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1993年　北海道南西沖地震、現地調査写真リポート　奥尻島　津波　山村武彦
｜東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい｜阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさい｜防災ぼうさいシステム研究所けんきゅうじょ｜現地げんち調査ちょうさ写真しゃしんレポート｜
　
１９９３年ねん７月がつ１２日にち／北海道ほっかいどう南西なんせい沖おき地震じしん（奥尻おくしり島とう地震じしん・津波つなみ）
現地げんち調査ちょうさ写真しゃしんリポート（文ぶん・写真しゃしん：山村やまむら武彦たけひこ）
地震じしん直後ちょくごの津波つなみで消防車しょうぼうしゃと船ふねが民家みんかに乗のり上あげた（青苗あおなえ地区ちく）
地震じしん発生はっせい時刻じこく／1993年ねん7月がつ12日にち午後ごご10時じ17分ふん11.7秒びょう
地震じしん規模きぼ／マグニチュード7.8、最大さいだい震度しんど6（当時とうじ奥尻おくしり島とうには地震じしん計けい未み設置せっちのため参考さんこう）
最大さいだい津波つなみ高だか／16.8メートル（奥尻おくしり島とう・初はつ松前まさき地区ちく）
震源しんげん／ユーラシアプレートと北米ほくべいプレートの境界きょうかいでサハリンから新潟にいがた沖おきへつながる日本海にほんかい東ひがし縁えん変動へんどう帯たい・奥尻おくしり海嶺かいれい直下ちょっか
震源しんげんの深ふかさ／約やく35キロメートル
死者ししゃ・行方ゆくえ不明ふめい者しゃ／230名めい　
 日本海にほんかい中部ちゅうぶ地震じしん（１９８３年ねん）では地震じしん発生はっせい後ご１７分ふん後ごに奥尻おくしり島とうを津波つなみが襲おそった。
その１０年ねん後ご、奥尻おくしりを襲おそった北海道ほっかいどう南西なんせい沖おき地震じしんのときそれを覚おぼえていた人ひとも多おおく
まだ大丈夫だいじょうぶだろうと岬みさきの突端とったんを回まわって車くるまで高台たかだいに避難ひなんしようとした人ひとたちは約やく５分ふん後ごの津波つなみで車くるまごと流ながされた
過去かこの災害さいがいだけにとらわれず、最悪さいあくを想定そうていして行動こうどうする必要ひつようがあるという教訓きょうくんを残のこした
グランドに流失りゅうしつしたピアノ／稲穂いなほ小学校しょうがっこう
 地震じしんによる大だい規模きぼな崖崩がけくずれが発生はっせい、青苗あおなえ港こうに近ちかいホテル洋々ようよう荘そう・森川もりかわ食堂しょくどうが土砂どしゃに埋うまった
この地震じしん土砂どしゃ災害さいがいにより建物たてものが倒壊とうかいし宿泊しゅくはく客きゃくと従業じゅうぎょう員いん41名めいのうち28名めいが死亡しぼうした
人的じんてき被害ひがいは奥尻おくしり町まち（175名めい）ほか（26名めい）で201名めい。行方ゆくえ不明ふめい者しゃは奥尻おくしり町まち（27名めい）ほか（2名めい）の29名めい
ロシアでも3人にんが行方ゆくえ不明ふめいとなっている
全壊ぜんかい住宅じゅうたく601棟むね、半壊はんかい408棟むね、一部いちぶ損壊そんかい5490棟むね、床上ゆかうえ浸水しんすい221棟むね、床下ゆかした浸水しんすい234棟むね
地震じしん後ごの津波つなみと火災かさいで焼やけ野原のはらになった奥尻おくしり町まち・青苗あおなえ地区ちく
地震じしん発生はっせい5～10分ふん後ごに津波つなみが襲来しゅうらい、その15～20分ふん後ごに青苗あおなえ地区ちく北部ほくぶなどから9件けんの火災かさい発生はっせい
最初さいしょに青苗あおなえ北部ほくぶの旅館りょかんから出火しゅっか、その2時じ間あいだ後ごくらいにも漁業ぎょぎょう組合くみあいの倉庫そうこや食堂しょくどうあたりから出火しゅっか
