世界せかいに広ひろがる「慰安いあん婦ふ」メモリアルデーのとりくみ
ハルモニたちが与あたえた励はげまし

　一いち九きゅう九きゅう一いち年ねん八はち月がつ十じゅう四よん日にち、韓国かんこくで金学順きむはくすんさんが、日本にっぽん軍ぐん「慰安いあん婦ふ」制度せいどの被害ひがい者しゃであることを名乗なのり出でたことを契機けいきに、アジア各国かっこくで日本にっぽん政府せいふに謝罪しゃざいと補償ほしょうを求もとめる被害ひがい者しゃを中心ちゅうしんとした運動うんどうが拡ひろがった。毎年まいとし八はち月がつ十じゅう四よん日にちを「慰安いあん婦ふ」問題もんだいの解決かいけつを目指めざしたメモリアル・デーにすることをアジア連帯れんたい会議かいぎがよびかけ、今年ことしも世界せかい各地かくちでさまざまな行動こうどうが取とり組くまれた。
　韓国かんこくでは、大統領だいとうりょうの昼食ちゅうしょく会かいに元もと慰安いあん婦ふの方ほうが招待しょうたいされ、また少女しょうじょ像ぞうの除幕じょまく式しきや記者きしゃ会見かいけん、ソウル清渓川チョンゲチョン広場ひろばでの少女しょうじょ像ぞう五ご〇〇体たいのミニチュア像ぞうの展示てんじが催もよおされた。プラスチック製せいの少女しょうじょ像ぞうを載のせたバスがソウル市内しないを循環じゅんかんし、ソウル市長しちょうも乗のっていたことは、日本にっぽんでは特とくにフジテレビ系列けいれつで「日にち韓かん合意ごういに反はんする行為こうい」というコメント付つきで報道ほうどうされた。キャスター、タレント、学者がくしゃが口くちをそろえて日本にっぽん政府せいふの意向いこうである「少女しょうじょ像ぞう＝反日はんにちを象徴しょうちょうする像ぞう」をくりかえし代弁だいべんした。かれらには、植民しょくみん地ち支配しはいの反省はんせいはもちろんのこと被害ひがい者しゃに沿そった考かんがえや問題もんだい意識いしきは微塵みじんもなく、「解決かいけつ済ずみなのにいつまでごたごたと言いっているのか」という日本にっぽん政府せいふの思惑おもわくを視聴しちょう者しゃに植うえつけている。
　日本にっぽんでは、今回こんかいで五ご回かい目めになるメモリアルデーの取とり組くみが、大阪おおさかと東京とうきょうを中心ちゅうしんに行おこなわれた。八月はちがつ十じゅう三さん日にち、東京とうきょう・文京ぶんきょう区民くみんセンターで開催かいさいされた集会しゅうかいは、「語かたり始はじめた被害ひがい者しゃたち　日本にっぽん軍ぐん慰安いあん婦ふ、ＡⅤ出演しゅつえん強要きょうよう、ＪＫビジネス」のテーマで、韓国かんこく挺身ていしん隊たい問題もんだい対策たいさく協議きょうぎ会かいの尹いん美香みか共同きょうどう代表だいひょうを招待しょうたいし、開催かいさいされた。

