計算尺と二進数そろばんの作り方
★掛け算を足し算で計算できる不思議な対数積み木
茨城県つくば 市のつくばエクスプレス「つくば 駅」から 徒歩5 分のところに「H2ロケット」の 実物大模型が 一際目を 引く 科学館「つくばエキスポセンター」があります。
館内には 大掛かりな 展示物が 数多くありますが、その 中のうっかりすると 見落としてしまいそうなくらい 目立たない 一角に、 計算尺の 原理を 対数積み 木を 使って 解説するコーナーがあります。
そのコーナーにある 積み 木にはそれぞれ 数字が 書かれていて、その 数字の 積で 別の 積み 木と 長さが 揃うように 作られています。たとえば、2の 数字が 書かれた 積み 木と3の 数字が 書かれた 積み 木を 横にして 並べると、6の 数字が 書かれた 積み 木の 長さに 等しくなり(6=2×3)、2の 数字が 書かれた 積み 木を 三つ 並べると、8の 数字が 書かれた 積み 木の 長さと 等しくなる(8=2×2×2)というものです。 ちょっと 不思議に 見えますが、これは 対数という 数の 考え 方で 表した 数値を 長さに 置き 換えています。 対数は 高校で 習うので、 小学生や 中学生のみなさんにはちょっと 難しいかもしれませんが、これは、 対数の 基本公式(log a XY = log a X + log a Y)を 利用しています。 計算尺も、この 対数の 性質に 基づいて 作られています。イメージしやすいように 下に 簡単なものを 作ってみました。
計算尺など、私たちが普段使用している10進数の計算に向いている対数を常用対数といいます。
常用対数は10を底とする対数で、 「Y=log10X」 のように表記し、Xが10の何乗かを表します。
X |
1 |
1.5 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
12 |
Y=log10X |
0.000 |
0.176 |
0.301 |
0.477 |
0.602 |
0.699 |
0.778 |
0.845 |
0.903 |
0.954 |
1.000 |
1.079 |
表にすると上のようになります。この常用対数表を用いて、計算尺の原理を考えてみましょう。
(1) 3×4=12 (2) 10÷5=2 まず(1)の乗算に出てくる3つの数値(X)の常用対数を調べると…
3 →(0.477) 4 →(0.602) 12 →(1.079) となっています。
この常用対数表を見て、もう気づいた方もいるとおもいますが、前述のとおり 「0.477+0.602=1.079」 と加算で表すことができます。
次に(2)の除算の3つの数値(X)の常用対数を見てみましょう。
10 →(1.000) 5 →(0.699) 2 →(0.301) ですね。今度は 「1.000-0.699=0.301」 と減算で表せます。
つまり、これが計算尺の原理です。
★数学の自由研究にいかが? - 対数積み木の作り方 -
● 角材をノコギリで上の常用対数表の比率(Y=log10X)で切断する。(積み木の構成は右を参考にしてください。)
● 目の荒い紙やすりで角を痛くない程度にとる。
● 全体がすべすべになるまで目の細かい紙やすりで研摩する。
● 積み木の塗料は、万が一口に入っても安全な植物性の塗料にする。(もちろん白木のままでもかまいません。)
● それぞれの積み木に、長さ(Y=log10X)に応じた数字(X)を書く。
● 積み木がぴったり収まる収納箱を作る。(箱の組み立てには有機溶剤を使わない安全な木工用ボンドを使う。)
※本格的に作るなら、積み木にはブナやナラなどのやや硬い木材を使い、収納箱にはポプラなどの軽くてやわらかい木材を使うのがベストです。
|
★対数を利用したアナログコンピュータ - 計算尺 -

「そろばん」は 知っていても「 計算尺」は 知らないという 子供たちは 結構多いのでないでしょうか。
ましてや 計算尺の 実物を 見たり 手にしたことのある 子供たちはほとんどいないでしょう。
「そろばん」はいわゆるデジタル 計算機で、「 計算尺」はアナログ 計算機に 分類されます。
その 昔、 計算尺は 科学技術計算をするエンジニアたち 必携の 道具だったのですが、 関数電卓の 出現により 急速に 姿を 消してしまいました。
計算尺は 様々な 関数値の 対数を 計算して、その 比率を 目盛として 固定尺や 滑尺に 配置したものです。
対数自体は、1614 年にスコットランドのジョン・ネイピアによって 考案されました。
現在の 計算尺のように 複数の 尺をずらして 計算する 形のものは、1632 年にイギリスの 数学者ウィリアム・オートレッドにより 発明されました。
計算尺は「 固定尺」「 滑尺」「カーソル」の 3つのパーツから 構成されています。
滑尺は 固定尺に 上下から 挟まれていて、 名前の 通り 左右に 滑らせることができるようになっています。
計算尺と 言えば、かつては「ヘンミ 式」と 呼ばれていた 白く 塗られた 竹製の 計算尺が 有名でしたが、 残念ながらヘンミ 計算尺株式会社は、 現在竹製計算尺の 販売は 行っていません。
「 計算機の 部屋」では、いまや 絶滅寸前のこの 計算尺をペーパークラフトにしてみました。
ペーパークラフト 計算尺の 作成に 必要なものは、A4の 厚紙( 名刺用紙がベスト)とハサミまたはカッター、 定規、セロハンテープ、 赤ボールペン 等。 作り 方はペーパークラフト 計算尺の 展開図(PDF)をご 覧下さい。カッター 等の 工具の 使い 方は こちらを 参考にされると 良いでしょう。
●ペーパークラフト計算尺の展開図をダウンロード
★計算尺の簡単な使い方
 ペーパークラフトの 計算尺には、 左側にアルファベットの「A」「B」「C」「D」「K」「L」「CI」が 書かれていますが、とりあえず「 掛け 算」と「 割り 算」に 使用する 固定尺の「D」と 滑尺の「C」を 使って 説明します。
「D」と「C」は、それぞれ「D 尺」、「C 尺」と 呼びます。
また、それぞれのスケールの 目盛は、「C 尺の2」などと 言います。
固定尺の「D 尺」は 動かしません。 挟み 込んだ「C 尺」とそれらを 束ねる「カーソル」を 左右に 動かします。
実際の 掛け 算(2×3)を 例にすると、「D 尺の2にC 尺の1を 合わせ、C 尺の3にカーソルを 合わせ、そのすぐ 下にあるD 尺の 目盛を 読む」という 作業になります。
【計算の仕方(掛け算)】
 では、 計算尺を 使って 簡単なかけ 算をしてみましょう。まず「2×3」をしてみます。
最初にD 尺の2にC 尺の1を 合わせ、C 尺の3にカーソルを 移動し、すぐ 下にあるD 尺の 目盛を 読みます。
どうでしょうか、 答えは、2×3=6になりましたか?
