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八代尚弘『日本的雇用慣行の経済学――労働市場の流動化と日本経済』
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日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう経済けいざいがく――労働ろうどう市場いちば流動りゅうどう日本にっぽん経済けいざい

八代やしろ 尚弘なおひろ 19970124 日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃ,,264p. 1854



八代やしろ 尚弘なおひろ 19970124 『日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう経済けいざいがく――労働ろうどう市場いちば流動りゅうどう日本にっぽん経済けいざい』,日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃ,264p. 1854 ・このほん紹介しょうかい執筆しっぴつ櫛田くした英司えいじ立命館大学りつめいかんだいがく政策せいさく科学かがく回生かいせい


序章じょしょう 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう日本にっぽん経済けいざい(p3〜11)

日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうとは、一般いっぱん長期ちょうきてき雇用こよう年功序列ねんこうじょれつ賃金ちんぎん体系たいけい、および企業きぎょうない組合くみあいなどの雇用こよう賃金ちんぎん形態けいたいとして理解りかいされている」(P3、L1〜2)
要旨ようし)1990年代ねんだいはいって、日本にっぽん経済けいざい環境かんきょうおおきく変化へんかした。そのなか日本にっぽん企業きぎょう従来じゅうらいのやりかた見直みなおされるようになってきた。この背景はいけいには、人口じんこう少子しょうし高齢こうれい企業きぎょう経済けいざい活動かつどう国際こくさい社会しゃかい経済けいざいてき規制きせい緩和かんわなどの「みっつのK」があげられると著者ちょしゃう。これまで成功せいこうおさめてきたシステムは、社会しゃかい経済けいざい環境かんきょう変化へんかなかでの対応たいおうおくれ、おおきな調整ちょうせいコストをいられる場合ばあいおおい。その調整ちょうせい円滑えんかつすすめていくにはどのような政策せいさく必要ひつようとするか検討けんとうするのが本書ほんしょ課題かだいであるとしている。

1 日本にっぽん経済けいざい環境かんきょう変化へんか(p4〜p6)

要旨ようし)1992ねん以降いこう日本にっぽん経済けいざい停滞ていたい長期ちょうきは、たんなる景気けいき循環じゅんかんではなく、中期ちゅうきてき経済けいざい成長せいちょう屈折くっせつをともなったものである可能かのうせいおおきい。日本にっぽん経済けいざいの「成熟せいじゅく」が、中期ちゅうきてき経済けいざい成長せいちょう減速げんそくおおきな要因よういんかんがえることもできる。しかし、中期ちゅうきてき経済けいざい成長せいちょう屈折くっせつはバブル景気けいきなかでは充分じゅうぶん認識にんしきされなかった。つまり、「戦後せんご最悪さいあくきょう」は、構造こうぞう変化へんか景気けいき循環じゅんかんとがかさなったふくあい要因よういんもとづくものといえる。

2 日本にっぽん経済けいざい構造こうぞう改革かいかく労働ろうどう市場いちば(p6〜p7)

要旨ようし) おおくの日本にっぽん企業きぎょうが、雇用こよう制度せいど政策せいさくあらため、よりひく成長せいちょうのもとでも安定あんていした経営けいえい維持いじできるような体制たいせいへのリストラをすすめている。今後こんご企業きぎょう活動かつどう国際こくさいおおきくすすむことから、おおくの企業きぎょう世界せかいてき観点かんてんから投資とうし生産せいさん活動かつどうさい配置はいちかんがえるであろう。また、労働ろうどう市場いちば企業きぎょう家族かぞくとをむす重要じゅうよう接点せってんである。日本にっぽん企業きぎょう構造こうぞう改革かいかく成功せいこうするかどうかのカギは、市場いちば機能きのう最大限さいだいげんかす規制きせい緩和かんわ進展しんてんであり、それは労働ろうどう市場いちば重要じゅうようになる。市場いちばにおける労働ろうどうりょく需給じゅきゅう調整ちょうせい効率こうりつてきおこなうためには、社会しゃかいてき規制きせい大幅おおはば緩和かんわがより重要じゅうようになる。つまり、家族かぞく社会しゃかい保障ほしょうなど労働ろうどう市場いちば密接みっせつ関係かんけいにある分野ぶんや政策せいさくさい検討けんとう必要ひつようになる。

3 本書ほんしょのねらいと構成こうせい(p7〜11)

