10月4日にち、小惑星しょうわくせいファエトンによる恒星こうせい食しょくを観測かんそくして探査たんさ機きミッションに協力きょうりょく

【2021年ねん9月がつ24日にち 星ほしナビ編集へんしゅう部ぶ】

呼よびかけ：荒井あらい朋子ともこ（DESTINY⁺サイエンスチーム）

小惑星しょうわくせいファエトン（(3200) Phaethon、フェートン等とうとも表記ひょうきされる）は、ふたご座ざ流星りゅうせい群ぐんの母はは天体てんたいです。1.4年ねんの公転こうてん周期しゅうきで、黄道こうどう面めんから傾かたむいた細長ほそながい楕円だえん軌道きどうを描えがいて回まわっています。近日きんじつ点てん距離きょりは水星すいせいより太陽たいように近ちかく、遠日点えんじつてんでは小惑星しょうわくせい帯たいまで達たっし、一いち公転こうてん中ちゅうに天体てんたいの表面ひょうめん温度おんどが200～1000Kまで変化へんかします。ファエトンは近日きんじつ点てん付近ふきんで塵ちり（ダスト）の放出ほうしゅつが確認かくにんされており、活動かつどう的てき小惑星しょうわくせいに分類ぶんるいされます。小惑星しょうわくせい2005 UD（直径ちょっけい約やく1km）はファエトンから分裂ぶんれつしたと考かんがえられているほか、ファエトン自体じたいが小惑星しょうわくせい帯たいにある太陽系たいようけい最大さいだいの小惑星しょうわくせいパラスから分裂ぶんれつした可能かのう性せいもあります。

JAXAではこの興味深きょうみぶかい小惑星しょうわくせいをフライバイ探査たんさする計画けいかくを進すすめています。ミッション名めいは「DESTINY⁺（デスティニープラス）」。探査たんさ機きは、秒速びょうそく約やく35kmの高速こうそくでファエトンから500kmの距離きょりまで接近せっきんし、すれ違ちがいざまに追尾ついびしながら天体てんたい表面ひょうめんを撮像さつぞうし、天体てんたい周辺しゅうへんのダストを直接ちょくせつ分析ぶんせきします。また、ファエトン到着とうちゃくまでは惑星わくせい間あいだ空間くうかんを漂ただようダストを直接ちょくせつ分析ぶんせきします。2024年ねんにイプシロンSロケットで打うち上あげられ、2028年ねん1月がつに到着とうちゃく予定よていです。ファエトンのフライバイ後ごに分裂ぶんれつ天体てんたいの小惑星しょうわくせい2005 UDをフライバイする可能かのう性せいも検討けんとうしています。

探査たんさ機きが小惑星しょうわくせいに到着とうちゃくする前まえに、地上ちじょうから天体てんたいを詳くわしく観測かんそくすることはミッションの成功せいこうに不可欠ふかけつです。2017年ねん12月にファエトンが地球ちきゅうに接近せっきんした際さいには世界中せかいじゅうで様々さまざまな観測かんそくが行おこなわれ、自転じてん周期しゅうき（3.6時じ間あいだ）や自転じてん軸じくの傾かたむき、反射はんしゃ分光ぶんこう特性とくせいなどが精度せいどよく求もとめられました。アレシボのレーダー観測かんそくから天体てんたいの3次元じげんモデルが得えられ、ファエトンがリュウグウやベンヌと似にた形かたちを持もつこともわかりました（参照さんしょう：「地球ちきゅう近傍きんぼう小惑星しょうわくせいファエトンの姿すがたをレーダーで観測かんそく」）。一方いっぽう、異ことなる観測かんそくから求もとめられた天体てんたいサイズの推定すいてい誤差ごさが大おおきいという課題かだいがありました。