風速ふうそく約やく10メートルの強風きょうふうに煽あふられ、またたく間まに延焼えんしょう拡大かくだいしていった
家庭かていのプロパンガスボンベや暖房だんぼう用ようの燃料ねんりょうタンク等とうに引火いんか爆発ばくはつ
さらに津波つなみによる漂流ひょうりゅう物ぶつが消火しょうか活動かつどうを困難こんなんにし、出火しゅっかから11時じ間あいだ後ごにようやく鎮火ちんか
焼失しょうしつ家屋かおく192棟むね、焼失しょうしつ面積めんせきは約やく5ヘクタールに上のぼる
地震じしん直後ちょくごの津波つなみと火災かさいに見舞みまわれた青苗あおなえ地区ちく（高台たかだいに通つうじる階段かいだんを駆かけ上のぼった人ひとは助たすかった）
奥尻おくしり島とうの対岸たいがんに位置いちする北海道ほっかいどう大成たいせい町まち（津波つなみは堤防ていぼうをも破壊はかいする）
周囲しゅういの木造もくぞう建物たてものは流ながされたが鉄筋てっきんコンクリート造づくりの建物たてものは残のこった（大成たいせい町まち）
（避難ひなんする時ときは遠とおくの高台たかだいより近ちかくの鉄筋てっきんコンクリート４～５階かい以上いじょうへ避難ひなんすべき）
避難ひなん所しょ（奥尻おくしり町立ちょうりつ青苗あおなえ中学校ちゅうがっこう）の昼食ちゅうしょく風景ふうけい
天皇てんのう皇后こうごう両りょう陛下へいかの被災ひさい地ちご訪問ほうもん（青苗あおなえ中学校ちゅうがっこう）
（両りょう陛下へいかは膝ひざをつき同おなじ目めの高たかさで被災ひさい者しゃ一いち人にんひとりの話はなしをお聴ききになり、手てを取とり慰なぐさめ励はげまされた）
被災ひさい者しゃの中なかには感激かんげきして涙なみだぐむ人ひとも多おおかった
（政府せいふへの不満ふまんを口くちにしていた人ひとたちも両りょう陛下へいかの姿すがたに涙なみだし、以降いこう精神せいしん的てきにも顕著けんちょな立たち直なおりを見みせた）
フェリー開通かいつう後ご、救援きゅうえん物資ぶっし（折おりたたみリヤカー５台だい、小型こがた発電はつでん機き１０台だい）を奥尻おくしり町長ちょうちょう（右みぎ）に寄贈きぞう・中央ちゅうおうが筆者ひっしゃ
オクシリの語源ごげんはアイヌ語ごのイクシリ（海うみの向むこう）からきている。エゾムラサキウニ、ホタテ海うみの幸こうにに恵めぐまれた島しまである
津波つなみで流ながされた行方ゆくえ不明ふめい者しゃの捜索そうさく／警察庁けいさつちょう 水難すいなん救助きゅうじょ隊たい
津波つなみは超ちょう特急とっきゅうでやってくる
　「逃にげれーっ！」
漁師りょうし町まちの夜よるは早はやい。人口じんこう4,700人にんの奥尻おくしり島とうはもうすっかり寝静ねしずまっていた。
1993年ねん7月がつ12日にち午後ごご10時じ17分ふん、マグニチュード7.8の大だい地震じしんが突然とつぜん襲おそった。その直後ちょくご、津波つなみ！火災かさい！地震じしん後ご3分ふんから5分ふんという、かつてない速はやさで津波つなみに襲おそわれた奥尻おくしり島とうは、一瞬いっしゅんにして数すう百ひゃく棟むねの家いえと200人にん以上いじょうの人命じんめいを失うしないました。奥尻おくしり島とうは震源しんげん域いきに含ふくまれる位置いちにあり、いわば直下ちょっか型がた地震じしんに襲おそわれたことになります。そのため揺ゆれがおさまってすぐ津波つなみが襲来しゅうらいしました。島しまの西側にしがわの藻も内ない地区ちくには、30メートルという、とてつもなく大おおきな波なみが来きました。気象きしょう観測かんそく史上しじょう最悪さいあくの津波つなみでした。青苗岬あおなえみさきには2メートル以上いじょうの津波つなみが1時じ間あいだに13回かいも襲来しゅうらいしました。その上うえ、非常ひじょうに複雑ふくざつな方向ほうこうからやってきたのです。最初さいしょは西側にしがわから、そのあとは岬みさきをまわり込こむように反対はんたい側がわからと、時間じかん差さでいくつかの方向ほうこうから襲おそってきました。北海道ほっかいどう本土ほんどに押おし寄よせた波なみが反射はんしゃして、震源しんげんとは反対はんたいの方向ほうこうからも岬みさきを襲おそいました。
　この青苗あおなえ地区ちくは10年ねん前まえの日本海にほんかい中部ちゅうぶ地震じしんでも津波つなみに襲おそわれていますが、その時ときは地震じしん発生はっせいから１７分ふん後ごでした。青苗あおなえの住民じゅうみんの意識いしきの中なかには、もしかしたらその記憶きおくが残のこっていたのかもしれません。だから車くるまで逃にげる余裕よゆうがあると考かんがえたのも無理むりはありません。車くるまで逃にげ出だした大だい部分ぶぶんの人ひとは、たった３分ふんから５分ふん後ごに襲おそってきた津波つなみにさらわれてしまいました。自然しぜん災害さいがいは過去かこの経験けいけんだけに捉われていると、時ときとして大変たいへんな間違まちがいを犯おかすことになります。
　北海道ほっかいどう側がわの大成たいせい町まちのコンクリートの防波堤ぼうはていが、まるで超ちょう大型おおがたのハンマーで壊こわしたように崩くずれていました。それがみな海うみ側がわに割われて崩くずれて、引びき波はの強つよさを見みせつけていました。その堤防ていぼうのすぐ奥おくに住すんでいた人ひとに聞ききました。その人ひとの家いえも津波つなみで半分はんぶん流ながされたそうです。奥おくさんと三さん人にん暮くらしで、地震じしんで目めを覚さましました。ものすごい揺ゆれでどうしていいか分わからないほどでした。家具かぐがバタバタ倒たおれるので自分じぶんはタンスを押おさえていました。揺ゆれがおさまって、真まっ暗くらな中なかでホッとしていると、何なんだか様子ようすがおかしい。気きがつくと、どこから入はいってきたのか、腰こしまで水みずに浸ひたっていました。そのうちゴオーッと音おとをたてて水みずが引ひいていきました。
「その引びき波はの凄すごさといったら、おそろしい力ちからだった」
　玄関げんかんの戸とを突つき破やぶり、窓まどガラスを割わって、浮ういていた家財道具かざいどうぐごと家かを半分はんぶんさらっていきました。奥おくさんは柱はしらと家具かぐの間あいだに足あしをはさまれて怪我けがをしました
　津波つなみ警報けいほう（情報じょうほう）が出だされる時間じかんは気象庁きしょうちょうやＮＨＫの懸命けんめいの努力どりょくで、従前じゅうぜんから比くらべると飛躍ひやく的てきにスピードアップしました。都道府県とどうふけん、市町村しちょうそんを経由けいゆして伝つたえられるものより早はやいのはマスコミです。しかしテレビやラジオをつけている時ときなら、それに停電ていでんにならなければいい。でも、テレビが固定こていしてなければどうにもなりません。
仮かりに地震じしんの5分ふん後ごに津波つなみ警報けいほうが出だされ、伝達でんたつに2分ふんしかかからず7分ふん後ごに放送ほうそうされたとしても、今回こんかいの場合ばあい、全まったく間まに合あいませんでした。3分ふんから5分ふん後ごには奥尻おくしり島とうを最大さいだい級きゅうの津波つなみが襲おそっていたのですから。
大成たいせい町まちと瀬棚せたな町まちの間あいだで、海岸かいがん線せん間近まぢかに住宅じゅうたくが15軒けんほどありました。14軒けんの木造もくぞう家屋かおくが流ながされた中なかで、１軒けんだけ、１階かいに水みずが入はいったが流ながされなかった家いえがありました。鉄筋てっきんコンクリートの白しろい2階かい建だてでした。まわりの家いえの残骸ざんがいが取とり払はらわれて消毒しょうどく薬やくの白しろい粉こながまかれていましたが、その中なかに何事なにごともなかったかのように立たっていました。