要旨ようし) だいしょうでは、国際こくさい比較ひかく視点してんから米国べいこく欧州おうしゅうくらべた日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう問題もんだい検討けんとうする。これまで日本にっぽん失業しつぎょうりつ平均へいきんてきにもひくく、またそれが景気けいき変動へんどうなか相対そうたいてき安定あんていしてきたのは何故なぜか、こうした雇用こよう安定あんていしゅたる要因よういんとして、企業きぎょうない訓練くんれんをもっとも効率こうりつてきおこなうシステムとしての日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう国際こくさい比較ひかく観点かんてんから検討けんとうする。
    だいしょうでは、これまでの日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうささえてきたメカニズムについてかんがえる。
    だいしょうでは、欧米おうべいくらべて日本にっぽん雇用こようしゃがこれまではらってきた長時間ちょうじかん労働ろうどう頻繁ひんぱん転勤てんきんにともなう家族かぞく負担ふたんなどの社会しゃかいてきコストと比較ひかく考量こうりょうする。
    だいしょうでは、日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう実態じったいについて、短期たんきてき景気けいき循環じゅんかん過程かていしょうじた雇用こよう保蔵やすぞうなどの傾向けいこうについて分析ぶんせきする。
    だいしょうでは、少子しょうし高齢こうれい進展しんてん労働ろうどう供給きょうきゅう減少げんしょうという日本にっぽん経済けいざいがこれまで経験けいけんしたことのない大幅おおはば環境かんきょう変化へんかのなかで、長期ちょうきてき経済けいざい成長せいちょう減速げんそく対応たいおうして、企業きぎょう固定こていてき雇用こようしゃ比率ひりつ低下ていかさせ、流動的りゅうどうてき雇用こようしゃ比率ひりつ直接ちょくせつ間接かんせつてきげる「雇用こようのポートフォリオ・シフト」モデルを提示ていじし、その実証じっしょう分析ぶんせきおこなう。
    だいしょうでは、経済けいざい活動かつどう国際こくさい観点かんてんから、日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう問題もんだい検討けんとうする。
    だいしょうでは、産業さんぎょう労働ろうどう市場いちば問題もんだいはなれ、ひろ国民こくみん生活せいかつにおける雇用こよう流動りゅうどう意味いみかんがえる。
    だいしょうでは、雇用こよう政策せいさく社会しゃかい政策せいさく全般ぜんぱんについての問題もんだいげる。
    だいしょうでは、公務員こうむいん制度せいど改革かいかくについてろんじる。「公務員こうむいん一括いっかつ採用さいよう」には合理ごうりてき根拠こんきょがないことを指摘してきする。

だいしょう 国際こくさいする雇用こよう問題もんだい(p13〜32)

要旨ようし) 財政ざいせい赤字あかじ削減さくげん失業しつぎょうしゃ増加ぞうかとのトレード・オフ(二律背反にりつはいはん)の関係かんけい改善かいぜんすることが、各国かっこく主要しゅよう関心事かんしんじとなっている。
OECD諸国しょこくだけについてみても、その平均へいきん失業しつぎょうりつは、1970ねんの3.4%から95ねんの7.6%までたかまっているが、日本にっぽんにおいては3%だいひく水準すいじゅんにとどまる失業しつぎょうりつである。(ちゅう当時とうじはなし)そして、その背後はいごにある日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうおおきな関心かんしん世界せかいからせられている。以下いかでは、欧州おうしゅう米国べいこくくらべた日本にっぽん雇用こよう問題もんだい特徴とくちょうと、先進せんしんこく共通きょうつうした国際こくさい競争きょうそう問題もんだいについて検討けんとうする。

1 先進せんしんこく雇用こよう問題もんだい(p14〜22)

要旨ようし)  欧州おうしゅうでは量的りょうてきだけでなく質的しつてきにも雇用こよう機会きかい悪化あっかすすんできた。欧州おうしゅう構造こうぞうてき失業しつぎょう問題もんだい背景はいけいには、政府せいふ労働ろうどう市場いちばへのつよ介入かいにゅうおこなっていることがある。欧州おうしゅうでは、失業しつぎょうちゅう生活せいかつ保障ほしょう政府せいふ基本きほんてき責任せきにんとする思想しそうから、まった就業しゅうぎょう経験けいけんをもたないまま、失業しつぎょう給付きゅうふ依存いぞんして生活せいかつし、就業しゅうぎょう意欲いよく低減ていげんする結果けっかむすびついているめんもある。また、政府せいふ企業きぎょうたいして、失業しつぎょう防止ぼうしのためにさまざまなかたちでの解雇かいこ規制きせいもうけていることも、ぎゃく企業きぎょう新規しんき雇用こよう需要じゅよう抑制よくせいしている。
     さまざまな失業しつぎょう対策たいさくが、結果けっかてきに「労働ろうどう市場いちば硬直こうちょくせい」をたかめ、たか失業しつぎょうりつをもたらしているという悪循環あくじゅんかんがみられる。欧州おうしゅうは「雇用こようなき成長せいちょう」のかたである。
     米国べいこく失業しつぎょうりつ日本にっぽんよりはたかいものの、欧州おうしゅう諸国しょこく半分はんぶんとまだひく水準すいじゅんにある。また、欧州おうしゅうくらべて長期ちょうき失業しつぎょうしゃ比率ひりつひくいこともひとつの特徴とくちょうである。
     米国べいこく雇用こようパターンのおおきな特徴とくちょうとしては、労働ろうどう市場いちば流動りゅうどうせいたかく、その景気けいき循環じゅんかんつうじた調整ちょうせい機能きのうがよくはたらいている。米国べいこく雇用こよう機会きかい量的りょうてきにはえるものの、質的しつてきにはかならずしも改善かいぜんされない「てい賃金ちんぎん就業しゅうぎょう」である。
     だいかい雇用こようサミットでは、「だいさん」がおおきな目標もくひょうとなった。これは、世界せかいてき経済けいざい構造こうぞう変化へんかを、保護ほご主義しゅぎによってさまたげるのではなく、世界せかい貿易ぼうえき直接ちょくせつ投資とうし拡大かくだい原則げんそくとする市場いちばメカニズムを活用かつようし、若年じゃくねん熟練じゅくれん労働ろうどうむような政策せいさくのことである。

