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障害学会第6回大会・報告要旨
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障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい報告ほうこく要旨ようし

障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい 於:立命館大学りつめいかんだいがく


  *個々ここ報告ほうこくについてのページをつくりましたので、それをごらんください。
   →障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい

 ◆報告ほうこく募集ぼしゅう(2009.5.13開始かいし〜2009.7.31)(べつページ)

*A:演壇えんだんでの報告ほうこく/B:ポスター報告ほうこく
*1)Bを希望きぼうしたひとについては、Bでの報告ほうこく承認しょうにんされています。
*2)だい希望きぼうをBとしだい希望きぼうをAとしたひと、また、だい希望きぼうをAとしだい希望きぼうをBとしたがBでもよいという連絡れんらくがあったひとについては、Bでの報告ほうこく承認しょうにんされています。
*3)A(演壇えんだんでの報告ほうこく)のみを希望きぼうされたほう報告ほうこく可否かひ検討けんとうちゅうです。必要ひつようであれば報告ほうこく予定よていしゃとも協議きょうぎしたうえで、決定けっていし、ここにおらせします。報告ほうこく形態けいたい変更へんこうしてもよいひとはおらせください。
*4)だい希望きぼうをAとしだい希望きぼうをBとしたひとについては報告ほうこく承認しょうにん報告ほうこく形態けいたいについては検討けんとうちゅうです。必要ひつようであれば報告ほうこく予定よていしゃとも協議きょうぎしたうえで、決定けっていし、ここにおらせします。
*8がつ10にち現在げんざい、3)が3、4)が18、けい21です。演壇えんだんでの報告ほうこくすうは15ぐらいが限界げんかいです。
*この報告ほうこくはポスター報告ほうこくでなく演壇えんだんでの報告ほうこくとしてきたい(たい)といった意見いけんがあったらおせください。→TAE01303@nifty.ne.jp立岩たていわ)。

■S59
 杉崎すぎさき たかし立教大学りっきょうだいがく大学院だいがくいんコミュニティ福祉ふくしがく研究けんきゅう
 「知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃの<ざま>からえる多様たようなセクシュアリティのかたち――知的ちてき障害しょうがいともきる<かれら/彼女かのじょらなり>の<リアリティ>とはなにか」
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃは、ながあいだ無性むしょう存在そんざい>としてあつかわれてきた経緯けいいがあり、社会しゃかい全体ぜんたいとしても、いまだに<性的せいてき主体しゅたい>としてみとめられているとは到底とうていがたく、わば、「性的せいてきなマイノリティ」、あるいは「逸脱いつだつしゃ」としてのレッテルを付与ふよされつづけてきたとかんがえられる。また、知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃとかかわる臨床りんしょう現場げんばにおける支援しえんしゃ思考しこう感覚かんかくなかにも、一部いちぶ事業じぎょうしょのぞき、当事とうじしゃのセクシュアリティに配慮はいりょした支援しえんほとんどなされていない現状げんじょう否定ひていできない事実じじつである。それは、もと支援しえんしゃ立場たちばにあった筆者ひっしゃ経験けいけんからもつよかんじる問題もんだい意識いしきひとつである。
  では、「なぜ、知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃのセクシュアリティに配慮はいりょしていないのか、どうすれば知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃのセクシュアリティを理解りかいすることができるのか」あるいは「知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃが、みずか思考しこうするセクシュアリティへのおもいや姿すがたとは如何いかなるものか」という疑問ぎもん提示ていじしつつ、当事とうじしゃに、現実げんじつ社会しゃかいきているみずからの経験けいけんを、その<ざま>として、すなわち<かれら/彼女かのじょらなり>のおもいがこもった<リアリティ>としてはっせられたかたりより、また、その支援しえんしゃには、当事とうじしゃのセクシュアリティにたいするおもいや、<支援しえんするがわ>のパラドックス、あるいは当事とうじしゃとのコンフリクト、臨床りんしょう現場げんばにおける経験けいけんからしょうじるかたりによって、筆者ひっしゃなりにその疑問ぎもんかいみちびしていきたいとおもうのである。
  近年きんねん障害しょうがい領域りょういきにおける障害しょうがい当事とうじしゃのセクシュアリティ研究けんきゅうは、関連かんれん著書ちょしょ出版しゅっぱんや、メディアでの露出ろしゅつえたこと、障害しょうがい当事とうじしゃ研究けんきゅうしゃあいだ議論ぎろん活発かっぱつしたこととうにより、にわかに注目ちゅうもくされているかんがある。しかしながら、そのおおくは身体しんたい障害しょうがい当事とうじしゃをメインとしたものであるようにかんじるのは筆者ひっしゃだけであろうか。とくに、身体しんたい障害しょうがい当事とうじしゃ体験たいけんだん自伝じでんなどの著書ちょしょや、研究けんきゅうしゃによる研究けんきゅう論文ろんぶんおおされ、メディアもこぞってそれをげた。一方いっぽうで、知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃのセクシュアリティをげたものもないわけではないが、知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃではなく、支援しえんしゃとうくちとおしてかたられた研究けんきゅうである場合ばあいおおく、知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃ自身じしんによる<なまかたり>による研究けんきゅうほとんどない状況じょうきょうであるとかんがえられる。なぜ、知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃの<なまかたり>がえてこないのであろうか。
  ほん報告ほうこくは、知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃのその<なまかたり>にスポットをあて、その<なまかたり>からつむぎだされる当事とうじしゃそれぞれが思考しこうする多様たようなセクシュアリティのかたちあきらかにしていくものである。それと同時どうじに、知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃ独自どくじかたつうじて、"一般いっぱんてき常識じょうしきてき)な枠組わくぐみ"ではとらえなれない<かれら/彼女かのじょらなり>の<リアリティ>をもりにできるものとかんがえられ、また、知的ちてき障害しょうがいともきる当事とうじしゃのセクシュアリティの理解りかい促進そくしんするいしずえになっていくものとおもわれる。(ほん報告ほうこくでは、知的ちてき障害しょうがい当事とうじしゃのセクシュアリティを恋愛れんあい結婚けっこん出産しゅっさん子育こそだて・家族かぞく生活せいかつとう行為こうい規定きていする)

 
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■P58
 かん ほしみん立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう/KGS株式会社かぶしきがいしゃ)・てんはたけ 大輔だいすけ (ルーテル学院がくいん大学だいがく)・川口かわぐち 有美子ゆみこ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「情報じょうほうコミュニケーションと障害しょうがい分類ぶんるい
 だい希望きぼう:B

  支援しえん技術ぎじゅつ(Assistive Technology)は、ローテクからハイテクまで、様々さまざま発展はってんげている。ALSの患者かんじゃにとって重要じゅうようなコミュニケーション手段しゅだんであるスイッチはオン/オフの1ビットの情報じょうほうって、意思いしつたえる。先日せんじつ新聞しんぶんやテレビで紹介しょうかいされた、トヨタと理化学研究所りかがくけんきゅうしょ(RIKEN)が開発かいはつしたBMI(Brain Machine Interface)研究けんきゅうは、のう情報じょうほう直接ちょくせつ車椅子くるまいす運転うんてんするという、神経しんけいデバイスの現実味げんじつみびたおどろきの報道ほうどうであった。
  従来じゅうらいから視覚しかく聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃたいする支援しえん機器ききひろ開発かいはつされてているが、最近さいきん神経しんけいデバイスをはじめとする、ロボットの研究けんきゅう応用おうようなど身体しんたい運動うんどう活動かつどうたすける技術ぎじゅつ発展はってん学習がくしゅう障害しょうがい認知にんち障害しょうがいしゃにも役立やくだつテクノロジーまで、多岐たきわた技術ぎじゅつ発展はってんしてている。
  支援しえん技術ぎじゅつ障害しょうがい種別しゅべつによってその支援しえん目的もくてきことなるため、ほん研究けんきゅうでは、支援しえん技術ぎじゅつからた、障害しょうがい分類ぶんるいについて考察こうさつした、とくに、情報じょうほうコミュニケーション支援しえんのための障害しょうがいをインプット・情報処理じょうほうしょり・アウトプットに分類ぶんるいし、それぞれの障害しょうがい支援しえん技術ぎじゅつについて分類ぶんるいした。
  さらに、これらの分類ぶんるいではけられない障害しょうがいしゃ支援しえん技術ぎじゅつのありかたについてさらなる考察こうさつおこなった。究極きゅうきょく情報じょうほう受信じゅしん障害しょうがいであるめくらろうしゃにとっての情報じょうほう入手にゅうしゅや、究極きゅうきょく情報じょうほう発信はっしん障害しょうがいである、TLS(totally locked in state)状態じょうたいのALS患者かんじゃにとっての支援しえん技術ぎじゅつについて考察こうさつおこなった。
  その結果けっか世界せかいいちれいしかないのう障害しょうがいによる情報じょうほう発信はっしん障害しょうがい筆者ひっしゃ一人ひとりである、てんはたけ大輔だいすけは、はじめて意思いしつたえるまで半年はんとし以上いじょう歳月さいげつようしており、えない情報じょうほう発信はっしんがかりをるまでのはは努力どりょくうかがえる。世界せかいはじめて開発かいはつされたゆび点字てんじ考案こうあんしゃ一人ひとり福島ふくしまさとしげん東京大学とうきょうだいがく教授きょうじゅ)のははである。
  支援しえん技術ぎじゅつは、コミュニケーションを渇望かつぼうする人間にんげんって必要ひつよう不可欠ふかけつなテクノロジーであり、コミュニケーション支援しえんのための障害しょうがい分類ぶんるい障害しょうがい状態じょうたい理解りかいするじょうでも必要ひつようだとかんがえられる。ほん研究けんきゅうは、情報じょうほうコミュニケーションをテーマに障害しょうがいをもっと社会しゃかい科学かがくてき身体しんたいろんてきじょう重要じゅうよう研究けんきゅうであるとかんがえられ、障害しょうがい学会がっかいでの発表はっぴょう希望きぼうする。

 
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■P57
 渡邉わたなべあい立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「障害しょうがいしゃとパフォーミングアーツの生成せいせい展開てんかい――1970年代ねんだいから現在げんざいまで」
 だい希望きぼう:B

  近年きんねん障害しょうがいしゃの/とのパフォーミングアーツがさかんである。ほん報告ほうこくでは1970年代ねんだいから2009ねんまでの障害しょうがいしゃの/とのパフォーミングアーツ関連かんれん年表ねんぴょう作成さくせいし、このムーブメントが具体ぐたいてきにどのように生成せいせいされ展開てんかいせたのか、障害しょうがいしゃ自立じりつ運動うんどうとの関係かんけいせい文化ぶんかてき背景はいけいなどを念頭ねんとう分析ぶんせきこころみる。
  まず、従来じゅうらい健常けんじょうしゃのみを前提ぜんていとする文化ぶんかへの異議いぎおよび援助えんじょける「弱者じゃくしゃ」としての存在そんざいからの解放かいほうがあった。75ねんからスタートしたわたぼうしコンサートを嚆矢こうしとして、「ろうしゃ劇団げきだん」、「デフ・パペットシアターひとみ」の80年代ねんだいにおける発足ほっそく、83ねん大阪おおさかあおしばかい重度じゅうど障害しょうがいしゃ自立じりつ運動うんどう参加さんかしたきむ満里まり旗揚はたあげした劇団げきだんたいへん」がここにはふくまれる。90年代ねんだいはいるとボディワークをれたカウンセリングの学習がくしゅうかいグループ「仙台せんだいからだとこころのかい」で障害しょうがいしゃとのダンス・ワークショップ(以下いかWS)がひらかれ、のちに「みやぎダンスこころからだ表現ひょうげんかい」(98)「みやぎダンス」(2005)と団体だんたい名称めいしょう変更へんこうをし、理念りねんも「inclusive dance for all」をかかげている。また90年代ねんだい後半こうはんにはコンテンポラリー・ダンスの出現しゅつげん浸透しんとうとともに、各地かくち様々さまざまなダンスWSが展開てんかいされている。これらは健常けんじょうしゃによる障害しょうがいしゃのための療法りょうほうてき効果こうかてき変容へんようねらったものではなく、参加さんかしゃのあるがままの状態じょうたい、いわばことなる身体しんたいせいかしてパフォーマンスを創造そうぞうすることに力点りきてんかれたうごきの台頭たいとうといえる。ここではWSという、すべての参加さんかしゃ主体しゅたいとなり、ひとつの価値かち方向ほうこうせいにおさまらない文化ぶんかてき存在そんざいのありかたとやりとりによって成立せいりつする重要じゅうようになってくる。
  2000年代ねんだいはいると展開てんかい多様たようになり、とくに2004ねんからは5年間ねんかんのプログラムで「エイブルアート・オンステージ」がはじまり現在げんざいのムーブメントを牽引けんいん波及はきゅうせている。
  このようなながれから、障害しょうがいしゃ文化ぶんか主張しゅちょうするパフォーミングアーツや療法りょうほうとして効果こうか変容へんよう目的もくてきとするものから、すべてのひとことなる文化ぶんか表現ひょうげんせいがあること、その相互そうご作用さようからまれるパフォーマンス自体じたい目的もくてきとするものへ、という変化へんかてとることできる。またそのことからも障害しょうがいしゃ社会しゃかい参加さんかとしてかたられるにはとどまらない可能かのうせいしめしていることがわかる。

 
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■P56
 安田やすだ 真之まさゆき立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「学生がくせいボランティアを中心ちゅうしんとした障害しょうがい学生がくせい支援しえん課題かだい――日本福祉大学にほんふくしだいがくにおける障害しょうがい学生がくせい支援しえんがかりとしての考察こうさつ
 だい希望きぼう:B

  ほん報告ほうこくでは、100めい以上いじょう障害しょうがい学生がくせい在籍ざいせきし、全国ぜんこくてきにもそのみが注目ちゅうもくされてきた日本福祉大学にほんふくしだいがく以下いかにちぶくしるす)における障害しょうがい学生がくせい支援しえん状況じょうきょうげ、学生がくせいによる無償むしょうのボランティア活動かつどう中心ちゅうしんとした障害しょうがい学生がくせい支援しえん課題かだいあきらかにする。
 報告ほうこくしゃは2009ねん3がつまでにちぶく在籍ざいせきし、障害しょうがい学生がくせいとして様々さまざま支援しえんけてきた一方いっぽう支援しえん活動かつどうになとしても活動かつどうしてきた。にちぶくにおいては、支援しえん必要ひつようとする障害しょうがい学生がくせいみずか支援しえんしゃさがし、必要ひつよう支援しえん依頼いらいすることが原則げんそくとなっている。点訳てんやく音訳おんやく・パソコンテイク、ビデオ教材きょうざい字幕じまくけといった障害しょうがい学生がくせい支援しえんしょ活動かつどう大半たいはん学生がくせいによる無償むしょうのボランティア活動かつどうによってになわれており、学内がくない設置せっちされた「障害しょうがい学生がくせい支援しえんセンター」を中心ちゅうしんに、大学だいがくもそういった学生がくせいによるしょ活動かつどう支援しえんしている。しかしそのなかで、障害しょうがい学生がくせいは、支援しえん量的りょうてき質的しつてき不十分ふじゅうぶんさ、不安定ふあんてい流動的りゅうどうてき支援しえん履修りしゅうする授業じゅぎょう選択せんたく制限せいげんといった深刻しんこく課題かだい直面ちょくめんしており、そのような状況じょうきょう慢性まんせいしている。また支援しえん活動かつどうにな学生がくせいは、慢性まんせいてき支援しえんしゃ不足ふそくのなかでの過剰かじょう負担ふたん、「ボランティア」が原則げんそくであるにもかかわらず支援しえんことわることができないといった課題かだい直面ちょくめんしている。それらしょ課題かだいされる背景はいけいには、支援しえん必要ひつようとする多数たすう障害しょうがい学生がくせい学内がくない学生がくせいのみで支援しえんすることの限界げんかいせい学業がくぎょう支援しえん活動かつどう両立りょうりつ限界げんかいせい支援しえん大半たいはん友人ゆうじん関係かんけいたす精神せいしんもとづいておこなわれていることとうげることができる。また、今日きょうぶく障害しょうがい学生がくせい支援しえんみのおおくは、支援しえん活動かつどうとおしたまなびあい・そだちあい、すなわち、「福祉ふくししん」や「しんのバリアフリー」、障害しょうがい学生がくせい自立じりつちから涵養かんようといったことが重視じゅうしされるあまり、障害しょうがい学生がくせい支援しえんニーズを充足じゅうそくするものとはかならずしもなっていない。
  以上いじょうまえ、ほん報告ほうこくでは、無償むしょうのボランティアを中心ちゅうしんとする障害しょうがい学生がくせい支援しえん障害しょうがい学生がくせい支援しえんニーズを十分じゅうぶん充足じゅうそくないことをしめしたうえで、障害しょうがい学生がくせい支援しえんにな主体しゅたいとその役割やくわりのありかたについて検討けんとうする。

 
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■S55
 山田やまだ 裕一ひろいち熊本学園大学くまもとがくえんだいがく大学院だいがくいん障害しょうがい学生がくせいパートナーシップネットワーク・熊本くまもとさわがいしゃケアマネジメント従事じゅうじしゃ
 「発達はったつ障害しょうがい」という存在そんざいからかんがえる大学だいがく教育きょういくのインクルーシブデザイン――障害しょうがい学生がくせいパートナーシップネットワークという活動かつどうから「えざるバリア」を顕在けんざいする」
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  大学だいがくに「障害しょうがいしゃ」が入学にゅうがくすることもさほどめずらしくなくなった今日きょう大学だいがく障害しょうがい学生がくせい支援しえんセンターとう名称めいしょうかんした「障害しょうがい学生がくせい支援しえん部署ぶしょ」を設置せっちする大学だいがくすこしずつえてきている。
  「障害しょうがい学生がくせい支援しえん部署ぶしょ」があることによって、「障害しょうがいしゃ」も高等こうとう教育きょういくけるたりまえ権利けんりがあるという言説げんせつ大学だいがくないでも共通きょうつう認識にんしきとなりつつあり、様々さまざまな「障害しょうがい」を想定そうていした、支援しえんメニューが整備せいびされつつある。しかし、「発達はったつ障害しょうがい」があるとされる学生がくせいうと、「障害しょうがい学生がくせい支援しえん」という概念がいねんは、様々さまざま問題もんだい内包ないほうしている。
たとえば、支援しえん要請ようせいかかわる負担ふたん当然とうぜんのようにせられるという問題もんだいである。大学だいがく支援しえん要請ようせいするためには、みずからの「障害しょうがい」を自覚じかくし、大学だいがく想定そうていされる困難こんなん予測よそくし、具体ぐたいてき支援しえん方法ほうほう模索もさくするというセルフマネジメントがもとめられるという問題もんだいである。「発達はったつ障害しょうがい」があるとされる学生がくせいは、この一連いちれん工程こうていのどこかでひっかかることすくなくない。
  また、たとえこの工程こうていをクリアしたとしても、支援しえん方法ほうほうが、大学だいがくおこなうことが妥当だとう方法ほうほうであるのかという立証りっしょう責任せきにんせられる。このようなことが、問題もんだい整理せいりし、適切てきせつ方法ほうほうつたえること困難こんなんがある「発達はったつ障害しょうがい」があるとされる学生がくせいにとってきわめてあつい「えざるバリア」となっている。そこで発表はっぴょうしゃ、「障害しょうがい学生がくせいパートナーシップ」という団体だんたい設立せつりつし、学生がくせいのセルフアドボカシーを促進そくしんする活動かつどうおこなっている。当日とうじつは「発達はったつ障害しょうがい」があるとされる学生がくせいとの活動かつどう事例じれいとおして、「えざるバリア」をしている源流げんりゅうがなんであるかを顕在けんざいし、またされるメカニズムについての考察こうさつすることをこころみる。「発達はったつ障害しょうがい学生がくせい支援しえん方法ほうほうろん」ではなく、大学だいがくが「発達はったつ障害しょうがい」という存在そんざいと、うことによってえてくる、だれにとってもまなびやすい「大学だいがく教育きょういくのインクルーシブデザイン」の可能かのうせい模索もさくしていきたい。

 
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■P54
 佐藤さとう 浩子ひろこ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう)・野崎のさき 泰伸やすのぶ立命館大学りつめいかんだいがく衣笠きぬがさ総合そうごう研究けんきゅう機構きこうポストドクトラルフェロー)・川口かわぐち 有美子ゆみこ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「重度じゅうど障害しょうがいしゃとう包括ほうかつ支援しえんについて――個別こべつ包括ほうかつ制度せいどあいだ比較ひかく
 だい希望きぼう:B

  【背景はいけい】 障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほうで、さい重度じゅうど障害しょうがいしゃのための介護かいご給付きゅうふ重度じゅうど障害しょうがいしゃとう包括ほうかつ支援しえん」(以下いか重度じゅうど包括ほうかつ」という)があたらしくメニューとしてくわえられた。厚生こうせい労働省ろうどうしょうによると、重度じゅうど障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつおくじょうで、個別こべつのサービスをわせるよりも、心身しんしん状態じょうたいとうおうじて複数ふくすうのサービスを臨機応変りんきおうへん利用りようすることができ、重度じゅうど障害しょうがいしゃとう包括ほうかつ支援しえん事業じぎょうしゃ指定していされた事業じぎょうしょは、包括ほうかつばら方式ほうしき一定いってい報酬ほうしゅうがくないで、個々ここのサービスの報酬ほうしゅう単価たんか自由じゆう設定せっていでき、利用りようしゃ多様たようなニーズにおうじたサービスが柔軟じゅうなん提供ていきょうできるという、利用りようしゃ事業じぎょうしゃ双方そうほうにとって意義いぎのあるあたらしいサービスとして設計せっけいされたという。   しかし、ほとんどの自治体じちたい重度じゅうど包括ほうかつ利用りようされていない。
  【目的もくてき】なぜ、重度じゅうど包括ほうかつ利用りようされないのかを調査ちょうさする。
  【方法ほうほう】@そもそも重度じゅうど包括ほうかつ必要ひつようとされているのかを検討けんとうするために、いくつかの自治体じちたい訪問ほうもんし、インタビュー調査ちょうさ実施じっしした。
  A財源ざいげん事業じぎょうしょ経費けいひかんする問題もんだいてんあきらかにするために、現在げんざい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほう個別こべつサービスをわせたいくつかのケースを、重度じゅうど包括ほうかつにした場合ばあい全身ぜんしんせい障害しょうがいしゃ介護かいごじん派遣はけんにした場合ばあい想定そうていし、それぞれのケースにかかわる国庫こっこ負担ふたんきん自治体じちたい一般いっぱん財源ざいげん比較ひかく事業じぎょうしゃはい経費けいひとう比較ひかくをした。
  【結果けっか重度じゅうど包括ほうかつ対象たいしょうとなる重度じゅうど障害しょうがいしゃ事業じぎょうしゃ双方そうほうにとってメリットがないことがりになったが、ほん報告ほうこくではつぎの3てんについてべる。
  @単独たんどくのサービスのわせであり、融通ゆうずうのきく使つかかたができない。
  A支払しはらいも重度じゅうど包括ほうかつ事業じぎょうしゃが、個別こべつのサービス提供ていきょう事業じぎょうしゃ委託いたく契約けいやくをしておこなうことになり、手続てつづきが煩雑はんざつである。
  B包括ほうかつばらいの報酬ほうしゅう単価たんかひくいために、重度じゅうど包括ほうかつ事業じぎょうしゃ利益りえきがでない。
  【課題かだいほん報告ほうこく今後こんご重度じゅうど包括ほうかつ見直みなおしのための政策せいさく提言ていげんにつなげたい。

 
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■P53
 小川おがわ どう神奈川工科大学かながわこうかだいがく
 「くににおけるダイレクト・ペイメント論議ろんぎ課題かだい整理せいり――英国えいこくでのFrances Haslerらのしょ活動かつどうとおして」
 だい希望きぼう:B

  英国えいこく障害しょうがいしゃ団体だんたい協議きょうぎかい代表だいひょうであったJane Campbellと障害しょうがいがく第一人者だいいちにんしゃであるMichael Oliverは、その著書ちょしょDisability Politics(1996)のなかで、ダイレクト・ペイメントほうCommunity Care (Direct Payments) Act 1996の成立せいりつを「1948ねんのNational Assistance Act以来いらい非合法ひごうほうであったものにみとめさせた。この立法りっぽうはひとえに障害しょうがいしゃ運動うんどう起因きいんするものである」とわしめている。そして、Colin Barnsは最近さいきん報告ほうこく(2007)のなかで、ダイレクト・ペイメントが「革新かくしんてきで、フレキシブルで、個別こべつされたサポート・システムとサービスの発展はってん促進そくしんしている」とべる一方いっぽうで「過疎かそ高齢こうれいしゃおお地域ちいき、あるいは大手おおてスーパーなど多数たすう就労しゅうろう場所ばしょ確保かくほされる地域ちいきでパーソナル・アシスタントをつけることのむずかしさ」を率直そっちょくべている。
  このダイレクト・ペイメントは、しばしば現金げんきん(直接ちょくせつ)給付きゅうふやくされる。しかし、実際じっさい現金げんきんわたししたり、口座こうざからしたりするのではなく、おも小切手こぎって支払しはらいであり、最近さいきんではデビッドカードでのあつかいもこころみられている。重要じゅうようなのは、利用りようしゃみずからのライフスタイルをたもつために、その障害しょうがいおうじて適切てきせつなケアを選択せんたく、コントロールする「手段しゅだん」として機能きのうしているところである。民族みんぞく社会しゃかいにあって、介護かいごは"資格しかく"よりもその文化ぶんか慣習かんしゅう同一どういつにしているひとおこなうよさがあり、また、多様たよう障害しょうがい程度ていどおうじてつねにフレキシブルなものでなければ、ライフスタイルは依存いぞんてきなものになってしまう。こうしたらしや介護かいご関係かんけいのフレキシビリティをたすひとつの方策ほうさくぎない。
  発表はっぴょうしゃは、英国えいこくのコミュニティケア(ダイレクト・ペイメント)ほう成立せいりつしたとしである1996ねんに、どうほう実現じつげん貢献こうけんしたロンドン障害しょうがいしゃ協会きょうかい( GLAD)当時とうじ代表だいひょうFrances Haslerへのききとりをおこなったが、その段階だんかいでは高齢こうれいしゃ包括ほうかつすることのむずかしさがかたられていた。そのHaslerが全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター(NCIL)の代表だいひょうになり、ダイレクト・ペイメントを発展はってんさせるためのしょ活動かつどうについても、継続けいぞくてき調査ちょうさしてきた。つまり、高齢こうれいしゃ知的ちてき障害しょうがいしゃ精神せいしん障害しょうがいしゃとう利用りよう促進そくしん、サポート機関きかん設立せつりつ支援しえん行政ぎょうせい担当たんとうしゃへのはたらきかけなどである。今回こんかい、その経緯けいいとおして、また、くに障害しょうがいしゃたいする関連かんれん制度せいどとも比較ひかくし、ダイレクト・ペイメントにかんする課題かだい整理せいりこころみた。

