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■95/12/08 らい予防よぼうほう見直みなお検討けんとうかい報告ほうこくしょ ※NIFTY-Serve:GO MHWBUL(厚生省こうせいしょう行政ぎょうせい情報じょうほう)より  ここには厚生省こうせいしょう関連かんれん行政ぎょうせいがたくさん掲載けいさいされています。  アクセスしてみてください。              らい予防よぼうほう見直みなお検討けんとうかい報告ほうこくしょ 1 はじめに  くにの「らい予防よぼう対策たいさく」は、1907ねん明治めいじ40ねん)の「かったい予防よぼうせきスルけん」 の制定せいてい契機けいきとし、以来いらいすう見直みなおしがくわえられ、1953ねん昭和しょうわ28ねん)に現行げんこう の「らい予防よぼうほう」となり、現在げんざいいたっている。その基本きほんてきかんがかたは、一貫いっかんして感染かんせんげんたい さくとしての患者かんじゃの「隔離かくり」を推進すいしんすることにより、「らい」の予防よぼうはかるということに あった。  しかしながら、こうしたかんがかたもとづく現行げんこうのらい予防よぼうほうは、今日きょう医学いがくてき知見ちけんあきら らしそぐわなくなっており、現状げんじょうにおいては弾力だんりょくてき運用うんようがなされているとはいえ、 実情じつじょうにそぐわないほうげん存在そんざいしていること自体じたい問題もんだいされているところである。  また、らい予防よぼうほう問題もんだいめぐっては、昨年さくねん11がつ国立こくりつハンセン病はんせんびょう療養りょうようしょ所長しょちょう連盟れんめい見解けんかいはじめ、本年ほんねんがつには全国ぜんこくハンセン病はんせんびょう患者かんじゃ協議きょうぎかい、4がつには日本にっぽんらい学会がっかいと、関係かんけい 団体だんたいから「らい予防よぼうほう抜本ばっぽんてき見直みなおし」についての見解けんかい相次あいついで表明ひょうめいされたところで ある。  さらに、これら関係かんけい団体だんたいからしめされた見解けんかいとうまえ、平成へいせいねんから「らい予防よぼう法問ほうもん だい」について検討けんとうかさねてきた厚生省こうせいしょう委託いたく調査ちょうさ事業じぎょうによる「ハンセン病はんせんびょう予防よぼう事業じぎょう対策たいさく調ちょう検討けんとう委員いいんかい」が、本年ほんねんがつに「らい予防よぼうほう抜本ばっぽんてき見直みなおしについて」の検討けんとうもとめる と同時どうじに、現在げんざい全国ぜんこく存在そんざいする13の国立こくりつ療養りょうようしょと2の私立しりつ療養りょうようしょにおいては、いまだ 6000めいちか入所にゅうしょしゃながきにわたり療養りょうよう生活せいかつごしている実態じったいがあることから、こ れら入所にゅうしょしゃ生活せいかつ保障ほしょうしていくことに特段とくだん配慮はいりょもとめることを内容ないようとする報告ほうこくしょを とりまとめたところである。  ほん検討けんとうかいにおいては、こうした指摘してきとうまえ、また、社会しゃかいから物理ぶつりてきにあるいはこころ てきに「隔離かくり」され、これまで幾多いくた辛酸しんさんをなめてきた、かつて「らい」をんだ人々ひとびと とその家族かぞく苦難くなん歴史れきし名実めいじつども終結しゅうけつさせるため、らい予防よぼうほうとそれに関連かんれんするしょとい だいについて、医学いがく検討けんとうしょう委員いいんかいにおける検討けんとうふくめ、10かいにわたる慎重しんちょう検討けんとうかさね たが、その結果けっかがまとまったので報告ほうこくする。  なお、ほん報告ほうこくしょにおいては、原則げんそくとして「ハンセン病はんせんびょう」という言葉ことばもちいるが、報告ほうこく しょ文脈ぶんみゃくじょう「らい」と記述きじゅつする必要ひつようがある場合ばあいとうは「らい」をもちいる。 