2 日本にっぽんてき雇用こようシステムの評価ひょうか(p23〜27)

要旨ようし) 日本にっぽん長期ちょうきてきにみた労働ろうどう生産せいさんせい上昇じょうしょうりつたかさと景気けいき循環じゅんかんつうじた失業しつぎょうりつ低位ていい安定あんてい背景はいけいには、いずれも企業きぎょうによる企業きぎょうない訓練くんれん(OJT)のための投資とうしがそのおおきな要因よういんとしてかんがえられる。日本にっぽん企業きぎょうのOJT重視じゅうし戦略せんりゃくは、欧州おうしゅうでのおおきな問題もんだいとなっている若年じゃくねん失業しつぎょう増加ぞうかふせぐメカニズムともなっていた。良好りょうこう雇用こよう機会きかい長期ちょうきてき拡大かくだいさせるためのカギとなるものは企業きぎょうないでの熟練じゅくれん形成けいせいであるといえる。
    日本にっぽん雇用こようシステムは、企業きぎょう内部ないぶ労働ろうどう市場いちばでの労働ろうどうりょく流動りゅうどうせいたかめることで、企業きぎょう企業きぎょうグループを単位たんいとした雇用こよう固定こていせいはか方式ほうしきといえる。
    いちこく雇用こようシステムは他国たこくして「絶対ぜったい優位ゆうい」にあるというよりも、ことなる環境かんきょうのもとでの「比較ひかく優位ゆうい」にあるといえる。
   世界せかい貿易ぼうえき資本しほん移動いどうとの一層いっそう拡大かくだい必要ひつようである.
 
3 世界せかいてきだい競争きょうそうのなかでの雇用こよう問題もんだい(p27〜32)

要旨ようし) 「1990年代ねんだい先進せんしんこく失業しつぎょう問題もんだいおおきな特徴とくちょうは、雇用こよう機会きかいをめぐる世界せかいてき競争きょうそうたかまりを反映はんえいしている。」
    「だい1に、1980年代ねんだい半期はんき以降いこう、NIESやASEAN、および中国ちゅうごくなどのアジア経済けいざい急激きゅうげき台頭たいとうから、世界せかい工業こうぎょうひん市場いちばにおける供給きょうきゅう大幅おおはば増加ぞうかしたことである。」
    「だい2に、かっては世界せかい先進せんしんこく二分にぶんしていた東西とうざい垣根かきねくずれ、世界せかい自由じゆう経済けいざい市場いちば規模きぼ一斉いっせい拡大かくだいした」である。
    「だい3に、欧州おうしゅう北米ほくべいにおける地域ちいき経済けいざい統合とうごう進展しんてんは、当該とうがい地域ちいき内部ないぶでの産業さんぎょうあいだ競争きょうそう拡大かくだいさせている」ということである。
    かっては国際こくさいあいだ競争きょうそうつよまりは、発展はってん途上とじょうこくにとって先進せんしんこくからの「しん植民しょくみん主義しゅぎ」の脅威きょういであったが、今日きょうでは、ぎゃく先進せんしんこく発展はってん途上とじょうこくからの輸出ゆしゅつ攻勢こうせいにおびえているという「皮肉ひにく逆転ぎゃくてん」となっている。
    この背景はいけいには、「生産せいさん要素ようそ価格かかく均等きんとう定理ていり」がはたらいている。
    世界せかいてきだい競争きょうそう対抗たいこうして先進せんしんこく生活せいかつ水準すいじゅん持続じぞくてき向上こうじょう維持いじするためには、そのこう賃金ちんぎん見合みあった労働ろうどう生産せいさんせいたかさで発展はってん途上とじょうこく対抗たいこうする以外いがい方法ほうほうはない。いちこく経済けいざい全体ぜんたいで、生産せいさんせい相対そうたいてきひく部門ぶもんからたか部門ぶもんへと、資本しほん労働ろうどうりょく移動いどうさせることによって、マクロベースでの労働ろうどう生産せいさんせい向上こうじょうはかることも重要じゅうようとなる。国内こくないにおける労働ろうどうりょくさい分配ぶんぱいにより、日本にっぽん産業さんぎょう平均へいきんてき生産せいさんせいたかめる余地よちはまだ十分じゅうぶんにあるといえる。

だいしょう 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう合理ごうりせい(p33〜p63)