 
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■P52
 植村うえむら かなめ*・山口やまぐち 真紀まき*・櫻井さくらい 悟史さとし*・鹿島かしま 萌子もえこ* *立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「書籍しょせきのテキストデータにかかるコストについて」
 だい希望きぼう:B

目的もくてき
  視覚しかく障害しょうがいしゃ活字かつじしょむには、音訳おんやく点訳てんやく・テキストデータによって媒体ばいたい変更へんこうする必要ひつようがある。これは、おおくの労力ろうりょく時間じかんがかかる作業さぎょうである。今日きょう、この作業さぎょうおおくが、ボランティアによってになわれている。
  近年きんねん書籍しょせき製作せいさくさいして、組版くみはんがDTPによっておこなわれるようになったことで、印刷いんさつようデータからテキストデータを作成さくせいすることが、比較的ひかくてき容易よういになった。これによって、一部いちぶ書籍しょせきには、奥付おくづけに「テキストデータ引換ひきかえけん」が添付てんぷされ、これを読者どくしゃ出版しゅっぱんしゃおくることによって、出版しゅっぱんしゃから読者どくしゃにテキストデータが提供ていきょうされるようになった。また、「テキストデータ引換ひきかえけん」が添付てんぷされていない書籍しょせきであっても、直接ちょくせつ連絡れんらくをすることでテキストデータを提供ていきょうする出版しゅっぱんしゃ複数ふくすう存在そんざいする。
  しかし、今日きょう新規しんき出版しゅっぱんされる書籍しょせきすべてがDTPで組版くみはんされているわけではない。また、DTPが開発かいはつされる以前いぜん出版しゅっぱんされた書籍しょせきには、いうまでもなく印刷いんさつようデータはない。これらの書籍しょせき視覚しかく障害しょうがいしゃもうとするなら、従来じゅうらいどお労力ろうりょく時間じかんついやして、音訳おんやく点訳てんやく・テキストデータをする必要ひつようがある。
  ほん報告ほうこくでは、今日きょう、そのほとんどが無償むしょうボランティアによってになわれている音訳おんやく点訳てんやく・テキストデータのうち、テキストデータげて、この作業さぎょうついやされているコストを試算しさんする。
方法ほうほう
  書籍しょせきのテキストデータは、まず、書籍しょせきをスキャナーでり、それをOCRソフトでtxt形式けいしき変換へんかんし、つづいて、このデータ形式けいしき変換へんかんさいしょうじた文字もじ誤認ごにん識を修正しゅうせいするという手順てじゅんおこなう。
  OCRソフトの文字もじ誤認ごにん識の程度ていど規定きていする要因よういんには、字体じたい言語げんごやルビの混在こんざい度合どあい、だんぐみ図表ずひょう有無うむ紙質かみしつなどがある。これらの要因よういんちがいによるコストの変化へんか確認かくにんし、比較ひかくおこなう。

 
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■P51
 たいら 直子なおこ西南学院大学せいなんがくいんだいがく社会しゃかい福祉ふくし学科がっか
 「精神せいしん医療いりょう保健ほけん福祉ふくしサービスへの精神せいしん医療いりょうユーザーの参加さんか
 だい希望きぼう:B

  イギリスのユーザーの体験たいけんイギリスでは、近年きんねん利用りようしゃ参加さんか(user involvement)が、医療いりょうおよ社会しゃかいてきケアサービスにおける重要じゅうよう概念がいねんとなっている。公的こうてきサービスへの消費しょうひしゃ主義しゅぎ導入どうにゅう利用りようしゃ主体しゅたいのサービスをもとめる障害しょうがいしゃ運動うんどう発展はってんともない、利用りようしゃのサービスへの参加さんかすすめられてきた(Glasby et al., 2003)。2001ねん健康けんこうおよ社会しゃかいケアほう(Health and Social Care Act)で、国民こくみん保健ほけんサービスにおける精神せいしん医療いりょうユーザー(以下いか、ユーザーとりゃくす)の参加さんか義務付ぎむづけられたことなどから、精神せいしん医療いりょう保健ほけん福祉ふくしサービス(以下いか、サービスとりゃくす)でのユーザーの雇用こようすすめられている。しかし、参加さんかは、かならずしも結果けっかをもたらしてはおらず、利用りようしゃ無視むしされたり、表面ひょうめんてき参加さんかわったりもしている(Beresford, 2003)。日本にっぽんでも、ユーザーを雇用こようする地域ちいき活動かつどう支援しえんセンターなどがてきており、今後こんご、ユーザー主体しゅたいのサービスにしていくためには、ユーザーの参加さんか促進そくしんともに、ユーザーのちからかす仕組しくみを早急そうきゅうつくることが必要ひつようである。
  ユーザーのサービスへの参加さんか意義いぎ参加さんかにおけるバリアなどを把握はあくし、ユーザーのちからをサービスにかす方法ほうほうさぐることを目的もくてきとして、2008ねん6〜7がつにサービスにかかわっているユーザーにたいして個別こべつインタビューと自記じきしき調査ちょうさおこなった。
  ユーザーの参加さんかが、組織そしきのシステムをえるには限界げんかいがあるものの、専門せんもん価値かちかん態度たいどかんがかたなどに変化へんかこし、ユーザーの視点してんがサービスにかされたとかんじていた。そして、ユーザーのちからかすためには、ユーザーのちから認知にんち基盤きばんとして、組織そしき構造こうぞう変化へんか財源ざいげん確保かくほなどが必要ひつようだとかんがえていた。イギリスでおこなった小規模しょうきぼ調査ちょうさであるが、その結果けっかから、今後こんご日本にっぽんでユーザーのちからをサービスにかすには、どのような仕組しくみ、支援しえん必要ひつようなのかをかんがえる。

Beresford, P. (2003) 'Fully engaged', Community Care, 13-19 November, pp.38-41
Glasby, J. et.al. (2003) Cases for change: user involvement. London: Department of Health/ National Institute for Mental Health.

 
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■S50
 田中たなか みわ東京家政大学とうきょうかせいだいがく
 「イギリスにおけるディスアビリティ・アートと障害しょうがい文化ぶんか政治せいじてき共同きょうどうせい――パフォーマンスの身体しんたい着目ちゃくもくして」
 だい希望きぼう:A

  ほん報告ほうこくは、1970年代ねんだいまれたイギリスのディスアビリティ・アートについて発行はっこうされているふたつの雑誌ざっしDisability Arts Magazine (DAM, 1991-1995)およびDisability Arts in London Magazine (DAIL, 1986-2008)をおも分析ぶんせきすることによって、イギリスにおけるディスアビリティ・アートの特徴とくちょうあきらかにすることを目的もくてきとする。そして、ディスアビリティ・アートを実践じっせんする人々ひとびとが、障害しょうがい文化ぶんかてき表象ひょうしょうをどのようにとらえ、またえようとしているのかを、パフォーマンスの身体しんたい追究ついきゅうする。そこから、障害しょうがい文化ぶんか政治せいじてき共同きょうどうせいびうるものをえがしてみたい。
  ディスアビリティ・アートは、絵画かいが音楽おんがく、ダンス、演劇えんげきなどあらゆるジャンルにわたる総合そうごうてき芸術げいじゅつであり、1970年代ねんだい以降いこう障害しょうがいしゃ運動うんどう文脈ぶんみゃくにおいて、障害しょうがいのある人々ひとびとの「ほこりといかりとつよさ」からまれた芸術げいじゅつ運動うんどうである。それは、障害しょうがい社会しゃかいてき文化ぶんかてき意味いみ挑戦ちょうせんし、文化ぶんかてき表象ひょうしょう形態けいたい批判ひはんする実践じっせんであり、障害しょうがい文化ぶんか可能かのうせいとして位置いちづけられてきた。ほん報告ほうこくでは、その実践じっせんを、「障害しょうがいのアファーマティヴ・モデル」、「アートセラピーからの断絶だんぜつ」、「障害しょうがい文化ぶんか」というみっつの観点かんてんからみていく。
  ディスアビリティ・アートの実践じっせんは、障害しょうがいしゃ運動うんどうなかにおいても独自どくじ特徴とくちょうをもち、多分たぶん政治せいじてき運動うんどうであり、政治せいじてき闘争とうそう側面そくめんをもつものである。ほん報告ほうこくでは、パフォーマンスの身体しんたい着目ちゃくもくすることによって、そこにみられる共同きょうどうせいを「政治せいじてき共同きょうどうせい」としてとらえ、それがどのような問題もんだいはらみ、どのような可能かのうせいひらかれているのかを、イギリスの現代げんだいアーティストであるマーク・クィン(Mark Quinn)の作品さくひん事例じれいとして考察こうさつする。

 
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■P49
 河村かわむら 真千子まちこ東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいん経済けいざいがく研究けんきゅうとくにん研究けんきゅういん
 「障害しょうがい障害しょうがい狭間はざまきる障害しょうがいしゃ兄弟きょうだい姉妹しまい――文化ぶんか社会しゃかいてき適応てきおう
 だい希望きぼう:B だい希望きぼう:A→決定けってい:B

  障害しょうがいしゃ兄弟きょうだい姉妹しまい以下いか、きょうだいと表記ひょうき)の社会しゃかい適応てきおう心理しんりてき問題もんだいかんする研究けんきゅうは、これまでおも家族かぞくシステム理論りろん観点かんてんからおこなわれてきている。そうした背景はいけいから家族かぞく支援しえん提唱ていしょうされ、きょうだいへの支援しえん着目ちゃくもくされつつある。ほん研究けんきゅうにおいては、そうした先行せんこう研究けんきゅう知見ちけん概観がいかんしたうえで、文化ぶんかてき視点してん立脚りっきゃくし、検討けんとうする。
  文化ぶんか心理しんりがく理論りろんてき枠組わくぐみにおいては、文化ぶんかてき社会しゃかいてき適応てきおうをするときにもたらされる心理しんりがくてき過程かていは、関連かんれんした文化ぶんかてきふく合体がったい個人こじん内部ないぶ位相いそうとして概念がいねんされるとかんがえる。しん要素ようそ社会しゃかい要素ようそ両方りょうほうからなるふく合体がったい分析ぶんせきのユニットとする視点してん立脚りっきゃくし、認知にんちとは根本こんぽんてき社会しゃかいてきであり、その性質せいしつ社会しゃかい性質せいしつ由来ゆらいし、同時どうじ社会しゃかい性質せいしつ構成こうせい要素ようそになっているということに焦点しょうてんいている。つまり、社会しゃかい性質せいしつ個人こじんしん性質せいしつを、片方かたがたから他方たほう演繹えんえきできるような別々べつべつ属性ぞくせいとしてかんがえるのではなく、ひとつのふく合体がったい別々べつべつ側面そくめんとしてとらえる。すなわち、文化ぶんかてき視点してんからきょうだいの社会しゃかい心理しんりてき適応てきおうについて分析ぶんせきするということは、きょうだいのもつ個々ここ心理しんりプロセスを、社会しゃかい文化ぶんかシステムの一部いちぶひとつの位相いそうとして概念がいねんするということである。そうしたとき、きょうだいの適応てきおう形態けいたい相違そういは、純粋じゅんすい個々ここ心理しんりがくてき産出さんしゅつぶつではなく、様々さまざま社会しゃかいてき文化ぶんかてき過程かていによって、結果けっかとして産出さんしゅつされ、こされる。
  実際じっさいに、きょうだいの社会しゃかい心理しんりてき適応てきおう形態けいたいは、さまざまである。よって、あるしゅ関係かんけいせいが、形態けいたい関係かんけいせいよりもなんらかの意味いみで「のぞましい」とか「い」と判断はんだんする根拠こんきょきわめてとぼしいようにおもわれる。関係かんけいせい性質せいしつ相違そうい、バリエーションを、「進化しんか」の枠組わくぐみで解釈かいしゃくしようとすることが、問題もんだいせいはらみ、問題もんだい本質ほんしつてき理解りかいゆがめてしまう。よって、きょうだいの社会しゃかい適応てきおう心理しんりてき問題もんだいは、文化ぶんか慣習かんしゅうとそれに連動れんどうした心理しんり傾向けいこう系統的けいとうてき探索たんさくする視点してんから理解りかいする必要ひつようがある。

 
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■P48
 磯野いその ひろし静岡しずおか福祉ふくし医療いりょう専門せんもん学校がっこう
 「障害しょうがいしゃ雇用こようにおける保護ほご雇用こようのありかたかんするいち考察こうさつ――障害しょうがいしゃ所得しょとく保障ほしょうのありかた視野しやれて」
  だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B →決定けってい:B

  昨今さっこん日本にっぽんにおいても、障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやく批准ひじゅんけたうごきが加速かそくしてきており、つづき、労働ろうどう雇用こよう分野ぶんやにおける「合理ごうりてき配慮はいりょ」のありかた課題かだいになっている。それらの課題かだいは、昨年度さくねんど全国ぜんこく福祉ふくし保育ほいく労組ろうそとJDがおこなった障害しょうがいしゃ雇用こようかんするILOへの提訴ていそへのILOからの報告ほうこくしょをとおして、より具体ぐたいされている。この報告ほうこくしょは、ILOの各種かくしゅ条約じょうやく関連かんれんする勧告かんこく提訴ていそとの関連かんれん指摘してきし、日本にっぽん障害しょうがいしゃ雇用こよう問題もんだいてん逐次ちくじてき指摘してきしている。
  一方いっぽう世界せかい同時どうじきょう影響えいきょうから、障害しょうがいしゃまらず、母子ぼし家庭かてい外国がいこくじんといった社会しゃかいてき弱者じゃくしゃふくめたあらたな保護ほご雇用こようのありかた模索もさくされ、その一部いちぶ補正ほせい予算よさんなどにより具現ぐげんされている。
  ほん研究けんきゅうでは、昨年度さくねんど大会たいかいにおいて、JDの研究けんきゅう活用かつようし、しょ外国がいこく障害しょうがいしゃたいする保護ほご雇用こよう所得しょとく保障ほしょう状況じょうきょう概観がいかんすると同時どうじに、障害しょうがいしゃ労働ろうどう雇用こよう分野ぶんやにおいて「合理ごうりてき配慮はいりょ」を具現ぐげんする保護ほご雇用こようのありかた探求たんきゅうしてきた。そして、障害しょうがいしゃ保護ほご雇用こようが、社会しゃかいてき弱者じゃくしゃたいする保護ほご雇用こようとして波及はきゅう効果こうかおよぼす可能かのうせいについても言及げんきゅうしてきた。
  そのほん研究けんきゅうは、国内こくないにおける障害しょうがいしゃ雇用こよう特徴とくちょうてきみである滋賀しがけん社会しゃかいてき事業じぎょうしょかんするヒアリングをおこない、また、この滋賀しがけん社会しゃかいてき事業じぎょうしょ触発しょくはつされ、独自どくじ保護ほご雇用こようみをおこなっている各地かくちのヒアリングを予定よていしている。
  今回こんかい報告ほうこくをとおして、各地かくち障害しょうがいしゃへの保護ほご雇用こようかんするみと国内外こくないがい状況じょうきょう概観がいかんし、今後こんごのわがくに労働ろうどう弱者じゃくしゃ全体ぜんたいたいする保護ほご雇用こようのありかたかんする問題もんだい提起ていきあらためてっていきたい。
  それらをとおして、現在げんざい制度せいどてき硬直こうちょくしているという評価ひょうかもある障害しょうがい年金ねんきん今後こんごのありかたを、障害しょうがいしゃの稼得能力のうりょくとの関連かんれんからさい検討けんとうしていく道筋みちすじ見出みいだしていきたい。

 
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■P47
 安原やすはら 荘一しょういち(一橋大学大学院博士課程単位取得退学)
 「アフリカ(ケニア)における「伝統でんとうてき精神せいしん医療いりょう報告ほうこく――近代きんだい精神せいしん医療いりょうたいする「オルターナティヴ療法りょうほう」の可能かのうせいさぐる」
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B → Bでもとの連絡れんらく →決定けってい:B

  現在げんざい西欧せいおう近代きんだい精神せいしん医療いりょうシステムにたいして、とく欧米おうべいけい当事とうじしゃ運動うんどうからつよ批判ひはんこえがっている。その論調ろんちょう多様たようであり、いわゆる「全面ぜんめん否定ひてい」「批判ひはんてき利用りようしゃ」「代替だいたい療法りょうほう追求ついきゅうとうにおおまかに分類ぶんるいすることが出来できるようにおもわれるが、いずれにせよ「代替だいたい療法りょうほう」にかんする関心かんしんたかく、様々さまざまな「代替だいたい療法りょうほう」を公式こうしきみとめるよう(健康けんこう保険ほけんとう適応てきおう対象たいしょうにすること)、ENUSP、WNUSPとう当事とうじしゃ団体だんたいはEU政府せいふたいして現在げんざい公式こうしき要求ようきゅうしている。
  しかしながらいちくちに「代替だいたい療法りょうほう」とっても、当然とうぜんのことながら、様々さまざまな「療法りょうほう」が存在そんざいする。発表はっぴょうしゃは、ケニアで、現地げんち当事とうじしゃ団体だんたいほうのご支援しえんで「ムスリム伝統でんとうてき治療ちりょう」「マサイぞく伝統でんとうてき治療ちりょう」をける機会きかいることができた。
  なお「代替だいたい治療ちりょう」「伝統でんとうてき治療ちりょう」にかんしては、WHOとう現在げんざい注目ちゅうもくしており、くわしい調査ちょうさ現在げんざいなされている。
  ほん報告ほうこくでは、アフリカにおける「代替だいたい治療ちりょう」の本邦ほんぽうにおける研究けんきゅう発表はっぴょうしゃ自身じしん治療ちりょう体験たいけん現地げんち調査ちょうさ団体だんたいによる報告ほうこくしょとうをふまえ、その現状げんじょうをレポートするとともに、その宗教しゅうきょうてき側面そくめんにおいて、いわゆる「主体しゅたい客体かくたい図式ずしき医師いし患者かんじゃを「対象たいしょう」して「やまい」を「診断しんだん」、「治療ちりょう」する)ではなく、治療ちりょうしゃ患者かんじゃ原理げんりてきに「かみまえでは平等びょうどう」であるてん、「伝統でんとうてき治療ちりょう」はひろ意味いみでの「宗教しゅうきょうてき実践じっせん」でもあることの意味いみを、「ケア」という観点かんてんからより積極せっきょくてきかんがえてみたい。
  それは(近代きんだい精神せいしん患者かんじゃあいだにどうしても存在そんざいしてしまう「非対称ひたいしょうてき権力けんりょくせい」(「当事とうじしゃ主権しゅけん」「インフォームドコンセント」を強調きょうちょうすればするほど、ぎゃくかびがってきてしまう)を今後こんごかんがえぬいていくじょうでもおおきなヒントになるものとおもわれる。

 
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■P46
 渋谷しぶや 光美てるみ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「家庭かてい奉仕ほうしいん制度せいど国家こっか政策せいさく背景はいけいかんする考察こうさつ
 だい希望きぼう:B

  家庭かてい奉仕ほうしいん制度せいどは、1950年代ねんだい後半こうはん上田うえだをはじめとする長野ながのけん家庭かてい養護ようご派遣はけん事業じぎょう大阪おおさか家庭かてい奉仕ほうしいん制度せいどとう先行せんこうてきはじめられた自治体じちたいでの事業じぎょう成果せいかいちじるしいことから、1962ねんには国庫こっこ補助ほじょ事業じぎょうとなり、1963ねん老人ろうじん福祉ふくしほう制定せいてい国家こっか政策せいさくとなった。
  その背景はいけいとして、老人ろうじん問題もんだい社会しゃかい問題もんだいしていたことがかんがえられる。老人ろうじんそう貧困ひんこんによる生活せいかつ問題もんだいや、私的してき扶養ふよう困難こんなんせい顕在けんざいなどによる。当時とうじてい所得しょとくしゃそう老人ろうじん世帯せたいとく独居どっきょ老人ろうじん世帯せたい生活せいかつ支障ししょうしょうじたさい近隣きんりん相互そうご扶助ふじょふくめた私的してき扶養ふよう困難こんなんであれば、社会しゃかいてき扶養ふよう必要ひつようとなったが、対象たいしょう老人ろうじん施設しせつ保護ほご保障ほしょうできるだけの施設しせつすうはなく、できるかぎ居宅きょたくでの生活せいかつ継続けいぞくさせる施策しさくとして創設そうせつされた。すでに海外かいがいには、ホームヘルパー制度せいど存在そんざいしていたこともかんがみ、老人ろうじん家庭かてい奉仕ほうしいん制度せいどとして国策こくさくされたのである。
  家庭かてい奉仕ほうしいん制定せいてい当初とうしょは、大都市だいとし中心ちゅうしんとした事業じぎょう展開てんかいで、家庭かてい奉仕ほうしいん人数にんずうかぎられていたが、在宅ざいたくにおけるいわゆるたきり老人ろうじん対策たいさくとして位置いちづけられてから、家庭かてい奉仕ほうしいん大幅おおはば増員ぞういん事業じぎょう全国ぜんこく展開てんかいがなされていった。
  国策こくさく過程かていで、そのような家庭かていないにおける奉仕ほうしいん障害しょうがいしゃこそ必要ひつようとしているから、障害しょうがいしゃ施策しさくとしても立案りつあん要求ようきゅうをしたいとする意見いけんされたという。老人ろうじん障害しょうがいしゃとの両方りょうほう施策しさくでは、共倒ともだおれになる可能かのうせいがあるから、まずは老人ろうじんたいして成立せいりつさせてからという折衝せっしょうがなされたとされる。障害しょうがいしゃ家庭かてい奉仕ほうしいん派遣はけん事業じぎょうは1967ねん創設そうせつされ、 1970ねんには心身しんしん障害しょうがい家庭かてい奉仕ほうしいん事業じぎょう実施じっしされている。それらの事業じぎょう実態じったいは、よくわかっていないが、そもそも、長野ながのけんにおける家庭かてい養護ようご事業じぎょうでは、障害しょうがいしゃ世帯せたいたいしても養護ようご派遣はけんされていたのである。長野ながのけん事業じぎょうには、派遣はけん対象たいしょう世帯せたい限定げんていしていない事業じぎょう展開てんかいおこなっていたてんでの先進せんしんせいもあったといえる。
  さらに、家庭かてい奉仕ほうしいん制度せいど供給きょうきゅうがわとして、だれ家庭かてい奉仕ほうしいん仕事しごとになわせるのかの問題もんだいがあった。当時とうじ戦争せんそう未亡人みぼうじんなど寡婦かふ問題もんだいがその背景はいけいにあり、家庭かてい奉仕ほうしいん制度せいど供給きょうきゅうがわ対象たいしょうしゃとして位置付いちづけられ、政策せいさくされた側面そくめんもあったことがわかる。
  ほん報告ほうこくにおいては、以上いじょうのような家庭かてい奉仕ほうしいん制度せいど国策こくさく背景はいけい中心ちゅうしんとして、今後こんごさらに検討けんとうかさねていくための考察こうさつおこないたいとかんがえる。

 
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■P45
 北村きたむら 健太郎けんたろう立命館大学りつめいかんだいがく衣笠きぬがさ総合そうごう研究けんきゅう機構きこうポストドクトラルフェロー)
 「「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」の結成けっせい
 だい希望きぼう:B

