■ AV-8B ハリアーII■

ボーイング／ブリティッシュ・エアロスペース AV-8 ハリアーはイギリスで開発かいはつされ、史上しじょうほぼ唯一ゆいいつの実用じつよう型がた垂直すいちょく離着陸りちゃくりく機きとして知しられています。 VTOL （Vertical Take-Off and Landing ： 垂直すいちょく離着陸りちゃくりく） 機き開発かいはつの試こころみは古ふるくから行おこなわれ、その結果けっかの一ひとつは 1930 年代ねんだいに最初さいしょのヘリコプターが完成かんせいすることで結実けつじつしましたが、固定こてい翼つばさの VTOL 機きの開発かいはつの成功せいこうは P.1127 と呼よばれるハリアーの原型げんけい機きが 1960 年ねんに初はじめてホバリングを行おこなったときに幕まくを明あけます。

米べい海兵かいへい隊たいもこれに着目ちゃくもくし、揚陸ようりく作戦さくせんにおける航空こうくう支援しえん機きとして AV-8 という名称めいしょうで採用さいよう、イタリア、スペインといった各国かっこくでも採用さいようされています。

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米べい海兵かいへい隊たいで採用さいようされた AV-8A は、航続こうぞく距離きょりや搭載とうさい量りょうに難なんがあり、それを大幅おおはばに改善かいぜんしたタイプが AV-8B で、これを 「ハリアー II」と呼よびます。 AV-8A よりも翼つばさ面積めんせきを拡大かくだいし、スーパークリティカル翼つばさと呼よばれる新形しんがた状じょうの主翼しゅよくを採用さいよう。 また胴体どうたいの下面かめんに LID （Lift Improvement Devices）と呼よばれるストレーキと格納かくのう式しきフェンスを取とりつけ、ホバリング時じに地面じめんに反射はんしゃしたジェット排気はいきを揚力ようりょくとして利用りようするようになっています。従来じゅうらい型がたのハリアーでは垂直すいちょく着陸ちゃくりくの際さいには地面じめんに近ちかづくにつれてエンジン推力すいりょくを上あげなくてはならなかったのですが、LID を採用さいようしたハリアー II では逆ぎゃくに推力すいりょくを落おとすようになったそうです。

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今回こんかい制作せいさくしたハリアーは、AV-8B のナイトアタック （NA） 型がたと呼よばれる機体きたい。 従来じゅうらいの AV-8B を改良かいりょうして FLIR （Forward Looking Infra-Red ： 前方ぜんぽう赤外線せきがいせん監視かんし）を追加ついか、後部こうぶ胴体どうたいの上面うわつらにチャフ／フレアディスペンサーを増設ぞうせつ、夜間やかんの作戦さくせん能力のうりょくを付加ふかしたものです。 これに対たいし、従来じゅうらい型がたの AV-8B はデイアタック （DA） 型がたと呼よばれます。

ところで、AV-8A の次つぎの世代せだいのハリアーは AV-8B ですが、この他ほかにも AV-8A に機体きたい寿命じゅみょうの延命えんめい措置そちを加くわえた AV-8C があるため、初代しょだいのハリアーは AV-8A/C という呼よばれ方かたをする事ことがあります。 このため NA 型がたの AV-8B は本来ほんらいは AV-8D という名称めいしょうになるはずだったそうですが、結局けっきょくは AV-8B(NA) という形かたちになってます。同様どうようにレーダーを搭載とうさいした AV-8B+ は AV-8E という名称めいしょうになる予定よていだったとか。 ずいぶんややこしいです（笑）。

このような名称めいしょうのつけ方かたになっているのは、やはり議会ぎかいでは名称めいしょう変更へんこうを伴ともなう改修かいしゅうには予算よさんがつかないからでしょうか。 F-16 も、最近さいきんはサブタイプは変かわらずにブロックナンバーばかりが変かわってますし。

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ハリアーの VTOL を可能かのうにしているのは、このロールスロイス製せいペガサスエンジンによるもの。ハリアーのノズルは胴体どうたいの両りょう側面そくめんに二に対たいあり、前方ぜんぽうの一対いっついはファンからの排気はいきを出だし、後方こうほうの一対いっついはタービンからの燃焼ねんしょう排気はいきを出だします。それぞれのノズルは水平すいへい位置いちから下方かほうへ向むけて 98.5 度どまで回転かいてんするようになっており、これがホバリング時じの揚力ようりょくを生うみ出だします。