要旨ようし) 欧米おうべい諸国しょこく比較ひかくした日本にっぽん雇用こよう安定あんてい背景はいけいには、たか経済けいざい成長せいちょう持続じぞくのもとで労働ろうどう需要じゅよう長期ちょうきてき拡大かくだいしてきたというマクロ経済けいざいのパフォーマンスのさがあることはうたがいない。またさらに労働ろうどう市場いちばにおける制度せいど慣行かんこうおおきな役割やくわりたしている。
    日本にっぽん労働ろうどう生産せいさんせい上昇じょうしょうりつたか要因よういんとしては、@日本にっぽん企業きぎょう設備せつび投資とうし比率ひりつたかく、それだけ労働ろうどうしゃ資本しほん装備そうびりつ傾向けいこうてきたかめてきたこと、A技術ぎじゅつ革新かくしんのスピードがはやく、資本しほんりょうだけでなくそのしつ生産せいさんせい)もたかいこと、B産業さんぎょう構造こうぞう変化へんかはやく、労働ろうどう資本しほんがより効率こうりつてき分野ぶんやへと移動いどうしてきたこと、などがあげられる。

1 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう経済けいざいてき意味いみ(p35〜36)
要旨ようし) 日本にっぽん欧米おうべい諸国しょこくとの雇用こよう慣行かんこうちがいは、質的しつてきちがいよりも、それがどの程度ていどまで企業きぎょうあいだ普及ふきゅうしているかの量的りょうてきちがいにぎない。
    労働ろうどう市場いちばにおける雇用こようシステムのひとつの理念りねんがたとして、日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう幅広はばひろれられているといえよう。
    
2 長期ちょうきてき雇用こよう慣行かんこう(p36〜44)

要旨ようし) 日本にっぽんだい企業きぎょうでは、原則げんそくとして新規しんき学卒がくそつしゃをその卒業そつぎょう同時どうじ採用さいようし、定年ていねんまでの継続けいぞくてき雇用こよう保障ほしょうする長期ちょうきてき雇用こよう慣行かんこう一般いっぱんてきにみられる。こうした雇用こよう慣行かんこうは「終身しゅうしん雇用こよう」としょうされる。しかし、今日きょう日本にっぽんのように定年ていねんさい就職しゅうしょく常態じょうたいとなっているような状況じょうきょうのもとでは、「終身しゅうしん雇用こよう」はもはや適切てきせつ表現ひょうげんではない。これは、定年ていねんまでの雇用こよう保障ほしょうするというめんとともに、定年ていねん年齢ねんれいになれば強制きょうせいてき解雇かいこするというふたつの側面そくめんをもっている。

3 年功ねんこう賃金ちんぎん制度せいど(p44〜55)

要旨ようし) 長期ちょうきてき雇用こよう慣行かんこうたいをなすものが、年齢ねんれいおうじた昇進しょうしんシステムと、それに対応たいおうした賃金ちんぎん体系たいけいである。
    年功ねんこう賃金ちんぎん制度せいどを、雇用こようしゃ人的じんてき資本しほんりょう対応たいおうした賃金ちんぎん増加ぞうかと、企業きぎょうによる教育きょういく投資とうし保全ほぜんし、雇用こようしゃによる「げ」をふせぐためのシステムとして理解りかいすれば、年齢ねんれい賃金ちんぎんのプロファイルは、企業きぎょうないでの熟練じゅくれん形成けいせいりょう比例ひれいしてたかまることが用意ようい説明せつめいできる。
    年功ねんこう賃金ちんぎん制度せいどのひとつのおおきな意味いみは、「生涯しょうがいつうじた賃金ちんぎん後払あとばらい」である。
    年功ねんこう賃金ちんぎんせいによる雇用こようしゃ企業きぎょうへの定着ていちゃくをさらに補強ほきょうするものとして退職たいしょくきんがある。

4 企業きぎょうない労働ろうどう組合くみあい(p55〜58)

要旨ようし) 労働ろうどう組合くみあい基本きほんてき機能きのうは、労働ろうどう供給きょうきゅう制限せいげんつうじて、雇用こようしゃ賃金ちんぎん労働ろうどう条件じょうけん改善かいぜんはかることである。
   
5 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうのインセンティブ・メカニズム(p59〜63)
 
要旨ようし) 日本にっぽんてき雇用こようシステムを構成こうせいするさなざまな労働ろうどう制度せいど慣行かんこうは、それぞれが経済けいざいてき合理ごうりせいをそなえている。
    一見いっけんすれば安楽あんらく日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうのもとでも、じつきびしい競争きょうそうメカニズムがはたらいているのである。

だいしょう 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう社会しゃかいてきコスト(p65〜89)

要旨ようし) 雇用こようしゃ負担ふたんする日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうのさまざまなコストめんについて考察こうさつし、その効率こうりつせい公平こうへいせいのトレードオフ関係かんけい注目ちゅうもくする。

1 「おそ昇進しょうしん」のコスト・べネフィット(p65〜68)

要旨ようし) 「おそ昇進しょうしん」をつうじて熟練じゅくれん雇用こようしゃ大量たいりょう形成けいせいする日本にっぽん雇用こようシステムの効率こうりつせいたかさを、そのたて半面はんめんである社会しゃかいてきコストのおおきさと比較ひかく考量こうりょうして評価ひょうかすること必要ひつよう

2 労働ろうどう時間じかんながさ(p69〜74)