  ほん報告ほうこくでは、日本にっぽん血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい/コミュニティの最新さいしん状況じょうきょう報告ほうこくする。
  血友病けつゆうびょう患者かんじゃかい医療いりょう施設しせつまたは地域ちいきごとに結成けっせいされ、活動かつどうつづけてきた。しかし、いわゆる「薬害やくがいエイズ」から深刻しんこく影響えいきょうけ、患者かんじゃかい活動かつどう縮小しゅくしょうあるいは停止ていしせざるをない状況じょうきょうまれたところもすくなくなく、全国ぜんこくヘモフィリアともかい休止きゅうし状態じょうたいとなっている。
  けれども、あたらしい血友病けつゆうびょうしゃ確実かくじつまれ、血友病けつゆうびょうをめぐるしょ問題もんだいえないなか血友病けつゆうびょうしゃ本人ほんにんこえたばねる必要ひつよう実感じっかんしつつあった。他方たほう医療いりょうしゃがわは2004ねんからまいはる日本にっぽん血栓けっせん止血しけつ学会がっかい学術がくじゅつ標準ひょうじゅん委員いいんかい血友病けつゆうびょう部会ぶかい主催しゅさいによる「患者かんじゃ医療いりょうしゃとの血友病けつゆうびょう診療しんりょう連携れんけいについての懇談こんだんかい」を開催かいさいしてきた。かく地域ちいき代表だいひょうしゃは、懇談こんだんかい意見いけん交換こうかんかさね、徐々じょじょ全国ぜんこく組織そしき再建さいけん必要ひつようせい共通きょうつう認識にんしきとして確認かくにんした。同時どうじに、あらたな全国ぜんこく組織そしきは、かく地域ちいき独自どくじせいまえたゆるやかな連絡れんらくたい、ネットワーク形式けいしきとする趣旨しゅし確認かくにんされた。2007ねん3がつ、メーリングリストを活用かつようしたネットワーク準備じゅんびかい発足ほっそくし、すうめい世話人せわにんによる運営うんえいはじまった。
  よく2008ねん初頭しょとう、「特定とくていフィブリノゲン製剤せいざいおよ特定とくてい血液けつえき凝固ぎょうこだいIX因子いんし製剤せいざいによるCがた肝炎かんえん感染かんせん被害ひがいしゃ救済きゅうさいするための給付きゅうふきん支給しきゅうかんする特別とくべつ措置そちほう」の国会こっかい審議しんぎにあたってどう準備じゅんびかい中心ちゅうしんどうほう不備ふび指摘してきする「意見いけんしょ」を提出ていしゅつした。代表だいひょう世話人せわにんである佐野さの竜介りゅうすけ京都きょうとヘモフィリアともかい会長かいちょう)が衆参しゅうさん厚生こうせい労働ろうどう委員いいんかい意見いけん陳述ちんじゅつおこない、国会こっかい決議けつぎにつながるなど早々そうそうにネットワークの実効じっこうせい証明しょうめいされた。同年どうねん3がつ全国ぜんこく20の患者かんじゃかいで「ヘモフィリアともかい全国ぜんこくネットワーク」が正式せいしき発足ほっそくし、現在げんざいは25である。ネットワークは、国会こっかい決議けつぎもとづいて厚生こうせい労働省ろうどうしょうとCがた肝炎かんえん問題もんだい協議きょうぎつづけている。2009ねん2がつ1にちからだいVII 因子いんし血液けつえき製剤せいざい「ノボセブン」の薬価やっか大幅おおはばげの問題もんだいでも、情報じょうほう集約しゅうやくとうおこなっている。ネットワークの今後こんご活動かつどうにも注目ちゅうもくしていきたい。

 
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■P44
 櫻井さくらい 悟史さとし*・鹿島かしま 萌子もえこ*・池田いけだ 雅広まさひろ *立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「音声おんせい認識にんしきソフトをもちいた学習がくしゅうけん保障ほしょうのための仕組しくみ」
 だい希望きぼう:B

  ほん報告ほうこく目的もくてきは、大学だいがく大学院だいがくいん講義こうぎ研究けんきゅうかいやシンポジウムの口頭こうとう報告ほうこくにおける聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃへの情報じょうほう保障ほしょうをいかにおこなうかについてのひとつの仕組しくみを紹介しょうかいすることにある。これまで大学だいがくにおける講義こうぎとう情報じょうほう保障ほしょうについては、手話しゅわ通訳つうやく、ノートテイク、パソコン要約ようやく筆記ひっきなどがもちいられてきた。それらが重要じゅうようであるのは間違まちがいないが、要約ようやく筆記ひっきしゃにかかる負担ふたん、かかる人手ひとでりょうおおさといった問題もんだいもある。そういった問題もんだい解消かいしょうするひとつの手段しゅだんとして、音声おんせい文字もじ自動じどう変換へんかんするソフト(以下いか音声おんせい認識にんしきソフト」)をもちいる仕組しくみがかんがえられる。
  音声おんせい認識にんしきソフトをもちいた先行せんこう研究けんきゅうとしては、会議かいぎ情報じょうほう保障ほしょう支援しえん目的もくてきとする、NTTサイバースペース研究所けんきゅうじょによる、NTTが開発かいはつした音声おんせい認識にんしきエンジンであるVoiceRexをもちいた一連いちれんすぐれた研究けんきゅうがある。ほん報告ほうこくは、その知見ちけん参照さんしょうしつつ、アドバンスト・メディアしゃ開発かいはつした音声おんせい認識にんしきエンジンAmiVoiceをもちい、聴覚ちょうかく障害しょうがいをもつ大学生だいがくせいならびに大学院生だいがくいんせいとうにたいする学習がくしゅうけん保障ほしょう可能かのうせい模索もさくするものである。AmiVoiceはVoiceRexとちがい、テキストデータをもちいてエンジンを自在じざいにカスタマイズできるため、ともすれば専門せんもんてき用語ようご講義こうぎ研究けんきゅう発表はっぴょうにも対応たいおうできることが期待きたいされる。その効果こうかのほど、あるいは実用じつようるかどうかは、だいかい障害しょうがい学会がっかい大会たいかいにおいて試験しけんてき運用うんようおこなうので、そこでられた結果けっかから別途べっと報告ほうこくすることとする。ほん報告ほうこくでは、音声おんせい認識にんしきエンジンAmiVoiceの紹介しょうかい各種かくしゅソフトの解説かいせつ、2009ねん4がつから2009ねんがつまでのさんヶ月かげつあいだにわたる立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう講義こうぎ公共こうきょうろん」における試験しけん運用うんようられた知見ちけんとう報告ほうこくし、そこからりとなった課題かだい論点ろんてんしめすことで、今後こんご研究けんきゅう端緒たんしょとしたい。

 
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■P43
  臼井うすい 久実子くみこ東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいん経済けいざいがく研究けんきゅう
 「「ともにはたらく」の追求ついきゅう――大阪おおさかエリアの障害しょうがいしゃ運動うんどう(1980−90年代ねんだい)を中心ちゅうしんに」
 だい希望きぼう:B

  障害しょうがいしゃ社会しゃかいのあらゆる分野ぶんや参画さんかくすることは、いまものこされたおおきな課題かだいである。とくに「はたらく」ことをめぐる問題もんだいは、記録きろく運動うんどう史上しじょう整理せいり十分じゅうぶんになく、ミッシングリンクとえる。「障害しょうがいしゃがこの社会しゃかいはたらくこと/はたらくうえで必要ひつよう援助えんじょをうけ、まともな所得しょとくをえるありかた」をめざして、過去かこにどんな問題もんだい意識いしきみがあったかをることは、今後こんごにつながる問題もんだいでもある。
  障害しょうがいしゃかかわるくに政策せいさくは、「身辺しんぺん自立じりつ」と「職業しょくぎょうてき自立じりつ」をめざし可能かのうかぎはたらくことを大前提だいぜんていとし、「訓練くんれんして就職しゅうしょく」することや「福祉ふくしてき就労しゅうろう」をすすめる一方いっぽう事業じぎょうしょに「一般いっぱん雇用こよう」をうながしてきた。生存せいぞん就労しゅうろうつよむすいている社会しゃかい構造こうぞう前提ぜんていとされ、「身辺しんぺん自立じりつ」や「職業しょくぎょうてき自立じりつ」をめざせないひとやめざさないひとは、存在そんざいしないことにされてきた。そうしたなかで、障害しょうがい当事とうじしゃ運動うんどうは、それとはことなるありかたを構想こうそうしてきた。つまり、<はたらく・はたらけない・はたらかない>のいずれにも優劣ゆうれつ順位じゅんいをつけずに、だれでも最低限さいていげん所得しょとく保障ほしょう介助かいじょ援助えんじょ生活せいかつしていけるありかたである。そして「はたらく」課題かだいんだ運動うんどうのなかには、障害しょうがいゆえの労働ろうどう市場いちばからの排除はいじょ問題もんだいにし、「ともにはたらく」ことを追及ついきゅうしていくながれがあった。
  そのながれのなかには、受験じゅけん拒否きょひ採用さいよう拒否きょひ職場しょくばでの虐待ぎゃくたいなどの直接的ちょくせつてき差別さべつたいする個々ここみがあり、だい企業きぎょう官公庁かんこうちょう率先そっせんした雇用こようもとめ、雇用こようりつたさない事業じぎょうしょめい公表こうひょうさせようとする運動うんどうがあった。また、「失業しつぎょうしゃにもなれない障害しょうがいしゃ」をかかげて職業しょくぎょう安定あんていしょへの求職きゅうしょく登録とうろくすすめるキャンペーンや、援助えんじょしゃをつけてはたらくありかたを地域ちいき根付ねつかせるためのさまざまなみもすすめられた。
  このポスター展示てんじでは、無認可むにんか作業さぎょうしょなどを拠点きょてんに、活動かつどう積極せっきょくてきおこなわれてきた1980年代ねんだいから90年代ねんだい大阪おおさかエリアで、「ともにはたらく」を目指めざした障害しょうがい当事とうじしゃ運動うんどうがどのように展開てんかいされてきたのかを年表ねんぴょう沿ってていきたい。また、当時とうじ冊子さっしやチラシなどの発行はっこうぶつにとれるかたち展示てんじする。

 
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■S42
 片山かたやま とも立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう横浜よこはま総合そうごうリハビリテーションセンター)・山田やまだ 裕一ひろいち熊本学園大学くまもとがくえんだいがく大学院だいがくいん障害しょうがい学生がくせいパートナーシップネットワーク)
 「ふたつの構造こうぞうてき抑圧よくあつ――専門せんもん支配しはい能力のうりょく主義しゅぎこうして文化ぶんか存在そんざい意義いぎ擁護ようごする」
 だい希望きぼう:A

  我々われわれはこの報告ほうこくで、文化ぶんか存在そんざい意義いぎ擁護ようご必要ひつような、規範きはん理論りろんてき議論ぎろん図式ずしき提出ていしゅつこころみる。
  無論むろん閉者という自己じこ規定きていたない我々われわれ報告ほうこくしゃが、文化ぶんか内実ないじつ規定きていしようとかんがえているのでは毛頭もうとうない。その文化ぶんかのあるべき姿すがたしめすのは、げんにそこにつど閉者であるべきなのは明白めいはくである。そうではなく我々われわれ企図きとするのは、文化ぶんかめぐってしょうじているふたつの構造こうぞうてき抑圧よくあつ指摘してきし、そこにある正義せいぎ批判ひはんするというものである。
  だいいち構造こうぞうてき抑圧よくあつは、「専門せんもん支配しはい」である。医療いりょう教育きょういく専門せんもんは、「真理しんり」を操作そうさすることで文化ぶんか自律じりつせい阻害そがいしている。現存げんそんする専門せんもんによる「診断しんだん偏重へんちょう主義しゅぎ以外いがいに、学術がくじゅつてき領域りょういきける種類しゅるい抑圧よくあつ様式ようしきてみよう。
  1)自閉症じへいしょうは「文化ぶんか継承けいしょう能力のうりょく障害しょうがい」をつとする議論ぎろん。つまり、閉者が独自どくじ文化ぶんか創出そうしゅつし、維持いじし、共有きょうゆうすることを生物せいぶつがくてき議論ぎろんもちいて否認ひにんする立場たちばである。Tomaselloにせるこの主張しゅちょうを、我々われわれ文化ぶんか継承けいしょうおよ文化ぶんか内容ないようについての「定型ていけい発達はったつしゃ中心ちゅうしん主義しゅぎ」によるバイアスであることを論証ろんしょうする。
  2)文化ぶんかを「認知にんち特性とくせいへと還元かんげん」する議論ぎろん。TEACCHにせるこの立場たちばは、文化ぶんか実在じつざい承認しょうにんするてん評価ひょうかできるようにもおもえるが、かれらの議論ぎろんでは閉文継承けいしょうされるものではなく、閉者が生得しょうとくてきゆうする身体しんたい状況じょうきょうへと文化ぶんか概念がいねん矮小わいしょうしている。換言かんげんすれば、「閉者同士どうし関係かんけいせい軽視けいし」した立場たちばであり、そのてん批判ひはんすべきとかんがえる。
  だい構造こうぞうてき抑圧よくあつは、「能力のうりょく主義しゅぎ」である。多様たようせい称揚しょうようし、複数ふくすう文化ぶんか共存きょうぞんとなえる文化ぶんか主義しゅぎは、現代げんだいきる我々われわれにとってすで馴染なじんだものであろう。しかしこれはときに、しかも容易よういに、周囲しゅういたいして独自どくじ文化ぶんか集団しゅうだんであるとする存在そんざい証明しょうめい承認しょうにん要請ようせいかる負担ふたんを、本人ほんにんがわもとめることにする。たとえばそこには、定型ていけい発達はったつしゃがわ理解りかいしやすく、感情かんじょうがいさず、つまりは消費しょうひしやすい文化ぶんかぞうとその提示ていじのされかたが、ごく当然とうぜんのこととしてもとめられることもふくまれよう。
  我々われわれはこの傾向けいこうたいして、「匡正きょうせいてき正義せいぎろん」によって反論はんろんする。近代きんだい国家こっか一貫いっかんして、国家こっかない多様たようせい抑圧よくあつ均一きんいつ文化ぶんか集団しゅうだんつくげようとするネイション形成けいせい従事じゅうじしてきた。そのいち機構きこうすんでじゅつした専門せんもん支配しはいであった。現時点げんじてんいてもこの過程かていつづいており、表面ひょうめんじょう多様たようせい包摂ほうせつおもんじていても、実際じっさいにはあきらかな地位ちいのヒエラルキーがあり、定型ていけい発達はったつしゃ中心ちゅうしん主義しゅぎ人々ひとびと内面ないめんしてしまっている。こうしたいがんだちからじょういて、「文化ぶんかける自助じじょ努力どりょく要請ようせい」を公正こうせいなものとみとめることはできず、そのゆがみをただしせという主張しゅちょうこそ公正こうせいびうる。
  我々われわれ報告ほうこくは、ふたつの動機どうきによって成立せいりつしている。
  ひとつは、医療いりょう教育きょういく専門せんもんによる診断しんだんかならずしもらない、定型ていけい発達はったつしゃ中心ちゅうしん主義しゅぎへの違和いわと、各々おのおの感受性かんじゅせい行動こうどう様式ようしきへの相互そうご承認しょうにんじくとしたげんにあるつどいの様式ようしきへの単純たんじゅんおどろきである。ほん報告ほうこくもちいた閉文という語彙ごいには、そのようなせい様式ようしき排除はいじょしない意味いみめている。
  そしてもうひとつは、現在げんざいなおつづ障害しょうがい文化ぶんかめぐ議論ぎろん混乱こんらんへの不満ふまんである。その意味いみほん報告ほうこく部分ぶぶんてきに、報告ほうこくしゃ一人ひとりおこなった昨年さくねん障害しょうがい学会がっかい大会たいかいにおける口頭こうとう報告ほうこく(「文化ぶんかをめぐる分配ぶんぱいてき正義まさよし――とくにデフ・ナショナリズムの正当せいとうとその制約せいやく条件じょうけんについて」)との連続れんぞくせんじょうでもとらえられる。
  我々われわれのこのこころみが、この国家こっか社会しゃかいにおける正義せいぎ打開だかいすこしでも寄与きよできることをねがっている。

 
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■P40 報告ほうこく辞退じたい

 
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■P40
 青木あおき 千帆ちほ*・渥美あつみ 公秀きんひで* *大阪大学おおさかだいがく大学院だいがくいん人間にんげん科学かがく研究けんきゅう
 「障害しょうがいしゃ労働ろうどうにある交換こうかんかんする人類じんるいがくてき試論しろん
  だい希望きぼう:B

  昨今さっこん文化ぶんか人類じんるいがくにおいては、市場いちば交換こうかん贈与ぞうよというふたつのシステムがひとつの社会しゃかいのなかでどのような相互そうご関係かんけいたもちながら並存へいそんしているのかを分析ぶんせきする研究けんきゅうさかんになされている。モノは独占どくせんされ交換こうかんされることによって商品しょうひんとなり市場いちば交換こうかん文脈ぶんみゃくまれる。同様どうように、モノが分配ぶんぱいされ共有きょうゆうされればそれは贈与ぞうよ文脈ぶんみゃくまれるものとなる。このような研究けんきゅうは、贈与ぞうよ市場いちば交換こうかん関係かんけいこう対立たいりつてきあつかってきた人類じんるいがくてき研究けんきゅうたいするアンチテーゼであると同時どうじに、市場いちば交換こうかんたい無力むりょくされつづけてきた贈与ぞうよ意味いみもどすためのみである。
  一方いっぽう障害しょうがいしゃ労働ろうどうかんしては、たとえば作業さぎょうもとめられる機能きのう能力のうりょくかんしどのような場合ばあいにそこから派生はせいする選別せんべつみとめられ、そのかたわら「はたらけない身体しんたい」がどのように正当せいとうされるのかという議論ぎろんおおくなされてきた。それらはおおむ労力ろうりょく市場いちば交換こうかん基準きじゅん議論ぎろんするものである。
  ほん発表はっぴょうにおいては障害しょうがいしゃ労働ろうどう事例じれいとし、そこにある交換こうかんシステムにかんして先述せんじゅつしたような人類じんるいがくてき観点かんてん参照さんしょうしながら分析ぶんせきする。労働ろうどうには市場いちば交換こうかんだけではなく贈与ぞうよ存在そんざいし、しかしながらふたつの交換こうかんシステムによる説明せつめいがいびつに混同こんどうされることで「仕事しごと」にかんする不安定ふあんていかたりが存在そんざいすることを指摘してきする予定よていである。
  当日とうじつは、発表はっぴょうしゃ障害しょうがいしゃ従業じゅうぎょういん雇用こようしている事業じぎょうしょXにボランティアスタッフとしてぞくしフィールドワークを実施じっししたさいのフィールドノートを分析ぶんせき対象たいしょうとする。フィールドワークは2008ねん9がつから現在げんざい継続けいぞくしている。また、発表はっぴょうしゃは2002ねん4がつ〜2005ねん3がつまで関西かんさいけん所在しょざいする身体しんたい障害しょうがいしゃ通所つうしょ授産じゅさん施設しせつYにて作業さぎょう指導しどういんとしてはたらいていた。当時とうじ経験けいけんや、今日きょうにおける同僚どうりょうとの会話かいわ参照さんしょうする。

 
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■S39
 高木たかぎ あきらなり法政大学ほうせいだいがく大学院だいがくいん政治せいじがく研究けんきゅう政治せいじがく専攻せんこう博士はかせ後期こうき課程かてい
 「障害しょうがいしゃによる被選挙権ひせんきょけん行使こうし政策せいさく制度せいどじょう課題かだい――法的ほうてき規制きせいと「情報じょうほう保障ほしょう」」
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  【問題もんだい所在しょざい
  2006ねん採択さいたくされ、日本にっぽん翌年よくねん署名しょめいした「障害しょうがいしゃ権利けんりかんする条約じょうやく」は、だい29じょう障害しょうがいしゃ政治せいじてきおよ公的こうてき活動かつどうへの参加さんか保障ほしょう規定きていしている。ところが、実際じっさい障害しょうがい当事とうじしゃが、これらの参政さんせいけん行使こうししようとするとき、障壁しょうへき存在そんざいする。ほん報告ほうこくは、被選挙権ひせんきょけん中心ちゅうしんに、政策せいさく制度せいどじょう課題かだいを、行政ぎょうせいがく見地けんちからあきらかにするものである。
  【報告ほうこく概要がいよう
  日本にっぽんにおいて選挙せんきょ運動うんどうとは、判例はんれい通説つうせつによれば「特定とくてい選挙せんきょについて、特定とくてい候補者こうほしゃ当選とうせん目的もくてきとして、投票とうひょうまたさせるために直接ちょくせつまた間接かんせつ必要ひつようかつ有利ゆうり行為こうい」であるとほぐされている(大審院だいしんいん1928ねんがつ24にち判決はんけつなど)。政治せいじがくてき換言かんげんすれば、「候補者こうほしゃ当選とうせんる(得票とくひょう最大さいだいする)ために選挙せんきょみんはたらきかける行為こうい」である。
  日本にっぽんにおいて選挙せんきょ運動うんどうは1925ねん普通ふつう選挙せんきょほう以前いぜんから選挙せんきょ取締とりしまりの対象たいしょうとされ、戦後せんごもほぼ一貫いっかんして選挙せんきょ運動うんどう容態ようだいきびしい規制きせい対象たいしょうとされてきた。すなわち、選挙せんきょの「公明こうめい適正てきせい」(公職こうしょく選挙せんきょほうだいじょう)という目的もくてきのもとに、憲法けんぽう保障ほしょうされた政治せいじ活動かつどう自由じゆう制約せいやくされているのである。
  報告ほうこくしゃは、これらの規制きせい障害しょうがいしゃ選挙せんきょ運動うんどう参加さんかし、有権者ゆうけんしゃへの情報じょうほう提供ていきょうをしようとするときに、とく障害しょうがいしゃたいしていちじるしく制約せいやくすものであるとかんがえている。選挙せんきょ運動うんどうたずさわるもの健常けんじょうしゃであることを前提ぜんていとしているためである。(このてんあらそったものとして「玉野たまの事件じけん」(大阪おおさかだかばん1991ねんがつ12にち)がある。)
  さらに、障害しょうがいしゃ公職こうしょく候補者こうほしゃとして選挙せんきょ運動うんどうおこな場合ばあいには、それらに必要ひつよう支援しえん援助えんじょしゃ無償むしょうおこなわなければならない。選挙せんきょ運動うんどうたいして対価たいか付与ふよすることを、公職こうしょく選挙せんきょほう原則げんそくとしてきんじているためである。
  報告ほうこくしゃ自身じしん肢体したい不自由ふじゆう発音はつおん障害しょうがいちつつ、本年ほんねんがつ12にち執行しっこう東京とうきょう都議会とぎかい議員ぎいん選挙せんきょ立候補りっこうほし、選挙せんきょ運動うんどうおこなった。この体験たいけんまえつつ、障害しょうがいしゃ選挙せんきょ運動うんどうたずさわるにあたっての課題かだいあきらかにし、政策せいさく提言ていげんをつなげたい。

 
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■P38
 伊藤いとう 佳世子かよこ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう)・川口かわぐち 有美子ゆみこ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう・NPO法人ほうじんALS/MNDサポートセンターさくらかい)/川島かわしま たかし一郎いちろう仙台せんだい往診おうしんクリニック)・野崎のさき 泰伸やすのぶ立命館大学りつめいかんだいがく衣笠きぬがさ総合そうごう研究けんきゅう機構きこうポストドクトラルフェロー)
 「ALS――人々ひとびと承認しょうにん先行せんこうする生存せいぞん肯定こうてい
 だい希望きぼう:A→だい希望きぼう:B→決定けってい

目的もくてきすじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう(ALS)の発症はっしょうから在宅ざいたく人工じんこう呼吸こきゅう療法りょうほう開始かいしまでのあいだに、3めい女性じょせい患者かんじゃかれた状況じょうきょうから、生存せいぞん必要ひつよう不可欠ふかけつ治療ちりょうささえる支援しえんかたについて考察こうさつ提案ていあんする。
方法ほうほう】1,仙台せんだい千葉ちば東京とうきょう在住ざいじゅう女性じょせい患者かんじゃめい事例じれい紹介しょうかいする。
2,3めい在宅ざいたく療養りょうよう環境かんきょう整備せいびふか参与さんよし、長期ちょうきにわたって患者かんじゃ家族かぞく支援しえんしゃふくすうかいのインタビューを実施じっしした。
3,疾患しっかん進行しんこうしていくなかで、家族かぞく医療いりょう従事じゅうじしゃ自治体じちたい福祉ふくし職員しょくいん患者かんじゃかいによる支援しえんとき系列けいれつ図表ずひょうし、在宅ざいたく生活せいかつ支援しえんプロトコルを作成さくせいした。
4,3のひょうより、現行げんこう制度せいどくわあらたなサービスも提案ていあんして、ALSの生存せいぞん不可欠ふかけつ医療いりょう福祉ふくしサービスのかた展望てんぼうした。
結論けつろん現在げんざい制度せいどでは、ALS患者かんじゃみずからの意思いしだけでは呼吸こきゅう装着そうちゃく決定けっていできない。介護かいご保障ほしょう欠如けつじょしているなかきる/介助かいじょしていく決意けついかためるのはきわめて困難こんなんである。ALS患者かんじゃ生存せいぞんのための方策ほうさくふた提案ていあんする。
 ひとつは、人工じんこう呼吸こきゅう療法りょうほう単身たんしんしゃささえる制度せいど在宅ざいたく医療いりょう福祉ふくしサービスの基盤きばん整備せいび地域ちいきあいだ格差かくさなくひろ達成たっせいすることであり、ふたつめには、そのようなサービスの充実じゅうじつ地域ちいき家族かぞく承認しょうにんたずに、さき治療ちりょうをしてまずきる/きさせることである。いったん治療ちりょう開始かいししさえすれば、ALSの治療ちりょう停止ていしみとめられないげんほう制度せいどしたでなら、必要ひつよう支援しえんすことができる。

 
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■P37
 地主じぬし 明広あきひろ(NPO法人ほうじんそら・同志社大学どうししゃだいがく大学院だいがくいん博士はかせ後期こうき課程かてい
 「意味いみ障害しょうがい障害しょうがい意味いみ ――「しん」のありかと障害しょうがいがく
 だい希望きぼう:B

