令和2年7月22日。狸小路にあった映画館『東宝プラザ(平成23年閉館)』をリニューアルして4つのミニシアターとなって生まれ変わった。そして館名がズバリ『サツゲキ』だった事は、何よりファンの心理を見事に突いてくれた。「今だから言えますが当時はまだ何も決まっておらず、目処も立たないまま場所を探す…という状況だったんですよ」と語ってくれたのは支配人の横澤康彦氏だ。横澤氏は『ディノスシネマズ札幌劇場』最後の支配人であり、ホームページにコメントを書かれた本人だった。既に会社としては別の場所で映画館を再開するという方針は決まっていたというが、まさか我が青春時代を過ごした二つの映画館が、こんな形で復活してくれるとは。そのニュースを聞いた時「さすがサツゲキ!」と喜んだファンも多かったのではないだろうか?今回のリニューアルにあたりクラウドファンディングで改装費を公募したところ1200万円近くもの支援が集まった事からもファンの期待度が分かる。劇場がある2階へ上がる階段の踊り場に飾られている『サツゲキ』のロゴの後ろに支援された方々の名前が記載されたプレートをハメ込んでいたり、『ディノスシネマズ札幌劇場』の閉館時に多くのファンがメッセージを書かれた壁の一部をディスプレイとして展示されている。
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こうした映画ファンの思いを乗せて、いよいよリニューアル工事が始まった。館名も『ディノスシネマズ札幌劇場』を継続するのではなく長年親しまれた『サツゲキ』の館名で(コロナ禍で予定より遅れたものの)約束通り再開を果たしてくれた。アート文化の発信地というコンセプトを掲げて、地下の『東宝プラザ2』はそのままに、376席あった『東宝プラザ1』を3スクリーンに分割して、合わせて4スクリーンのミニシアターとしてオープンした。現在、1日に11作品から13作品を上映しているが「ジャンルに関しては、映画館としてそういったこだわりは捨てています」としている。その言葉通り劇場のラインナップを見てみると、社会派からドキュメンタリー、B級ホラーから良質の人間ドラマや名作など全てのジャンルを幅広く扱っている。このあたり…「須貝ビル」に入っていた映画館を彷彿とさせる。「こだわりを無くする事でお客様の選択肢が増えると思うんです。敢えて何かに特化してしまうと、偏ったお客様ばかりになってしまう」横澤氏が求めているのは、来場したお客様がチラシとか予告編を見て、こっちも観てみようかな…と思ってもらえる自由度を深めることだ。「そうなると多種多様なラインナップがあった方がお客様に観てもらう機会が増えると思うんです」 |