私わたしは少すこし感動かんどうして、その周辺しゅうへんの人ひとに聞ききました。「あの家いえの人ひとは無事ぶじだったんですか」と聞きくと、
「そうなんです。あそこの人ひとたちは２階かいに逃にげて、何なんでもなかったんです」という答こたえが返かえってきました。
コンクリート建だての家いえが残のこった例れいは、他たの地区ちくでも見みられましが、津波つなみ高だかが６ｍを超こえれば２階かいに避難ひなんしても助たすからない危険きけん性せいがあります。
　海岸かいがん線せんに住すんでいる人ひとたちが津波つなみで生いき残のこる方法ほうほうは、す早はやく高台たかだいに逃にげるか、家いえを鉄筋てっきん４階かい以上いじょうにして、４階かい以上いじょうに逃にげることです。これしか津波つなみから生いき残のこる道みちはない、と思おもいます。
1983年ねん５月がつの日本海にほんかい中部ちゅうぶ地震じしんは死者ししゃ100人にんを出だしました。襲おそった津波つなみの高たかさは最高さいこう14メートルもありました。1896年ねんと1933年ねんの三陸さんりく沖おき地震じしんでは、高たかい所ところで20メートルを越こす津波つなみが襲おそいかかって、22,072人にんと、3,064人にんの犠牲ぎせい者しゃを出だしました。また1944年ねんの東ひがし南海なんかい地震じしんと1946年ねんの南海なんかい地震じしんでも10～24メートルの大だい津波つなみで多おおくの死者ししゃを出だしました。東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいでも10m以上いじょうの津波つなみで多おおくの犠牲ぎせい者しゃを出だしています。
　遠とおく離はなれた外国がいこくの地震じしんでも注意ちゅういする必要ひつようがあります。1960年ねんに日本にっぽんの裏側うらがわチリで起おこった地震じしん（M8.6）のときは、地震じしんから22～23時間じかんかかって日本にっぽんの太平洋たいへいよう沿岸えんがんを津波つなみが襲おそい、死者ししゃ行方ゆくえ不明ふめい139人にんの犠牲ぎせい者しゃを出だしました。逆ぎゃくに三陸さんりく地震じしんの時ときにはハワイ、北米ほくべいを津波つなみが襲おそっています。ちなみに日本にっぽんで最大さいだいの津波つなみは、1896（明治めいじ29）年ねん6月がつ15日にち三陸さんりくを中心ちゅうしんに襲おそった「明治めいじ三陸さんりく地震じしん津波つなみ」と呼よばれる巨きょ大津おおつ波はの３８．２ｍの波高はこうです。
津波つなみ防災ぼうさい３原則げんそく
★山村やまむら武彦たけひこの津波つなみ防災ぼうさい３か条じょう
１、「グラッときたら、津波つなみ警報けいほう」
　地震じしんの揺ゆれを感かんじたとき、緊急きんきゅう地震じしん速報そくほうを見みたり聞きいたりしたとき、海岸かいがん周辺しゅうへんや海岸かいがん近ちかくの河川かせん周辺しゅうへんにいたら、津波つなみ警報けいほうと思おもって直ただちに高台たかだいに避難ひなんすることです。津波つなみや洪水こうずいは「早期そうき避難ひなんに勝まさる対策たいさく無なし」「津波つなみや洪水こうずいは逃にげるが勝かち」です。小ちいさな揺ゆれだからといって油断ゆだんせず、ラジオやテレビで情報じょうほうを確認かくにんしてください。明治めいじ三陸さんりく地震じしん津波つなみのときは「震度しんど３」の小ちいさな揺ゆれでしたが、その３０分ふん後ごに大だい津波つなみが襲おそってきて２万まん人にん以上いじょうが犠牲ぎせいになりました。地震じしん後ご、大声おおごえで「津波つなみが来くるぞー、早はやく逃にげろー」と大声おおごえを上あげながら駆かけ足あしで逃にげてください。人ひとは誰だれかが逃にげるとつられて逃にげるものです。あなたの声こえが「津波つなみ警報けいほうなのです」