  障害しょうがいがくにおいて個人こじん社会しゃかい関係かんけいせいへの注目ちゅうもくすすむとともに、関係かんけいにおいて意味いみてき相対そうたいできないインペアメントへの注目ちゅうもくもまたすすんでいる。そこでは、インペアメントの物質ぶっしつせいと、それに社会しゃかいあたえた意味いみ区別くべつする必要ひつようわれもする。
  インペアメントの物質ぶっしつせいは、それがはじめから「いたみ」になることがさだめられているのではなく、おおくが当事とうじしゃ自身じしんによる広義こうぎの「意味いみ付与ふよひらかれているという意味いみで、相対そうたいてきなものである。ところが、みずからの体験たいけん別様べつようでもありうるものと反省はんせいてき意味いみづけることを苦手にがてとしている人々ひとびとにとって、意味いみはただそのようにしかありえないものとしてあらわれやすい。たとえば重度じゅうど知的ちてき障害しょうがいしゃばれる人々ひとびとである。
  この場合ばあい当事とうじしゃによって意味いみあたえられているのは、物質ぶっしつせいとしてのインペアメントよりもさきに、世界せかいそのものである。そこで、定型ていけい発達はったつしゃによる意味いみ付与ふよとの差異さいしょうじ、インペアメントとして指摘してきされる。比較ひかくてきあたらしい支援しえん方法ほうほうはここで差異さい一方いっぽうてき解消かいしょうさせるべく、意味いみつうじた反省はんせい経由けいゆせずに、固定こていてき意味いみ生成せいせいされるように(また、ことなる意味いみ排除はいじょされるように)環境かんきょう操作そうさする。これはTEACCHに象徴しょうちょうてきである。
  ところが、これが心身しんしん二元論にげんろんてき理解りかいむすびつけば、周囲しゅうい内面ないめんとしての「しん」にインペアメントを原因げんいん帰属きぞくさせやすい。その解消かいしょうにいかなる方法ほうほう採用さいようしようとも、意味いみづける当事とうじしゃしん精神せいしん問題もんだいがあると理解りかいされるならば、定型ていけい発達はったつしゃにとって「わかりやすい」世界せかいのありかたうたがわれず、「障害しょうがいしゃのための」環境かんきょうべつ用意よういすることでわる。
  したがって、世界せかい意味いみづけることの障害しょうがいくるしむ人々ひとびと社会しゃかいてきささえるために必要ひつようなのは、優勢ゆうせいてき意味いみ社会しゃかいてき構築こうちくせい暴露ばくろのみならず、「しん」を身体しんたいから環境かんきょうへと外部がいぶしてとらえる理論りろんである。そうした理論りろん実践じっせん基盤きばんとして標榜ひょうぼうしながら、環境かんきょう操作そうさする支援しえん方法ほうほうもちいられるべきであり、ここに障害しょうがいがくが「しん科学かがく哲学てつがく」と連携れんけいするみちひらかれる。

 
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■S36
 高森たかもり あきら近藤こんどう 武夫たけお
 「発達はったつ障害しょうがい貧困ひんこん――アスペルガー当事とうじしゃ中心ちゅうしんとして」
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  近年きんねん正規せいき雇用こようはたら貧困ひんこんそう社会しゃかいてき注目ちゅうもくされている。こうしたなかには、職場しょくば人間にんげんせき がかり不器用ぶきよう仕事しごと段取だんどりがわるいなどといった理由りゆうから孤立こりつ排除はいじょされやすい「不器用ぶきようわか しゃたち」が存在そんざいすることが言及げんきゅうされている。またかれらのなかには軽度けいど知的ちてき障害しょうがい精神せいしん障害しょうがい当事とうじしゃであるものの、労働ろうどうにも福祉ふくしにも十分じゅうぶんつながれていない「グレーゾーン」の障害しょうがいしゃすくなからず存在そんざいするとわれている(川添かわぞえまこと湯浅ゆあさまことへん『「きづらさ」の臨界りんかい "め"のある社会しゃかいへ』2008ねん 旬報じゅんぽうしゃ)。発表はっぴょうしゃらは、高機能こうきのう自閉症じへいしょう・アスペルガー症候群しょうこうぐん当事とうじしゃたちと自助じじょグループなどにかかわることがおおく、その体験たいけんから「不器用ぶきよう若者わかものたち」のなか診断しんだん中途ちゅうと診断しんだん支援しえんけてはいないものの、診断しんだんけた発達はったつ障害しょうがい当事とうじしゃ同種どうしゅどう程度ていど困難こんなんのある人々ひとびとすくなからず存在そんざいしているという印象いんしょうつよっている。しかし、そうした人々ひとびとなんらかの支援しえん団体だんたい支援しえん機関きかんにアクセスしている当事とうじしゃくらべて、その来歴らいれきらしについての情報じょうほうすくなく、調査ちょうさもほとんどなされていないのが実情じつじょうである。
  発表はっぴょうしゃらは、かつて「不器用ぶきよう若者わかものたち」としてはたらき、その貧困ひんこん経験けいけんしたアスペルガー症候群しょうこうぐん当事とうじしゃ事例じれいのヒアリング調査ちょうさおこなった。調査ちょうさたってとく注目ちゅうもくしたのは、 かれらのどものころから現在げんざいいたるまでの生活せいかつ条件じょうけん学校がっこう環境かんきょう家庭かてい環境かんきょう経済けいざいりょくけてきた教育きょういく職場しょくば環境かんきょう人間にんげん関係かんけいなど)である。2事例じれいかぎられるために一般いっぱんむずかしいものの、学齢がくれいにおける家族かぞく友人ゆうじんからの孤立こりつ無援むえん状態じょうたいがあること、成人せいじんにおいて就労しゅうろう生活せいかつじょう困難こんなん直面ちょくめんしたさいに、社会しゃかい資源しげんへのアクセスから排除はいじょされていたことが共通きょうつうして存在そんざいしていた。またこのことは、社会しゃかい資源しげんについての情報じょうほう不足ふそく周囲しゅういとの交渉こうしょう困難こんなん本人ほんにん障害しょうがいたいする否定ひていてき態度たいどなどが原因げんいんであった。
  とくに,おな貧困ひんこん状態じょうたい経験けいけんした場合ばあいでも、そのひと発達はったつ障害しょうがいとう障害しょうがいっているという医療いりょうてき診断しんだん,または,本人ほんにんがホームレスを実際じっさい経験けいけんするなど,困難こんなん存在そんざいについてなんらかの社会しゃかいてき承認しょうにんけた時点じてんと,そうでなかった時点じてんで,られた社会しゃかい資源しげんにどのようなちがいがあるのか,またそれが当事とうじしゃ生活せいかつかたをどのようにえたのかに注目ちゅうもく議論ぎろんする。

 
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■P35
 杉村すぎむら 直美なおみ愛知あいち県立けんりつ日進にっしん西高にしこうとう学校がっこう
 「発達はったつ障害しょうがい理解りかいのための記入きにゅうしき質問しつもん有用ゆうようせい検討けんとう――学校がっこう文化ぶんか特別とくべつ支援しえん教育きょういく
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B→決定けってい:B

 近年きんねん発達はったつ障害しょうがい視野しやにふくめた特別とくべつ支援しえん教育きょういく必要ひつようせいがさけばれるようになってきている。しかし、学校がっこう、とくに高等こうとう学校がっこうにおいてその実現じつげん困難こんなんである。その背景はいけいには、発達はったつ障害しょうがい概念がいねん浸透しんとうしておらず、かつ学校がっこうが「生徒せいとたいして平等びょうどうにひらかれている」ことを建前たてまえとしており、成績せいせきかた評価ひょうか仕方しかたなど細部さいぶにわたって制度せいどされていることがある。特別とくべつ支援しえん教育きょういくとは、これらに変化へんかをせまるものである。しかし現場げんば教員きょういんは、そうした変化へんかを「平等びょうどう」をつきくずす「特別とくべつあつかい」とみなすケースがおおい。したがって、特別とくべつ支援しえん教育きょういく推進すいしんするためには、教職員きょうしょくいん発達はったつ障害しょうがい概念がいねん理解りかいするとともに、現行げんこう制度せいどにどのような変更へんこうくわえうるのかをかんがえるための基礎きそ必要ひつようになる。そのための方策ほうさくとして、報告ほうこくしゃは「発達はったつ障害しょうがい傾向けいこうをもつ生徒せいとのための記入きにゅうしき質問しつもん」を試作しさくした。特別とくべつ支援しえん教育きょういく関心かんしんはなくても、生徒せいと自身じしん記入きにゅうしたものを無視むしできる教員きょういんはすくないからである。この質問しつもんのねらいはふたつである。教員きょういん学校がっこう生活せいかつじょう困難こんなんをもつ生徒せいと特徴とくちょう理解りかいし、その支援しえん方法ほうほう考案こうあんするきっかけとなること、もうひとつは、生徒せいと自己じこ特徴とくちょうをつかみ、学校がっこう生活せいかつ困難こんなんてんへの支援しえんをうけやすくする土壌どじょうをつくることである。
 質問しつもん作成さくせいのための基礎きそ研究けんきゅうとして、既存きそんのチェックリスト(学校がっこう現場げんばで、多用たようされている平成へいせい14年度ねんど文科ぶんかしょう学習がくしゅう障害しょうがい(LD)、注意ちゅうい欠陥けっかんどうせい障害しょうがい(ADHD)、高機能こうきのう自閉症じへいしょうなど、通常つうじょう学級がっきゅう在籍ざいせきする特別とくべつ教育きょういくてき支援しえん必要ひつようとする児童じどう生徒せいとかんする全国ぜんこく実態じったい調査ちょうさおこなさい作成さくせいされた「児童じどう生徒せいと理解りかいかんするチェックリスト」をはじめ、診断しんだん基準きじゅんや、評価ひょうかシートなどもふくむ)を網羅もうらてき蒐集しゅうしゅう比較ひかく検討けんとうした。その結果けっか既存きそんのシートが、観察かんさつしゃようにできている、当事とうじしゃ視点してんけるなど、「医療いりょうモデル」にそって作成さくせいされていることがあきらかになった。

 
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■P34 辞退じたい

 
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■S33
 新関にいぜき 良夫よしお独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん国際こくさい協力きょうりょく機構きこう国際こくさい協力きょうりょく専門せんもんいん
 「障害しょうがい分野ぶんやにおけるナレッジ・マネジメント導入どうにゅうこころみ――APCDUプロジェクトにおけるSbKM」
 希望きぼう:A

  ナレッジ・マネジメントというと経営けいえい理論りろんであり、障害しょうがい分野ぶんやとどのようなかかわりがあるのだろうと疑問ぎもんおもわれるであろう。たしかにナレッジ・マネジメントは、日本にっぽん製造せいぞうぎょう経営けいえい分析ぶんせきからみちびかれた理論りろんであり、近年きんねんおおくの民間みんかん企業きぎょうにおいて激動げきどう時代じだい対応たいおうする経営けいえい理論りろんとして導入どうにゅうこころみられている。しかし、ナレッジ・マネジメントの根幹こんかんは、個人こじん暗黙あんもくみなもととする知識ちしき創造そうぞうのプロセスであり、知識ちしき創造そうぞうともな活動かつどうにはすべて適用てきよう可能かのう非常ひじょう普遍ふへんせいのある理論りろんなのである。
  今回こんかい発表はっぴょうでは、まずナレッジ・マネジメントの本質ほんしつべ、障害しょうがい分野ぶんやにおけるナレッジ・マネジメント導入どうにゅうこころみとして、JICA(国際こくさい協力きょうりょく機構きこう)が実施じっししているアジア太平洋たいへいよう障害しょうがいしゃセンター(APCD=Asia-Pacific Development Center on Disability;以下いか、APCDプロジェクト、とりゃくす)の事例じれいげる。
  APCDプロジェクトは、障害しょうがいしゃのエンパワーメントと社会しゃかいのバリアフリー目指めざし、2002ねんだい1フェーズが開始かいしされた、拠点きょてんをバンコクに広域こういきプロジェクトであり、現在げんざいだい2フェーズを実施じっしちゅうである。
  ナレッジ・マネジメントでは、知識ちしき暗黙あんもく形式けいしき分類ぶんるいし、両者りょうしゃ変換へんかんによって、あらたな知識ちしき創造そうぞうするが、あらたな知識ちしき根源こんげんは、個人こじん暗黙あんもくである。そこで、障害しょうがいしゃつさまざまなおもいや経験けいけん暗黙あんもくとしてとらえ、それらをいかに共有きょうゆうして活用かつようするかについて、ナレッジ・マネジメント理論りろん適用てきようすることをこころみた。
  具体ぐたいてきには、障害しょうがいしゃ障害しょうがいしゃ組織そしき活動かつどうを、障害しょうがいしゃ暗黙あんもく共有きょうゆう活用かつようされていく過程かていとしてとらえ、それをビデオ・ストーリーとしてりまとめ、作成さくせいしたビデオをつうじて、あらたな行動こうどううながす、というこころみである。ストーリー創造そうぞうもとづくナレッジ・マネジメントであるのでSbKM(Story-based Knowledge Management)と命名めいめいした。
  すでに、数カ国すうかこく対象たいしょうにビデオ・ストーリーが作成さくせいされ、ラオスでは、はじめての障害しょうがいしゃかかわるビデオとして国営こくえい放送ほうそう放映ほうえいされた。フィリピンのNHE(Non Handicapped Environment)をテーマとして作成さくせいされたビデオ・ストーリーは、バリアフリー啓発けいはつビデオとして映画えいがかんでの上映じょうえい見込みこまれ、年間ねんかん700まんにんると想定そうていされるほか、パキスタンで作成さくせいちゅうのビデオは12月3にち国際こくさい障害しょうがいしゃデーに政府せいふ要人ようじんむかえて、完成かんせいセレモニーを開催かいさいすることが予定よていされている。
  知識ちしき創造そうぞう成果せいかぶつとして作成さくせいされるビデオ・ストーリー自体じたい重要じゅうようであることはもちろんであるが、知識ちしき創造そうぞうのプロセスであるビデオを作成さくせいする過程かてい重要じゅうようである。APCDプロジェクトの支援しえんもとで、障害しょうがいしゃたちがみずからの活動かつどうみずからビデオ・ストーリーとしてまとげていくプロセスもまた、障害しょうがいしゃおもいをひろ関係かんけいしゃ共有きょうゆうしていくプロセスでもあるからである。

 
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■32
 本多ほんだ はじめ東日本ひがしにっぽん国際こくさい大学だいがく福祉ふくし環境かんきょう学部がくぶ
 「明治めいじにおける不良ふりょう少年しょうねん矯正きょうせい知的ちてき障害しょうがい教育きょういくと「国民こくみん矯風きょうふう事業じぎょう
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  ほん報告ほうこくでは、明治めいじ日本にっぽん不良ふりょう少年しょうねん感化かんか事業じぎょう地方ちほう改良かいりょう事業じぎょうとをげ、不良ふりょう少年しょうねんたいする感化かんか訓育くんいくが「国民こくみん一般いっぱんにまでけられていく過程かてい考察こうさつする。一般いっぱんに、感化かんか事業じぎょうは、社会しゃかい福祉ふくしにおいてげられ、地方ちほう改良かいりょう事業じぎょう政治せいじ政治せいじ思想しそう民衆みんしゅう思想しそうにおいてげられる。ほん報告ほうこくでは、人々ひとびとせい規律きりつという観点かんてんから両者りょうしゃ関連かんれんづけてげようとするものであり、その意味いみ従来じゅうらい如何いかなる研究けんきゅうともことなっている。
  ミッシェル・フーコーがべているように、近代きんだい以降いこう権力けんりょくは、主権しゅけん一元いちげんてき帰属きぞくさせるようなものではなく、むしろ、いたるところに出現しゅつげんし、人々ひとびとせいのありようを方向ほうこうづけている。このような権力けんりょくかんつならば、障害しょうがいしゃ教育きょういく訓練くんれんといい、貧困ひんこんしゃ自立じりつ支援しえんプログラムといい、不良ふりょう少年しょうねん感化かんかといい、いずれも、人々ひとびとせいのありようをえ、ある一定いってい方向ほうこうかわせようとするものであるから、近代きんだいてき権力けんりょく問題もんだいとして理解りかいできよう。ほん報告ほうこくでは、こうした視点してんから明治めいじにおける不良ふりょう少年しょうねん感化かんか事業じぎょう整理せいりしていくこととするが、そのさい不良ふりょう少年しょうねん感化かんか方法ほうほう同一どういつ方法ほうほう知的ちてき障害しょうがい教育きょういく分野ぶんや適用てきようされ、また、不良ふりょう少年しょうねん知的ちてき障害しょうがいであるとされたりしているなどといった興味深きょうみぶか事実じじつについても言及げんきゅうしたいとおもう。
  その感化かんか事業じぎょうは、不良ふりょう少年しょうねんになる以前いぜん段階だんかい介入かいにゅうしようとする。具体ぐたいてきには「善良ぜんりょうなる」家庭かてい社会しゃかい環境かんきょう創出そうしゅつへとすすむ。この「善良ぜんりょうなる」家庭かてい社会しゃかい環境かんきょう整備せいびは、感化かんか救済きゅうさい事業じぎょう発展はってんであると同時どうじ地方ちほう改良かいりょう事業じぎょう一部いちぶでもあった。不良ふりょう少年しょうねん出現しゅつげんしないよう、かく町村ちょうそんでは有力ゆうりょくしゃ家庭かていづくりを推奨すいしょうし、自治体じちたいは、禁酒きんしゅすすめ、勤労きんろうすすめ、「健全けんぜんなる」社会しゃかい環境かんきょうととのえていくのである。それは、不良ふりょう少年しょうねん出現しゅつげん防止ぼうしさくが、そのまま町村ちょうそん内容ないよう構成こうせいする事態じたい出現しゅつげんであり、き「国民こくみん」とは不良ふりょうではないということを意味いみしていた。
  以上いじょうのように、ほん報告ほうこくは、不良ふりょう少年しょうねん感化かんか事業じぎょう原型げんけいとしながら「国民こくみん育成いくせい地域ちいき振興しんこうかたられていくというてん中心ちゅうしん考察こうさつするものである。

 
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■S31
 ほり 智久ともひさ筑波大学つくばだいがく人文じんぶん社会しゃかい科学かがく研究けんきゅう
 「みずからの専門せんもんせいのもつ抑圧よくあつせいづきと臨床りんしょう心理しんり業務ぎょうむそう点検てんけん――日本にっぽん臨床りんしょう心理しんり学会がっかいの1960/70」
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  われわれは、専門せんもん批判ひはんというと、1970年代ねんだい以降いこう障害しょうがいしゃ解放かいほう運動うんどう自立じりつ生活せいかつ運動うんどうによる専門せんもん批判ひはん想起そうきしがちだが、専門せんもん自身じしんによる専門せんもん批判ひはんがなかったのではない。1969ねん5がつ日本にっぽん精神せいしん神経しんけい学会がっかい金沢かなざわ大会たいかい契機けいきとして、いくつかの精神せいしん医学いがく関連かんれん学会がっかいでは学会がっかい改革かいかく運動うんどう展開てんかいされる。ほん報告ほうこくでは、とりわけ、みずからの専門せんもんせいたいしてきわめて自己じこ批判ひはんてき実践じっせんおこなってきた日本にっぽん臨床りんしょう心理しんり学会がっかい学会がっかい改革かいかく運動うんどうひかりてる。
  本稿ほんこう目的もくてきは、日本にっぽん臨床りんしょう心理しんり学会がっかい学会がっかい改革かいかく運動うんどうから、これにかかわってきたクリニカルサイコロジストが、いかにしてみずからの専門せんもんせいのもつ抑圧よくあつせいづき、臨床りんしょう心理しんり業務ぎょうむそう点検てんけんおこなってきたのかをあきらかにすることである。具体ぐたいてきには、1970年代ねんだい中心ちゅうしんに、文献ぶんけん調査ちょうさやききと調査ちょうさから、日本にっぽん臨床りんしょう心理しんり学会がっかい学会がっかい改革かいかく運動うんどうのなかでなされた議論ぎろん展開てんかいう。ほん報告ほうこくでは、日本にっぽん臨床りんしょう心理しんり学会がっかい学会がっかい改革かいかく運動うんどう展開てんかいから、かれらが、いかにしてみずからの営為えいい批判ひはんてきとらなおしてきたのか、クライエントである患者かんじゃ障害しょうがいしゃ立場たちば実践じっせんおこなってきたのかをあきらかにしていく。
  日本にっぽん臨床りんしょう心理しんり学会がっかい学会がっかい改革かいかく運動うんどうは、臨床りんしょう心理しんり資格しかく制度せいど根本こんぽんてき見直みなおしを契機けいきとして開始かいしされる。かれらが、みずからの専門せんもんせいのもつ抑圧よくあつせいづく契機けいき過程かていは、けっして一様いちようではない。たとえば、日本にっぽん最初さいしょ就学しゅうがく運動うんどう団体だんたいである「がっこのかい」を結成けっせいした渡部わたなべあつし場合ばあいには、勤務きんむする病院びょういん小児科しょうにかであり、知能ちのうテストをおおおこなわざるをなかったことが、きわめてはや時期じきに、みずからの加害かがいせい認識にんしきさせられる契機けいきになっている。
  また、かれらは、臨床りんしょう心理しんり業務ぎょうむそう点検てんけん開始かいしする。臨床りんしょう心理しんり業務ぎょうむのなかでも、まずそう点検てんけん対象たいしょうになったのが心理しんりテスト、とりわけ知能ちのうテストである。これにたいして、臨床りんしょう心理しんり業務ぎょうむのもうひとつのはしらである心理しんり治療ちりょうは、1970年代ねんだい後半こうはん以降いこう本格ほんかくてきそう点検てんけん対象たいしょうになっている。かれらは、臨床りんしょう心理しんり業務ぎょうむそう点検てんけんおこなうなかで、障害しょうがいをもつどもを選別せんべつすること、あるいは障害しょうがいをなくすことそれ自体じたいを、批判ひはん懐疑かいぎ対象たいしょうにしていく。

 
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■P30
 真下ましも 弥生やよい大学だいがく非常勤ひじょうきん講師こうし
 「南太平洋みなみたいへいよう島嶼とうしょこくにおける、障害しょうがいどものための教育きょういくプログラムのこころみ」
 だい希望きぼう:B

  ほん発表はっぴょうは、南太平洋みなみたいへいよう地域ちいきのある島嶼とうしょこくにおける、障害しょうがいどもの生活せいかつじょうきょうおよび、2006ねん試験しけんてき実施じっしした教育きょういくプログラムについての報告ほうこくおこなう。
  当地とうち障害しょうがいどもは、南太平洋みなみたいへいようのおおらかな風土ふうど相俟あいまって、家庭かてい集団しゅうだんから排除はいじょされることなくそだてられている。一方いっぽう権利けんりもとづく社会しゃかい参加さんか基盤きばん確立かくりつされていないため、義務ぎむ教育きょういく制度せいどがあっても、自力じりき移動いどう出来できないどもは学校がっこうかようことが出来できず、結果けっかとして社会しゃかいなか周縁しゅうえんてき存在そんざいとなってしまうとう不利益ふりえき存在そんざいする。
  発表はっぴょうしゃは、現地げんち赤十字せきじゅうじしゃ協力きょうりょくて、障害しょうがい就学しゅうがくどもにたいして、家庭かてい訪問ほうもんによる識字しきじ造型ぞうけい教育きょういくプログラムを4週間しゅうかんにわたってった。プログラムは潜在せんざいてきなニーズを発掘はっくつする一助いちじょとなったが、発表はっぴょうしゃ帰国きこくして以降いこう継続けいぞくにはいたらなかった。その反省はんせいふくめ、今後こんごにつなげるひとつの手立てだてとして、このくににおける障害しょうがいしゃ教育きょういくへの提言ていげんをまとめる。なお、当該とうがいこくでは今年ことし障害しょうがいしゃ団体だんたいはじめて設立せつりつされ、障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやく啓発けいはつもその活動かつどう一環いっかんふくめるなど、南太平洋みなみたいへいよう地域ちいき障害しょうがいしゃ運動うんどう連動れんどうしたあたらしいうごきもはじまっており、その最新さいしん動向どうこうあわせて紹介しょうかいする。
  また、この発表はっぴょうは、文字もじ画像がぞうによるポスターの展示てんじのみならず、さわ地図ちずやスライドショー、CD-ROMによる報告ほうこくしょ配布はいふとう、また、ポスターのデザインにも工夫くふうくわえるなど、多方向たほうこうてき表現ひょうげん方法ほうほうもちいた、アクセシブルな発表はっぴょう目指めざす。発表はっぴょうしゃは、美術びじゅつ美術びじゅつ教育きょういくたずさわるものであり、教授きょうじゅほう学習がくしゅうのユニバーサルデザインの研究けんきゅう実践じっせんをテーマのひとつとしている。ほん発表はっぴょうは、米国べいこく学会がっかいおこなったものを原型げんけいとしているが、今回こんかいはそのフィードバックをまえた改訂かいていばん発表はっぴょうすることによって、日本にっぽんにおいてもプレゼンテーションのアクセシビリティの評価ひょうか批評ひひょう機会きかいとすることも目的もくてきである。

 
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■P29
 阿部あべ あかね立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「1970年代ねんだい日本にっぽん精神せいしん医療いりょう改革かいかく運動うんどうあたえた「はん精神せいしん医学いがく」の影響えいきょう
 だい希望きぼう:B

