オープニングで森達也監督のドキュメンタリー特集を組んでから、ドキュメンタリーが中心で構成されているが、特に幅広い客層で賑わったのが“ジャマイカ楽園の真実”だった。「この作品は映画ファンだけではなく、レゲエミュージックに傾倒している音楽ファンからジャマイカを研究されている年輩の方やNPO団体の方々までお越し頂いたのは想定外でしたね。」と語る鎌田氏にとって今後の課題は、そこからリピーターをどうやって獲得していくかにあるという。「様々なジャンルの作品を各々のファン層に対して、どうやって訴求していくかを、これまでの経験を基にして考えていかなくてはなりません。」と言う鎌田氏だが、その結果、今年の夏に行われた中島多佳子監督の“TAIZO”では俳優の菟田高城氏による一人芝居を連日公演し、多くのファンが詰めかけ、予想以上の反響を呼んだ。「この作品は既に2〜3年前に都内で上映されていて、たとえ編集し直したとしても多くの方がご覧になっている訳ですから。それでは、どうやってアピールしていくか…をプロデューサーの奥山和由氏と打ち合わせを重ねた結果、だったら思い切った事をしようじゃないか…という事になったのです。」演出を“ラストサムライ”のキャスティングを担当した奈良橋陽子氏が担当する等、贅沢な組み合わせが実現した。結果、終了までの2週間は常に満席となる程の熱狂的な盛り上がりをみせ大成功を収めた。
こうした上映作品を選ぶポイントは「やはり、純度の高い作品であるという事ですね。アップリンクだからこそ、という作品を選んでいきたいのですが、そういった素晴らしい作品=興行としてお客様に受け入れられるか?というのが難しく、いつも葛藤しています(笑)」という鎌田氏は作品を持ち込んでくる若手の作家に厳しい目で選定を行っている。いすれは、ファクトリーとカフェ“Tabela(タベラ)”の稼働間仕切りを取り除いて一つの空間として何かイベント的な事が出来ないかと検討中だという。いくつもの顔を持っているコチラのスペースで今後、何が起きるかが楽しみである。