天体てんたいの真しんの大おおきさと形かたちを直接ちょくせつ知しるため、2019年ねんにファエトンによる恒星こうせい食しょく（小惑星しょうわくせいが恒星こうせいの手前てまえを横切よこぎる現象げんしょう）の観測かんそくが世界中せかいじゅうで行おこなわれました。小惑星しょうわくせいの推定すいてい直径ちょっけいは6km弱じゃくと小ちいさいため、これまでは恒星こうせいの掩蔽えんぺいを観測かんそくすることは困難こんなんでしたが、最近さいきん、位置いち天文てんもん衛星えいせいガイアのカタログがリリースされ、恒星こうせいの位置いち精度せいどが極きわめて高こう精度せいどになり、恒星こうせいの掩蔽えんぺいが観測かんそく可能かのうなほどに予報よほうの精度せいどが向上こうじょうしました。7月29日にちにアメリカ西部せいぶで見みられた7等とう星ぼしの食しょくの観測かんそくが歴史れきし的てき成功せいこうを収おさめ（参照さんしょう：「小惑星しょうわくせいファエトンによる恒星こうせい食しょく、アメリカで歴史れきし的てきな観測かんそく成功せいこう」）、日本にっぽん国内こくないでも8月がつ21日にちに北海道ほっかいどう渡島ととう半島はんとうで12等とう星ぼしの食しょく（「あと一いち歩ほ！雲くもにさえぎられたファエトン」）、10月15日にちには11等とう星ぼしの食しょくの観測かんそくが行おこなわれました（「再さい挑戦ちょうせんで雪辱せつじょく、ファエトンによる恒星こうせい食しょくの観測かんそくに成功せいこう」）。上記じょうきの観測かんそく結果けっかを踏ふまえ、アレシボのレーダー観測かんそくによる見積みつもりサイズが3～5%縮小しゅくしょうされましたが、まだ10～20%の推定すいてい誤差ごさがあります。

DESTINY⁺に搭載とうさいされるカメラの観測かんそく条件じょうけんを決定けっていするためには、ファエトン表面ひょうめんの反射はんしゃ率りつの正確せいかくな情報じょうほうが必要ひつようです。現状げんじょう、天体てんたいサイズの推定すいてい誤差ごさが大おおきいため、反射はんしゃ率りつの推定すいてい誤差ごさも十分じゅうぶんに小ちいさくありません。天体てんたいサイズの推定すいてい誤差ごさを10%以下いかに下さげるためには、さらなる恒星こうせい食しょくの観測かんそくを行おこない、異ことなる断面だんめんでのファエトンのサイズ情報じょうほうを得えることが有効ゆうこうかつ重要じゅうようです。

そこで私わたしたちは、今年ことし10月がつ3日にち深夜しんや（4日にち未明みめい）に日本にっぽん国内こくないで予測よそくされている、ファエトンによる恒星こうせい食しょくの観測かんそくを計画けいかくしています。掩蔽えんぺい帯たいが中国ちゅうごく地方ちほう、四国しこく地方ちほう、近畿きんき地方ちほうに及およぶため、できるだけ多おおくのアマチュア観測かんそく者しゃの協力きょうりょくを必要ひつようとしています。観測かんそくにご協力きょうりょくいただける方ほうは、DESTINY⁺サイエンスチームまでぜひご一報いっぽうください。合同ごうどう観測かんそくに参加さんかする条件じょうけんとしては、掩蔽えんぺい観測かんそくの経験けいけんのある方ほうで、掩蔽えんぺい観測かんそく機材きざい一式いっしきをお持もちの方ほうです。今回こんかいの対象たいしょう星ぼしは12等とう星ほしと暗くらく、掩蔽えんぺい現象げんしょうの継続けいぞく時間じかんは0.64秒びょうと短みじかいため、口径こうけい25cm以上いじょうの望遠鏡ぼうえんきょうと高速こうそく撮像さつぞうカメラの組くみ合あわせが必要ひつようです。また、観測かんそく予報よほうは直前ちょくぜんに修正しゅうせいされる可能かのう性せいがあります。

詳くわしい予報よほうや観測かんそく計画けいかく、観測かんそく参加さんかの条件じょうけん等とうのお問とい合あわせは、メールで受うけ付つけています。多おおくの観測かんそく者しゃのご協力きょうりょくをお願ねがいいたします。

DESTINY⁺サイエンスチーム一同いちどう（Eいーメール：PhaethonOccult at perc.it-chiba.ac.jp）

（1枚まい目め）星ほし食しょく帯たい図ず。食しょくの観測かんそくができるのは、2本ほんの線せんに挟はさまれた三重みえ県けん～山口やまぐち県けん北部ほくぶにかけての狭せまい地域ちいきと予想よそうされている。（2枚まい目め）10月がつ3日にち26:03（4日にち02:03）に起おこる恒星こうせい食しょく。ペルセウス座ざとぎょしゃ座ざの境界きょうかい付近ふきんに位置いちする12.0等とうのUCAC4 646-021974（=GSC 2894-00131）がファエトンに隠かくされる。それぞれ画像がぞうクリックで表示ひょうじ拡大かくだい