銀河ぎんが群ぐんの超ちょう淡あわ銀河ぎんがから長ながく伸のびる恒星こうせいストリーム

【2023年ねん2月がつ2日にち すばる望遠鏡ぼうえんきょう】

銀河ぎんがが寄よせ集あつまった銀河ぎんが群ぐんや銀河ぎんが団だんには、異ことなる性質せいしつを持もつ様々さまざまな銀河ぎんがが存在そんざいしている。その中なかで近年きんねん注目ちゅうもくされているのが、大おおきさは他たの銀河ぎんがと同どう程度ていどでありながら極端きょくたんに星ほしの数かずが少すくない「超ちょう淡あわ銀河ぎんが（Ultra Diffuse Galaxy）」だ。このような銀河ぎんがはなぜ存在そんざいするのだろうか。

英えい・エジンバラ大学だいがくのRokas Žemaitisさんたちの研究けんきゅうチームは、おおぐま座ざの方向ほうこう1200万まん光年こうねんの距離きょりにある渦巻うずまき銀河ぎんがM81を中心ちゅうしんとして40個こ以上いじょうの銀河ぎんがが集あつまった「M81銀河ぎんが群ぐん」の観測かんそく研究けんきゅうを、すばる望遠鏡ぼうえんきょうの超ちょう広こう視野しや主ぬし焦点しょうてんカメラ「ハイパー・シュプリーム・カム（HSC）」で行おこなっている。この銀河ぎんが群ぐんの性質せいしつは、私わたしたちの天そらの川かわ銀河ぎんがなどを含ふくむ局所きょくしょ銀河ぎんが群ぐんに似にていることから、天そらの川かわ銀河ぎんがの歴史れきしを解とき明あかす上うえで重要じゅうような研究けんきゅう対象たいしょうだ。

Žemaitisさんたちはこの銀河ぎんが群ぐんに属ぞくする、超ちょう淡あわ銀河ぎんが「F8D1」に注目ちゅうもくした。F8D1周辺しゅうへんの微細びさいな構造こうぞうを調しらべるために周囲しゅういの赤色あかいろ巨星きょせいの分布ぶんぷを調しらべたところ、F8D1から銀河ぎんが群ぐんの中心ちゅうしんへ伸のびた尻尾しっぽのような星ほしの流ながれ「恒星こうせいストリーム」が浮うかび上あがった。

（左ひだり）スローン・デジタル・スカイ・サーベイ（SDSS）によるM81銀河ぎんが群ぐん。点線てんせんはすばる望遠鏡ぼうえんきょうHSCの視野しや。赤あかい円えんは、そのうち超ちょう淡あわ銀河ぎんがF8D1を含ふくむ視野しや。（右みぎ）F8D1を含ふくむ領域りょういきにおける赤色あかいろ巨星きょせいの分布ぶんぷ。F8D1から銀河ぎんが群ぐんの中心ちゅうしん方向ほうこうへと伸のびる恒星こうせいストリームが確認かくにんできる。右みぎ上じょうはF8D1本体ほんたいの姿すがた（提供ていきょう：国立こくりつ天文台てんもんだい）

恒星こうせいストリームの長ながさは約やく20万まん光年こうねんで、F8D1本体ほんたいの大おおきさの30倍ばい以上いじょうもある。その明あかるさを元もとに見積みつもると、銀河ぎんがに含ふくまれる星ほしの3分ぶんの1以上いじょうが流ながれ出でたことが示しめされた。矮小わいしょう銀河ぎんがであるF8D1が巨大きょだいな銀河ぎんがM81の近ちかくを通過つうかしたことで、多おおくの恒星こうせいが引ひき剥はがされたのだと推測すいそくしている。

超ちょう淡あわ銀河ぎんがの成なり立たちについて、生うまれながらにして淡あわく広ひろがっていたのか、それとも銀河ぎんがが成長せいちょうする過程かていで変化へんかが起おこったのかが問とわれていたが、今回こんかいの研究けんきゅう結果けっかは答こたえが後者こうしゃであることを明確めいかくに示しめしている。一方いっぽうで、F8D1が失うしなった星ほしはM81に供給きょうきゅうされたのだとも言いえる。

「F8D1の恒星こうせいストリームの発見はっけんによって、M81銀河ぎんが群ぐんの力学りきがく進化しんかがこれまで考かんがえられていた以上いじょうに複雑ふくざつであることがわかりました。M81のような巨きょ大だい銀河ぎんがは、F8D1のような小ちいさな銀河ぎんががいくつも合体がったいすることで、大おおきく成長せいちょうしてきたと考かんがえられています。F8D1から多おおくの星ほし々が流ながれ出でている様ようは、M81が成長せいちょうするまさにその瞬間しゅんかんを見みているとも言いえます」（国立こくりつ天文台てんもんだいハワイ観測かんそく所しょ 岡本おかもと桜子さくらこさん）。