２、「俗説ぞくせつを信しんじず、最悪さいあくを想定そうていして行動こうどうせよ」
　津波つなみはいつも同おなじパターンで同おなじ場所ばしょを襲おそって来くるとは限かぎりません。一度いちど引ひいてから押おし寄よせてくる津波つなみもあれば、いきなり高波たかなみが襲おそってくる場合ばあいもあります。また、前回ぜんかい襲おそわれなかった海岸かいがんが大だい津波つなみに襲おそわれたこともありますので、常つねに最悪さいあくを考かんがえて行動こうどうすべきです。「波なみが引ひいてから津波つなみが来くる」とか「ここは過去かこ津波つなみがきたことがない」などの俗説ぞくせつを信しんじてはいけないのです。防災ぼうさい訓練くんれんと思おもって声こえを上あげながら、駆かけ足あしで避難ひなんしてください。
３、「できるだけ早はやく高台たかだいへ、無理むりなら近ちかくの高たかいビル」「車くるまは使つかわず・遠とおくより、高たかく」一いち度ど避難ひなんしたら戻もどらない。
　「津波つなみは高台たかだいへ逃にげるが勝かち」、しかし海岸かいがん付近ふきんにいて、高台たかだいまで避難ひなんできそうもないときは、ビルの４～５階かい以上いじょうに避難ひなんさせてもらうことです。地域ちいきによっては海岸かいがん線せんにあるビルの協力きょうりょくを得えて津波つなみ避難ひなんビルとしたり、津波つなみシェルターを設置せっちしています。車くるまで避難ひなんするのは条件じょうけん付つきで危険きけんです。北海道ほっかいどう南西なんせい沖おき地震じしん（１９９３年ねん）のとき、奥尻おくしり島とうでは車くるまで避難ひなんしようとした人ひとたちが続出ぞくしゅつし、狭せまい道路どうろが渋滞じゅうたいしているときに津波つなみに襲おそわれ、車くるまごと津波つなみに飲のみ込こまれ多おおくの犠牲ぎせい者しゃを出だしました。（しかし、高齢こうれい者しゃや障害しょうがい者しゃは短時間たんじかんに高台たかだいに避難ひなんするには車くるましかありません。ですから健常けんじょう者しゃは極力きょくりょく駆かけ足あしで避難ひなんして要よう援護えんご者しゃの車くるまが渋滞じゅうたいしないように心掛こころがけてほしいと思おもいます）。いったん避難ひなんしたら、第だい１波はが小ちいさかったからといって自宅じたくへ戻もどったりしないことです。津波つなみは繰くり返かえし襲おそってきます。警報けいほうが解除かいじょされるまでは「念ねんのため避難ひなん」を続つづけましょう。
大火たいかに立たち向むかう10人にんの勇士ゆうしたち
住民じゅうみんが津波つなみから逃のがれて駆がけ登のぼった緑ケ丘みどりがおかに、青苗あおなえ消防署しょうぼうしょがありました。地震じしん時じの青苗あおなえ署しょの体制たいせいは、使用しよう可能かのうな消防車しょうぼうしゃ2台だい、当直とうちょくの署員しょいん1名めいと駆かけつけた消防しょうぼう団だん員いん9名めいでした。この10名めいとたった2台だいの消防車しょうぼうしゃで、大火たいかに立たち向むかったのです。
第だい一いち出火しゅっか点てんに行いこうとした1台だいの消防車しょうぼうしゃは、津波つなみで倒たおれた建物たてものや家屋かおくの残骸ざんがいに行いく手てを阻はばまれて、しかたなく丘おかの上うえに戻もどりました。丘おかの上うえの防火ぼうか水槽すいそうの水みずを吸すい上あげて、崖がけ下かへホースを伸のばし、必死ひっしの放水ほうすいを始はじめました。その間あいだにも、何なん度ども津波つなみは押おし寄よせます。
激はげしい火ひの勢いきおい、困難こんなんな道路どうろ状況じょうきょう、限かぎられた高台たかだいだけの防火ぼうか水槽すいそう。決死けっし的てきな消火しょうか活かつ勤つとむを尻目しりめに風ふうに煽あふられて拡大かくだいする火ひ。火ひは猛然もうぜんとして南みなみに向むかって全すべてをなめ尽つくしていきます。その先さきには、津波つなみを免まぬかれた青苗あおなえ一いち区くの住宅じゅうたく密集みっしゅう地ちがあります。