滑走かっそう路ろを滑走かっそうして離陸りりくする場合ばあいにもノズルを斜ななめに向むけることで滑走かっそう距離きょりを短縮たんしゅくすることができ、優すぐれた STOL （Short Take-Off and Landing ： 短距離たんきょり離着陸りちゃくりく） 性能せいのうを発揮はっきします。実際じっさいの作戦さくせんでは兵へい装そうや燃料ねんりょうの搭載とうさい量りょうを増ふやすために短距離たんきょりを滑走かっそうして離陸りりくし、帰還きかんの時ときには兵へい装そうと燃料ねんりょうを消費しょうひして軽かるくなるので、垂直すいちょく着陸ちゃくりくを行おこないます。こうした運用うんよう方法ほうほうを V/STOL （垂直すいちょく・短距離たんきょり離着陸りちゃくりく） と呼よびます。

しかしこのノズルはハリアーにとっては赤外線せきがいせん誘導ゆうどうミサイルに弱よわいという欠点けってんを生うむ元もととなります。 F-15 や F/A-18 といった機体きたいはノズルが機体きたいの尾お部ぶにあり、その一方いっぽうで赤外線せきがいせん誘導ゆうどうミサイルは熱源ねつげんに向むかって誘導ゆうどうされやすい性質せいしつがあります。そのため、こうしたミサイルが機体きたいの後方こうほうで炸裂さくれつして損傷そんしょうが軽度けいどで済すみ、機体きたいが基地きちへ帰還きかんできた例れいがありました。しかしハリアーの場合ばあいはノズルが胴体どうたいの中央ちゅうおうにあるために、ダメージが致命ちめい的てきなものとなりやすいのです。

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それにしてもハリアーはずいぶん小ちいさいですね。F-15 と並ならべるとまるで大人おとなと子供こどもです（笑）。 一基いっきのエンジンで VTOL 能力のうりょくを与あたえようとするとこのサイズになるのでしょうか。 そういえばハリアーの後継こうけい機きとなる F-35 JSF も機体きたいはかなり小ちいさいです。

ところで A-6 の後継こうけいとなったのは F/A-18 でしたが、航続こうぞく距離きょりや搭載とうさい量りょうは A-6 よりも劣おとってしまっています。 F-35 もステルス性能せいのうのために先任せんにんのハリアーや F-16 よりも搭載とうさい量りょうは落おちそうに思おもいますが、新あたらしい世代せだいになって搭載とうさい量りょうが減へるというのは何なんとも面白おもしろいものです。まあ、搭載とうさい量りょうよりも攻撃こうげきの正確せいかくさが優先ゆうせんされるという最近さいきんの思想しそうも影響えいきょうしてるんでしょうね。

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道路どうろ上じょうでホバリングするハリアー。 背景はいけいは私わたしの家いえの近所きんじょで撮影さつえい（笑）。ハリアーは、通常つうじょうの飛行場ひこうじょうの他ほかにも不ふ整地せいちで運用うんようすることも多おおく、そうした場所ばしょではエンジン排気はいきが地面じめんの上うえの異物いぶつを巻まき上あげます。するとその異物いぶつがエンジンのエアインテイクに吸すい込こまれてエンジンに損傷そんしょうを起おこすことがあります。 これを FOD （Foreign Object Damage） と呼よび、作戦さくせん環境かんきょうとあいまってハリアーの事故じこの原因げんいんに多おおいといわれています。

それにしても道路どうろ上じょうでこんなことすると排気はいきでアスファルトが溶とけるでしょうね（笑）。

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F/A-18 戦闘せんとう機きで採用さいようされた APG-65 レーダーを搭載とうさいすることにより、索敵さくてき能力のうりょくを向上こうじょうさせたタイプがこの AV-8B プラスと呼よばれるサブタイプです。

機首きしゅにレドームを追加ついかするだけでありましたが、形状けいじょうの結合けつごうにはなかなか手間てまがかかりました。 従来じゅうらい型がたをモデリングしていて、レドームなしの機首きしゅを見みなれてしまったためか、最初さいしょのうちはどことなく違和感いわかんがありました（笑）。