Profile

1935年ねん、ブルガリア、ガブロヴォ生うまれ

ブルガリア生うまれのアメリカ人じんアーティスト、クリストを20世紀せいき後半こうはん以降いこうの美術家びじゅつかの中なかで最もっとも広大こうだいな創作そうさく活動かつどうを続つづけている一人ひとりと呼よぶことに異議いぎを唱となえる人ひとはいないだろう。
クリストは公私こうしとものパートナーであったジャンヌ=クロード(1935-2009)と共同きょうどうで作つくり上あげてきた作品さくひんは、たとえばオーストラリアの海岸かいがん線せんを10万まん平方へいほうメートルの布ぬので覆おおい隠かくしたり、茨城いばらきとカリフォルニアに、巨大きょだいな傘かさ(高たかさ6メートル・直径ちょっけい8.66メートル)を合計ごうけい3100本ほん建だてたり、パリ・セーヌ川がわにかかるポンヌフ橋きょうやベルリンのドイツ帝国ていこく議事堂ぎじどうを布ぬのとロープで包つつみ込こみこんだり、ニューヨークのセントラルパークにサフラン色しょくの布ぬのをたれ下さげたゲート(門もん)を7503基き設置せっちするなど、アートの常識じょうしきを越こえ、景観けいかんそのものを変貌へんぼうさせるものだ。
1935年ねんにブルガリアで生うまれたくりすとは、ソフィアの美術びじゅつ学校がっこう在学ざいがく中ちゅうに共産きょうさん主義しゅぎ国こく、ブルガリアを逃のがれ、プラハ、ウィーン、ジュネーブを経へて、1958年ねんパリに亡命ぼうめいする。
ジュネーブ時代じだいに手てがけた缶かんをキャンバスで包つつんだ作品さくひんを皮切かわきりに、雑誌ざっし、家具かぐ、自動車じどうしゃなどを包つつんだり、中身なかみがミステリアスな梱包こんぽう物ぶつといった作品さくひんを手てがけるようになり、平行へいこうして使つかい古ふるされたドラム缶どらむかんを積つみ上あげて構成こうせいする作品さくひんも始はじめた。
60年代ねんだい初頭しょとうには、パリに出でた後のちに程ほどなく出会であったジャンヌ=クロードとともに、屋外おくがい空間くうかんでの創作そうさく活動かつどうを開始かいしする。
1961年ねん夏なつにつくられたケルンの埠頭ふとうでの『埠頭ふとうのパッケージ』と『積つまれたドラム缶どらむかん』と翌年よくねん、パリでゲリラ的てきにつくられた『ドラム缶どらむかんの壁かべ、鉄てつのカーテン』以降いこう、アメリカ、ヨーロッパ諸国しょこく、そして日本にっぽんを舞台ぶたいにしたプロジェクトを実現じつげんしてきた。
二人ふたりのプロジェクトの最大さいだいの特徴とくちょうは、全すべてが2週間しゅうかん程度ていどの短期間たんきかんだけ、公共こうきょうの空間くうかんで実現じつげんされることだ。
その僅わずか数すう週間しゅうかんだけ存在そんざいする作品さくひんのために、長ながいものでは25年ねん以上いじょうの歳月さいげつを公的こうてき機関きかんや地権ちけん者しゃからの許可きょか獲得かくとくに費ついやしてきている。
また、数すう十じゅう億おく円えんにも及およぶこともある制作せいさく費ひは、寄付きふや補助ほじょ金きんなどに頼たよることなく、全すべて自みずからの手てで捻出ねんしゅつすることも二人ふたりが頑かたくなに守まもってきているポリシーだ。
その資金しきん源げんは、クリストが制作せいさくするドローイング作品さくひん、オブジェ、版画はんが作品さくひんなどだ。
※2009年ねん秋あきに急逝きゅうせいしたジャンヌ=クロードの亡なき後あとも、クリストはロッキー山脈さんみゃくを流ながれる川かわの68キロメートルの区間くかんに、総そう延長えんちょう9.5キロメートルにも及およぶ布ぬのを水平すいへいに張はってゆく『オーバー・ザ・リバー、コロラド州しゅうアーカンサス川がわのプロジェクト』と、砂漠さばくに41万まん個このドラム缶どらむかんを積つみ上あげて巨大きょだい構造こうぞう物ぶつをつくる『マスタバ、アラブ長国ながくに連邦れんぽうのプロジェクト』の準備じゅんび活動かつどうを精力せいりょく的てきに続つづけている。

(※書籍しょせきや絵葉書えはがきなどの出版しゅっぱん物ぶつやオープンエディションのオフセットリトグラフから、クリストが直接ちょくせつの利益りえきを得えることはありません。)