  日本にっぽんにおける精神せいしん医療いりょうは1969ねん5がつ日本にっぽん精神せいしん神経しんけい学会がっかい総会そうかい金沢かなざわ学会がっかい)の紛糾ふんきゅうをきっかけに、従来じゅうらい精神せいしん医療いりょう体制たいせい反省はんせい見直みなおしがおこなわれ、精神せいしん医療いりょう全般ぜんぱんへの改革かいかく運動うんどうへと発展はってんしてゆく。まず、この学会がっかい議論ぎろんされた大学だいがく精神せいしん医局いきょく制度せいど解体かいたい問題もんだいは、大学だいがく医局いきょく教授きょうじゅ頂点ちょうてんとしたヒエラルキー構造こうぞうがあり、それが無給むきゅうをはじめとした構造こうぞう下部かぶ犠牲ぎせいのうえにっていることを指摘してきしたものである。しかし、それはたんに大学だいがく医局いきょくないだけの問題もんだいにとどまるのではなく、日本にっぽん精神せいしん医療いりょう構造こうぞうにおいて、そのした医療いりょう従事じゅうじしゃが、そして一番いちばん精神病せいしんびょう患者かんじゃ位置いちづけられる階級かいきゅう構造こうぞう、すなわち差別さべつ抑圧よくあつ構造こうぞうであることを糾弾きゅうだんしたものであった。その保安ほあん処分しょぶん新設しんせつ阻止そし悪徳あくとく精神せいしん病院びょういん告発こくはつなどがなされてゆくのだが、この時期じき患者かんじゃ自由じゆう人権じんけん保護ほご主眼しゅがんいた医療いりょう体制たいせいへの改革かいかく議論ぎろんされたといえる。
  そのようななか従来じゅうらい伝統でんとうてき精神せいしん医学いがくへの異議いぎもうてとしての「はん精神せいしん医学いがく」の思想しそうがイギリスを中心ちゅうしん発生はっせいし、日本にっぽんにも紹介しょうかいされることとなった。その旗手きしゅといえるR・D・レインとD・クーパーは、分裂ぶんれつびょうしんいんろん家族かぞく研究けんきゅうもとめたほかに、分裂ぶんれつびょう社会しゃかい共謀きょうぼういんモデル(狂気きょうき病気びょうき仕立したてげるために、社会しゃかい成員せいいん暴力ぼうりょくをふるい「精神病せいしんびょう」のレッテルをった)を主張しゅちょうした。
  日本にっぽん展開てんかいされていた精神せいしん医療いりょう改革かいかくは、精神病せいしんびょうしゃ自由じゆう人権じんけん保護ほご根差ねざした医療いりょう追求ついきゅうだい目的もくてきであったことから、このはん精神せいしん医学いがくがいう「社会しゃかい体制たいせいがわからの抑圧よくあつされた存在そんざい」という精神病せいしんびょうしゃのとらえかた共鳴きょうめいしたとかんがえる。しかし、レインやクーパーらがべる家族かぞく研究けんきゅう分裂ぶんれつびょうろん実践じっせんめんでの<社会しゃかい医療いりょうしゃ患者かんじゃらが一体いったいとなったコミューンのごとき共同きょうどう生活せいかつ>がそのまま踏襲とうしゅうされたわけでもない。
  そこで、ほん研究けんきゅうでは、日本にっぽんにおける精神せいしん医療いりょう改革かいかく運動うんどうなかで「はん精神せいしん医学いがく思想しそうがどのように採用さいようされ、また採用さいようされなかったのかを整理せいりし、現在げんざいつづ日本にっぽん精神せいしん医療いりょう改革かいかく運動うんどうあたえた影響えいきょう考察こうさつしたい。

 
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■P28
 秋風あきかぜ 千惠ちえ大阪市立大学おおさかいちりつだいがく大学院だいがくいん文学ぶんがく研究けんきゅう
 「障害しょうがいとジェンダー――称揚しょうようされる物語ものがたりとリアリティの狭間はざま
 だい希望きぼう:B

  先行せんこうする障害しょうがいしゃ研究けんきゅうは、その障害しょうがい可視かしてき機能きのうてきに「できない」障害しょうがいしゃ、いわゆる重度じゅうど障害しょうがいしゃ障害しょうがいしゃ一般いっぱんとして、そこにしょうじる問題もんだいかたってきたきらいがある。
  70年代ねんだい障害しょうがいしゃ運動うんどう起源きげんをもち、イギリスやアメリカではじまった障害しょうがいがくは、障害しょうがいうことは個人こじんてき悲劇ひげきであるとする従来じゅうらい障害しょうがいしゃかん障害しょうがい個人こじんモデル」を否定ひていし、障害しょうがい社会しゃかい問題もんだいであることを明快めいかいにうちだした。「障害しょうがい社会しゃかいモデル」である。社会しゃかいモデルは、障害しょうがい身体しんたいてき側面そくめん社会しゃかいてき側面そくめん、すなわち「インペアメント」と「ディスアビリティ」を明確めいかく区別くべつしたうえで、後者こうしゃこす社会しゃかいてき障壁しょうへき注目ちゅうもくし、障害しょうがい社会しゃかいてき責任せきにんうた。しかし、当初とうしょ社会しゃかいモデルは社会しゃかいてき障壁しょうへき強調きょうちょうするあまり、インペアメント自体じたいによってるがされる障害しょうがい当事とうじしゃのアイデンティティの問題もんだいや、障害しょうがいとジェンダー、障害しょうがいとエスニシティといった問題もんだい看過かんかしてきた。90年代ねんだいになって、フェミニスト女性じょせい障害しょうがいしゃ論者ろんしゃであるジェニー・モリス、リズ・クローらから社会しゃかいモデルはインペアメントを軽視けいししすぎているという批判ひはんがあがった。モリスらの批判ひはんにもあるように、それまでの社会しゃかいモデルは、運動うんどうのなかでかくれてきた問題もんだい、インペアメント自体じたいによってるがされるアイデンティティの問題もんだいや、エスニシティやジェンダーによってより周辺しゅうへんされた人々ひとびと問題もんだいたいして敏感びんかんではなかった。インペアメント、ディスアビリティのどちらを看過かんかしても障害しょうがいしゃのリアリティはとらえられないのである。
  ここに軽度けいど障害しょうがいしゃ浮上ふじょうする基盤きばんがあった。筆者ひっしゃはインペアメントを再度さいど研究けんきゅう俎上そじょうにのせようという障害しょうがいがく動向どうこうから軽度けいど障害しょうがいしゃ問題もんだい浮上ふじょうさせ、軽度けいど障害しょうがいしゃ意味いみ世界せかい考察こうさつした。おなながれのなかにジェンダーの問題もんだい位置いちしている。つぎなる段階だんかいとして、障害しょうがいとジェンダーを考察こうさつしたい。
  この社会しゃかいきるかぎり、障害しょうがいしゃもまたドミナントなジェンダーかん内面ないめんしているとかんがえられる。そして、ジェンダーロールをたそうとして、自身じしんがどれほどドミナントなロールモデルから逸脱いつだつしているかをおもらされ葛藤かっとうしたり、自己じこ呈示ていじ戦略せんりゃくったりするだろう。ここにうまれるアイデンティティコントロールや生活せいかつ戦略せんりゃくからえてくる障害しょうがいとジェンダーの問題もんだいを、けい16にんのききと調査ちょうさから考察こうさつ分析ぶんせきする。

 
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■P27
 田島たじま 明子あきこ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう吉備きび国際こくさい大学だいがく
 「作業さぎょう療法りょうほうがくにおける認知にんちしょう高齢こうれいしゃ支援しえんをめぐる変容へんよう編制へんせい過程かてい――1980・1990年代ねんだいのリハビリテーション雑誌ざっし検討けんとう
 だい希望きぼう:B

  ほん研究けんきゅうでは、認知にんちしょう高齢こうれいしゃ着目ちゃくもくし、リハビリテーション、とく作業さぎょう療法りょうほうにおける言説げんせつ研究けんきゅう変容へんよう辿たどってみることにしたい。 
  なぜ、認知にんちしょう高齢こうれいしゃ着目ちゃくもくしたかであるが、認知にんちしょう高齢こうれいしゃがリハビリテーションの対象たいしょうとなる過程かていにおいて、既存きそんのリハビリテーションろんとはことなるかたちでの対象たいしょう介入かいにゅう視点してん特定とくていなどがおこなわれてきたことがあげられる。つまり、認知にんちしょう疾患しっかん特性とくせいとして、「疾患しっかん自体じたい改善かいぜん期待きたいしづらい」、「意思いし表示ひょうじ困難こんなんがある」ことから、「能力のうりょく回復かいふく改善かいぜん目指めざす」や「対象たいしょうしゃ自己じこ決定けってい尊重そんちょうする」といった既存きそんのリハビリテーションの理念りねん理論りろんにはなかった、対象たいしょうしゃ理解りかい枠組わくぐみ、QOLモデルや生活せいかつモデルとうれてきたことは確実かくじつであり、それははしてきえば、現代げんだいのリハビリテーション医療いりょうの(相互そうご矛盾むじゅん錯綜さくそう対立たいりつかかえているかもれない)編制へんせい過程かてい意味いみしているからである。
  とくに、1980年代ねんだい、1990年代ねんだいは、認知にんちしょう高齢こうれいしゃをリハビリテーションの対象たいしょうとし、介入かいにゅう視点してん特定とくていがなされた時期じきとして重要じゅうようである(井口いぐち[2007])。しかし先行せんこう研究けんきゅう井口いぐち[2007])では、政策せいさく構想こうそうかんする資料しりょうあつかっているため、がくへんせい様相ようそうささやかにとらえることには限界げんかいがある。そこで、ほん研究けんきゅうでは、1980年代ねんだい、1990年代ねんだいにおけるリハビリテーションにかんする学術がくじゅつ雑誌ざっし、なかでも、作業さぎょう療法りょうほうかんする学術がくじゅつ雑誌ざっし対象たいしょうとした。なぜ、作業さぎょう療法りょうほう限定げんていしたかとえば、作業さぎょう療法りょうほうは、リハビリテーション関連かんれん職種しょくしゅのなかでも、医学いがくモデルを基礎きそきつつも社会しゃかい適応てきおうモデルに親和しんわせいつよっており、上述じょうじゅつした変容へんよう過程かていへの感度かんどいとかんがえたからである。
  こうしたリハビリテーションがく変容へんよう編制へんせい過程かていることの研究けんきゅう意義いぎとして、つぎふたつの可能かのうせいがあげられる。ひとつは、がく内部ないぶ矛盾むじゅん錯綜さくそう対立たいりつ関連かんれん学問がくもん時代じだいとの(接点せってんについてひろ論点ろんてん抽出ちゅうしゅつできること、ふたつめは、変容へんよう編制へんせい過程かていにおいて生成せいせいされた枠組わくぐみ・モデルについてさい検討けんとうする視座しざ提示ていじできること、である。

文献ぶんけん井口いぐち高志たかし 2007 「認知にんちしょう家族かぞく介護かいごきる――あたらしい認知にんちしょうケア時代じだい臨床りんしょう社会しゃかいがくあずましんどう

 
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■S26
 きむ ざい(キム・ジェグン)(立教大学りっきょうだいがくコミュニティ福祉ふくしがく研究けんきゅう
 「障害しょうがいしゃの「あきらめ」にかんするいち考察こうさつ
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  アメリカのADAをはじめとする障害しょうがいしゃ差別さべつ禁止きんし関連かんれんほう制定せいていや、国連こくれんの「障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやく」、バリアフリーなどをとおして障害しょうがいしゃ差別さべつ問題もんだい社会しゃかいおもて舞台ぶたい登場とうじょうしつつある。しかし、障害しょうがいしゃ差別さべつ問題もんだいは、前述ぜんじゅつした社会しゃかい制度せいどてきめん、これを「外面がいめんてきなもの」とするなら、これよりひとひと関係かんけいしょうじる「内面ないめんてきなもの」の解決かいけつがより重要じゅうようであるとわれている。そして、「内面ないめんてきなもの」へのアプローチとしては、「ステレオタイプ」、「レッテル」、「スティグマ」とうといった心理しんり社会しゃかい文化ぶんか人類じんるいがくてき視点してん焦点しょうてんてたものがある。しかし、このようなアプローチから障害しょうがいしゃ内面ないめんてき差別さべつるには限界げんかいがあるのではないか。なぜなら、これらのアプローチは障害しょうがい当事とうじしゃ視点してんよりは、社会しゃかい差別さべつをどうとらえるかにおもみをいたものであるため、そこからえる障害しょうがいしゃ差別さべつ実態じったい現実げんじつせいけ、観念かんねんてきみになりやすいからである。そこで社会しゃかいではなく、障害しょうがい当事とうじしゃ差別さべつをどうとらえるかをかんがえるため「あきらめ」に焦点しょうてんてることにした。それは、筆者ひっしゃやく10年間ねんかん障害しょうがいしゃとかかわるなかで、障害しょうがいしゃの「あきらめ」が自分じぶん状況じょうきょうあきらかにするまえに、いられる「あきらめ」、または「あきらめるのがのぞましい」という「暗黙あんもく抑圧よくあつ」がつよいことに気付きづいたからである。なお、「あきらめ」は本来ほんらいあきらめる」という意味いみから変化へんかした言葉ことばである。つまり「あきらめ」の行為こういには「物事ものごとあきらかにする」ことが前提ぜんていとして必要ひつようである。
  ほん研究けんきゅう文献ぶんけん調査ちょうさすすめている。研究けんきゅう目的もくてき障害しょうがい当事とうじしゃ自身じしんの「あきらめ」に焦点しょうてんて、障害しょうがいしゃ差別さべつ実態じったい、さらに、障害しょうがいしゃ生活せいかつ特殊とくしゅせいあきらかにすることである。すなわち、だいいちに、障害しょうがいしゃの「あきらめ」をとおして、かくれする障害しょうがいしゃ差別さべつあきらかにすることである。だいに、障害しょうがいしゃ様々さまざま差別さべつから「きにくさ」を経験けいけんしながらも、それぞれ固有こゆう生活せいかついとなんでおり、その生活せいかつに「あきらめ」がどのように関係かんけいしているかをあきらかにすることである。

 
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■P25
 澁谷しぶや 智子さとこ埼玉さいたま県立けんりつ大学だいがく非常勤ひじょうきん講師こうし
 「こえないおや子育こそだて」
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B→Bでもとのもう決定けってい:B

  障害しょうがいのあるおや子育こそだては、障害しょうがい種別しゅべつ程度ていどによって障害しょうがいしゃ経験けいけんことなっていることを浮彫うきぼりにする。重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいひとにとっては、結婚けっこん出産しゅっさん自体じたい敷居しきいたかいものになっており、重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつやセクシュアリティがろんじられるなかでは、障害しょうがいしゃ親子おやこ関係かんけいは、障害しょうがいをもたないおや障害しょうがいをもつ関係かんけいかたよってげられることがおおかった。そこでは、ケアをあたえるがわけるがわは、親子おやこというじくにおいても、障害しょうがいしゃ障害しょうがいしゃというじくにおいても、固定こていしてかんがえられる傾向けいこうにあった。この発表はっぴょうでは、障害しょうがいのあるひとの「定位ていい家族かぞく」ではなく「生殖せいしょく家族かぞく」に注目ちゅうもくし、障害しょうがいのあるひとおやとして子育こそだてをおこなうときの意識いしきげたい。
  とくほん発表はっぴょうろんじるのは、こえないおや子育こそだてについてである。聴覚ちょうかく障害しょうがいは、視覚しかく障害しょうがいならんで、就労しゅうろうして経済けいざいてき基盤きばんつことが期待きたいされてきた障害しょうがいであり、こうした障害しょうがい人々ひとびとにとっては、結婚けっこんどもをつことは比較的ひかくてき予想よそう可能かのう選択肢せんたくしとしてこう えられている。しかし、実際じっさいどもをつにいたった障害しょうがいしゃ経験けいけんするのは、障害しょうがいしゃ子育こそだ能力のうりょくうたが世間せけん視線しせんであり、障害しょうがいのないおやとの比較ひかくである。発表はっぴょうでは、こえないおやかたりや手記しゅき分析ぶんせきから、こえないおやかんじている社会しゃかいてきバリアの実態じったいあきらかにする。
  データとしてもちいるのは、1995〜2002ねん活動かつどうしたデフ・マザーズ・クラブの会報かいほう埼玉さいたまけん聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃ協会きょうかい婦人ふじん子育こそだはん発行はっこうした『こえないひと子育こそだて』(2000ねん)、大阪おおさか聴力ちょうりょく障害しょうがいしゃ協会きょうかい女性じょせい子育こそだはんの「こえないおやこえるども」(2005ねん)と、 発表はっぴょうしゃが2004〜2009ねんおこなったこえない母親ははおやへのインタビュー調査ちょうさ13けんである。それらの分析ぶんせきなかから見出みだしだされた、「障害しょうがい遺伝いでんについての意識いしき」「障害しょうがいしゃ子育こそだ能力のうりょくうたが周囲しゅういのまなざしへの反応はんのう」「自分じぶんにできない教育きょういくおぎなうための保育園ほいくえん利用りよう」「のおかあさんとしたしくなるじょうでの困難こんなん努力どりょく」という論点ろんてん沿って考察こうさつする。

 
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■P24
 青木あおき まき太朗たろう安田やすだ 真之まさゆき立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「視覚しかく障害しょうがい大学院生だいがくいんせい研究けんきゅう支援しえんにおける課題かだい――立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいんにおける「視覚しかくけいパソコン講座こうざ」からえてきたもの」
 だい希望きぼう:B

  2009ねんがつ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう以下いか先端せんたんけんしるす)は3めい視覚しかく障害しょうがいのある新入生しんにゅうせいむかえることとなった。先端せんたんけんではおも新入生しんにゅうせい対象たいしょうとして、(1)パソコンをもちいた情報じょうほう収集しゅうしゅう、(2)プレゼンテーションをはじめとした研究けんきゅう発表はっぴょう、(3)ホームページをとおした情報じょうほう発信はっしんについて、それぞれ基礎きそ知識ちしき技術ぎじゅつ習得しゅうとくをめざした「ディジタルデザインT」という科目かもく開講かいこうされている。3めい新入生しんにゅうせいはともにこの「ディジタルデザインT」の受講じゅこう希望きぼうしたが、スクリーンリーダーをもちいてすべてキーボードで操作そうさするといった視覚しかく障害しょうがいしゃ特有とくゆうのパソコン操作そうさ方法ほうほう担当たんとうしゃ対応たいおうできなかったことから、報告ほうこくしゃ青木あおき急遽きゅうきょ対応たいおうし、「視覚しかくけいパソコン講座こうざ」(以下いか講座こうざしるす)が開講かいこうされることとなった。
  講座こうざでは当初とうしょ、「ディジタルデザインT」の科目かもくのねらいに準拠じゅんきょし、情報じょうほう収集しゅうしゅう(ネット検索けんさく文献ぶんけん検索けんさくなど)、ゼミや学会がっかいでの発表はっぴょう準備じゅんび情報じょうほう公開こうかいとしての自己じこ紹介しょうかいファイル(HTML形式けいしき)の作成さくせい予定よていであった。しかし、HTMLファイルを独力どくりょく作成さくせいできるひともいれば、メールの送受信そうじゅしん不安ふあんひともいるというように、受講じゅこうしゃあいだでパソコンのスキルに相当そうとうひらきがあり、事実じじつじょう個別こべつ対応たいおうせざるをない状況じょうきょうとなった。さらに講座こうざでは、パソコンの操作そうさ方法ほうほうにとどまらず、録音ろくおん図書としょ再生さいせいするための機器きき点字てんじ電子でんし手帳てちょう操作そうさ方法ほうほう大学院だいがくいん施設しせつ利用りよう方法ほうほうといった、視覚しかく障害しょうがい大学院生だいがくいんせい大学院だいがくいんにおける研究けんきゅう活動かつどうおこなううえで不可欠ふかけつである事項じこう幅広はばひろげることとなった。
  ほん報告ほうこくでは、講座こうざ実施じっしとおしてあきらかになった、視覚しかく障害しょうがい大学院生だいがくいんせい支援しえんにおける個別こべつ対応たいおう重要じゅうようせい研究けんきゅう環境かんきょう確立かくりつのためのしょ支援しえん必要ひつようせいとうしょ課題かだい整理せいりする。そのうえで、大学だいがくにおける視覚しかく障害しょうがい学生がくせい個別こべつニーズへの対応たいおうみの状況じょうきょうまえて、それらしょ課題かだいへの対応たいおうのありかたについて考察こうさつする。

 
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■P23
 太田おおた 啓子けいこ大阪市立大学おおさかいちりつだいがく大学院だいがくいん生活せいかつ科学かがく研究けんきゅう
 「インクルーシブデザインにおける障害しょうがいのあるひと仕事しごと可能かのうせい
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B → Bでもとの連絡れんらく →決定けってい:B

  筆者ひっしゃは、奈良なら・たんぽぽのいえでインクルーシブデザイン事業じぎょうかかわってきた。インクルーシブデザインは最終さいしゅうてきにはソーシャルインクルージョンを目指めざしているとかんがえられている。筆者ひっしゃらは、2008年度ねんどに、東京とうきょう神戸こうべでインクルーシブデザイン・ワークショップに参加さんかした18めい障害しょうがいのあるユーザーに、インタビュー調査ちょうさ実施じっしし、障害しょうがいのあるひとがワークショップに参加さんかして立場たちばことなるひととの関係かんけいせいなかからまなびをていること、そしてそのまなびは障害しょうがいのあるひとだけでなく、ワークショップに参加さんかしたデザイナーなども相互そうごてきていることがしめされた(太田おおた 2009)。さらに、ユーザー参加さんかがたのワークショップを主催しゅさいするファシリテーターなどにもインタビュー調査ちょうさおこない、障害しょうがいのあるひとにユーザーとして「つたえるちから」「評価ひょうかするちから」「提案ていあんするちから」のみっつが必要ひつようなのではないかという仮説かせつをたて、ワークショップやレクチャーなどのユーザー教育きょういくプログラムを実施じっしした。つまりこれまでインクルーシブデザイン・ワークショップでのユーザーの役割やくわり関係かんけいせいつよ依拠いきょしてきたが、ユーザーリテラシーをたかめることで「仕事しごと」につなげようとかんがえてきた。
  本年度ほんねんどは、インクルーシブデザインにおける障害しょうがいのあるひと仕事しごと可能かのうせいをさらにさぐることを目的もくてきとした調査ちょうさ研究けんきゅうおこなっている。筆者ひっしゃらは企業きぎょうとの商品しょうひん開発かいはつがたワークショップにもんできたが、実際じっさい商品しょうひん開発かいはつむすびついたというよりも、社員しゃいん教育きょういくきがつよかったとおもわれる。つまり、ユーザー参加さんかがたのワークショップは、企業きぎょうにとってCSRの目的もくてきつよいといえるのが現状げんじょうである。そのためユーザーの参加さんかもワンショットにとどまっている。ほん報告ほうこくでは、インクルーシブデザインにおける障害しょうがいのあるひと仕事しごと可能かのうせいかんがえるうえで、なに問題もんだいとなっているのかという現状げんじょう整理せいりし、どのような条件じょうけん整備せいび必要ひつようなのか検討けんとうすることを目的もくてきとする。

 
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■P22
 かり めぐみ京都府立大学きょうとふりつだいがく大学院だいがくいん公共こうきょう政策せいさくがく研究けんきゅう
 「障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんほう成果せいか限界げんかい――障害しょうがいしゃ企業きぎょう多様たようせい注目ちゅうもくして」
 だい希望きぼう:B

  障害しょうがいしゃ労働ろうどう市場いちばにおける就業しゅうぎょうりつ障害しょうがいしゃくらべて極端きょくたんひくい。そのため、政府せいふは「障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんとうかんする法律ほうりつ」(以下いかほう)を制定せいていすることにより、企業きぎょうとうでの一般いっぱん就労しゅうろう機会きかい拡大かくだいはかってきた。このほうは、義務ぎむ雇用こよう雇用こよう納付のうふきん職業しょくぎょうリハビリテーションのみっつの制度せいどはしらとして、雇用こようぬし障害しょうがいしゃ双方そうほうけた施策しさく規定きていする。ほん研究けんきゅうでは、ほう障害しょうがいしゃ就労しゅうろう機会きかい拡大かくだいたいして、限定げんていてき有効ゆうこうせいしかちえず、むしろ結果けっかてき障害しょうがいしゃ雇用こよう阻害そがい要因よういんとなっていることをあきらかにする。
  ほう雇用こようぬしがわである企業きぎょうたいし、社会しゃかい連帯れんたい理念りねんした企業きぎょう規模きぼ産業さんぎょう形態けいたいとうといった個別こべつ要素ようそ考慮こうりょしない一律いちりつ雇用こようりつ義務付ぎむづけ、それを達成たっせいしない場合ばあいには納付のうふきん支払しはら義務ぎむしている。しかし義務ぎむ雇用こよう納付のうふきん制度せいどは「まけ強化きょうかさく」として機能きのうしており、企業きぎょうたいして障害しょうがいしゃ雇用こよう責務せきむかんじさせてはいるが、一方いっぽう積極せっきょくてき障害しょうがいしゃ雇用こようしようとするインセンティブをもちにくくさせている。
  ほう障害しょうがいしゃたいしても、職業しょくぎょうリハビリテーション(以下いかしょくリハ)制度せいど中心ちゅうしん能力のうりょく向上こうじょう開発かいはつはかってきた。企業きぎょうとうにおける一般いっぱん就労しゅうろうには、最低さいてい賃金ちんぎん以上いじょう労働ろうどうもとめられるため、それをたすためにしょくリハは有効ゆうこうであるとかんがえられている。しかしほん研究けんきゅうではしょくリハの有効ゆうこうせい限定げんていてきであると指摘してきする。その限定げんていせいあきらかにするために、ほん研究けんきゅうでは現行げんこう一般いっぱん就労しゅうろうにおいて、よっつの障害しょうがいしゃそう想定そうていする。そこでは、障害しょうがいゆえにしょくリハによってもその能力のうりょく障害しょうがいしゃいつかない障害しょうがいしゃそう存在そんざいすることをあきらかにする。この障害しょうがいしゃそうは、既存きそん障害しょうがい程度ていど区分くぶんでは重度じゅうど判定はんていされず、しょくリハによる能力のうりょく向上こうじょう期待きたいされるそうである。この障害しょうがいしゃそう一般いっぱん就労しゅうろう困難こんなんであり、結果けっかてき福祉ふくしてき就労しゅうろうまらざるをない。福祉ふくしてき就労しゅうろうから一般いっぱん就労しゅうろうへの移行いこうりつとし1%という現状げんじょうは、しょくリハと義務ぎむ雇用こようあいだまる障害しょうがいしゃそう存在そんざいかんがえられる。
  げん制度せいどは、障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんたいして有効ゆうこうでないばかりか、企業きぎょう積極せっきょくてき障害しょうがいしゃ雇用こようたいするインセンティブをぎ、また障害しょうがいしゃ就労しゅうろう希望きぼう減退げんたいさせる要因よういんとなっていることを指摘してきする。