一いち区くの入口いりくちには8メートルの道路どうろと少すこしの空地くうちがあります。彼かれらはそこを最後さいごの防火ぼうか線せんにしようと賭かけに出でました。2台だいの消防車しょうぼうしゃからの放水ほうすいを集中しゅうちゅうし、持もち主ぬしの了解りょうかいをとりつけ2軒けんの家いえを取とり壊こわしたのです。
10人にんの消防しょうぼう隊たいは、東西とうざいに走はしる道路どうろに立たちはだかり、ついにこの大火たいかを制圧せいあつしたのです。津波つなみと大火たいかから免まぬかれた青苗あおなえ一いち区くの約やく50戸この家いえは、朝陽あさひを浴あびて光ひかって見みえました。
この火災かさいの出火しゅっか原因げんいんや出火しゅっか場所ばしょは特定とくていされていません。風呂ふろやコンロの火ひを消けし忘わすれて避難ひなんしたことも考かんがえられます。
また、各戸かっこが備そなえていた石油せきゆホームタンクが延焼えんしょうを早はやめました。今後こんご、ホームタンクの耐震たいしん性せい、自動じどう給油きゅうゆ制御せいぎょ装置そうちの対策たいさくが必要ひつようです。
筆者ひっしゃに「津波つなみはあそこまで来きた！」と指差ゆびさす人ひと

奥尻おくしり島とう・住民じゅうみんたちの証言しょうげん　

「まえぶれはあったさ。町営ちょうえい『神威かもい脇わき温泉おんせん保養ほよう所しょ』の湯ゆ温ゆたかが、普段ふだん60度ど前後ぜんこうのものだが、地震じしんの10日とおかほど前まえから80度どから90度どくらいに上あがって、いつもの3倍ばいも水みずでうめたよ」
「ここはネズミの多おおい所ところだが、地震じしんの半月はんつき前まえからネズミがピタッと姿すがたをみせなくなったさ。あのネズミはどこへ行いっただか」
「普段ふだんは釣つれないような魚さかながあがって、何なにかおかしいって話はなしてただよ」
「津波つなみで助たすかったのは着きのみ着きのままで逃にげたモンだけさ。こういう時ときは欲張よくばっちやいかん。身体しんたいだけ助たすかればいい。逃にげる時ときは身軽みがるが一番いちばん」
「全国ぜんこくからの救援きゅうえん物資ぶっしもありがたいけどネ、ほとんど着きるもの。そん中ちゅうでほとんどが女物おんなものでしかもサイズが合あわない。たしかに最初さいしょは着きる物ものもあリがたかったけど、今いまは日にち用品ようひんや義援金ぎえんきんが一番いちばん」
「非常ひじょう用ようの食糧しょくりょうでカンパンはダメさ。 年寄としよりや病人びょうにんには食しょくえんしな。 皆みな、入いれ歯ば流ながされちゃったから。 赤飯せきはんがうまかったナ」
「18日にち夜よるに“また津波つなみだ”っていわれて高台たかだいで夜明よあかししたけど、デマだったんだ」
「25日にち朝あさ“津波つなみ警報けいほうだ”ってんで高台たかだいに逃にげたけど一時いちじ間あいだぐらいして無線むせんが津波つなみは来こないって放送ほうそうしたから安心あんしんした。震度しんど4の余震よしんが2回かいもきたのに何なんの情報じょうほうもなかったから、心配しんぱいしたモンがいて、デマになっちゃったらしいね。大おおきい地震じしんでも小ちいさい地震じしんでも正せい碓うすな情報じょうほうを早はやめに流ながしてほしいね」
「キチンと組織そしきされたボランティア団体だんたいはいいけど個人こじんで来こられると混乱こんらんすることもあるんだね」
撮影さつえい：山村やまむら武彦たけひこ（許可きょか無なく無断むだん転写てんしゃ複製ふくせいを禁きんじます）防災ぼうさいシステム研究所けんきゅうじょ
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