2 医学いがくてき考察こうさつ (1) ハンセン病はんせんびょうおよびらい予防よぼうほうについての現在げんざい医学いがくてき評価ひょうか  ハンセン病はんせんびょうは、らいきんによってこされる慢性まんせい細菌さいきん感染かんせんしょう一種いっしゅであるが、ら いきんどくりょくきわめてよわく、ほとんどのひとたいして病原びょうげんせいたないため、ひと体内たいないにらいきん侵入しんにゅうし、感染かんせん成立せいりつしても、発病はつびょうすることはきわめてまれである。このように、ハンセン びょうでは、きん感染かんせん発病はつびょうとのあいだおおきなずれがあることから、このふたつは厳密げんみつ区別くべつ してかんがえることが重要じゅうようである。  また、集団しゅうだんレベルで、ハンセン病はんせんびょう発生はっせいりつ場合ばあい社会しゃかい経済けいざい状態じょうたい向上こうじょうともなげん すくなすることが疫学えきがくてきにも証明しょうめいされており、社会しゃかい経済けいざい因子いんしハンセン病はんせんびょう発病はつびょうつよかげ ひびきあたえることがられている。現在げんざい、ヨーロッパや社会しゃかい経済けいざい状態じょうたい向上こうじょうしたくにとう においては、ハンセン病はんせんびょうは、すで終息しゅうそくしているかまた終焉しゅうえんかっており、現在げんざいでは、 世界せかいハンセン病はんせんびょう患者かんじゃおおくは、みなみアジア地域ちいき中心ちゅうしんとした地域ちいき分布ぶんぷしている。なお 、くにのここすうねん新規しんき患者かんじゃ登録とうろくすうは、年間ねんかんわずか10めい前後ぜんこうにとどまっている。  現在げんざいハンセン病はんせんびょう治療ちりょうは、化学かがく療法りょうほう中心ちゅうしんおこなわれるが、化学かがく療法りょうほう導入どうにゅうは、19 43ねん昭和しょうわ18ねん)のプロミン(スルフォンざい一種いっしゅ)の有効ゆうこうせいについての報告ほうこくはじめ まる。昭和しょうわ20〜30年代ねんだいしゅとしてスルフォンざいによるたんざい治療ちりょうおこなわれた。さらに 、昭和しょうわ40年代ねんだい後半こうはんになり、リファンピシンが、らいきんたいつよ殺菌さっきん作用さようゆうする ことがあきらかになった。  その、WHO(世界せかい保健ほけん機関きかん)が1981ねん昭和しょうわ56ねん)に提唱ていしょうしたざい併用へいようほう(リファンピシンを主剤しゅざいとし、これに複数ふくすう化学かがく療法りょうほうざいくわえた療法りょうほう)は、くにに おいても、次第しだい治療ちりょう主流しゅりゅうとなった。ざい併用へいよう療法りょうほうは、その卓越たくえつした治療ちりょう効果こうかだけで なく、再発さいはつりつひくさ、患者かんじゃ多大ただい苦痛くつう後遺症こういしょうをもたらす経過けいかちゅう急性きゅうせい症状しょうじょう(らいはん おう)のすくなさ、治療ちりょう期間きかん短縮たんしゅくなどのてん画期的かっきてき療法りょうほうであり、また、わずすう日間にちかんふく やくきん感染かんせんりょく喪失そうしつするため、感染かんせんげん対策たいさくとしても有用ゆうようである。  ざい併用へいよう療法りょうほう確立かくりつされて以降いこうハンセン病はんせんびょう早期そうき発見はっけん早期そうき治療ちりょうにより、障害しょうがいざん すことなく、外来がいらい治療ちりょうによって完治かんじする病気びょうきとなり、また不幸ふこうにして発見はっけんおく障害しょうがいのこした場合ばあいでも、外科げかてき療法りょうほうやリハビリテーションの進歩しんぽにより、その障害しょうがい最小限さいしょうげんめることができる。  