 
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■P21
 大山おおやま良子りょうこ特定とくてい営利えいり法人ほうじんリターンホーム代表だいひょう理事りじ)・伊藤いとう 佳世子かよこ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん博士はかせ後期こうき課程かてい)・河原かわはら 仁志ひとし独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん国立こくりつ病院びょういん機構きこうはちくも病院びょういん小児科しょうにか医長いちょう)・こうばん静子しずこ(りべるたす株式会社かぶしきがいしゃ)・はやし典子のりこ(りべるたす株式会社かぶしきがいしゃ)・田中たなかたまき(りべるたす株式会社かぶしきがいしゃ
 「長期ちょうき療養りょうよう重度じゅうど障害しょうがいしゃ地域ちいき移行いこうにおける支援しえん方法ほうほう検討けんとう――きんジストロフィー患者かんじゃ地域ちいき移行いこう事例じれいから」
 だい希望きぼう:B だい希望きぼう:A→決定けってい:B

研究けんきゅう経緯けいい おさなころからの長期ちょうき療養りょうようしゃ病院びょういんるには、社会しゃかいてき自立じりつはかるための精神せいしんてき支援しえんと、介護かいごなど生活せいかつ全般ぜんぱん支援しえん医療いりょう必要ひつようになる。それらを現行げんこう制度せいどなかでどのように屈指くっしすべきかはっきりとかれているものがない。
  そのために、一人ひとり神経しんけい疾患しっかん患者かんじゃ長期ちょうき療養りょうようのち病院びょういん事例じれいと、その事例じれいからさらなるあらたな長期ちょうき療養りょうようすじ疾患しっかん患者かんじゃ地域ちいき移行いこう成功せいこうしたとりくみから、神経しんけいすじ疾患しっかん患者かんじゃ長期ちょうき療養りょうようののちに病院びょういんるために必要ひつよう支援しえん体制たいせいづくりのプログラムを構築こうちくする。
研究けんきゅう方法ほうほう 実践じっせん研究けんきゅう長期ちょうき療養りょうようしゃ地域ちいきかぎりなくノーマルな生活せいかつをつくるようにする)、すじジス病棟びょうとう長期ちょうき療養りょうようのち病院びょういんほうめいからのインタビュー調査ちょうさ医師いし訪問ほうもん看護かんごステーション、ヘルパー事業じぎょうしょからのききと調査ちょうさ
研究けんきゅう対象たいしょう @当事とうじしゃ おさなころから長期ちょうき療養りょうようをしてきたのちに病院びょういんひとたち
  A支援しえんチーム 介護かいごしゃ医療いりょうしゃ
研究けんきゅう期間きかん 平成へいせい19ねん7がつ平成へいせい21ねん7がつ
研究けんきゅう結果けっか 支援しえんがわ地域ちいき対象たいしょう患者かんじゃ相互そうご作用さようにより、生活せいかつがつくられている。医療いりょう福祉ふくし支援しえんがわ連携れんけい困難こんなんながらも時間じかん経過けいかなかで、よい関係かんけいつくられるようになっている。24あいだ他人たにん介護かいご場合ばあい家族かぞくてき支援しえん必要ひつようであり、距離きょりのとりにくさをかんじている傾向けいこうがある。おおくのひとかかわるため、合意ごうい形成けいせいはないのりょう支援しえんがわ体制たいせい重要じゅうようになっている。
  病院びょういん専門医せんもんい在宅ざいたく訪問ほうもん看護かんご、ヘルパーではない、定期ていきてき連絡れんらく体制たいせいつくっておく。注意ちゅういてんき、在宅ざいたく移行いこう専門医せんもんい在宅ざいたくはなせる体制たいせいづくりが支援しえんしゃ安心あんしんつながっていた。

 
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■S20
 もり たけし日本にっぽん貿易ぼうえき振興しんこう機構きこうアジア経済けいざい研究所けんきゅうじょ
 「障害しょうがい当事とうじしゃ調査ちょうさいん参加さんかによるフィリピン・マニラ首都しゅとけん障害しょうがいしゃ生計せいけい調査ちょうさ
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  見過みすごされがちなことであるが、国連こくれん障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやく開発かいはつ途上とじょうこくにとっては、まさに貧困ひんこん問題もんだい解決かいけつけての開発かいはつ問題もんだいとして提案ていあんされたものである。貧困ひんこんしゃなか貧困ひんこんしゃともわれる障害しょうがいしゃ問題もんだい解決かいけつすることなくしては、途上とじょうこく貧困ひんこん問題もんだい解決かいけつはないからである。このことは、どう条約じょうやく提案ていあんおこなったメキシコ大統領だいとうりょう総会そうかい演説えんぜつ国連こくれんにおけるそののミレニアム開発かいはつ目標もくひょう障害しょうがいしゃにも包摂ほうせつてきなものとする総会そうかい決議けつぎといった展開てんかいても理解りかいできる。
  一方いっぽうで、開発かいはつ途上とじょうこく障害しょうがいしゃ貧困ひんこん状況じょうきょうについては、政府せいふによるセンサスをふくめて政策せいさく立案りつあん有用ゆうようなデータがほとんどない。また従来じゅうらい調査ちょうさおおくはソーシャル・ワークの立場たちばからのケース・スタディがおもであり、データの代表だいひょうせいなど政策せいさくてき意義いぎという意味いみではよわいものがあった。こうした状況じょうきょうかんがみ、筆者ひっしゃらはフィリピンのマニラ首都しゅとけんにおいて、生計せいけい調査ちょうさ現地げんち開発かいはつ研究所けんきゅうじょ開発かいはつ統計とうけい専門せんもん障害しょうがい当事とうじしゃ団体だんたい協力きょうりょくて2008ねんった。どう調査ちょうさでは、権利けんり条約じょうやく趣旨しゅしのひとつである障害しょうがいしゃ主体しゅたいてき参加さんか実現じつげんしている。
  ほん報告ほうこくは、この調査ちょうさがどのような準備じゅんび実施じっしされ、どのような意義いぎがあったのかを具体ぐたいてき紹介しょうかいするとともられたデータについても記述きじゅつ統計とうけいてきなものを中心ちゅうしん紹介しょうかいする。とく障害しょうがい当事とうじしゃ統計とうけい調査ちょうさいんとして多数たすう参加さんかした調査ちょうさ世界せかいてきにもれいないものであり、フィリピンにとっても歴史れきしてき達成たっせいごとわれた。それを可能かのうにした様々さまざまなアクセスめんでの配慮はいりょ調査ちょうさ方法ほうほうなどは、今後こんご同様どうよう調査ちょうさ実施じっしさいおおきな参考さんこうとなるはずである。られた結果けっかについても、とく教育きょういくやジェンダーといった要素ようそ障害しょうがいしゃ生計せいけいあたえる影響えいきょう具体ぐたいてき数字すうじられたことから、政府せいふ政策せいさく担当たんとうしゃへのインパクトもおおきいものとなった。一方いっぽうで、途上とじょうこく状況じょうきょうなかでの調査ちょうさじょうおおくの問題もんだい限界げんかい指摘してきされた。以上いじょう障害しょうがいがくてき観点かんてんから整理せいりしつつ報告ほうこくする。

 
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■P19
 上久保かみくぼ 真理子まりこ医療いりょう法人ほうじん社団しゃだん互啓かい ぴあクリニック)
 「知的ちてき障害しょうがいのあるどもの父親ちちおやのケア役割やくわり引受ひきうけをめぐって」
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B→決定けってい:B

  ほん報告ほうこくは、知的ちてき障害しょうがいのあるどもの父親ちちおやたいするインタビューデータをもとに@父親ちちおやのケア役割やくわり引受ひきうけ過程かてい、Aケア役割やくわり引受ひきうけ条件じょうけん考察こうさつするものである。障害しょうがいのあるどもの家族かぞくにおける性別せいべつ役割やくわり分業ぶんぎょう固定こていとその要因よういんおおくの研究けんきゅう議論ぎろんされてきた。しかし、固定こてい打開だかいのための具体ぐたいてき方策ほうさくにまでんだ研究けんきゅうおおいとはいえない。そこで、ほん報告ほうこくでは地方ちほう都市とし在住ざいじゅう知的ちてき障害しょうがいのあるどもの父親ちちおや10めいへのききと調査ちょうさとおし、上記じょうき@Aの問題もんだい検討けんとうする。分析ぶんせきには修正しゅうせいばんグラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)をもちいた。記載きさいの【 】〈 〉ないかたりはそれぞれM-GTAにおける「カテゴリー」「概念がいねん」である。
  分析ぶんせき結果けっか以下いかてんあきらかになった。
  @ケア役割やくわり引受ひきうけ過程かてい障害しょうがいのあるどもの父親ちちおやしん役割やくわりには【かせしゅ専業せんぎょう】【ケア役割やくわり引受ひきうけ】【社会しゃかいへの活動かつどう】の3類型るいけいがある。父親ちちおやを【かせしゅ専業せんぎょう】にとどめる要因よういんとして、〈性別せいべつ役割やくわり分業ぶんぎょう根強ねづよ支配しはい〉〈かせしゅ役割やくわり耽溺たんできする大義名分たいぎめいぶん〉や【シフトをはばむもの】が存在そんざいする。しかしながら、父親ちちおやおおくは〈おとこだってケア〉するべきだとかんがえており、日常にちじょうてき送迎そうげい小学校しょうがっこう入学にゅうがくとうのライフイベントへの準備じゅんびなど【シフトをうなが要因よういん】によりケア役割やくわりけていく。さらに、よりのぞましい環境かんきょう獲得かくとくのために〈どものための闘争とうそう〉をおこなうなかで、〈障害しょうがいをオープンに〉し〈先輩せんぱいならではの情報じょうほう発信はっしん〉といった【社会しゃかいへの活動かつどう】を展開てんかいしていく。
  Aケア役割やくわり引受ひきうけ条件じょうけんかせしゅ専業せんぎょうからケア役割やくわりへの【シフトをはばむもの】の除去じょきょのために、父親ちちおやがケア能力のうりょく獲得かくとくする機会きかい時間じかん保障ほしょう父親ちちおや労働ろうどう条件じょうけん改善かいぜん必要ひつようとなる。また、【シフトをうなが要因よういん】の強化きょうか必要ひつようとなる。とくに、ケア役割やくわり引受ひきうけ契機けいきとなるライフイベントにおける療育りょういく機関きかん地域ちいき工夫くふうさらに「受苦じゅく体験たいけんをわかちあうピア」集団しゅうだんでありすでにケア役割やくわりけた「ロールモデル」を一定いっていすうようするおやかいへの積極せっきょくてき支援しえんのぞまれる。

 
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■P18
 てい けい立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「変革へんかく運動うんどう部分ぶぶん運動うんどう☆01としての障碍しょうがいじん☆02運動うんどう――1989ねん韓国かんこく障碍しょうがいじん雇用こよう促進そくしんほう制定せいてい障碍しょうがいじん福祉ふくしほう闘争とうそう運動うんどうをめぐって」
 だい希望きぼう:B

  1989ねん韓国かんこく青年せいねん障碍しょうがいじんによるはげしい闘争とうそう運動うんどうおこなわれていたのが、障碍しょうがいじん雇用こよう促進そくしんほう制定せいてい障碍しょうがいじん福祉ふくしほう改正かいせい闘争とうそう運動うんどうである。当時とうじその運動うんどうかかわった障碍しょうがいじんたちはみずからの運動うんどうは「社会しゃかい変革へんかく運動うんどうとしての部分ぶぶん運動うんどう」であったとう。それは、80年代ねんだい韓国かんこくおこなわれていた社会しゃかい運動うんどう影響えいきょうがあったとえる。  この闘争とうそう運動うんどうは、韓国かんこくはつ障碍しょうがいじん中心ちゅうしん組織そしきてき継続けいぞくてきまれて成功せいこうした運動うんどうとして、障碍しょうがいじん運動うんどうなかたか評価ひょうかされているものである。
  ほん報告ほうこくでは、下記かきの4てんについて整理せいりする。1.当時とうじ青年せいねん障碍しょうがいじんたちがみずからの運動うんどうをなぜ「社会しゃかい変革へんかく運動うんどうとしての部分ぶぶん運動うんどう」であったと評価ひょうかしているのかについて整理せいりする。2.青年せいねん障碍しょうがいじんたちが最初さいしょに「ウリント 」という組織そしきをつくり、「全国ぜんこく肢体したい不自由ふじゆう大学生だいがくせい連合れんごうかい以下いかぜん大連たいれん)」という全国ぜんこく組織そしき加盟かめいしたねらいと、おやりく団体だんたいであった「ぜん大連たいれん」をどのように変革へんかく運動うんどう団体だんたいえていったかについて当時とうじ資料しりょうとききと調査ちょうさつうじて記述きじゅつする。3.ふたつの闘争とうそう運動うんどう成功せいこういたった経緯けいい成果せいか、そして限界げんかいについてく。とくに、障碍しょうがいじん団体だんたいとの連帯れんたい役割やくわり分担ぶんたん戦略せんりゃくなどをまとめる。4.最後さいごにこの変革へんかく運動うんどうが90年代ねんだい障碍しょうがいじん運動うんどうへの連続れんぞくせい連続れんぞくせいについて整理せいりする。
  韓国かんこく当事とうじしゃによる障碍しょうがいじん運動うんどう歴史れきしは20ねんみじかい。日本にっぽんやアメリカにくらべて、はるかにみじか歴史れきしである。それにもかかわらず、現在げんざい韓国かんこく障碍しょうがいじん運動うんどう世界せかいどこでもられないほどおおきく成長せいちょうしている。ほん報告ほうこくでは、このふたつの法律ほうりつ闘争とうそう運動うんどうおおきな成長せいちょう源流げんりゅうであったことを考察こうさつする。
☆01 社会しゃかい変革へんかく運動うんどう基本きほんにおいた部分ぶぶん運動うんどうとは、労働ろうどう学生がくせい貧困ひんこん女性じょせいなど、かく部分ぶぶん運動うんどうおこない、当時とうじ政権せいけんきずつけることで、結局けっきょく政権せいけんたおして交替こうたいすることを目的もくてきとする。
☆02 ここでは韓国かんこく表記ひょうきである障碍しょうがいじん(ジャン・エ・イン)をそのまま漢字かんじ使つかう。 ☆03 「ウリント」の「ウリン」は純粋じゅんすい韓国かんこくとして、ものもの衝突しょうとつするときおと意味いみする。また「ト」は物事ものごと根拠こんきょとなる場所ばしょ意味いみする。ほん報告ほうこくでの「ウリント」は衝突しょうとつはじまる場所ばしょとしてえがいている。

 
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■P17
 桐原きりはら 尚之なおゆき全国ぜんこく[精神病せいしんびょう]しゃ集団しゅうだん・(きょう)プランニングネットワーク東北とうほく客員きゃくいん研究けんきゅういん
 「法的ほうてき能力のうりょく支援しえんされた意思いし決定けってい議論ぎろんにおける障害しょうがいしゃ運動うんどう課題かだい
 だい希望きぼう:B

  障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやくだい12じょうでは、「すべての障害しょうがいのあるひと法的ほうてき能力のうりょく平等びょうどうみとめ、その法的ほうてき能力のうりょく行使こうし必要ひつよう支援しえんけることができる」としている。精神せいしん保健ほけん福祉ふくし指定してい科目かもくである精神せいしん保健ほけん福祉ふくしろんにも、「障害しょうがいしゃ法的ほうてき能力のうりょく行使こうしする場合ばあい必要ひつよう支援しえんにアクセスできるための措置そちくに義務付ぎむづけ、すなわち「支援しえんけて自己じこ決定けっていおこなう」という概念がいねんまれた。」と法的ほうてき能力のうりょく平等びょうどう支援しえんされた意思いし決定けっていについてふれている。この支援しえんされた意思いし決定けっていは、インクルージョン・ヨーロッパやインクルージョン・インターナショナルで決議けつぎされたことにより、くにでも幅広はばひろられるようになった。ところが、支援しえんされた意思いし決定けってい実践じっせんれいについて、日本語にほんごのものはいまのところつけることができない。さらには、支援しえんされた意思いし決定けっていかんする文献ぶんけんそのものも、異常いじょうなまでにすくないようにおもう。
  また、障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやく批准ひじゅんされれば、意思いし能力のうりょく行為こうい能力のうりょく制限せいげんする成年せいねん後見こうけん制度せいどや、刑事けいじ責任せきにん能力のうりょくによる心神喪失しんしんそうしつ抗弁こうべんにも影響えいきょうすることが予測よそくされる。それらへの対策たいさく議論ぎろん障害しょうがいしゃ団体だんたいあいだでも不十分ふじゅうぶん希薄きはくである。そこで、法的ほうてき能力のうりょく支援しえんされた意思いし決定けっていかんするしょ文献ぶんけんをまとめ、障害しょうがいしゃ団体だんたいむべき課題かだいしめす。
  国内こくないでの法的ほうてき能力のうりょく議論ぎろんおも権利けんり能力のうりょく行為こうい能力のうりょくについて民法みんぽう基盤きばんっているが、国際こくさいてきには刑事けいじ責任せきにん能力のうりょくふくまれ、今後こんご課題かだいとしていかに包括ほうかつするかがひとつめの課題かだいとしてげられる。
  民事みんじかんしては、成年せいねん後見こうけん制度せいどなどの意思いし能力のうりょくおよ行為こうい能力のうりょく制限せいげんおこなわれているが、依然いぜんとして、「成年せいねん後見こうけん制度せいど権利けんり擁護ようご」との見方みかたつよく、全日本ぜんにほんしゅをつなぐ育成いくせいかい刊行かんこうの「わかりやすい障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやく知的ちてき障害しょうがいのあるひと権利けんりのために―」でも、12じょう2こう解説かいせつでは、「後見人こうけんにん補佐ほさじん補助ほじょじんが、わたしたちの権利けんり利益りえきおもっていること、えらんだことを大切たいせつにするようにします。後見人こうけんにんじん補助ほじょじんが、わたしたちの必要ひつようわせて支援しえんするようにします。裁判所さいばんしょ定期ていきてきめられたとき)に、後見人こうけんにんじん補助ほじょじんをチェックするようにします。」としている。これらにたいしてどのようにむかがふたつめの課題かだいとしてげられる。
 また、成年せいねん後見こうけん制度せいど代替だいたいさくとして、法的ほうてき能力のうりょく制限せいげんともなわない支援しえんされた意思いし決定けっていにより、自己じこ決定けってい支援しえんおこなう。自己じこ決定けってい社会しゃかいモデルにもとづき、自己じこ決定けってい制限せいげん社会しゃかいによるものとして、個人こじん能力のうりょく還元かんげんさせない。また、この法的ほうてき能力のうりょく具体ぐたいてきれいげる。課題かだいとしては、国内こくないでの議論ぎろん不足ふそく調査ちょうさ研究けんきゅう不足ふそくである。
  障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやく批准ひじゅんされる可能かのうせいまえて、12じょう議論ぎろんはじめなければならない。

 
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■S16
 朝霧あさぎり ひろし
 「バリアブレイク!!――利用りようしゃ介助かいじょしゃあらたなかたちさい評価ひょうかについての模索もさく
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  利用りようしゃ主体しゅたい尊重そんちょうする介助かいじょ現場げんば一部いちぶ介助かいじょしゃ手足てあしろん」とばれる、利用りようしゃ介助かいじょしゃ関係かんけいせいがある。
  「介助かいじょしゃ手足てあしろん」を介助かいじょしゃ教育きょういく主体しゅたいとする現場げんばでは、介助かいじょしゃたちは、「いかなるときも、利用りようしゃ意思いし決定けっていもとうごくこと」をとく信条しんじょうとし、「まち共通きょうつういにはなしかけられても、『おはよう』などの挨拶あいさつなどもふくめ、介助かいじょしゃは、くちかなくてい」「ヘルパー資格しかくっていても、仕事しごと以外いがい場所ばしょ友人ゆうじん関係かんけいのある場合ばあいは、いにならぬよう、介助かいじょはいってはいけない」など、事業じぎょうしょごとのいくつかのルールにもとづいて、利用りようしゃ関係かんけいせいつくってゆくことがおおい。
  「介助かいじょしゃ手足てあしろん」としょうされる関係かんけいせいおおくが、夜勤やきんまりをふくむ、利用りようしゃ介助かいじょしゃが1たいせいの、利用りようしゃ介助かいじょしゃせっする時間じかんおお滞在たいざいがた介助かいじょ現場げんばもとめられる。   また、1たいせい介助かいじょとはぎゃく介助かいじょ仕組しくみとして、一人ひとり介助かいじょしゃ短時間たんじかんいくにんもの利用りようしゃいえまわ巡回じゅんかいがた介助かいじょもある。こちらの場合ばあいにも、利用りようしゃせっする時間じかん短時間たんじかんのため、「介助かいじょしゃ利用りようしゃ指示しじ沿ってうごく」という以外いがいの、たい個人こじんとしての会話かいわまれにくい。介助かいじょしゃ手足てあしろん否定ひていをしないじょうで、「利用りようしゃ介助かいじょしゃが、外出がいしゅつ社会しゃかい参加さんかふく日常にちじょう生活せいかつ時間じかん共有きょうゆうするなかで、それぞれの立場たちばから、ともにかんがえ、ともにかんじ、『ひととしてのこえ』を、社会しゃかいはっすることができるような、利用りようしゃ介助かいじょしゃであり、障害しょうがいしゃ健常けんじょうしゃ、という呼称こしょうに捉われない、利用りようしゃ介助かいじょしゃあらたな関係かんけいせいが<あってもい>のではないか。」という疑問ぎもんから、介助かいじょしゃ利用りようしゃあらたな関係かんけいせい社会しゃかいてき役割やくわり模索もさくします。
  介助かいじょという職業しょくぎょうは、物理ぶつりてきいだかかえなどの動作どうさ以上いじょうに、おおくの時間じかんを「ひとい、せっする職業しょくぎょう」という意味いみで、「11ねん連続れんぞく国内こくない自殺じさつしゃまんにん」「国内こくないにうつびょう患者かんじゃすうは250まんにんから600まんにん人口じんこうの3〜5%)」など、ひとひととのいの深刻しんこく不足ふそくしている現代げんだいにおいて、<ひとひととのしんのつながりの大切たいせつさ>をつめなおすヒントをたしかに内包ないほうしているとかんがえます。『このくにになくてはならない職業しょくぎょう』として、『介助かいじょ』という職業しょくぎょう特色とくしょくである<ひとせっする仕事しごと>という本質ほんしつ価値かち社会しゃかいなかさい評価ひょうかされることをねがい、24あいだ介助かいじょけて生活せいかつをする当事とうじしゃ立場たちばから、生活せいかつ様子ようす、スライド写真しゃしんなどももちいて、「これからの時代じだい利用りようしゃ介助かいじょしゃ関係かんけいせい」、また、「ひととして、こころゆたかにきること」への考察こうさつを、介助かいじょしゃ立場たちばからの意見いけんれながら発表はっぴょうします。
 
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■P15
 杉野すぎの 昭博あきひろ関西学院大学かんせいがくいんだいがく人間にんげん福祉ふくし学部がくぶ
 「DM不正ふせい行政ぎょうせい責任せきにん障害しょうがいしゃ団体だんたい郵便ゆうびん割引わりびき制度せいど沿革えんかく
 だい希望きぼう:B

  2009ねん上半期かみはんきにおける障害しょうがいしゃ団体だんたい郵便ゆうびん割引わりびき制度せいど悪用あくようしたダイレクトメールの不正ふせい発送はっそう事件じけん報道ほうどう紹介しょうかいし、事件じけん過程かてい行政ぎょうせい適正てきせい発行はっこうした「障害しょうがいしゃ団体だんたい証明しょうめいしょ」が重要じゅうよう役割やくわりたしていることを指摘してきする。また、実態じったいのない団体だんたいを、郵便ゆうびん割引わりびき制度せいど対象たいしょうとしての障害しょうがいしゃ団体だんたいとして認定にんていする証明しょうめいしょ発行はっこうしたのは厚生省こうせいしょうだけではなく、ほかに、みなと大阪おおさか適正てきせい認定にんていがおこなわれたうたがいが報道ほうどうされている。ほん報告ほうこくでは、こうした障害しょうがいしゃ福祉ふくし行政ぎょうせい責任せきにんについて強調きょうちょうする。
  つづいて、事件じけん結果けっか郵便ゆうびん事業じぎょう会社かいしゃは「心身しんしん障害しょうがいしゃようていりょうだい3しゅ郵便ゆうびんぶつ利用りよう審査しんさ厳格げんかくしたために、「8わり以上いじょう有料ゆうりょう購読こうどくしゃ」という条件じょうけんたせずに従来じゅうらい機関きかん発行はっこう断念だんねんする障害しょうがいしゃ団体だんたいていることに着目ちゃくもくし、この制度せいど沿革えんかくについてにち(1986;2001)にもとづいて紹介しょうかいする。1971ねん制度せいど発足ほっそくまえに、障害しょうがいしゃ団体だんたいがわ自分じぶんたちの機関きかんちか郵便ゆうびんぶつである「通信つうしん教育きょういく教材きょうざい」などの「だいしゅ郵便ゆうびんぶつ」としてのあつかいをもとめたが、郵政省ゆうせいしょう厚生省こうせいしょう社会しゃかいきょく更生こうせいはないのなかで「だいしゅ郵便ゆうびんぶつ」としてあつかうことがまり、障害しょうがいしゃ団体だんたいがわにそのむね提案ていあんされている。この経緯けいいからかんがえると、郵便ゆうびん当局とうきょく最初さいしょから、障害しょうがいしゃ団体だんたい機関きかんが「だいしゅ郵便ゆうびんぶつ」としての規定きていわないことは承知しょうちうえでこの制度せいど導入どうにゅうしたことがうかがわれ、いまさら一般いっぱん雑誌ざっし新聞紙しんぶんしなみの「だいしゅ郵便ゆうびんぶつ」としての基準きじゅんもとめることは矛盾むじゅんしているとえるてん指摘してきしたい。