要旨ようし) 日本にっぽん雇用こよう慣行かんこうのいくつかの問題もんだいてんは、週休しゅうきゅうにちせい充分じゅうぶん普及ふきゅうしていないこと。また、週休しゅうきゅう以外いがい休日きゅうじつおお反面はんめん欠勤けっきん年次ねんじ有給ゆうきゅう休暇きゅうか日数にっすう消化しょうかりつ)がすくない。その原因げんいんのひとつは"集団しゅうだん主義しゅぎ"にある。

3 頻繁ひんぱん配置はいち転換てんかん転勤てんきん(p74〜76)

要旨ようし) 日本にっぽん労働ろうどうしゃ長期ちょうき雇用こよう保障ほしょう見返みかえりに、個々ここ職務しょくむについての安定あんていせい相対そうたいてき犠牲ぎせいにしている。日本にっぽん仕事しごとじょう理由りゆうによる家族かぞく別居べっきょりつたかい。しかも出世しゅっせ約束やくそくされていない広範囲こうはんいそうにまでひろがっている。

4 男女だんじょあいだ賃金ちんぎん格差かくさ(p76〜82)

要旨ようし) 日本にっぽん男女だんじょ賃金ちんぎん格差かくさがみられる要因よういんのひちつとして「統計とうけいてき差別さべつ」がある。また日本にっぽん常用じょうようとパートの賃金ちんぎん格差かくさおおきい。そのしゅたる要因よういん日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうもとめられる。

5 労働ろうどう組合くみあい役割やくわり(p83〜89)

要旨ようし) 日本にっぽんおける労働ろうどう組合くみあい役割やくわり限界げんかいは、その過去かこ成功せいこう結果けっかなのである。

だいしょう 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう変化へんか(p91〜115)

要旨ようし) 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう実態じったいについて1980年代ねんだい後半こうはんから雇用こよう賃金ちんぎんめんにおいて一見いっけんして相反あいはんするうごきがみられている。それはどのような将来しょうらい変化へんか示唆しさするのか。

1 景気けいき後退こうたいにおける雇用こよう調整ちょうせい実態じったい(p92〜101)

要旨ようし) 日本にっぽん雇用こよう慣行かんこう特徴とくちょう景気けいき後退こうたいにもっともよくあらわれる。日本にっぽん失業しつぎょうりつ背景はいけいには@人口じんこう供給きょうきゅう要因よういんA労働ろうどう時間じかん調整ちょうせいメカニズムB企業きぎょうない雇用こよう保蔵やすぞうC就業しゅうぎょう意欲いよく喪失そうしつ効果こうかなどのしょ要因よういんがある。
   従来じゅうらいたか成長せいちょう時代じだいには日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう日本にっぽん労働ろうどう市場いちば安定あんていさせるようにはたらいていたが、人口じんこう高齢こうれい経済けいざい活動かつどう国際こくさいのなかで経済けいざい成長せいちょう中期ちゅうきてき減速げんそくしていくもとでは、ぎゃく不安定ふあんていなメカニズムへと転化てんかする。

2 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう変化へんかきざし(p101〜108)

要旨ようし) 1995ねん以降いこう日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう変化へんか密接みっせつ関連かんれんしたいくつかの主要しゅよう変化へんかしょうじている。@だい企業きぎょうでの雇用こよう減少げんしょう中小ちゅうしょう企業きぎょうでの拡大かくだいAホワイトカラー、とくに管理かんりしょくそう重点じゅうてんいた雇用こよう調整ちょうせい顕著けんちょられるB通年つうねん採用さいよう方式ほうしきへの変化へんかきざしがはじめている。

3 賃金ちんぎん構造こうぞう変化へんか(p108〜115)

要旨ようし) 賃金ちんぎんプロファイルが変化へんかしている。そのひとつの要因よういんとして「要素ようそ価格かかく均等きんとう」のちから現実げんじつはたらいている可能かのうせいがある。
    また年功ねんこう賃金ちんぎん制度せいど改革かいかく一環いっかんとして、年俸ねんぽうせい導入どうにゅうする企業きぎょう増加ぞうかしているが、現行げんこうでは管理かんりしょく中心ちゅうしんとした中高年ちゅうこうねんそうおも適用てきよう対象たいしょうである。それは相対そうたいてきたか賃金ちんぎんげというめんもあり、かならずしもその本来ほんらい趣旨しゅし沿わない場合ばあいおおい。

だいしょう 高齢こうれい日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう行方ゆくえ(p117〜141)

要旨ようし) 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうたん労働ろうどう市場いちばでの慣行かんこうとしてではなく、ひろ日本にっぽん企業きぎょうシステムの一部いちぶとしてかんがえる「比較ひかく制度せいど分析ぶんせき」の見方みかた最近さいきん有力ゆうりょくとなっている。

1 日本にっぽんてき雇用こようシステムの制度せいどてき補完ほかんせい(p118〜122)

要旨ようし) 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうは、日本にっぽん企業きぎょうシステムとも「制度せいどてき補完ほかん」の関係かんけいゆうしていることが、長期ちょうきてき安定あんていせい維持いじしてきたことのひとつの要因よういんかんがえられる。しかし、反論はんろん可能かのうである。

2 高齢こうれい労働ろうどう市場いちば(p122〜130)