以上いじょうのとおり、ハンセン病はんせんびょうは、現在げんざいくににおいては感染かんせんしても発病はつびょうすることはきょく めてまれであり、またかり発病はつびょうしても、適切てきせつ治療ちりょうにより完治かんじする病気びょうきであることから、 医学いがくてき見地けんちからは、らい予防よぼうほうさだめるような予防よぼう措置そち隔離かくりとう)をこうずる必要ひつようせい存在そんざいしない。したがって、らい予防よぼうほうさだめる予防よぼう措置そち廃止はいしされるべきである。 (2) 今後こんご新規しんき発生はっせい患者かんじゃたいする治療ちりょうのありかた  (1) にべたごとく、現在げんざいハンセン病はんせんびょう医学いがくてきには法律ほうりつもとづく措置そちをもって対処たいしょ すべき特別とくべつ疾病しっぺいではなく、今後こんご新規しんき発生はっせいする患者かんじゃたいしては、原則げんそくとして、一般いっぱん 医療いりょう機関きかん外来がいらいによる診療しんりょうおこなわれるべきであり、くににおいては早急そうきゅうにそれに必要ひつようたい おうつとめるべきである。  ハンセン病はんせんびょう患者かんじゃ急減きゅうげんともない、ハンセン病はんせんびょう治療ちりょう専門せんもん減少げんしょうしている現状げんじょうまえ ると、たとえば、一般いっぱん皮膚ひふ神経しんけい内科ないかけの診断しんだん治療ちりょう指針ししん作成さくせいするとうハンセン病はんせんびょう 治療ちりょうかんする専門せんもん知識ちしき普及ふきゅうするひとし対応たいおうおこなうことが必要ひつようである。 3 政策せいさくてき考察こうさつ療養りょうようしょ入所にゅうしょしゃ処遇しょぐう問題もんだいとう)    (1) 基本きほんてきかんがかた   従来じゅうらいから回復かいふくしゃについては、運用うんようにより、いわゆる「軽快けいかい退すさしょしゃ」として社会しゃかい復帰ふっき( 療養りょうようしょ退すさしょ)がみとめられているところであるが、今般こんぱん、らい予防よぼうほうさだめる予防よぼう措置そち を廃止はいしすることにともない、療養りょうようしょ入所にゅうしょしているもの退すさところ希望きぼうするものは、当然とうぜん権利けんりと して自発じはつてき意思いしもとづき退ずさところすることができる。この場合ばあいくにはその社会しゃかい復帰ふっき必要ひつような 支援しえんつとめるべきである。しかし、現実げんじつには、療養りょうようしょ入所にゅうしょしゃ大半たいはんは、つづ療養りょうよう ところにとどまることを希望きぼうしているものとかんがえられる。したがって、らい予防よぼうほう見直みなおし にともない、これら入所にゅうしょしゃたいする処遇しょぐうをどのようにかんがえるべきかを検討けんとうする必要ひつようがある。  このてん現行げんこうのらい予防よぼうほうは、だいじょうにおいてその目的もくてきを「らいを予防よぼうする」ととも に「らい患者かんじゃ医療いりょうおこない、あわせてその福祉ふくしはかり、もって公共こうきょう福祉ふくし増進ぞうしんはかる こと」と規定きていしている。また、だい11じょうにおいては、「くには、らい療養りょうようしょ設置せっちし、患 しゃたいして、必要ひつよう療養りょうようおこなう」と規定きていし、だい12じょうにおいては、「くには、入所にゅうしょ患者かんじゃの 福利ふくり増進ぞうしんするようつとめる」むね規定きていしている。さらに、だい21じょうにおいては、「入所にゅうしょ 患者かんじゃやすんじて療養りょうよう専念せんねんさせるため」の措置そちとして、入所にゅうしょ患者かんじゃ親族しんぞくたいする援護えんごを 規定きていしている。   これらのらい予防よぼうほうもとづく医療いりょうおよ福祉ふくし措置そちは、ハンセン病はんせんびょう患者かんじゃ救護きゅうごというがわ めん同時どうじに、「らい予防よぼう対策たいさく」を円滑えんかつ実施じっしするために特別とくべつ立法りっぽう政策せいさくじょう配慮はいりょもとづ きおこなうという性格せいかくゆうしているとかんがえられる。   