 
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■S14
 野崎のさき 泰伸やすのぶ立命館大学りつめいかんだいがく衣笠きぬがさ総合そうごう研究けんきゅう機構きこうポストドクトラルフェロー)
 「ディアスポラとしての障害しょうがい――障害しょうがいはないにこしたことはないか、へのひとつの視座しざ
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  なんらかの特定とくてい社会しゃかいてき属性ぞくせいを――それが明示めいじてきでも暗示あんじてきでも――称揚しょうようすることによって、人間にんげん存在そんざい肯定こうていしようとする立場たちばがある。この立場たちば属性ぞくせい主義しゅぎぶことにしよう。わたしほん発表はっぴょうにおいて、この属性ぞくせい主義しゅぎ不要ふようであり、個人こじん存在そんざい、そのひとることを肯定こうていすればよいことを主張しゅちょうする。わたし議論ぎろんにおいては、そのひと社会しゃかいてき属性ぞくせい否定ひていされないが、属性ぞくせい主義しゅぎ否定ひていされるのである。
  「そのひとることを肯定こうていする」ということは、人間にんげん存在そんざいすることの基盤きばんを、社会しゃかいてき属性ぞくせいにではなく、たんに「そのひと存在そんざいする」ことにもとめよう、とっていることになる。このことは、属性ぞくせいそのものが不要ふようであることを意味いみするわけではない。属性ぞくせいを、属性ぞくせい主義しゅぎとは無縁むえんなものにてんわだちする必要ひつようがあるということである。それは、「属性ぞくせいによって人間にんげん存在そんざいすることの承認しょうにんを、もうもとめなくてもよい」という可能かのうせいへとひらいてゆく。だとしても、そのことは社会しゃかいてき属性ぞくせいによる紐帯ちゅうたい否定ひていするものでもない。否定ひていされるべきは、「おな属性ぞくせいであるからこそ共同きょうどうせいちあげられるべきである」という属性ぞくせい主義しゅぎである。属性ぞくせい主義しゅぎへの抵抗ていこうは、おな属性ぞくせいであることによってその存在そんざい承認しょうにんされるという論理ろんり、つまり人間にんげん存在そんざい基盤きばんとしての共同きょうどうせいげるべきだという回路かいろ批判ひはんするものなのである。その意味いみにおいて、属性ぞくせい主義しゅぎ対抗たいこうするのはディアスポラせいであるといえよう。
 こうした議論ぎろんは、「障害しょうがいはないにこしたことはないか」という疑問ぎもん側面そくめんからこたえるものとしてもめる。障害しょうがいという社会しゃかいてき属性ぞくせいは、障害しょうがいしゃという人間にんげん存在そんざいにまとわりつくものではあるが、そのことと、障害しょうがいによって障害しょうがいしゃ存在そんざい価値かちづけをおこなうことは論理ろんりてきにはべつのことである。このことは、論理ろんりてきにはべつのことであるにもかかわらず、両者りょうしゃをつなげてしまう現実げんじつ力学りきがくが、存在そんざいはするがそれは不当ふとうであることをもしめす。

 
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■P13
 星加ほしか 節夫せつお障害しょうがいしゃ職業しょくぎょうぎょう総合そうごうセンター)  「移動いどう困難こんなんのある重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ職業しょくぎょう生活せいかつかんする研究けんきゅう
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B →決定けってい:B

  T背景はいけいくには、共生きょうせい社会しゃかい実現じつげんけ、障害しょうがいしゃ高齢こうれいしゃとうはじめだれもが自立じりつしてらせる生活せいかつ環境かんきょう整備せいび推進すいしんをしており、それは障害しょうがいしゃ施策しさく中心ちゅうしん構成こうせいしている。リハビリテーションにおいても職業しょくぎょう生活せいかつとおしたQOL の向上こうじょう目指めざしたものにじくあしうつしてきている状況じょうきょうである。2006 ねんには通称つうしょう「バリアフリー新法しんぽう」を制定せいていし、“移動いどうめんてきひろがり”を配慮はいりょした総合そうごうてきなバリアフリー推進すいしんはかられることとなった。しかし一方いっぽうでは、移動いどう困難こんなんのある重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ通勤つうきん公共こうきょう交通こうつう機関きかん利用りようできないという理由りゆう雇用こよういたらないケースや雇用こよう継続けいぞく困難こんなんになるケースはけっしてすくなくない現状げんじょうがあり、バリアフリー進展しんてん重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ就業しゅうぎょう可能かのうせいたかめることにはかならずしもなっていない。
  U調査ちょうさ方法ほうほう移動いどう困難こんなんのある四肢しし麻痺まひのある障害しょうがいしゃたいして通勤つうきん就業しゅうぎょうかんする調査ちょうさ実施じっしした。通勤つうきん就業しゅうぎょう可能かのうにしている事例じれいとおして、職業しょくぎょう生活せいかつのありかたをA)〜D)の類型るいけいべつ検討けんとうする。A)公共こうきょう交通こうつう機関きかん利用りようによるケース B)自家用車じかようしゃ通勤つうきんによるケース C)しょくじゅう近接きんせつ居宅きょたくかまえて通勤つうきんするケース D)在宅ざいたく就業しゅうぎょうのケース
  V結果けっか移動いどう困難こんなんのある重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃにとって、通勤つうきん就業しゅうぎょう毎日まいにちのことであり、身体しんたいてき負担ふたんともなうが、通勤つうきん就業しゅうぎょう個人こじん努力どりょくにより、なかばリスクをともないながら時差じさ通勤つうきんとうによりかろうじて可能かのうにしている状況じょうきょうである。バリアフリー新法しんぽう施行しこう生活せいかつ環境かんきょう整備せいび改善かいぜん進展しんてんしながらも依然いぜんとして、通勤つうきん環境かんきょう就業しゅうぎょう環境かんきょう重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃには非常ひじょう困難こんなんともな状況じょうきょうである。しかしながら施設しせつ設備せつび整備せいびでありながらも障害しょうがい特性とくせいかした継続けいぞくてき就業しゅうぎょう可能かのうにしている事例じれいもあり、いずれの事例じれいからも職業しょくぎょう生活せいかつとおして生活せいかつにハリがている様子ようすうかがわれ、生活せいかつじょうきょう好転こうてんしていることがあきらかになった。

 
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■P12
 西田にしだ 美紀みき立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 医療いりょうてきケアを必要ひつようとする進行しんこうせい重度じゅうど障害しょうがいしゃ単身たんしん在宅ざいたく生活せいかつけての課題かだい
 だい希望きぼう:B

問題もんだい意識いしき研究けんきゅう背景はいけい
  近年きんねん医学いがく医療いりょう技術ぎじゅつ進歩しんぽ医療いりょう体制たいせい改革かいかくなどにより、医療いりょうてきケアを必要ひつようとしながら地域ちいき生活せいかつする人達ひとたち増加ぞうかしてきている。しかし、個人こじんてき事情じじょう在宅ざいたく体制たいせい整備せいびおくれるなかで、生活せいかつ維持いじ困難こんなん実情じつじょうもあり、医療いりょう福祉ふくし双方そうほうへのケアニーズをもつ障害しょうがいしゃ生活せいかつ支援しえん体制たいせいさい構築こうちく制度せいど改革かいかくけた実情じつじょう把握はあくいそがれる。ほん研究けんきゅうでは、医療いりょうてきケア(おかせかさねてきあつ換気かんき療法りょうほう:NPPV・気管きかん吸引きゅういん)が必要ひつようとなった単身たんしんしゃいち事例じれいつうじ、在宅ざいたく生活せいかつ支援しえん体制たいせい課題かだい要因よういんあきらかにすることを目的もくてきとした。
方法ほうほう
  アクションリサーチにより療養りょうようしゃ具体ぐたいてき生活せいかつ場面ばめん把握はあくし、研究けんきゅう対象たいしょうしゃ・サービス提供ていきょう関与かんよする福祉ふくし医療いりょう機関きかんからのヒアリング・記録きろく参照さんしょうして、在宅ざいたく生活せいかつ維持いじのための課題かだい要因よういん分析ぶんせきした。調査ちょうさ対象たいしょうしゃ:61さい男性だんせい病名びょうめいすじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう(ALS)を対象たいしょうとした。調査ちょうさ期間きかん:2008ねん7がつ〜2009ねん6がつ実施じっしした。
結果けっか考察こうさつ
  進行しんこうせい疾患しっかん場合ばあい身体しんたい変化へんか対応たいおうすべく生活せいかつ・ケアニーズの変化へんかはやい。生活せいかつ長時間ちょうじかん滞在たいざいするヘルパーは当事とうじしゃ日々ひび生活せいかつニーズを尊重そんちょうしながら職務しょくむにあたり、医療いりょうしゃやまい進行しんこうやリスク回避かいひ重視じゅうししながら職務しょくむにあたる傾向けいこうがある。双方そうほうとも当事とうじしゃ安全あんぜん安楽あんらくかたられ、そのなかにおいて当事とうじしゃ主体しゅたい尊重そんちょうされたり自己じこ決定けっていせまられたりするが、当事とうじしゃ自身じしん変化へんかする身体しんたい葛藤かっとうしながら、援助えんじょしゃらの様々さまざま価値かちあいだ戸惑とまどれている。援助えんじょしゃとの関係かんけいせい介護かいごやケアをめぐってしょうじる精神せいしんてき負担ふたんはときに身体しんたい症状しょうじょうとして表現ひょうげんされ、やまい進行しんこうとの見極みきわめが困難こんなんになる場合ばあいもある。進行しんこうせい疾患しっかん変化へんか速度そくど対応たいおうするには、柔軟じゅうなん先取さきどりした制度せいど必要ひつようである。そのためにも医療いりょう福祉ふくし連携れんけい必要ひつようなのはいうまでもないが、上述じょうじゅつしたようなニーズのとらえにくさがある。個々ここ医療いりょう福祉ふくし)のニーズや課題かだいではなく、医療いりょうてきケアが日常にちじょう生活せいかつ延長線えんちょうせんじょうにあることを、双方そうほう認識にんしきし、進行しんこうせい疾患しっかん生活せいかつ支援しえん体制たいせい情報じょうほう蓄積ちくせきしめしていくことが必要ひつようである。

 
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■P11  吉田よしだ 幸恵ゆきえ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「<やめい>をかかえるひと社会しゃかいきていく戦略せんりゃく――障害しょうがいしゃ生活せいかつから」
 だい希望きぼう:B

  ほん報告ほうこく筆者ひっしゃ出会であった、地域ちいきらす精神せいしん障害しょうがいしゃ生活せいかつきとりのなかあきらかになる、精神せいしん障害しょうがいしゃ生活せいかつするじょうでの問題もんだいてん指摘してきし、その問題もんだいてんとどのように対峙たいじし、きるためにとった戦略せんりゃくあきらかにして今後こんごかんがえうる援助えんじょかた考察こうさつすることを目的もくてきとしている。
  地域ちいき生活せいかつおくる、ある精神せいしん障害しょうがいしゃ生活せいかつをききとった。統合とうごう失調しっちょうしょうをはじめとする精神病せいしんびょうは、長期ちょうきそして慢性まんせいする傾向けいこうがある。そのなかで、当事とうじしゃ病状びょうじょう変化へんかや、家族かぞくまわりを他人たにん変化へんか出来事できごと経験けいけんすることになる。時間じかん経過けいかなかで、変化へんか出来事できごと経験けいけんしつつ、当事とうじしゃ(や家族かぞく)が自分じぶん障害しょうがいをどうとらえ、おかれた状況じょうきょうをどう意味付いみづけし、そしてそれがまたどのように変化へんかしていくのかといった過程かていあきらかになる。当事とうじしゃ本人ほんにんがライフヒストリーをかたことによって、経験けいけんしてきた多様たよういとなみを抽出ちゅうしゅつすることが可能かのうになり、変化へんか問題もんだいきたとき、それにどう対峙たいじし、回避かいひまたは受容じゅようしたのかをあきらかにする。対象たいしょうしゃ自分じぶん経験けいけんかたることで現在げんざい問題もんだいてんなどがあきらかとなっていった。
  対象たいしょうしゃ自身じしんにとっては、たとえば「統合とうごう失調しっちょうしょう」という言葉ことばたんにその病気びょうき名前なまえ意味いみするだけでなく、偏見へんけん差別さべつもちいられるメタファーとなっているのは残念ざんねんながら事実じじつである。そのため、精神せいしん障害しょうがいのあるひとはスティグマのために、自分じぶん疾患しっかん情報じょうほうをどのように周囲しゅういつたえるかということも課題かだいのひとつである。それを秘密裏ひみつりにして生活せいかつしていくのは、もっとも容易よういなスティグマの回避かいひほうかもしれないがそれには限界げんかいがある。だからといって、周囲しゅうい自分じぶん病気びょうきをひとつひとつ説明せつめいし、れてもらうのも困難こんなんである。そしてそれは自然しぜんではない。しかし当事とうじしゃ病者びょうしゃという武器ぶきにしていることも事実じじつである。これは社会しゃかい生活せいかつするための戦略せんりゃくといえる。拒絶きょぜつされない信頼しんらいできる人間にんげん選択せんたくし、人間にんげん関係かんけい構築こうちくしていくことが、地域ちいき生活せいかつするうえで一番いちばん重要じゅうよう事柄ことがらであるとかんがえられる。
  精神せいしん保健ほけん福祉ふくしほう制定せいてい以降いこう精神せいしん障害しょうがいしゃへの援助えんじょほうはそれまであった身体しんたい知的ちてき障害しょうがいしゃのケースワークろんがそのままあてがわれ、いびつかたちをなしていた。そして現在げんざい精神せいしん障害しょうがい領域りょういき福祉ふくしサービスも、既存きそん知的ちてき身体しんたい障害しょうがい福祉ふくしてはめるだけで、精神せいしん障害しょうがい背景はいけいけていないことが当事とうじしゃかたりからもあきらかになった。その障害しょうがいたいするけのサービスだけではなく、個人こじん個人こじん生活せいかつ問題もんだいとして包括ほうかつてき今後こんごかんがえなければならない。精神せいしん障害しょうがい特異とくいせいがあることから定型ていけいてはめることが困難こんなんであり、その援助えんじょほうをリアルに実感じっかんできるすくない。実感じっかんするためには個別こべつ具体ぐたいてきに、そのひとにフィットした援助えんじょ必要ひつようとなるが、実際じっさいには困難こんなんである。そのような援助えんじょ不可能ふかのうだからこそ、当事とうじしゃはあらゆる<戦略せんりゃく>をとった。それを紹介しょうかいし、何故なぜそのような戦略せんりゃく必要ひつようになるのか考察こうさつしたい。

 
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■P10  三野みの 宏治こうじ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「精神せいしん障害しょうがい当事とうじしゃ支援しえんしゃによる障害しょうがいしゃ施設しせつにおける対等たいとうせいについての研究けんきゅう――クラブハウスモデル研究けんきゅうとおして支援しえん関係かんけい変換へんかんこころみ」
 だい希望きぼう:B

  精神せいしん障害しょうがいしゃ福祉ふくしにおいても障害しょうがいしゃ本人ほんにん支援しえんしゃである専門せんもん関係かんけい対等たいとうせい強調きょうちょうされるようになっている。また、従来じゅうらい専門せんもんによる直接的ちょくせつてき支援しえんほかに、セルフヘルプなど本人ほんにんちから注目ちゅうもくし、その活動かつどうへのはたらきかけを重要じゅうよう支援しえん方法ほうほうとしてとらえようとするかんがえもある。
  しかし、実際じっさい支援しえん場面ばめんで、たとえば作業さぎょうしょ授産じゅさん施設しせつおこなわれる活動かつどうで、本当ほんとうに「対等たいとう」は可能かのうであり、実現じつげんされているだろうか。またそれはつねのぞましいものだろうか。たとえば自他じたたいして加害かがいてき行為こういがなされる場合ばあいがある。本人ほんにんたちにゆだねる場合ばあいより、作業さぎょう組織そしき運営うんえいにとってあきらかに有益ゆうえきべつ選択肢せんたくしがあることがある。どうしたらよいか。また、実際じっさいには対等たいとうでないのに、対等たいとう関係かんけいしたでなされているゆえにある対応たいおうただしいとされるなら、その対応たいおう本人ほんにんたいする加害かがいともなりうる。
  こうした場面ばめんで、組織そしき、とくに「対等たいとう」を標榜ひょうぼうする「クラブハウスモデル」は、どんな対応たいおうをしているのか。また、その対応たいおうをどのように解釈かいしゃくしているのか。それを調査ちょうさし、議論ぎろんし、現実げんじつてき正直しょうじき支援しえんのありかたかんがえる。
  まず、本人ほんにん支援しえんしゃいくあつまり、対等たいとうせいについて自由じゆう意見いけん交換こうかんおこない、調査ちょうさけて論点ろんてん整理せいりおこなう。
  そのうえで、当事とうじしゃ専門せんもん対等たいとうせい前提ぜんていとして社会しゃかい復帰ふっきにむけてのリハビリテーションをおこなうクラブハウスのひとつである東京とうきょう小平こだいらの「クラブハウスはばたき」でききと調査ちょうさ参与さんよ観察かんさつおこなう。対等たいとうせいについて、その困難こんなんについて、対処たいしょについて、支援しえんしゃ本人ほんにんく。また活動かつどう実際じっさいい、そこにこるできごとを記述きじゅつする。
この本人ほんにん支援しえんしゃきょうはたらけによる研究けんきゅう対等たいとうせいをその活動かつどう中心ちゅうしんえた実践じっせんであり、自分じぶん自身じしんふく集団しゅうだん力動りきどう観察かんさつ検証けんしょうすることは、支援しえん関係かんけいにおいて本人ほんにん支援しえんしゃ役割やくわりがいかなるものであったのかを見直みなお作業さぎょうである。

 
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■S09
 吉野よしの うつぼ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ
 「せい同一どういつせい障害しょうがい疾病しっぺいの『恩恵おんけい』とその限界げんかいせい
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B

  90年代ねんだい初頭しょとうまで「変態へんたい」、「趣味しゅみ嗜好しこう」としかなされていなかった性別せいべつ移行いこう問題もんだいが、「せい同一どういつせい障害しょうがい」という医療いりょう疾病しっぺいによってもたらした影響えいきょうたしかにおおきかった。「病気びょうきならば仕方しかたない」という消極しょうきょくてき理解りかい」に寄与きよし、メディアには当事とうじしゃ露出ろしゅつえ、一見いっけん日本にっぽんは「せい同一どういつせい障害しょうがい」にたいして寛容かんようくにであるかのような表層ひょうそうてき雰囲気ふんいきただよっている。
  しかしそれは一方いっぽうで、「まれついてのおとこよりおとこらしいFtM」あるいはそのぎゃくというジェンダー強化きょうかかんがえにもつながり、性的せいてき指向しこうにおいても、ヘテロセクシズムがはばをきかせている(MtFに恋人こいびと有無うむたずねるときかならず「彼氏かれしは」とくことに、なん疑義ぎぎはさまれない)。「せい同一どういつせい障害しょうがい」という医療いりょうによっておおきくがれてしまった当事とうじしゃ実態じったいける必要ひつようがある。
  2000年代ねんだいなかばから、セクシュアリティをテーマとして活動かつどうする若手わかてのコミュニティによって、 男女だんじょげん圧力あつりょくていくせい同一どういつせい障害しょうがい当事とうじしゃ存在そんざい徐々じょじょ顕在けんざいしている。そこでは、えて決定的けっていてき性別せいべつ移行いこうおこなわず、「乳房ちぶさなし、ペニスなし」など、一般いっぱんには中途半端ちゅうとはんぱとされるような身体しんたい状態じょうたい肯定こうていてきとらえるこころみがなされている。前述ぜんじゅつのように、せい同一どういつせい障害しょうがいめぐっては、ほう制度せいどをはじめ当事とうじしゃ性別せいべつおとこおんなへと二元にげんてきけようとする強力きょうりょく磁場じばはたらいており、医療いりょう関係かんけいしゃ一部いちぶ当事とうじしゃあいだ前提ぜんていとしてかたられることがすくなくない。申請しんせいしゃは、これらの背景はいけいに「GID規範きはん」が存在そんざいしていることを指摘してきし、ほう社会しゃかい制度せいど当事とうじしゃ多様たようせい縮減しゅくげんしていることをあきらかにした。
  また医療いりょう観点かんてんからは、当事とうじしゃ多様たよう身体しんたいニーズに応答おうとう研究けんきゅうほとんおこなわれていない。当事とうじしゃ身体しんたいえるためには、なんらかのかたち医療いりょう介在かいざいせざるをない。しかし、医療いりょうがわ当事とうじしゃがわがそれぞれ想定そうていする「GID医療いりょう」の内実ないじつには齟齬そごがある。のぞ身体しんたいのありかたには個人こじんによってはばがあるが、外科げか医療いりょうてきであり、最終さいしゅうてきに「おんなおとこ」の身体しんたい近似きんじした状態じょうたい当事とうじしゃ誘導ゆうどうしていくのである。
  ほん報告ほうこくでは、このような「せい同一どういつせい障害しょうがい医療いりょう10ねん歴史れきし周囲しゅうい状況じょうきょう整理せいりし、混乱こんらん現状げんじょうまえたうえで、疾病しっぺいとしてのせい同一どういつせい障害しょうがいから、かたとしてのトランス・ジェンダーへの提言ていげんをはかるものである。

 
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■P08
 白杉しらすぎ しん立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんにおける自立じりつ生活せいかつセンターの支援しえんかた――自立じりつ生活せいかつセンターにおける権利けんり擁護ようご活動かつどう中心ちゅうしんにして」
 だい希望きぼう:B

  自立じりつ生活せいかつセンターは、社会しゃかい障害しょうがいしゃ世界せかいかんがあることをうったえるうん動体どうたいと、「障害しょうがいしゃ専門せんもん障害しょうがいしゃである」という観点かんてんから、従来じゅうらい福祉ふくしからになとなり、さらに必要ひつよう制度せいど開拓かいたくしていく事業じぎょうたいである。しかし、現在げんざいでは事業じぎょうたい中心ちゅうしんとなり、うん動体どうたい弱体じゃくたいしつつある。これでは一般いっぱん事業じぎょうしゃわりがなく、自立じりつ生活せいかつセンターではなくなってしまうというとわたしかんがえる。
  そこでほん報告ほうこくでは、モデルとなっている関西かんさい地区ちくにある2団体だんたいげ、自立じりつ生活せいかつセンターの特徴とくちょうである権利けんり擁護ようご活動かつどう中心ちゅうしんに、実態じったいにあわせた重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんにおける自立じりつ生活せいかつセンターの支援しえんかたについて検討けんとうする。
  わがくににおける自立じりつ生活せいかつ運動うんどうは、1960年代ねんだいの「あおしばかい」による活動かつどうから注目ちゅうもくされるようになった。当時とうじ活動かつどう衝撃しょうげきてきなものであり、障害しょうがいしゃ存在そんざい権利けんり強烈きょうれつ印象いんしょうづけた。それからやく40ねん現在げんざいまで、自立じりつ生活せいかつ運動うんどうひろ市民しみんられるようになり、介助かいじょ保障ほしょう制度せいど措置そちから契約けいやく転換てんかんするひとし徐々じょじょ障害しょうがいしゃ権利けんり獲得かくとくしてきた。このような自立じりつ生活せいかつ運動うんどうにおいて、1980年代ねんだいにアメリカよりつたわった自立じりつ生活せいかつセンターの役割やくわりおおきなものがある。最初さいしょにわがくに自立じりつ生活せいかつセンターを中心ちゅうしんとした自立じりつ生活せいかつ運動うんどう歴史れきしれることで、自立じりつ生活せいかつ運動うんどう社会しゃかいにどのような影響えいきょうあたえたのか考察こうさつする。
  つぎ自立じりつ生活せいかつセンターがおこな自立じりつ支援しえん視野しやれた地域ちいき生活せいかつ支援しえん研究けんきゅうおこなっている北野きたの誠一せいいち理論りろんげ、一方いっぽうではわたし自身じしんかんがえる今後こんごのぞまれる自立じりつ生活せいかつセンター運営うんえい体系たいけいぞうおよ運動うんどう団体だんたいとして権利けんり擁護ようご活動かつどう中心ちゅうしんとした障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんかんする活動かつどうぞう検討けんとう仮説かせつとして提示ていじする。
  以上いじょう仮説かせつをもとに、介助かいじょしゃ派遣はけんサービス事業じぎょう中心ちゅうしんとなっている現状げんじょうがあるなかで、事業じぎょう運動うんどう両面りょうめん比較的ひかくてきバランスをたもちながら、自立じりつ生活せいかつセンターとしての活動かつどうおこなっている2団体だんたい質的しつてき調査ちょうさおこない、それらの特徴とくちょう共通きょうつうてん検討けんとうする。
 それらの実践じっせんれいをもとに今後こんご自立じりつ生活せいかつセンターにもとめられる運営うんえい体系たいけいと、自立じりつ生活せいかつセンターの権利けんり擁護ようご活動かつどう活発かっぱつさせるための方法ほうほう提示ていじする。そして、運動うんどう団体だんたいである自立じりつ生活せいかつセンターが、障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ必要ひつよう介助かいじょるためにどのような支援しえん必要ひつようかを検討けんとうする。