要旨ようし) 今後こんご、21世紀せいきけて、国民こくみん生活せいかつ長期ちょうきてきにもっともおおきな影響えいきょうおよぼす要因よういんは、高齢こうれい進展しんてんである。日本にっぽん労働ろうどう市場いちばでは、@労働ろうどう供給きょうきゅう減少げんしょう、A女性じょせい雇用こようしゃ比率ひりつたかまり、B労働ろうどうしゃこう年齢ねんれい、などの現象げんしょうしょうじる。

3 国際こくさい影響えいきょう(p130〜131)

要旨ようし) 労働ろうどう需要じゅよう先行さきゆきについては、見解けんかいおおきくかれる。

4 人的じんてき資本しほんへの最適さいてき投資とうし水準すいじゅん(p132〜141)

要旨ようし) 企業きぎょうが「企業きぎょう特殊とくしゅてき熟練じゅくれん」の対象たいしょうとなる新卒しんそつしゃ採用さいようすることは、人的じんてき資本しほんたいする「投資とうし」とかんがえ、市場いちば容易ようい調達ちょうたつされる「一般いっぱんてき熟練じゅくれん」をもつもの期間きかんさだめて雇用こようすることはリースを活用かつようすることにちか行動こうどうである。このようにかんがえると「雇用こようのポートフォリオ選択せんたく」としてとらえることができる。

だいしょう産業さんぎょう空洞くうどう」と日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう(p143〜165)

要旨ようし) 企業きぎょう労働ろうどうりょく需要じゅよう長期ちょうきてき減少げんしょうしょうじるとすれば、そのひとつのおおきな要因よういんが、「産業さんぎょう空洞くうどう」の現象げんしょうである。

1 海外かいがい直接ちょくせつ投資とうし海外かいがい生産せいさん拡大かくだい(p144〜148)

要旨ようし) 直接ちょくせつ投資とうし急増きゅうぞうしたこと直接的ちょくせつてき要因よういんは@国内こくない賃金ちんぎん上昇じょうしょうA海外かいがいでの保護ほご主義しゅぎける目的もくてきでの直接ちょくせつ投資とうしB国内こくない不動産ふどうさん価格かかく高騰こうとうにともなう内外ないがい資産しさん価格かかく格差かくさ

2 産業さんぎょう空洞くうどう国際こくさい分業ぶんぎょうちがい(p149〜157)

要旨ようし) 労働ろうどう集約しゅうやくてき産業さんぎょう雇用こよう機会きかいが、賃金ちんぎん水準すいじゅんひく発展はってん途上とじょうこく移動いどうするのは、通常つうじょう国際こくさい分業ぶんぎょうのプロセスであるが、ハイテク産業さんぎょうまでもが海外かいがい移転いてんし、良好りょうこう雇用こよう機会きかいうしなわせるのが「空洞くうどう」である。

3 海外かいがい投資とうし国内こくない雇用こよう(p158〜160)

要旨ようし) 「空洞くうどう対策たいさくとして、なに特別とくべつ政策せいさく考慮こうりょするよりも、適切てきせつ需要じゅよう管理かんり政策せいさくによって、国内こくない産業さんぎょう潜在せんざい成長せいちょうりょくかすとともに、市場いちばメカニズムを活用かつようした労働ろうどうりょく流動りゅうどう政策せいさくといったオードソックスな経済けいざい雇用こよう政策せいさく延長線えんちょうせんじょう政策せいさくかんがえることのほうがのぞましい。

4 労働ろうどう市場いちば効率こうりつつうじた空洞くうどう克服こくふく(p161〜163)

要旨ようし) 産業さんぎょう空洞くうどう防止ぼうしのためには、産業さんぎょう企業きぎょうあいだ貴重きちょう労働ろうどうりょく適切てきせつ配分はいぶんするための労働ろうどう市場いちば効率こうりつと、そのために市場いちばにおける労働ろうどうりょく効率こうりつてき配分はいぶんさまたげるような制度せいど改革かいかく必要ひつようとなる。

5 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう産業さんぎょう構造こうぞう変化へんか(p163〜165)

要旨ようし) これまでの労働ろうどう市場いちば政策せいさくが、日本にっぽん企業きぎょう固定こていてき雇用こよう慣行かんこう支持しじする方向ほうこうおこなわれてきた。こうした政策せいさく見直みなおし、労働ろうどう市場いちば需給じゅきゅう中立ちゅうりつてき雇用こよう政策せいさく必要ひつようとされる。それが産業さんぎょうあいだ円滑えんかつ労働ろうどう移動いどうつうじて、産業さんぎょう空洞くうどうふせぎ、国際こくさい分業ぶんぎょう促進そくしんするためのおおきなカギとなろう。

だいしょう 雇用こよう流動りゅうどう国民こくみん生活せいかつ(p167〜195)

要旨ようし) 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう変化へんかすることは、国民こくみん生活せいかつ全体ぜんたいにとってみれば、やはりマイナスめんほうおおきいのではないかと懸念けねんするきもおおい。

1 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう家族かぞく(p168〜174)