そこでかりに、らい予防よぼう措置そち廃止はいしすることになれば、それを円滑えんかつ実施じっしするというよ うな性格せいかくうしなわれ、入所にゅうしょしゃとうたいする医療いりょうおよ福祉ふくし措置そちはもはや維持いじ継続けいぞくする必要ひつよう せいくなるのではないかという議論ぎろんがある。そして、このことが、これまでのらい ぼうほう見直みなおしにたいする慎重しんちょうろん論拠ろんきょひとつとなっていたものとかんがえられる。   しかしながら、現在げんざい療養りょうようしょ入所にゅうしょしゃは、そのほとんどがハンセン病はんせんびょうそのものは治癒ちゆしてい るものの、視覚しかく障害しょうがい肢体したい不自由ふじゆうとう後遺こうい障害しょうがいゆうしていること(しかもその8わりじゃくが 障害しょうがい程度ていどきゅう以上いじょう重度じゅうど障害しょうがいしゃである)、すでにその平均へいきん年齢ねんれいが70さいたっし、全体ぜんたいでも 60さい以上いじょうが8わり以上いじょうめるなど高齢こうれいしていること、1人ひとり平均へいきん3.3疾病しっぺいゆうする などおおくが合併症がっぺいしょうゆうする患者かんじゃであることとう理由りゆうにより、げん社会しゃかい政策せいさくじょう配慮はいりょが必 ようものである。さらに、入所にゅうしょしゃかれている状況じょうきょうとしてもっと特筆とくひつすべきは、こうした 身体しんたいてき状態じょうたいくわえ、1「らい」には長年ながねん根強ねづよ社会しゃかいてき偏見へんけん差別さべつ存在そんざいしてきたこと 、おおくの患者かんじゃひさしく家族かぞくえんっており、また、結婚けっこんさい優生ゆうせい手術しゅじゅつけた入所にゅうしょ しゃ場合ばあいなどたよるべき子供こどもがいないひとしかえるべき家族かぞく存在そんざいしないこと、7わり以上いじょう患者かんじゃ の在所ざいしょ期間きかんが30ねんえているなど長期ちょうきにわたる療養りょうようしょ生活せいかつおくってきた結果けっか社会しゃかい に復帰ふっきして自立じりつする手段しゅだんっていないこととう理由りゆうにより社会しゃかい復帰ふっきすることがきわめて 困難こんなん状況じょうきょうにあること、2ほうにより、あるいは社会しゃかいてきあつりょくにより、療養りょうようしょへの入所にゅうしょ くされ、療養りょうようしょにおいて長期ちょうきにわたる療養りょうよう生活せいかつおくってきた結果けっか、もはや療養りょうようしょが 生活せいかつとなっており、入所にゅうしょしゃ自身じしんだい故郷こきょうとして、余生よせいいままでどおりにごし たいとつよ要望ようぼうしていることひとしほか一般いっぱん身体しんたい障害しょうがいしゃ高齢こうれいしゃとうとはことなる歴史れきしてきしゃ かいてき特殊とくしゅせいゆうしていることである。   こうした状況じょうきょうは、らい予防よぼうほうという法的ほうてき枠組わくぐみに、ふるくから根強ねづよ存在そんざいしてきた「ら い」にたいする社会しゃかいてき差別さべつ偏見へんけんかさなりあってつくげられたものであり、療養りょうようしょに つづきとどまることを希望きぼうする入所にゅうしょしゃたいしては、社会しゃかい全体ぜんたい責任せきにんとして、入所にゅうしょしゃの かれている特別とくべつ状態じょうたい着目ちゃくもくして、一般いっぱん社会しゃかい保障ほしょう制度せいどとはことなった特別とくべつ政策せいさくじょうはい おもんばかくわえられるべきであり、従来じゅうらいどおり療養りょうようしょにおいて現在げんざいおこなっている処遇しょぐう維持いじつぎ つづけはかるとともに、患者かんじゃ家族かぞくたいする援護えんご措置そち継続けいぞくすることが相当そうとうであるとかんがえられ る。   