 
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■P07
 山本やまもと すすむ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「重度じゅうど障害しょうがいしゃ単身たんしん在宅ざいたく生活せいかつにおけるまいの実態じったい課題かだい
 だい希望きぼう:B

  【問題もんだい意識いしき研究けんきゅう背景はいけい】2008年度ねんどからすでに実施じっししている難病なんびょう(ALS)患者かんじゃ在宅ざいたく独居どっきょ生活せいかつ支援しえん活動かつどう報告ほうこくする。家族かぞくたない重度じゅうど障害しょうがいしゃ地域ちいき一人暮ひとりぐらしをすることはきわめて困難こんなんである。医療いりょうてきケアの管理かんり医療いりょう介護かいご連携れんけいなど、従来じゅうらい家族かぞく仕事しごととされてきたことをにな制度せいどてき体制たいせい整備せいびされていない。ほん研究けんきゅうでは、医療いりょうてきケアをようする単身たんしんしゃいち事例じれいつうじ、在宅ざいたく生活せいかつにおけるまいの実態じったい課題かだいあきらかにすることを目的もくてきとする。
  【研究けんきゅう方法ほうほう昨年度さくねんどから実施じっししている難病なんびょう(ALS)患者かんじゃ在宅ざいたく独居どっきょ生活せいかつ支援しえん活動かつどう継続けいぞくし、その過程かてい記録きろくのほか、対象たいしょうしゃへのヒアリング調査ちょうさとともにまいの実測じっそくおよび観察かんさつ調査ちょうさおこなう。写真しゃしん撮影さつえいやスケッチをつうじてハードめんにおける実態じったいとニーズを把握はあくし、課題かだい抽出ちゅうしゅつする。調査ちょうさ対象たいしょうしゃすじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう(ALS)を罹病りびょうした61さい男性だんせい調査ちょうさ期間きかん:2008ねん7がつ〜2009ねん5がつ実施じっしした。
  【結果けっか考察こうさつ進行しんこうせい疾患しっかん障害しょうがいしゃ安定あんていてき在宅ざいたく生活せいかつ維持いじしていくには、病状びょうじょう進行しんこうともなうケアニーズを当事とうじしゃ周囲しゅうい共有きょうゆうし、それに対応たいおうできるだけの柔軟じゅうなん制度せいど模索もさくしていくことが必要ひつようである。じゅう空間くうかん整備せいび当事とうじしゃ家族かぞく中心ちゅうしんとなっておこなわれることが想定そうていされているが、対象たいしょうしゃのような単身たんしん障害しょうがいしゃ進行しんこう最中さいちゅう自身じしんがどのようにまうかを具体ぐたいてきにイメージし、決定けっていすることは困難こんなんである。また、家族かぞくがいないため訪問ほうもんヘルパーがハードめんでのささやかなニーズにも対応たいおうしなければならないが、対象たいしょうしゃのこれまでいとなんできた生活せいかつのルールにそくさず関係かんけい悪化あっかすることもあった。必要ひつようとなった医療いりょうてきケアにより、医療いりょう従事じゅうじしゃ以外いがいれられないスペースがあらわれたりもした。発病はつびょう以後いご生活せいかつ変化へんか対応たいおうしようとする対象たいしょうしゃ葛藤かっとうじゅう空間くうかん反映はんえいされる。経済けいざいてき負担ふたん考慮こうりょしつつ、患者かんじゃ本人ほんにん医療いりょう福祉ふくし建築けんちくとう専門せんもん連携れんけいによる効果こうかてき支援しえんもとめられる。

 
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■P06
 長谷川はせがわ ゆい立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「重度じゅうど障害しょうがいしゃ在宅ざいたく支援しえん体制たいせい事例じれい検討けんとう
 だい希望きぼう:B

  【問題もんだい意識いしき研究けんきゅう背景はいけい】2008年度ねんどからすでに実施じっししている難病なんびょう(ALS)患者かんじゃ在宅ざいたく独居どっきょ生活せいかつ支援しえん活動かつどう報告ほうこくする。家族かぞくたない重度じゅうど障害しょうがいしゃ地域ちいき一人暮ひとりぐらしをすることはきわめて困難こんなんである。医療いりょうてきケアの管理かんり医療いりょう介護かいご連携れんけいなど、従来じゅうらい家族かぞく仕事しごととされてきたことをにな制度せいどてき体制たいせい整備せいびされていない。ほん研究けんきゅうは、とくに医療いりょうてきケアをようする障害しょうがいしゃ地域ちいき一人暮ひとりぐらしをするために、必要ひつよう支援しえん内容ないよう具体ぐたいてきあきらかにし、制度せいどむすびつく情報じょうほうとして整理せいりして提示ていじすることを、最終さいしゅうてき目的もくてきとした。
  【研究けんきゅう方法ほうほう昨年度さくねんどから実施じっししている難病なんびょう(ALS)患者かんじゃ在宅ざいたく独居どっきょ生活せいかつ支援しえん活動かつどう継続けいぞくし、その過程かてい記録きろく分析ぶんせきをし、支援しえん仕方しかたとかかわりかたについて検討けんとうおこなった。また本人ほんにん福祉ふくし医療いりょう機関きかんからのヒアリングをとおし、安定あんていした在宅ざいたく生活せいかつをサポートするためにのぞましい連携れんけいのありかたについても考察こうさつおこなった。調査ちょうさ対象たいしょうしゃ:60さい男性だんせい病名びょうめいすじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう以下いかALS)を対象たいしょうとした。調査ちょうさ期間きかん:2008ねん4がつ〜2009ねん8がつ
  【結果けっか考察こうさつ安定あんていした在宅ざいたく生活せいかつ維持いじするには、@医療いりょう機関きかんとの密接みっせつ連携れんけい、A症状しょうじょう進行しんこうわせた柔軟じゅうなん制度せいど設計せっけい、B本人ほんにん病状びょうじょう進行しんこうわせた適切てきせつなニーズ判定はんてい支援しえん必要ひつようである。とく進行しんこうせい難病なんびょう患者かんじゃ場合ばあい、その時点じてんでの「しんの」ニーズをかならずしも本人ほんにんつね自覚じかく認識にんしきをしているわけではない。また周囲しゅういつねまさしくニーズを把握はあくすることもむずかしい。本人ほんにん要求ようきゅう優先ゆうせんされ、医療いりょうてきアセスメントをさまたげる場合ばあいがある。在宅ざいたく生活せいかつ維持いじするためには、医療いりょう福祉ふくし密接みっせつ連携れんけい必要ひつようであることがあきらかになった。
  進行しんこうせい疾患しっかんによる身体しんたい状況じょうきょう変化へんか即応そくおうした支援しえん体制たいせい構築こうちくするためには、医療いりょう福祉ふくし連携れんけいもとづいた重層じゅうそうてきなサポートが必要ひつようである。また、進行しんこうせい疾患しっかんをもつ中途ちゅうと障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ障害しょうがいしゃになるためには、アドボカシーが必要ひつよう場合ばあいがあるとかんがえられる。

 
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■P05
 山口やまぐち 真紀まき立命館大学りつめいかんだいがく大学だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「病名びょうめい診断しんだんをめぐる問題もんだいとはなにか――診断しんだんめいもとめ、かたこえからかんがえる」
 だい希望きぼう:B

 しん状態じょうたいかた診断しんだんめいあたえること/ることについて、これまでにおおく、医療いりょう社会しゃかいがく分野ぶんやから医療いりょうとの批判ひはんがなされてきた。しかし一方いっぽうで、診断しんだんもとめ、肯定こうていてきかたこえがある。ほん報告ほうこくでは、成人せいじんしてのちアスペルガー症候群しょうこうぐん診断しんだんされたニキリンコの主張しゅちょう注目ちゅうもくしたい。近年きんねん、ドナ・ウィリアムズの『自閉症じへいしょうだったわたしへ』(1993=2000,新潮社しんちょうしゃ)をかわきりに、自閉症じへいしょうやADHD(注意ちゅうい欠陥けっかんどうせい障害しょうがい)、アスペルガー症候群しょうこうぐん診断しんだんされた人々ひとびとが、みずからの世界せかいかん体験たいけんきした書籍しょせき発表はっぴょうされはじめている。ニキリンコは日本にっぽんにおけるこうしたうごきを牽引けんいんしてきた人物じんぶつでもある。ニキは、それまでにかんじてきた周囲しゅういとのズレの原因げんいん説明せつめいもとめる気持きもちをいてきたこと、ふたつの診断しんだんめいのあいだでうごいたこと、それがられたときの安堵あんど了解りょうかい気持きもちをしるしている。そして当人とうにん病名びょうめいもとめることの正当せいとうせい主張しゅちょうする。
 ニキの主張しゅちょうからもたらされるのは、診断しんだんめいるというおこないはきづらさの承認しょうにん治療ちりょう対処たいしょへの機会きかいとしてもあり、病名びょうめいによってられる場所ばしょ位置いちがあるという認識にんしきである。このことは重要じゅうよう問題もんだい提起ていきふくんでいる。すなわち、これまでの医療いりょう批判ひはん議論ぎろんにおいては、ときに行為こうい権力けんりょく構造こうぞうやラベリングによってもたらされるまけ側面そくめん指摘してき傾注けいちゅうし、「だれにとって、なに問題もんだいなのか」という視角しかくからの議論ぎろんりこぼしてきたのではないかということ。さらにはニキが「制裁せいさいだけを先取さきどりしてきた歴史れきし」と批判ひはんしているように、これらの議論ぎろん現在げんざいがたが、ニキにおいては病名びょうめいもとめるという気持きも自体じたい否定ひていするものとして感受かんじゅされている側面そくめんかんがえられる。ニキの指摘してきけるとき、診断しんだんをめぐる問題もんだいについていまいち整理せいり検討けんとうされる必要ひつようがあるのではないか。報告ほうこくでは、ニキ自身じしん引用いんようしている精神せいしん香山かやまリカの議論ぎろんげ、その「対立たいりつ」の様相ようそう考察こうさつする。

 
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■P04
 松枝まつえだ 亜希子あきこ立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「こう精神せいしんやく規制きせいされるにいたった経緯けいいとその論拠ろんきょ――トランキライザーの事例じれいから」
 だい希望きぼう:B

  現在げんざい保険ほけんやくとして処方しょほうされているこう精神せいしんやく、トランキライザーは、1950-60年代ねんだい市販しはんされ広範こうはん流通りゅうつうしていた。いったん広範こうはん普及ふきゅうしたトランキライザーが市販しはんやくから保険ほけんやくへとどのように移行いこうしたのか。製薬せいやく企業きぎょう宣伝せんでん戦略せんりゃくおよび行政ぎょうせいによる販売はんばい規制きせい変遷へんせんなどの子細しさいにわたる検討けんとうをつうじて、その過程かていあきらかにするのが研究けんきゅう目的もくてきである。研究けんきゅう方法ほうほうは、1950-60年代ねんだい発行はっこうされた新聞しんぶん雑誌ざっし記事きじ広告こうこく行政ぎょうせい資料しりょう言説げんせつ分析ぶんせきをとる。
  1950-60年代ねんだい、トランキライザー(こう不安ふあんやく一種いっしゅ)は「ノイローゼ・不眠ふみんに」「あかちゃんの夜泣よなきに」という広告こうこく新聞しんぶんなどに多数たすう掲載けいさいし、薬局やっきょく市販しはんされていた。一般いっぱんひと容易ようい購入こうにゅうでき、消費しょうひりょうおおかった。製薬せいやく企業きぎょう広告こうこく掲載けいさいなどの販売はんばい促進そくしんちからそそいでおり、おおくの利益りえき商品しょうひんであった。しかし、60年代ねんだい後半こうはんになるとトランキライザーの一般いっぱん販売はんばい行政ぎょうせいによって規制きせいされ、医療いりょう保険ほけん制度せいどのもとで処方しょほうされる保険ほけんやくへと移行いこうした。その背景はいけいには、容易ようい入手にゅうしゅできるがゆえの乱用らんようなどの問題もんだい存在そんざいしたという。その結果けっか幾度いくどかの段階だんかいをへてトランキライザーの市販しはんには規制きせいがかかっていく。行政ぎょうせいによる規制きせいは、トランキライザーの乱用らんよう問題もんだいになったことがおおきな要因よういんではあったことにくわえ、睡眠すいみんざい風邪かぜやく、ビタミンざいなどの副作用ふくさよう乱用らんよう乱売らんばいといった大衆たいしゅうやくをとりまく状況じょうきょう問題もんだいしていたことが背景はいけいにある。行政ぎょうせいのそれらの対応たいおうへのひとつとしてトランキライザーも市販しはんやくから保険ほけんやくへとわっていったといえることがあきらかとなった。報告ほうこく当日とうじつには、行政ぎょうせい対応たいおう変遷へんせんをより仔細しさい分析ぶんせきする。

 
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■P03
 坂本さかもと いさおひとし*・佐藤さとう 浩子ひろこ**・渡邉わたなべ あい**
 *国立こくりつリハビリテーションセンター **立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ
 「聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃ情報じょうほう保障ほしょう手話しゅわ通訳つうやく制度せいどかんする考察こうさつ――みっつの自治体じちたい実態じったい調査ちょうさから」
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B→Bに決定けってい

  聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃなかには先天的せんてんてきないし言語げんごがくとくまえ聴覚ちょうかくうしない、日本にっぽん手話しゅわ主要しゅようなコミュニケーション手段しゅだんとしてもちいている人々ひとびと(いわゆる「ろうしゃ」)がいる。手話しゅわ通訳つうやく制度せいどは、そのような手話しゅわ使用しようする人々ひとびととどこおりなく日常にちじょう生活せいかつおくれるように、1970年代ねんだい以降いこう当事とうじしゃ運動うんどう要求ようきゅう沿かたち公的こうてき整備せいびされてきた。しかしながら、公的こうてき手話しゅわ通訳つうやく制度せいどにはまだまだおおくの構造こうぞうてき問題もんだい存在そんざいするものと指摘してきされ、関連かんれん団体だんたい全日本ぜんにほんろうあ連盟れんめい全国ぜんこく手話しゅわ通訳つうやく問題もんだい研究けんきゅうかい日本にっぽん手話しゅわ通訳つうやく協会きょうかい)からおおくの要望ようぼう提出ていしゅつされている。
ほん研究けんきゅうは、みっつの自治体じちたいにおける手話しゅわ通訳つうやく養成ようせい事業じぎょう利用りようじょうきょうかんするききと調査ちょうさから、(1)手話しゅわ通訳つうやく養成ようせい事業じぎょう効果こうか限界げんかい、(2)手話しゅわ通訳つうやく利用りようにおけるしょ問題もんだい、といったふたつのてんあきらかにし、日本にっぽん手話しゅわ通訳つうやく制度せいどかかえる構造こうぞうてき問題もんだい改善かいぜんするためになに必要ひつようとされているのか考察こうさつすることを目的もくてきとしている。
  結果けっかとして、手話しゅわ通訳つうやく養成ようせい事業じぎょうかんしては、@手話しゅわ通訳つうやく養成ようせい事業じぎょうにおける手話しゅわ通訳つうやくしゃ育成いくせい困難こんなんさ、A手話しゅわ通訳つうやく養成ようせい事業じぎょうにおける手話しゅわサークルの重要じゅうようせい、というふたつのてんあきらかになった。また、手話しゅわ通訳つうやく利用りよう活用かつようじょうきょうについては、@手話しゅわ通訳つうやく奉仕ほうしいん硬直こうちょくせい、A聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃいちにんたりの手話しゅわ通訳つうやく利用りよう件数けんすうにおける自治体じちたいあいだ、B聴者ちょうしゃ・ろうしゃあいだのコミュニケーションの不在ふざい、C特定とくてい項目こうもく特定とくてい人物じんぶつにおける手話しゅわ通訳つうやく利用りよう集中しゅうちゅう、D手話しゅわ通訳つうやく使つかけ、Eソーシャル・ワーカーとの連携れんけい必要ひつようせい、F手話しゅわ通訳つうやくしゃてい賃金ちんぎん問題もんだい、というななつのてんあきらかになった。
  これらのてんまえたうえで、ろうしゃ情報じょうほう保障ほしょう手段しゅだんとして手話しゅわ通訳つうやく制度せいど機能きのうするためには、@手話しゅわ通訳つうやく専門せんもんしょくしょく細分さいぶん、A労働ろうどう現場げんばにおける手話しゅわ通訳つうやく公的こうてき保障ほしょう、B手話しゅわ通訳つうやく養成ようせい事業じぎょう見直みなおし(養成ようせい事業じぎょう有料ゆうりょう手話しゅわサークルとの連携れんけい強化きょうか)、C手話しゅわ通訳つうやくとソーシャル・ワーカーの連携れんけい強化きょうかないし手話しゅわ通訳つうやく相談そうだんいん資格しかく、といった4てん改善かいぜん必要ひつようであると結論けつろんけた。

 
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■P02
 沖山おきやま やや障害しょうがいしゃ職業しょくぎょう総合そうごうセンター)
 「職業しょくぎょうてき困難こんなんからみた視覚しかく障害しょうがいしゃ雇用こよう問題もんだい――障害しょうがい種類しゅるいあいだ格差かくさ
 だい希望きぼう:A だい希望きぼう:B →Bでもとの連絡れんらくあり →

  障害しょうがいしゃ雇用こよう施策しさくにおいて障害しょうがいしゃ福祉ふくし施策しさく障害しょうがい程度ていど基準きじゅん借用しゃくようして現在げんざいいたり、すでに50年間ねんかん経過けいかしているが、支援しえんニーズに焦点しょうてんてた障害しょうがい認定にんていにはなっていず不備ふびがあることがさけばれてひさしい。
  従来じゅうらい国際こくさい障害しょうがい分類ぶんるい(ICIDH)が個人こじん因子いんし環境かんきょう因子いんし視点してんくわえて、国際こくさい生活せいかつ機能きのう分類ぶんるい(ICF)として改訂かいていされるまでにおおくの期間きかんようしたが、障害しょうがいしゃたいして就業しゅうぎょう支援しえんおこな実務じつむ現場げんばでは、実態じったいとしての職業しょくぎょうてき困難こんなん注目ちゅうもくして業務ぎょうむすすめてきた。ICFのモデルにもあるように、障害しょうがいしゃだけでなく雇用こよう想定そうていされる事業じぎょうしょ状況じょうきょうや、そのさい使つかえる支援しえん制度せいどなどをふまえた相互そうご関係かんけいなか職業しょくぎょうじょう困難こんなん評価ひょうかし、その結果けっかをもとに就職しゅうしょく支援しえんするのは就職しゅうしょく支援しえん現場げんばでは日常にちじょうてきなことであった。
  これまでの障害しょうがい学会がっかい大会たいかいにおいて、30年間ねんかん就職しゅうしょく支援しえん実務じつむ経験けいけんから報告ほうこくしゃ自身じしん問題もんだい意識いしきをもとに、2007ねんには先行せんこう研究けんきゅうとう紹介しょうかいとおして、2008ねんには障害しょうがいしゃ就業しゅうぎょう支援しえん現場げんば担当たんとうしゃ意識いしき調査ちょうさ結果けっかから、職業しょくぎょうてき困難こんなんからみた雇用こよう問題もんだいについて報告ほうこくした。今回こんかいは、すこ視点してんえて最近さいきんおこなったふたつの調査ちょうさ結果けっかちゅう)から、障害しょうがいしゃ雇用こようにあたり障害しょうがい種類しゅるいあいだ格差かくさがあることに注目ちゅうもくし、視覚しかく障害しょうがいしゃ職業しょくぎょうてき困難こんなんについて紹介しょうかいする。
  1996ねん総務庁そうむちょう労働省ろうどうしょうたいして職業しょくぎょう機関きかん独自どくじ職業しょくぎょうてき困難こんなん認定にんていおこなうように勧告かんこくしたが、具体ぐたいてき対応たいおうはまったくなされていない。「就職しゅうしょくしたい」と希望きぼうし、就職しゅうしょく活動かつどうかえしながらも就職しゅうしょくできずにいる障害しょうがいしゃこそ就職しゅうしょく困難こんなんしゃであるという視点してんから職業しょくぎょう機関きかん独自どくじ職業しょくぎょうてき困難こんなん評価ひょうかがなされ、それが就職しゅうしょく支援しえん反映はんえいされるよう職業しょくぎょうてき困難こんなんめぐ関心かんしん関係かんけいしゃあいだひろまることを期待きたいする。
ちゅう)「中高なかだか年齢ねんれい障害しょうがいしゃ雇用こようかんする事業じぎょうしょ実態じったい調査ちょうさ」(2008ねんがつ
「ハローワークにおける求職きゅうしょく視覚しかく障害しょうがいしゃ就職しゅうしょくたいする意識いしき調査ちょうさ」(2008ねんがつ

 
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■P01
 大野おおの 真由子まゆこ立命館大学りつめいかんだいがく先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
 「「障害しょうがい」とはなにか――難病なんびょうしゃをめぐる障害しょうがいしゃ福祉ふくし制度せいどにおける現状げんじょう課題かだい
 だい希望きぼう:B だい希望きぼう:A →決定けってい:B

  障害しょうがいしゃ基本きほんほうだい2じょうによれば、「障害しょうがいしゃ」とは「身体しんたい障害しょうがい知的ちてき障害しょうがいまた精神せいしん障害しょうがいがあるため、長期ちょうきにわたり日常にちじょう生活せいかつまた社会しゃかい生活せいかつ相当そうとう制限せいげんけるもの」をいう。難病なんびょうしゃがここでいう「障害しょうがいしゃ」に該当がいとうするかについては、本文ほんぶんちゅう明示めいじてき記載きさいはなされていない。もっとも、2004ねん改正かいせいにおいて「くにおよ地方ちほう公共こうきょう団体だんたいは…難病なんびょうとう起因きいんする障害しょうがいがあるため継続けいぞくてき日常にちじょう生活せいかつまた社会しゃかい生活せいかつ相当そうとう制限せいげんけるものたいする施策しさくをきめこまかく推進すいしんするようつとめなければならない」と附帯ふたい決議けつぎだい16じょう障害しょうがい予防よぼうかんする基本きほんてき施策しさく」でれられている。このことは「障害しょうがい予防よぼう」という枠組わくぐみのなか難病なんびょうとらえることにより、難病なんびょうしゃ一応いちおう適用てきよう対象たいしょうとしつつも、その判断はんだんたっては病気びょうきそのものをているのではなく、難病なんびょうから起因きいんしてしょうじてくる「身体しんたい障害しょうがい」をもって「障害しょうがいしゃ」としていると解釈かいしゃくすることが妥当だとうである。
  くに障害しょうがいしゃ福祉ふくし制度せいどは、もっぱら機能きのう障害しょうがいにその焦点しょうてんてられている。難病なんびょう患者かんじゃ福祉ふくしサービスを利用りようするためには、身体しんたい障害しょうがいしゃ福祉ふくし制度せいど対象たいしょうとなる必要ひつようがあり、そのためには身体しんたい障害しょうがいしゃ手帳てちょう取得しゅとくしなければならない。しかし、判定はんていには症状しょうじょう固定こていしているなどの条件じょうけんがあり、症状しょうじょう不安定ふあんてい進行しんこうする可能かのうせいもある難病なんびょうしゃにとっては非常ひじょう利用りようしづらいものとなっている。また、身体しんたいてき機能きのう障害しょうがいとしては明確めいかくあらわれない神経症しんけいしょうじょうたとえば、いたみやしびれ)や、機能きのう障害しょうがいとして発現はつげんするまでに時間じかんようするケースなどについては現在げんざいのところ不十分ふじゅうぶんであるといわざるをない。
  ほん報告ほうこくでは、難病なんびょうであるCRPS(ふく合性あいしょう局所きょくしょ疼痛とうつう症候群しょうこうぐん患者かんじゃへのインタビュー調査ちょうさからられたデータをもとに、障害しょうがいしゃ手帳てちょう要求ようきゅうする「機能きのう障害しょうがい」には該当がいとうしない身体しんたいてき不自由ふじゆうとそれにともな社会しゃかい生活せいかつじょう困難こんなんについて現状げんじょうあきらかにする。また、患者かんじゃかたった「困難こんなんさ」を社会しゃかい福祉ふくしがくてき視点してんから考察こうさつすることによって、現行げんこう制度せいどではどこまでの救済きゅうさい可能かのうなのか、救済きゅうさいできない場合ばあいしょうじる不都合ふつごうせいとはなにか、不都合ふつごうおぎなうにはどのような制度せいど見直みなおしが必要ひつようであるのか、といった難病なんびょうしゃをめぐる障害しょうがいしゃ福祉ふくし制度せいどにおける課題かだい提示ていじする。従来じゅうらいの「障害しょうがい機能きのう障害しょうがい」という枠組わくぐみをえ、生活せいかつじょう支障ししょう困難こんなんといった当事とうじしゃのニーズを中心ちゅうしんとする多義たぎてき観点かんてんから、「障害しょうがい」とはなにかについてさい定義ていぎしていくことを目的もくてきとする。


UP:200905 REV:20090615, 16, 18, 23, 24, 0709, 11, 15, 22, 26, 28, 29, 30, 31, 0801, 02, 10, 30, 0920
障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい  ◇障害しょうがい学会がっかい  ◇障害しょうがいがく・2009  ◇障害しょうがいがく
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