ物ものにされたという（パリ市民しみんの日曜日にちようびの気晴きばらしだったらしい。完全かんぜんに動物どうぶつ扱あつかい）。
　フランス革命かくめい後ご、（流行りゅうこう病びょう対策たいさくやら貧民ひんみんの生活せいかつ保護ほご論ろん争そうなどを経へて）国家こっかが医学いがくと結むすびつくと、住民じゅうみんは僧侶そうりょ（精神せいしん）と医師いし（肉体にくたい）によって、国家こっかにより精神せいしんと肉体にくたいの双方そうほうを支配しはいされるようになる。医学いがくが国家こっかの重要じゅうような地位ちいを占しめるようになり、医学いがくは「健康けんこうな人間にんげん」、さらには「模範もはん的てきな人間にんげん」という規範きはんを規定きていするようになった。
　西洋せいよう文化ぶんかは、人間にんげんの死体したいの解剖かいぼうを通つうじて、自己じこを科学かがくの対象たいしょうとし、科学かがく的てきな言語げんごで自己じこを記述きじゅつするようになった。もともと、アリストテレス以来いらい、個人こじんは科学かがくの対象たいしょうではなかったがこれが変化へんかする。これに呼応こおうして、心理しんり学がくは、非理ひり性せいのカテゴリーの確立かくりつから生うまれた。医学いがくは、生命せいめいではなく死しを医学いがく的てきな思考しこうの中なかに統合とうごうすることによって生うまれた。
　スターリンの論理ろんりによれば、人間にんげんの行動こうどうの価値かちは歴史れきしの進路しんろによって決定けっていされる。善よき意図いとからの行為こういでも歴史れきしの方向ほうこうに反はんするなら断罪だんざいされる。
　フーコーは、まず、物ものの秩序ちつじょを認識にんしきするためには知ちの枠組わくぐみ（エピステーメー）が必要ひつようであるとし、エピステーメーは時代じだい精神せいしんというかその時代じだいの背景はいけいみたいなもの。古典こてん主義しゅぎ時代じだいのエピステーメーは、同一どういつ性せいと相違そうい性せいに基もとづいて物ものの秩序ちつじょを形成けいせいする方法ほうほうである（表ひょうの空間くうかんという）。そこから物ものそのものではなく、物ものについて思おもい浮うかべるイメージである表象ひょうしょうとそれを示しめす記号きごうの学がくに発展はってんし、特とくに、重要じゅうようなのが生命せいめい、言語げんご、労働ろうどう・生産せいさんという概念がいねんにかかわる生物せいぶつ学がく、言語げんご学がく、経済けいざい学がくであるとする。それまで「生物せいぶつ」という概念がいねんはあったが１回かい限かぎりの生せいを送おくる「生命せいめい」という（抽象ちゅうしょう的てきでメタ的てきな？）概念がいねんはなかった。富とみという概念がいねんはあったが、それが身体しんたい損耗そんこうをともなう労働ろうどうによって生うみ出だされる価値かちという面めんでは認識にんしきされていなかった。
　歴史れきしの一刻いっこく一いち刻こくにおいて、人間にんげんは死しの脅威きょういのもとで労働ろうどうするほかない。すべての住民じゅうみんは、新あたらしい資源しげんをみいださなければ、消滅しょうめつするように運命うんめいづけられている（リカード）。
　経済けいざい学がくや生物せいぶつ学がく、言語げんご学がくなどの誕生たんじょうとともに、人間にんげん活動かつどうのメカニズムを明あきらかにしようとする学問がくもんとして、心理しんり学がく、社会しゃかい学がく、文化ぶんか史し、思想しそう史しなどが生うまれた。
　歴史れきしには目的もくてきがある、というのが西洋せいようの基本きほん的てきな考かんがえ方かたである。歴史れきしに終末しゅうまつ論ろん的てきなイメージがある。
　ニーチェは真理しんりとは何なにかという問とい方かたを否定ひていし、真理しんりを語かたる者ものは誰だれかという政治せいじ学がく的てきな問とい方かたに転換てんかんしたが、フーコーもこの観点かんてんに影響えいきょうされている。１ひとつの文化ぶんかは、その基盤きばんとなる知ちの枠組わくぐみを所有しょゆうしており、その枠組わくぐみにおいてさまざまなエノンセ（行為こういによって語かたられたもの）が「真理しんり」となると規定きていした。歴史れきし的てきな「真理しんり」としての価値かちを失うしなったマルクス主義まるくすしゅぎが、チュニジア人じんの反はん政府せいふ運動うんどうのよりどころになっていたことからフーコーはこの考かんがえ方かたに至いたったらしい。
　近代きんだい社会しゃかいにおいては、学校がっこうや軍ぐんや病院びょういんなどで身体しんたいに対たいする細こまかい規則きそくが定さだめられ、近代きんだい社会しゃかいに適合てきごうする人間にんげんがつくられる。それだけではなく、試験しけんなどにより精神せいしんも調教ちょうきょうされる。試験しけんに合格ごうかくすると真理しんりに近ちかづいた感かんじがあり、他者たしゃに対たいする力ちからを味あじわう。真理しんりと権力けんりょくはこのようなメカニズムで収斂しゅうれんしていく。