では 今度は「2.1×3.2」をやってみましょう。
答えは、2.1×3.2=6.72ですが、 先ほどと 同じ 手順でD 尺の 目盛を 見ると...6.72?...6.73?
このペーパークラフトの 計算尺は 一番細かい 目盛りで0.05 単位なので、 答えは 概算になります。
一般的な 30cmぐらいの 計算尺でも、 一番細かい 目盛りはおそらく0.02 単位程度だと 思います。
そう 考えると 計算尺は「 計算機」と 呼ぶより「 概算機」と 呼ぶほうが 正しいのかもしれません。
【計算の仕方(割り算)】
今度は 計算尺でわり 算をやってみましょう。では、3÷2をやってみたいと 思います。
まず、D 尺の3にC 尺の2を 合わせ、C 尺の1にカーソルを 移動し、すぐ 下のD 尺の 目盛を 読みます。
どうでしょうか、 答えは、3÷2=1.5になりましたか?
これは 先ほどの 掛け 算とちょうど 逆の 作業になります。
もっといろいろ 計算尺で 計算してみたい 方は、 同じ 要領で 小数点同士の 割り 算にも 挑戦してみてください。
計算尺ではこれらの 計算を 連続的に 行うこともできます。
計算尺のこのほかの 使い 方についてもっと 詳しく 知りたい 方は 下記リンクを 参考にしてください。
●計算尺推進委員会
★二進数が目で見て学べる - 二進数そろばん -
通常そろばんは、 梁(はり)の 上に 一つ、 下に 四つ 珠 (たま) がありますが、この「 二進数そろばん」 の 珠は 一つだけです。
上部右の 枠内にある 三角形(▼)は2の0 乗(ビット0)の 位置です。その 左隣は2の1 乗(ビット1)その 左隣は2の2 乗(ビット2)…と、2の7 乗(ビット7)まで0~255の256 個の 数字(1バイト)を 表現できます。
1ビットは2 進数の1 桁に 相当します。4ビットを 一まとめにして16 進数の1 桁に 相当し、これをニブル(Nible)といいます。
この4ビットの 区切りの 位置が 上部枠中央の 赤丸になっています。
ちなみに 右の 二進数そろばんに 置かれた 数字は10 進数の"112"です。2 進数では"01110000"となり、16 進数では"70"になります。
● 材料:かまぼこ 板1 枚、つまようじ10 本、 鉛筆1 本
● 工具:のこぎり、カッター、 六角レンチ( 芯を 抜いた 後の 鉛筆の 穴を 広げる)、 紙やすり(バリ 取り)、 木工用ボンド
● その 他:イジェクトピンまたは 太目のクリップ1 本( 鉛筆の 芯を 押し 出す)、 輪ゴム2~3 本( 枠を 木工用ボンドで 接着したあと 固定する)
【枠(わく)】 材料:かまぼこ板
あらかじめ、 鉛筆で 板の 短辺方向に9 本(10mm 間隔) 線を 引き、その 線に 沿って 軸を 固定する 溝を8 本( 深さ2.5mm 程度)をノコギリで 切っておきます。 板の 残った 部分を 短辺方向に10mm×50mm(2 本) 切り 取ったら、 今度は 板の 長辺方向に10mm×90mm(2 本) 切り 取ります。
【軸(じく)】 材料:つまようじ
軸に8 本、ボンド 塗付用と 予備に2 本
【珠(たま)】 材料:鉛筆
カッターで8mmの 長さのものを8 個切断し、30 分ほど 石鹸水に 浸したら、イジェクトピンまたは 伸ばしたクリップで 芯を 押し 出して 抜きます。
※ 珠を 軸に 通したら 滑らかに 動くように 穴を 広げてください。それぞれのパーツが 出来上がったら、あとは 各パーツをボンドで 固定するだけです。
自由研究のテーマとして 作る 方のために、ここではあえて 詳しい 作り 方の 説明はしません。ご 自身で 作ってみて、 工夫したところ、 難しかったところをレポートにまとめましょう。
二進数についてもっと 詳しく 知りたい 方は 下記リンクを 参考にしてください。
●二進法(にしんほう)ってな~に?
|


投票数:65
平均点:10.00