以上いじょう維持いじ継続けいぞくすべき処遇しょぐうには、入所にゅうしょしゃたいする療養りょうよう親族しんぞくたいする援護えんご措置そちとうげん くだりのらい予防よぼうほう規定きていされている措置そちのみならず、患者かんじゃ給与きゅうよきんとう法律ほうりつもとづかない予算よさん うえ措置そちふくまれるべきものであり、現行げんこうらい予防よぼうほうもとづく措置そちについては、なんらか の法的ほうてき措置そちにより担保たんぽしていくと同時どうじに、つづ患者かんじゃ給与きゅうよきんとう予算よさん措置そちについても 継続けいぞくしていくべきである。   以上いじょうてんについては、私立しりつ療養りょうようしょ入所にゅうしょしゃたいしても、これにじゅんじた措置そちこうじら れるべきである。  (2) 特別とくべつ措置そち対象たいしょうしゃ   上記じょうき措置そちは、ハンセン病はんせんびょう医学いがくてき特殊とくしゅせい着目ちゃくもくしておこなわれるものではなく(さきじゅつ べたとおり、ハンセン病はんせんびょういまではなん特別とくべつすべき疾患しっかんではない。)、ハンセン病はんせんびょう療養りょうよう ところ入所にゅうしょしゃかれた特別とくべつ状態じょうたい着目ちゃくもくしておこなわれることに留意りゅういしなければならない。 したがって、この特別とくべつ措置そち対象たいしょうとなるのは、原則げんそくとしてらい予防よぼうほう見直みなおされる時点じてん において、げんハンセン病はんせんびょう療養りょうようしょ入所にゅうしょしているものかぎられるべきであり、今後こんご新規しんき に発生はっせいする患者かんじゃについてはその対象たいしょうとするべきではない。   他方たほう退すさしょしゃなかにはその社会しゃかい復帰ふっき努力どりょくにもかかわらずおおくの困難こんなん直面ちょくめんし、かつ、 ハンセン病はんせんびょう再発さいはつ後遺こうい障害しょうがい悪化あっか高齢こうれいとうにより、さい入所にゅうしょ余儀無よぎなくされているもの も存在そんざいしている。これらのものも、おおくの困難こんなんけてきたという状態じょうたい入所にゅうしょしゃおなじで あることから、らい予防よぼうほう見直みなおされる以前いぜんに、かつて療養りょうようしょに「入所にゅうしょしていたもの」で あって、現在げんざい退すさところしているものが、らい予防よぼうほう見直みなおふたた社会しゃかい生活せいかつ困難こんなんきたすに いたり、さい入所にゅうしょ希望きぼうした場合ばあいには、入所にゅうしょしゃじゅんじた配慮はいりょこうじられるべきである。  (3) 国立こくりつ療養りょうようしょおよ療養りょうようしょ入所にゅうしょしゃたいする医療いりょう提供ていきょうのありかた   「国立こくりつ病院びょういん療養りょうようしょ政策せいさく医療いりょうさい編成へんせいとうかんする懇談こんだんかい」より平成へいせいねん11がつひっさげ された最終さいしゅう報告ほうこくにおいて、国立こくりつ病院びょういん療養りょうようしょさい編成へんせい計画けいかく見直みなおしが提案ていあんされている が、その見直みなおしにたっては、国立こくりつハンセン病はんせんびょう療養りょうようしょについては、従来じゅうらいどおりその対象たいしょう そととするべきである。   この場合ばあいさきべたとおり、入所にゅうしょしゃほとんどはハンセン病はんせんびょうそのものは治癒ちゆしているも のの、おおくの疾患しっかんゆうし、とく高齢こうれい一層いっそう進展しんてんにより、今後こんごますますその医療いりょうニー ズがたかまってくることが予想よそうされる。