たしかに映画製作している録音・ミキシング担当の思い入れが表現できなくては本来の作品とは違ってしまうのである。「特にウチの場合、作品数が多いので時には朝までサウンドバランスの調整に掛かってしまいますよ」こうした影の苦労のおかげで最適な音響を我々観客は体験出来ているのだ。上映設備としては通常の35mm、16mm、ビデオプロジェクター上映の他にスライドによる上映も可能で、その特長を活かして写真と音楽を融合させたイベントなども数多く行っており最近では“アラキネマ”と銘打って写真家、アラーキーの絶版になった写真集からスライドを起こしてトークショウを交えたイベントを開催している。
「結局1850年代後半、テレビが普及して映画産業も初めての岐路に立たされましたよね。80年代以降はレンタルビデオの登場で、50年代と同じ状況になったわけですよ。映画館に足を運んでもらうには新しい仕掛けというのが必要になってくるだろうと…」そこで代島氏がこだわったのはライブが出来る小屋なのだ。音響や照明にこだわりトークショウから簡単な映画講座、そしてお芝居まで対応できる映画館。「今までみたいに単なる受皿ではなく、色々企画を考えたりライブなどを演出する必要に迫られて来ているんですよ。それは大変な苦労を伴うんだけどね」と笑う代島氏は続ける「でも、それによって映画館で映画を観る悦楽を今の若い人が知ることが出来ればいいなと思っているんです」以前、コチラの劇場で“東京フィスト”を上映して以来、音響の素晴しさから是非、自分の作品はココで上映したいと熱烈なラブコールを送っている監督に塚本晋也がいる。2000年の大晦日にはステージにコタツを持ち込んでカウントダウン・イベントを開催し、観客には年越しそばを振る舞うなど、言葉通り映画の枠を超えた企画を常に提供し続けている。 |