−opinion− 高知大学こうちだいがく農学部のうがくぶを卒業そつぎょう後ご、青年せいねん海外かいがい協力きょうりょく隊たいとして活動かつどうしたバングラデシュ、JICA（国際こくさい協力きょうりょく事業じぎょう団だん）在外ざいがい事務所じむしょ員いんとして赴任ふにんしたザンビア、これらの開発かいはつ途上とじょう国こくの講演こうえん活動かつどうを行おこない、国際こくさい協力きょうりょくの現場げんばでご活躍かつやくされている小淵こぶちさんにお話はなしを伺うかがいました。 JICA東京とうきょう国際こくさい研修けんしゅうセンター研修けんしゅう第だい１課か 課長かちょう代理だいり　小淵こぶち　伸しん司し ◆青年せいねん海外かいがい協力きょうりょく隊員たいいん時代じだいに感かんじたことは。 　バングラデシュでの協力きょうりょく隊員たいいん時代じだいに感かんじたことは、生うまれて初はじめての海外かいがいということもあり、かなり強烈きょうれつでした。まず、とにかく人ひと（特とくに、子供こども）がうじゃうじゃいること。これは、田舎いなかのどこへいっても子供こどもがいつのまにか周まわりにいる、つまり湧わいてくるという感かんじです。 　次つぎに、水平すいへい線せんが見みえる川かわ、大地だいちが水平すいへい線せんになる洪水こうずい、コレラがあっというまに広ひろがり人々ひとびとが死しんでいく様子ようすなどを目まの当あたりにしていると、自然しぜんは凄すごいという畏敬いけいの念ねんを抱いだかざるを得えませんでした。「人ひとが自然しぜんを支配しはいしているのではなく、人ひとが自然しぜんの一部いちぶである」ということを身みを持もって感かんじました。 　それから、同おなじ人間にんげんなのにこうも違ちがうものかといつも感かんじていました。バングラデシュでの最初さいしょの半年はんとしは、ほとんど怒いかりっぱなしだったと思おもいます。貸かした物ものはまず返かえらない、平気へいきで嘘うそをつく、少すこしでも目めを離はなすとすぐ物ものがなくなる、そんなことが毎日まいにちのように起おこりました。今いままで私わたしが日本にっぽんで身みに付つけたはずの価値かち観かんや道徳どうとく感かんがことごとく崩くずれ去さったのです。 　しかしながら、２年ねん目めになると生活せいかつにも慣なれ、協力きょうりょく活動かつどうも充実じゅうじつしました。農場のうじょうの稲いねは大だい豊作ほうさくとなり、倉庫そうこはモミで溢あふれました。同僚どうりょうや学生がくせいたちが喜よろこんでいた姿すがたを今いまでも思おもい出だします。 青年せいねん海外かいがい協力きょうりょく隊員たいいんとしてバングラデシュでの農業のうぎょう改良かいりょう普及ふきゅう員いん養成ようせい校こうで稲作いなさく実演じつえん及および講こう議ぎにあたる小淵こぶちさん（1983.4 - 1985.4） ◆サーモン・キャンペーンで子供こどもたちと接せっして感かんじたことは。 　私わたしの子供こどもが通かよっている小学校しょうがっこうでの講演こうえん後ご、子供こどもたちからの感想かんそう文ぶんを読よませていただきましたが、私わたしの講演こうえんを通とおして子供こどもたちは「この地球ちきゅう上じょうで同おなじ世代せだいの子供こどもたちが学校がっこうで十分じゅうぶんな教育きょういくを受うけることができず、ボロボロの服ふくを着きて、食たべ物ものも十分じゅうぶんに食たべることができず、病気びょうきになっても治療ちりょうしてもらえず、多おおくの子供こどもたちは小ちいさい時ときに死しんでしまう」ということに素直すなおに気付きづいてくれました。この素直すなおに気付きづくということは非常ひじょうに大切たいせつで、小学校しょうがっこう３〜５年生ねんせい頃ごろが重要じゅうような時期じきのように感かんじました。この講演こうえんを通とおして子供こどもたちが気付きづいたこと知しったことは、自分じぶんたちの普段ふだんの生活せいかつを振ふり返かえり、見直みなおす一ひとつの機会きかいになったように思おもうのです。　　 　