ウィシュマ・サンダマリさん一周忌の日に誓う
指宿昭一(弁護士) 2022年3月6日
1年前の3月6日、名古屋入管に収容されていたウィシュマ・サンダマリさんが死亡した。入管は、帰国に同意しないウィシュマさんを仮放免せず、飢餓状態に陥っていることが明らかであるのに点滴をせず、入院をさせなかった。
入管は、ウィシュマさんが、あたかも入管の医療体制の不備によって亡くなったかのような印象操作をしている。これは問題の矮小化である。そうではない。帰国に同意しない者に対して、(処遇や送還執行についての)「様々な工夫や新たな手法」により「効率的、効果的な排除」を行うという入管庁の方針に殺されたのだ。ウィシュマさんに「仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する」(最終報告書58頁)、尿検査の結果、飢餓状態に陥っていることが分かっても点滴を打たない、「鼻から牛乳」「薬、決まってる?」「アロンアルファ」という侮辱的発言で精神的に追い詰める、ベッドから落ちてもそのままそこで寝させるなどの「様々な工夫」や「新たな手法」が行われ、ウィシュマさんは亡くなった。
入管は1ミリも反省していない。昨年8月に公表された最終報告書は、ウィシュマさんを仮放免しなかったことは正しかったと言い、2月15日の尿検査の結果、飢餓状態に陥っていたのに点滴をしなかったことについて、医療体制の不備があったからやむを得なかったとしている。今年2月28日に有識者会議が入管庁に提出したという提言は、常勤医確保のために定年の年齢を挙げなどと的外れなことだけを言っている。
ウィシュマさんは、収容と収容中の処遇を、帰国を同意させるための拷問の手段として使うという入管の方針に殺された。入管はこの方針を変えてない。これを変えなければ、再び、ウィシュマさんと同じように殺される人がでてしまうだろう。
ウィシュマさん。私たちは、あなたのいのちを救えなかった。私たちは。二度と、このような事件が起きないように、あなたの事件の真相を解明し、入管の責任を明らかにする。そして、この許しがたい入管の方針を必ず変えさせる。3月6日という日を忘れない。あなたが、生きることのできた、そういう社会を作り上げることを誓う。
<参考>
2018年4月7日「安全・安心な社会の実現のための取組について(通知)」法務省入国管理局
2 不法滞在者等の効率的・効果的な摘発,送還忌避者の発生を抑制する適切な処遇及び積極的な送還執行について,様々な工夫や新たな手法を取り入れるなど,我が国社会に不安を与える外国人の効率的・効果的な排除に,具体的かつ積極的に取り組んでいくこと。
http://www.jlnr.jp/.../537_1-%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%92...
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Last modified on 2022-03-06 16:30:48
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