探査たんさ機き「みお」、オーロラの源みなもとを解とく水星すいせいの局所きょくしょ的てきコーラス波動はどうを発見はっけん

【2023年ねん9月がつ20日はつか 東北大学とうほくだいがく大学院だいがくいん理学りがく研究けんきゅう科か】

2018年ねん10月がつに打うち上あげられたJAXAの水星すいせい磁気圏じきけん探査たんさ機き「みお（MMO）」と、ヨーロッパ宇宙うちゅう機関きかん（ESA）の水星すいせい表面ひょうめん探査たんさ機き「MPO」の2機きからなる共同きょうどうミッション「ベピコロンボ」は、史上しじょう3回かい目めの水星すいせい直接ちょくせつ探査たんさミッションとして、2025年ねん12月の水星すいせい到着とうちゃくを目指めざして航行こうこう中ちゅうだ。

「みお」は数すう百ひゃくHzへるつ以上いじょうの電磁波でんじはを調しらべることができ、水星すいせい周辺しゅうへんの未知みちの電磁でんじ環境かんきょうを世界せかいで初はじめて明あきらかにできると期待きたいされている。地球ちきゅうや水星すいせいなど、太陽系たいようけい内ないの惑星わくせい周辺しゅうへんの宇宙うちゅう空間くうかんは、主おもに太陽たいようを起源きげんとするプラズマで満みたされており、電磁波でんじははプラズマの加速かそくや減速げんそくに関かかわっていることから、その観測かんそくから得えられる知見ちけんは惑星わくせいのプラズマ環境かんきょうの理解りかいに直結ちょっけつするものとなる。

水星すいせいは地球ちきゅうと同おなじく、固有こゆうの磁場じばとその磁場じばが支配しはいする領域りょういきである磁気圏じきけんを持もっている。地球ちきゅうでは、希薄きはくなプラズマが分布ぶんぷする領域りょういきを伝つたわる電磁波でんじはである「コーラス波動はどう」が夜よる側がわから昼ひる側がわの広ひろい範囲はんいで観測かんそくされる。コーラス波動はどうは低ていエネルギーの電子でんしを効率こうりつよく放射線ほうしゃせんになるまで加速かそくさせたり散乱さんらんさせたりすることが知しられ、急激きゅうげきな放射線ほうしゃせん増加ぞうかによる人工じんこう衛星えいせいの障害しょうがい発生はっせいの要因よういんに深ふかく関かかわっている。一方いっぽう、水星すいせい磁気圏じきけんにおけるコーラス波動はどうの存在そんざいは2000年代ねんだいから予想よそうされてきたが、水星すいせいの磁場じばは地球ちきゅうに比くらべて約やく1%と非常ひじょうに弱よわく、実際じっさいに発生はっせいするのかはわかっていなかった。

「ベピコロンボ」では全ぜん6回かいの水星すいせいフライバイが計画けいかくされていて、その初回しょかいとなった2021年ねん10月がつ2日にちと2回かい目めの2022年ねん6月がつ23日にちに水星すいせいから約やく200kmの高度こうどを接近せっきん飛行ひこうした。その際さい「みお」は、搭載とうさいされている電場でんじょう・プラズマ波動はどう・電波でんぱ観測かんそく装置そうち（PWI）を使つかって、水星すいせい磁気圏じきけんの電磁波でんじはを世界せかいで初はじめて観測かんそくした。

その結果けっか、朝ちょう側がわ（水星すいせいから約やく1200km内ない）の極きわめて限かぎられた領域りょういきでのみコーラス波動はどうが検出けんしゅつされ、予想よそう外がいの空間くうかん局所きょくしょ性せいが明あきらかになった。水星すいせい磁気圏じきけんの朝ちょう側がわに特有とくゆうのコーラス波動はどうを発生はっせいさせやすい物理ぶつりメカニズムがあることを意味いみしている。

2度どの水星すいせいフライバイ観測かんそく時じの水星すいせいからの距離きょり、コーラス波動はどうの強度きょうど、磁力じりょく線せん曲きょく率りつの関係かんけい。弱よわい磁力じりょく線せん曲きょく率りつの領域りょういきにつながる朝ちょう側がわでの観測かんそくでコーラス波動はどうが検出けんしゅつされた（提供ていきょう：金沢大学かなざわだいがく、東北大学とうほくだいがく、京都きょうと大学だいがく）

朝ちょう側がわに発生はっせいしていたコーラス波動はどう発生はっせいの要因よういんについて、金沢かなざわ大学だいがくの尾崎おざき光紀みつのりさんたちの研究けんきゅうチームは、磁力じりょく線せんの特徴とくちょうと非線形ひせんけい成長せいちょう理論りろんに基もとづいて、太陽たいよう風ふうによって強つよく変へん歪ひずみする水星すいせい磁場じばの曲きょく率りつの影響えいきょうを評価ひょうかした。その結果けっか、朝ちょう側がわでは磁力じりょく線せんに沿そって効率こうりつよく電子でんしから電磁波でんじはにエネルギーが受うけ渡わたしされ、コーラス波動はどうが発生はっせいしやすい条件じょうけんとなることが明あきらかになった。この効果こうかは、水星すいせい環境かんきょうを模擬もぎした数値すうちシミュレーションでも確認かくにんされている。

今回こんかいの研究けんきゅうは「観測かんそく」「理論りろん」「シミュレーション」の一体いったい的てきな解析かいせきにより、局所きょくしょ的てきなコーラス波動はどうの発生はっせいを明あきらかにしたものだ。さらに、これまで発生はっせいメカニズムが十分じゅうぶんにわかっていなかった水星すいせいのX線せんオーロラについても、コーラス波動はどうによって散乱さんらんされた電子でんしが水星すいせい表面ひょうめんで衝突しょうとつしてX線せんが放射ほうしゃされ発生はっせいしていることが示しめされた。

水星すいせいでのコーラス波動はどう発生はっせいのイメいめージ図じず（提供ていきょう：金沢大学かなざわだいがく、水星すいせい画像がぞう: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington）