「映画館のように有料情報を流す場所って他に無いですよね。それだけに有料の価値がある作品を上映することが大事。だからこそ、その価値があると思う作品を掲示して、お客様からのアンケートで要望が多いものを上映しているだけ。ただし条件があって、ウチのイメージに合わない作品は候補に挙げていません」
あくまでも観客が観たい映画を上映する…という姿勢を貫いている根岸氏。新旧のアート系からB級映画、国内外のクラシックまで…と、扱う映画は幅広い。「映画館というのは出来る映画しか上映出来ない。だからこそ出来る映画を可能な限り上映する事が重要なんですよ」館内にある昭和57年から続く20冊以上もの“メトロシネマノート”には、ココを訪れた人たちの感想とリクエストがビッシリと書かれており、中には記入者の間でやり取りも行われている。このノートを読むと、観客と映画館は、双方向の関係で成り立っているのだと感じる。「つまり卵と鶏の関係で、ウチが上映している作品を求めてやって来る人たちが、こういう映画を観たいとリクエストして、それにウチが出来る限り応えようとする。『メトロ劇場』が、結果的に今の形なったわけで、それを求めて来る人たちが楽しめる映画館になっていれば良いと思うし、それを続けて行ければと思っています」
大事なのは続けること…と繰り返す根岸氏が、取材の終わり際に語ってくれた言葉が強く印象に残った。「精一杯、お客様が求める映画を提供する努力を続けようと思います。別にそれが、楽しいだけの映画でも良いだろうし、変な映画でも良いんです。その努力を怠ると、R-18の映画が全国で観れなくなる日が来るかも知れない。観たいものが観られなくならないように、僕は市民のために映画館をやっているんです」これが、幾多の危機を乗り越えて60年もの間、映画館を守り続けてきた館主の思いだ。(2016年8月取材) |