また、入所にゅうしょしゃ自身じしんが、高齢こうれい重度じゅうど障害しょうがいのため にごしれた療養りょうようしょ安心あんしんして医療いりょうけられることをつよ希望きぼうしていることをま え、入所にゅうしょしゃたいする医療いりょうについては、従来じゅうらいどおり国民こくみん健康けんこう保険ほけん保険ほけんしゃ適用てきよう除外じょがいと したうえで、基本きほんてき国立こくりつ療養りょうようしょ従来じゅうらいどおり医療いりょう機関きかんとしてすべてを国費こくひにより提供ていきょうし、 療養りょうようしょ提供ていきょうできない医療いりょうについては、外部がいぶ適当てきとう医療いりょう機関きかんにおける委託いたく治療ちりょう着実ちゃくじつ な実施じっしにより対応たいおうしていくことが必要ひつようである。 4 社会しゃかいてき考察こうさつ  (1) 差別さべつ偏見へんけん除去じょきょたいする取組とりくみ   「らい(かったい)」は、一見いっけんして外見がいけんあきらかな変化へんかきた皮膚ひふびょう特徴とくちょう身体しんたい障害しょうがいを引 きこす神経しんけいびょう特徴とくちょうなどにくわえて、とく治療ちりょうほう確立かくりつされていなかった時代じだいには、慢 せい経過けいかをたどりながら重症じゅうしょうするために、特殊とくしゅ病気びょうきとしてあつかわれ、これに遺伝いでん やまいであるとの迷信めいしん因果応報いんがおうほう思想しそうもとづき「天刑てんけいびょう」とかんがえられていたことなど種々しゅじゅの 社会しゃかいてき要因よういんくわわり、患者かんじゃ本人ほんにんはもとよりその家族かぞくたいしても、仮借かしゃくなき様々さまざま差別さべつや 偏見へんけんくわえられてきた。   こうした差別さべつ偏見へんけんは、患者かんじゃ団体だんたい長年ながねんにわたる運動うんどうその関係かんけいしゃ多大ただいなる努力どりょくを はじめ、医学いがく進歩しんぽおうじたハンセン病はんせんびょう治癒ちゆしゃ軽快けいかい退すさところ措置そちや「ハンセン病はんせんびょうただしく 理解りかいする週間しゅうかんとうつうじた啓発けいはつ普及ふきゅうとう行政ぎょうせい対応たいおうにより、一定いってい改善かいぜんはかられているも のの、依然いぜん根強ねづよ存在そんざい社会しゃかい復帰ふっきおおきなさまたげとなってちはだかってきた。こうした 根強ねづよ差別さべつ偏見へんけんみ、そしてそれらを温存おんぞんしてきたのは社会しゃかい全体ぜんたい責任せきにんとして、くに みんいちにんひとりがけとめると同時どうじに、くににおいても、従来じゅうらいからの取組とりくみくわえ、ハンセン やまいたいするただしい理解りかい促進そくしんのための積極せっきょくてき取組とりくみおこなうべきである。ただし、具体ぐたいてき な啓発けいはつ普及ふきゅう活動かつどう実施じっしたっては、たとえば一般いっぱんてき科学かがくてき知識ちしき普及ふきゅう教育きょういくなかひとつ としてげるなど一般いっぱんしていく工夫くふうもとめられる。   また、らい予防よぼうほう見直みなおしをに、くににおいては、ハンセン病はんせんびょう問題もんだい歴史れきしきざむよう ななんらかの記念きねん事業じぎょう実施じっしについて検討けんとうするとともに、ハンセン病はんせんびょう克服こくふくというくに における医学いがく成果せいかを、世界せかいハンセン病はんせんびょう克服こくふくのための国際こくさい貢献こうけんむすけていくこと をかんがえていくべきである。  (2) 疾病しっぺい呼称こしょう取扱とりあつかい   「らい(かったい)」という病名びょうめいには、ふるくからの偏見へんけんなどがつきまとってきたことから、 関係かんけいしゃつよ要望ようぼうとその努力どりょくにより、らいきん発見はっけんしゃにちなんだ「ハンセン病はんせんびょう」という 一般いっぱんてきになっているが、法律ほうりつ用語ようごおよ学術がくじゅつ用語ようごには、依然いぜんとして「らい」のかたり がもちいられている。くには、らい予防よぼうほう見直みなおしにさいし、法令ほうれいにおける「らい」というげん を「ハンセン病はんせんびょう」にあらためるべきである。また、学術がくじゅつ用語ようごについても、関係かんけい機関きかん積極せっきょく てき対応たいおうのぞまれる。  (3) 差別さべつ禁止きんし規定きてい秘密ひみつ漏洩ろうえいざい取扱とりあつかとう   現行げんこうのらい予防よぼうほうには、「らい患者かんじゃとうたいする差別さべつてき取扱とりあつかいの禁止きんしや、医師いしとうが「 らい患者かんじゃとう」であることまたはあったことという秘密ひみつらした場合ばあい罰則ばっそく規定きていされて いる。これらの規定きていは、それ自体じたい一種いっしゅ差別さべつせいゆうしており、これらの規定きてい存在そんざいそ のものがあらたな偏見へんけん差別さべつ可能かのうせいがあるとかんがえられる。また、WHOをはじ め、国際こくさいてきには、「ハンセン病はんせんびょう」にかんする特別とくべつ法律ほうりつつくることは、差別さべつ助長じょちょうするこ とになり、適当てきとうではない、とのかんがえがしめされている。   現実げんじつには、このに「らい」にたいする差別さべつ偏見へんけん根強ねづよ存在そんざいし、いま完全かんぜん払拭ふっしょくさ れたと状況じょうきょうにはないが、「ハンセン病はんせんびょう」がなん特別とくべつする必要ひつようのない普通ふつうやまい であり、「ハンセン病はんせんびょう」にかんするあらゆる取扱とりあつかいにおいて、一般いっぱん疾病しっぺい同様どうよう対応たいおう をのぞ入所にゅうしょしゃ自身じしん希望きぼうにもかんがみ、このさい、これらの規定きてい廃止はいしされるべきである とかんがえる。   ただし、現実げんじつ差別さべつ偏見へんけん解消かいしょう秘密ひみつ保持ほじとうについては、くにおよ地方ちほう公共こうきょう団体だんたいに おいて、実効じっこうある行政ぎょうせい対応たいおうおこなうことが必要ひつようである。  (4) らい予防よぼう行政ぎょうせい評価ひょうか   現行げんこうのらい予防よぼうほうは、「らいを予防よぼうするためには患者かんじゃ隔離かくり以外いがいにその方法ほうほうがない」 とのかんがかたしたに、「らい」を伝染でんせんさせるおそれのある患者かんじゃ療養りょうようしょへの入所にゅうしょ措置そちや療 やしなえしょ入所にゅうしょ患者かんじゃ外出がいしゅつ制限せいげんとう規定きていした「隔離かくり政策せいさく」を基本きほんとしたかんがかた採用さいようしたが、 そうしたかんがかたは、今日きょう医学いがくてき知見ちけんらすと、当然とうぜん見直みなおされるべきであったとげん わざるをない。そして、結果けっかとして患者かんじゃやその家族かぞく数々かずかず苦難くなん直面ちょくめんしてきたこと にたいし、くにふかおもいをいたし、こうしたことがふたたかえされることのないよう今後こんご の行政ぎょうせいんでいくべきである。   くにとしては、昭和しょうわ26ねんから軽快けいかい退すさところみとめ、昭和しょうわ32ねんには「軽快けいかい退すさところ基準きじゅん」をさく じょうし、軽快けいかい退すさところすすめ、あわせて回復かいふくしゃ社会しゃかい復帰ふっき支援しえんするための厚生こうせい指導しどう事業じぎょう就労しゅうろう 助成じょせいきん支給しきゅう事業じぎょうとう実施じっしするとともに、入所にゅうしょ外出がいしゅつとうについて弾力だんりょくてき運用うんようはかるなど その運用うんようについては、あたらしい医学いがくてき知見ちけんれた配慮はいりょもとづく行政ぎょうせい対応たいおうおこなってき た。また、患者かんじゃ給与きゅうよきん充実じゅうじつ委託いたく治療ちりょう制度せいど実施じっしとう入所にゅうしょ患者かんじゃ処遇しょぐう改善かいぜんにもつとめて きたところであり、行政ぎょうせい対応たいおうじょう一定いってい改善かいぜんられる。   