要旨ようし) 日本にっぽん家族かぞく関係かんけいおおきな特徴とくちょうのひとつは、その安定あんていせいにある。離婚りこんりつ最低さいてい水準すいじゅんであるが、今後こんご経済けいざい環境かんきょう変化へんかによってそれが離婚りこんりつたかまりにむすびつく可能かのうせいおおきい。そのきっかけは女性じょせい雇用こようしゃとしての就業しゅうぎょうりつたかまりである。

2 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう少子しょうし(p174〜184)

要旨ようし) 少子しょうしたいしては、多様たよう家族かぞく形態けいたい社会しゃかいてき容認ようにんするしかないであろう。個々ここ形態けいたいにとらわれず、家族かぞく個人こじん子育こそだてに直接ちょくせつ支援しえんする子供こども社会しゃかいてき扶養ふよう概念がいねん確立かくりつする必要ひつようがある。

3 企業きぎょう学歴がくれき主義しゅぎ(p185〜192)

要旨ようし) 日本にっぽんでは家族かぞくによる過剰かじょう教育きょういく投資とうしおおきな社会しゃかい問題もんだいになっている。日本にっぽん場合ばあいに、学歴がくれき主義しゅぎ弊害へいがいがとくにおおきなこと要因よういんとしては、@だい企業きぎょうとその企業きぎょうとのあいだ賃金ちんぎん労働ろうどう条件じょうけんおおきな格差かくさ存在そんざいすること、A長期ちょうき雇用こよう企業きぎょうない訓練くんれん重視じゅうし慣行かんこうのもとで中途ちゅうと採用さいよう機会きかい限定げんていされていること、B大学だいがく教育きょういく段階だんかい競争きょうそうメカニズムがはたらかず、学歴がくれき獲得かくとくする機会きかい大学だいがく入試にゅうし段階だんかい事実じじつじょう限定げんていされてしまうことから、その準備じゅんびのため、初等しょとう中等ちゅうとう教育きょういく体系たいけいおおきくゆがめられること、などがある。

4 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう変化へんか(p192〜195)

要旨ようし) 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう家族かぞくとの関係かんけいは、今後こんご急速きゅうそく変化へんかする可能かのうせいおおきい。そのしゅたる要因よういんは、労働ろうどう市場いちばにおける高齢こうれい女性じょせい、および国際こくさい一層いっそう進展しんてんである。

だいしょう 高齢こうれいしゃ雇用こよう政策せいさくさい検討けんとう(p197〜227)

要旨ようし) はたら意思いし能力のうりょくをもつ年齢ねんれいそうをできるかぎり労働ろうどう市場いちばにとどめることが、高齢こうれい社会しゃかいへの基本きほんてき対応たいおうとなる。しかし、60さい以上いじょう高齢こうれいしゃたいする企業きぎょう雇用こよう需要じゅようすくない。これは日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこうから派生はせいする問題もんだいである。

1 ろくさいだい前半ぜんはん就業しゅうぎょう問題もんだい(p199〜206)

要旨ようし) 本来ほんらい一定いってい年齢ねんれいえると雇用こよう需要じゅよう大幅おおはば減少げんしょうするという、特殊とくしゅ立場たちばかれているのは、男性だんせいの60〜64さいそうよりも、企業きぎょう内部ないぶ労働ろうどう市場いちばぞくしている50さいだい以前いぜんそうであるといえる。

2 雇用こよう安定あんてい政策せいさく問題もんだいてん(p206〜212)

要旨ようし) 日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう大前提だいぜんていとして拡大かくだい一途いっとをたどってきた雇用こよう保険ほけん中心ちゅうしんとした、これまでの高齢こうれいしゃ雇用こよう安定あんてい政策せいさく見直みなおしが必要ひつようとなっている。

3 雇用こよう年金ねんきんのトレードオフ(p212〜217)

要旨ようし) 高齢こうれいしゃ雇用こよう公的こうてき年金ねんきんとの関係かんけいは、本来ほんらい、どちらかでなければならないといった二者択一にしゃたくいつてき関係かんけいではなく、個々ここ労働ろうどうしゃ自由じゆう選択せんたく結果けっかとしてまることがのぞましい。一方いっぽう高齢こうれいしゃ就業しゅうぎょう意欲いよくそこねないような制度せいどにすれば、他方たほうで、公的こうてき年金ねんきん財政ざいせい収支しゅうし悪化あっかするというように、両者りょうしゃあいだにはたがいにトレードオフの関係かんけいがある。この問題もんだい対応たいおうするためには、とくに金額きんがくおおきな報酬ほうしゅう比例ひれい年金ねんきん改革かいかく必要ひつようとなる。

4 雇用こよう流動りゅうどう対応たいおうした政策せいさく課題かだい(p217〜227)

要旨ようし) 長寿ちょうじゅ進展しんてんのなかで、公的こうてき年金ねんきん財政ざいせい健全けんぜんせい維持いじするためには、すくなくとも60さいだい前半ぜんはん高齢こうれいしゃ生活せいかつ安定あんてい基礎きそ雇用こようかれることが肝要かんようである。そのためには、高齢こうれいしゃにとっての良好りょうこう就業しゅうぎょう機会きかい確保かくほとそれを支援しえんする労働ろうどう政策せいさく前提ぜんていとなる。