　フランス革命かくめい以前いぜんは、王おうとは死しを与あたえる権力けんりょくだったが、フランス革命かくめい以後いごの社会しゃかいは生物せいぶつ体たいのように存続そんぞくすることを自己じこ目的もくてきとし、社会しゃかいの構成こうせい員いんをよりよく「生いかす」ことが課題かだいとなる。社会しゃかいの権力けんりょく構造こうぞうが規律きりつ権力けんりょくと生せい・権力けんりょくの重層じゅうそう構造こうぞうとなっていく。近代きんだい社会しゃかいでは、（特とくに戦争せんそうのための）出生しゅっしょう（率りつ）という問題もんだいを契機けいきとして、女性じょせいの体からだが社会しゃかい的てきに重要じゅうような意味いみを持もち始はじめた。性せいの問題もんだいは、優良ゆうりょうな「種たね」の保存ほぞんという観点かんてんから特とくに重視じゅうしされ、これが優生ゆうせい学がくにもつながっていく。生せい・権力けんりょくは、性せいという私わたし秘ひ的てきな場所ばしょにわれわれの体からだを通つうじて支配しはいするための拠点きょてんを確保かくほした。性せいは身体しんたいの生なまというものへの手てがかりであると同時どうじに種たねの生なまというものへの手てがかりでもある。そんな生なま・権力けんりょくがなぜ一方いっぽうで戦争せんそうで大衆たいしゅうの虐殺ぎゃくさつをするようになったのか。その答こたえは「人種じんしゅ」という原理げんりだとフーコーは考かんがえる。国民こくみんの生いかしておく部分ぶぶんと殺ころしてしまう部分ぶぶんを分離ぶんりするために利用りようされる概念がいねんが人種じんしゅであり、人種じんしゅ差別さべつの原理げんりは生なま・権力けんりょくに殺ころす原理げんりをもちこんだ。生物せいぶつ学がく的てきな純粋じゅんすい性せいの観念かんねんが底流ていりゅうにあり、１９世紀せいき以降いこうの戦争せんそうには、人種じんしゅ浄化じょうか運動うんどうという側面そくめんがつきまとう。戦争せんそうだけでなく、犯罪はんざい者しゃ、精神せいしん障害しょうがい者しゃ、性せい倒錯とうさく者しゃについても浄化じょうかの理論りろんが適用てきようされる。日本にっぽんでいえば戦前せんぜんの「非国民ひこくみん」という概念がいねんには、正常せいじょう性せいのカテゴリーに入はいらない者ものを非難ひなん・排除はいじょするという点てんで似にている。
　禁欲きんよく的てき司祭しさいが魂たましいの救済きゅうさいというエサによって人々ひとびとを支配しはいしたように、国民こくみんの生命せいめいと安全あんぜんを第だい一いちに重視じゅうしする福祉ふくし国家こっかも国家こっかは国民こくみんの幸福こうふくのためにあると主張しゅちょうすることで国家こっか統治とうちを合理ごうり化かする。すべての国民こくみんを絶たえ間まなく監視かんししようとする生なま・権力けんりょくは、信者しんじゃの心しんまで告解こっかいを通とおしてのぞき込こもうとする司祭しさい権力けんりょくとどこか似にている。生せい・権力けんりょくは全体ぜんたい主義しゅぎの原理げんりを内部ないぶに孕はらむ。
　この権力けんりょくに抵抗ていこうする方法ほうほうは、自己じこの身体しんたいと欲望よくぼうに忠実ちゅうじつになることによって新あたらしい可能かのう性せい、新あたらしい生いき方かたを作つくり出だすことであるとする（実存じつぞんの美学びがく）。このころフーコーは自分じぶんがホモセクシャルであることを公式こうしきに認みとめ、それを自分じぶんの生いき方かたとして反映はんえいさせようとした。ゲイが自然しぜんであると主張しゅちょうするのではなく、ゲイを一ひとつの新あたらしい生いき方かたとして生いきることを重視じゅうしする。自分じぶんの秘密ひみつの欲望よくぼうはなにかという問といに巻まき込こまれるのではなく、ホモセクシャルであることによってどのような新あたらしい関係かんけいを確立かくりつ・発明はつめいできるか、と考かんがえるようになる。
　古代こだいギリシャでは、快楽かいらくの相手あいてが男おとこか女おんなかは問題もんだいではなかった。問題もんだいとなったのは快楽かいらくの主体しゅたい（自分じぶん）であり、その主体しゅたいが節度せつどをもって行動こうどうするか自己じこ統御とうぎょできているかが問題もんだい。
　人々ひとびとが自由じゆうだと教おしえること、自明じめいで真理しんりと信しんじているものが歴史れきしの特定とくてい時点じてんで作つくり出だされたことを知しり、自明じめい性せいは批判ひはんし破壊はかいできることを示しめすことが知識ちしき人じんの役割やくわりである（フーコー）。
　哲学てつがくのつとめは、真理しんりが自明じめいなものでも普遍ふへん的てきなものでもなく、歴史れきし的てきにつくられたものであることを暴露ばくろすることによて、その真理しんりの絶対ぜったい性せいを崩壊ほうかいさせることである（フーコー）。
　のような話はなし。

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