このように、弾力だんりょくてき運用うんようにより、事実じじつじょう、らい予防よぼうほう現実げんじつ問題もんだいになることは殆 どなくなっていたとはえ、くには、らい予防よぼうほう根本こんぽんてき見直みなおしをおこなってこなかったた めに、げん強制きょうせい入所にゅうしょ外出がいしゅつ禁止きんし所内しょない秩序ちつじょ維持いじ義務ぎむとう規定きていさだめたらい予防よぼうほうそん ましまつづけたことはまぎれもない事実じじつであり、くにによるらい予防よぼうほう見直みなおしはおくれたとわ ざるをない。   しかし、「『らい』についての旧来きゅうらい疾病しっぺいぞう反映はんえいしたらい予防よぼうほう名実めいじつども見直みなおさ れることによってはじめて『ハンセン病はんせんびょう普通ふつう病気びょうき』となり、そして『しん人間にんげん回復かいふく が実現じつげんされる』」とかんがえる患者かんじゃせつなるおもいを真摯しんしめ、くには、らい予防よぼうほう なおしに誠実せいじつんでいくべきである。そして、そうすることが、くにとしての誠意せいいを しめすことになる、とかんがえる。 5 優生ゆうせい保護ほごほうおよびその関連かんれん法規ほうき見直みなおし   過去かこにおいて、優生ゆうせい手術しゅじゅつけたことにより、入所にゅうしょしゃ多大ただいなる身体しんたいてき精神せいしんてき苦痛くつう をけたことは遺憾いかんであり、また、優生ゆうせい保護ほごほうじょうの「らい(かったい患者かんじゃ疾患しっかん)」の取扱とりあつかい いは医学いがくてき根拠こんきょいていることから、この取扱とりあつかいについては同時どうじ見直みなおされるべきであ る。また、その関連かんれん法規ほうきについても合理ごうりせいくとかんがえられるものについては、らい 予防よぼうほう見直みなおしにさいし、あわせて整理せいりされるべきである。 6 おわりに   以上いじょう、らい予防よぼうほう見直みなおしとそれにともなもとめられるべきしょ措置そちについて、細部さいぶにわた り提言ていげんおこなってきたが、1907ねん明治めいじ40ねん)のほう制定せいてい以来いらい88ねんいま、これ までの長年ながねんにわたる患者かんじゃとその家族かぞく苦難くなん歴史れきしにかんがみれば、くに反省はんせいうえっ て、提言ていげん内容ないよう実現じつげんけて、早急そうきゅう具体ぐたいてき取組とりくみおこなうべきである。とりわけ、現行げんこう ほう規定きていされている医療いりょうおよ福祉ふくし措置そち内容ないようを、従前じゅうぜんどおり継続けいぞくさせるための法的ほうてきな 整備せいびおこなうことを条件じょうけんとしたうえで、依然いぜんとして旧来きゅうらい疾病しっぺいぞうきずったらい予防よぼうほうを 一刻いっこくはや廃止はいしし、90ねんちかくにわたる隔離かくり主体しゅたいとした「らい予防よぼう行政ぎょうせい」に名実めいじつどもに 終止符しゅうしふつことをつよもとめる。   また、同時どうじに、これをに、社会しゃかいにおいても、国民こくみんいちにんひとりがハンセン病はんせんびょうただしく 理解りかいし、ハンセン病はんせんびょう患者かんじゃ、かつてハンセン病はんせんびょうんだひとあるいはその家族かぞくふたたびいわれ なき差別さべつ偏見へんけんける悲劇ひげきかえされることのないよう、そして、これらの人々ひとびとが なんらかわることのないおな社会しゃかい一員いちいんとしてぐうせられ、人間にんげんとしての尊厳そんげんけっして きずつけられることのないよう、切望せつぼうする。   そして、最後さいごに、かえしになるが、げん療養りょうようしょざいえんしている全国ぜんこくの6000めいちか い入所にゅうしょしゃ生活せいかつ医療いりょう福祉ふくしおびやかされることがあってはならないことを、あらためて強調きょうちょう しておく。   わせさき 厚生省こうせいしょう 保健ほけん医療いりょうきょくエイズ結核けっかく感染かんせんしょう        担 とう なが うち2368) せき たにうち2347)        でん はなし (だい)3503-1711 (ただし)3591-3060