だいしょう 雇用こよう流動りゅうどう公務員こうむいん制度せいど改革かいかく(p229〜250)

要旨ようし) 公務員こうむいん人事じんじ管理かんり方式ほうしきは、日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう典型てんけいでもあり、民間みんかんだい企業きぎょう雇用こよう慣行かんこうおおくの類似るいじせいをもっている。このため、労働ろうどう市場いちば全体ぜんたい変化へんかわせて検討けんとうする必要ひつようがある。

1 日本にっぽんおける政治せいじ行政ぎょうせいとの役割やくわり分担ぶんたん(p230〜234)

要旨ようし) 日本にっぽんにおける官僚かんりょう行動こうどう特徴とくちょうは@「法律ほうりつもとづかない規制きせい」がひろがっている。A国民こくみん各層かくそう私的してき利益りえき官僚かんりょうシステムのなか代表だいひょうさせる「多元たげん主義しゅぎ」。Bドラスティックな改革かいかくこのまない。

2 省庁しょうちょうあいだの「縄張なわばあらそい」の要因よういん(p234〜240)

要旨ようし) タテ割たてわりでもヨコりでも、かく省庁しょうちょう組織そしき分立ぶんりつしているので、業務ぎょうむ分野ぶんや調整ちょうせいけることができない。その意味いみかく省庁しょうちょう縄張なわばあらそいを抑制よくせいするのではなく、それを調整ちょうせいするメカニズムが必要ひつようである。

3 行政ぎょうせいシステム改革かいかく方向ほうこう(p241〜243)

要旨ようし) 官僚かんりょうあいだでの競争きょうそうメカニズムをたん省庁しょうちょう統合とうごうなどによって抑制よくせいするのではなく、むしろそれを積極せっきょくてき活用かつようする方向ほうこうでの制度せいど改革かいかくのぞましい。

4 公務員こうむいん制度せいど改革かいかく方向ほうこう(p244〜250)

要旨ようし) 公共こうきょう部門ぶもん民間みんかん労働ろうどう市場いちばかべひくくし、同一どういつ専門せんもんてき職種しょくしゅあいだで、官民かんみん自由じゆう人事じんじ交流こうりゅう活発かっぱつすることが、雇用こよう流動りゅうどう沿った本来ほんらい公務員こうむいん制度せいど改革かいかく方向ほうこうとなる。

終章しゅうしょう (p251〜254)

要旨ようし) 本書ほんしょにおいて主張しゅちょうしてきたことは、日本にっぽんてき雇用こよう慣行かんこう経済けいざい合理ごうりてきなシステムであればこそ、人口じんこう高齢こうれい経済けいざい活動かつどう国際こくさい、およびそれにともなう経済けいざい成長せいちょう減速げんそくという日本にっぽん経済けいざい環境かんきょう長期ちょうきてき変化へんかおうじて、べつ合理ごうりてきなシステムに変化へんかしていくというである。


わたしのコメント』
 それぞれのデータや年代ねんだいすこふるいとかんじる部分ぶぶん多々たたあったが、いま企業きぎょう省庁しょうちょうにもまだまだてはまる内容ないようだとおもう。戦後せんご長年ながねんその体制たいせいつづけてきたわけですぐにはべつ合理ごうりてきであるとおもわれる様式ようしきには移行いこうはできないであろう。そもそもなに合理ごうりてきでありなに非合理ひごうりてきであるかというものは結果けっかろん部分ぶぶんがあるとおもう。結果けっかとして成功せいこうした、成功せいこうしてきたから合理ごうりてきであったといい、失敗しっぱいしたから非合理ひごうりてきであった。責任せきにんれとなるとだれあたらしいシステムに挑戦ちょうせんはできないであろう。わたし一般いっぱんにいう上位じょういすう%に人間にんげんとみ独占どくせんする、アメリカ主義しゅぎてき成果せいか主義しゅぎには反対はんたいである。本当ほんとう成果せいか主義しゅぎでは信頼しんらいまれないと直感ちょっかんてきかんじるからである。信頼しんらいという観点かんてんではすぐに"リストラ"をして数値すうちじょうだけの健全けんぜんさをアピールする企業きぎょう信用しんようができない。やはり基本きほん年功序列ねんこうじょれつ終身しゅうしん雇用こようさだめたうえで、さらにそのなか差異さいをつけていくのがいいのではとおもう。また、そのやりかたでも女性じょせい社会しゃかい進出しんしゅつなどにもワークシェアリングなどの導入どうにゅうによりうまく機能きのうさせることはできるだろうとおもう。
 なにただしい、間違まちがいかとは歴史れきししめすものだとおもう。いま我々われわれ学生がくせい)は学者がくしゃではなく、いま環境かんきょうなか自分じぶん居場所いばしょ職場しょくば)をつけそのなかでまたみちひらくしかない。だがわたしは、自分じぶんだけがたすかる(たすかりたい)ではなく、まわりみんなも協力きょうりょくして仕事しごとをしていける環境かんきょうはつくっていきたいとはおもう。

 以上いじょう最後さいごのコメントは意味いみがよくわからなくなりましたが、書籍しょせき紹介しょうかいわります。


UP:20040207
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