彼かれらの100人にんの内うち１人にんでも２人にんでも、開発かいはつ途上とじょう国こくの子供こどもたちと日本にっぽんの子供こどもたちの生活せいかつ状じょう況きょうとの違ちがいを自然しぜんと感かんじ、今後こんご成人せいじんしていく過程かていで思おもい出だし、生活せいかつの心しんの糧かてとして役立やくだてて、あるいは生業せいぎょうの一ひとつとして地球ちきゅう的てきな規模きぼで活躍かつやくする人材じんざいに育そだっていただければ、この上うえない喜よろこびです。 ◆私わたしたちが身近みぢかにできる国際こくさい協力きょうりょくには何なにがありますか。 　将来しょうらい、国際こくさい協力きょうりょくを担になう人材じんざい育成いくせいという視点してんでは、やはり子供こどもたちになるべく多おおくの途上とじょう国こくを知しる機会きかいを提供ていきょうすることだと思おもいます。例たとえば、NGOや協力きょうりょく隊たい経験けいけん者しゃ、日本にっぽんに技術ぎじゅつを学まなびにやって来きた途上とじょう国こくからの研修けんしゅう員いんの講演こうえん会かい実施じっし、JICA主催しゅさいの国際こくさい協力きょうりょく作文さくぶんコンクールの促進そくしん（優秀ゆうしゅう賞しょうとして途上とじょう国こく視察しさつツアーあり）、NGO等とうが主催しゅさいする途上とじょう国こくへのスタディーツアーへの参加さんか、学校がっこうの修学旅行しゅうがくりょこう先さきを途上とじょう国こくにするなど様々さまざま工夫くふうして、将来しょうらいの国際こくさい協力きょうりょくを担になう人材じんざいを育成いくせいすることが重要じゅうようだと思おもいます。 ◆これからの国際こくさい協力きょうりょくのあり方かたをどうお考かんがえですか。 　私わたし個人こじんの意見いけんですが、「同おなじ一ひとつの地球ちきゅう上じょうで一緒いっしょに生いきている仲間なかま」という認識にんしきのもと、日本にっぽん政府せいふ、地方自治体ちほうじちたい、民間みんかん企業きぎょう、NGO、教育きょういく関係かんけい者しゃ、地域ちいきの人々ひとびとなど日本人にっぽんじん全体ぜんたいが一ひとつの共通きょうつう理念りねんを持もって様々さまざまな方法ほうほうで「地球ちきゅう市民しみんとして活動かつどう」を行おこなっていくことではないでしょうか。その私わたしが今いま持もち合あわせている共通きょうつう理念りねんとは、日本国にっぽんこく憲法けんぽうの前文ぜんぶんにあると思おもいます。 　実じつは、その「地球ちきゅう市民しみんとして活動かつどう」を行おこなうことこそが、腐敗ふはい化かしている日本にっぽん社会しゃかい（特とくに教育きょういく）に風穴かざあなをあけ、多おおくの市民しみんが動うごいていく新あらたな原動力げんどうりょくになると感かんじるのです。それは、何なにか行動こうどうをとった結果けっか、損得そんとくの勘定かんじょうではなく、人間にんげんの生いき方かたとして役やくに立たつ体験たいけんをしていくことが重要じゅうようだと思おもいます。国内こくないにおいて記憶きおくに新あたらしいのは、阪神はんしん大震災だいしんさい等とうにおいて自発じはつ的てきに助たすけ合あい、充実じゅうじつ感かんを覚おぼえた方ほうが多おおく存在そんざいしたことです。 ◆最後さいごに、国際こくさい協力きょうりょくにたずさわりたいと思おもったきっかけを教おしえてください。 　改あらためて思おもうと、協力きょうりょく隊たいに参加さんかした時ときは、結局けっきょくは自分じぶんへの挑戦ちょうせんであったように思おもいます。国際こくさい協力きょうりょくという言葉ことばを使用しようしていても、ただの気負きおいと勢いきおいだけであった気きがします。 　国際こくさい協力きょうりょくという仕事しごとを選えらんだのは、バングラデシュという国くにで初はじめて体験たいけんした協力きょうりょく隊たいの活動かつどうを通とおして、「私わたしでも少すこしは役やくに立たつのかも知しれない」と思おもい始はじめたことがきっかけであったかも知しれません。 　 ＊サーモンキャンペーン…開発かいはつ途上とじょう国こくの実情じつじょうを知しり、国際こくさい協力きょうりょくの必要ひつよう性せいを理解りかいしてもらうため、JICAが職員しょくいんや専門せんもん家か、青年せいねん海外かいがい協力きょうりょく隊たいOBなどを講師こうしとして学校がっこうなどへ派遣はけんする事業じぎょう。

NEXT→