性せい被害ひがいにあう若わかい女性じょせいたちの背景はいけい

　現在げんざいの日本にっぽんでは、若わかい女性じょせいの貧困ひんこんの問題もんだいはきわめて深刻しんこくになっている。失業しつぎょう・不安定ふあんてい雇用こよう、貧困ひんこんに基もとづく家庭かてい崩壊ほうかいと虐待ぎゃくたい、学校がっこうや職場しょくばでの執拗しつようないじめなどは、不十分ふじゅうぶんな行政ぎょうせいや地域ちいきの支援しえん救済きゅうさい事業じぎょうのもとで社会しゃかい的てきに孤立こりつし、生いきづらさを抱かかえ、行いき場ばのない状態じょうたいに女性じょせいたちがおかれる原因げんいんとなっている。このような事態じたいは安倍あべ政権せいけんの戦争せんそう政策せいさくが進すすむにつれいっそう顕著けんちょに表あらわれ、特とくに社会しゃかい的てきに分断ぶんだんされた若わかい女性じょせいたちに矛盾むじゅんが集中しゅうちゅうしている。
　集会しゅうかいでは女子じょし中高生ちゅうこうせいを支援しえんする団体だんたいＣｏｌａｂｏの代表だいひょう仁藤にとう夢ゆめ乃さんが、これまで自身じしんの経験けいけんにもとづいて相談そうだんや企画きかく展てんの実施じっしなどの活動かつどうをしてきた経過けいかや、「慰安いあん婦ふ」制度せいどの被害ひがい者しゃたちから受うけた影響えいきょう、そして、性せい暴力ぼうりょく被害ひがいに遭あった若わかい女性じょせい、女子高じょしこう生せいたちが、日本にっぽん政府せいふのとっている政策せいさくやマスコミに対たいして反対はんたいし、主体しゅたい的てきに立たち向むかっていく例れいが報告ほうこくされた。
　つづいてポルノ被害ひがいと性せい暴力ぼうりょくを考かんがえる会かい（ＰＡＰＳ）事務じむ局長きょくちょうの田口たぐち道子みちこさんが、活動かつどうの内実ないじつと合あわせて「社会しゃかい全般ぜんぱんに蔓延まんえんしている女性じょせいやこどもへの性せい暴力ぼうりょくを容認ようにん、軽視けいししている社会しゃかいのあり方かたを問題もんだいにしていくこと、性せい産業さんぎょうが成立せいりつしているシステムが問題もんだいであること、女性じょせいたちが抗議こうぎの声こえをあげる場ばを作つくること」を報告ほうこくした。
　尹いん美香みか代表だいひょうは、報告ほうこくを聞きき「日本にっぽんの若わかい女性じょせいたちの尊厳そんげんが、なぜふみにじられているのか、それは現代げんだい日本にっぽんの構造こうぞう的てきな問題もんだいであり、大人おとなの責任せきにんである」とまず率直そっちょくな感想かんそうを述のべた。日本にっぽん軍ぐん「慰安いあん婦ふ」制度せいどの被害ひがい者しゃであるハルモニたちが、戦争せんそう遂行すいこうのために植民しょくみん地ちの若わかい女性じょせいを利用りようした天皇てんのうの責任せきにんを追及ついきゅうしてから二に六ろく年ねんたった。尹いん代表だいひょうは高齢こうれいになったハルモニを支ささえての「慰安いあん婦ふ」問題もんだい解決かいけつ運動うんどうは、韓国かんこく社会しゃかいを変かえると同時どうじに世界中せかいじゅうで戦地せんち性せい暴力ぼうりょくと闘たたかう人ひとたちにとって大おおきな励はげましと影響えいきょうを与あたえていると具体ぐたい的てきな事例じれいをあげて報告ほうこくした。
　日本にっぽん政府せいふのとる政策せいさくと真まっ向こうから立たち向むかう韓国かんこくの「慰安いあん婦ふ」問題もんだい解決かいけつ運動うんどうについての真実しんじつを日本にっぽんのマスコミは伝つたえない。ハルモニたち被害ひがい者しゃは、「これからの若わかい世代せだいに二度にどと同おなじような戦争せんそう被害ひがいをもたらしたくない」と世界中せかいじゅうを駆かけ回まわって日本にっぽん政府せいふに戦争せんそう犯罪はんざいの認定にんていと公式こうしき謝罪しゃざい、法的ほうてき賠償ばいしょう、真相しんそう究明きゅうめいと責任せきにん者しゃ処罰しょばつ、歴史れきし教育きょういく・追悼ついとう事業じぎょうの実施じっしを要求ようきゅうする運動うんどうを行おこなってきた。

資本しほん主義しゅぎの矛盾むじゅんのあらわれ

　日本にっぽん政府せいふは、日本にっぽんがこれまで行おこなってきた近代きんだいの戦争せんそうの知しられてはまずい数々かずかずの残虐ざんぎゃくな事実じじつを明あきらかにせず、与あたえた被害ひがいについて賠償ばいしょうはおろか責任せきにんさえ認みとめていない。日本にっぽんが植民しょくみん地ち支配しはい下かで行おこなったことの国家こっか的てき責任せきにんをとらせるように追及ついきゅうするハルモニたちを、日本にっぽん政府せいふは、あらゆる手段しゅだんをつかって排除はいじょする。
　日本にっぽん社会しゃかいにある「性せい産業さんぎょうにいく女子高じょしこう生せいたちは、お金かねほしさ」という偏見へんけんは、元もと「慰安いあん婦ふ」制度せいどの被害ひがい者しゃを「困こまった存在そんざい」と単純たんじゅんにとらえさせることと共通きょうつうの基盤きばんを持もっている。偏見へんけんを助長じょちょうさせることで背景はいけいや原因げんいんをみえなくさせているのは支配しはい層そうの常套じょうとう手段しゅだんだ。ハルモニたちが、日本にっぽんの植民しょくみん地ち政策せいさく、軍事ぐんじ政策せいさくによって生涯しょうがい筆舌ひつぜつにつくせない悲惨ひさんなめに遭あったことと、現代げんだい日本にっぽんの資本しほん主義しゅぎの矛盾むじゅんのあらわれとして女性じょせい・女子高じょしこう生せいたちが存在そんざいしていることとは共通きょうつうの根ねを持もっている。
　日本にっぽん社会しゃかいの戦前せんぜん戦後せんごをつらぬく「公おおやけの政策せいさく遂行すいこうのためには、個人こじんの尊厳そんげん、人権じんけんなどまったく無視むしする」ことが、いかに一番いちばん弱者じゃくしゃである子こどもや、若わかい女性じょせい・若年じゃくねん層そうにとってつらい結果けっかをもたらしているか、日本にっぽんの右翼うよく政治せいじ家かたちの差別さべつや偏見へんけんに満みちた言動げんどうや考かんがえの悪影響あくえいきょうが示しめすように、いかに日本にっぽん社会しゃかい全般ぜんぱんに戦争せんそう政策せいさくを認容にんようする排外はいがい主義しゅぎ的てきな風潮ふうちょうが浸透しんとうしているか、「慰安いあん婦ふ」問題もんだいの解決かいけつをめざして日本にっぽん政府せいふに強つよく要求ようきゅうしていくことが日本にっぽん政府せいふが取とる戦争せんそうへの道みちをただすことにもつながっている。【倉田くらた智恵子ちえこ】

（『思想しそう運動うんどう』1007号ごう　2017年ねん9月がつ１日にち号ごう）