多段式ロケットとツィオルコフスキー
月がスーパーボールサイズだとしたら地球ってどれくらいの大きさになるのかな・・・
今やお
祭りや
縁日で「
金魚すくい」に
並ぶ
定番中の
定番となった「スーパーボールすくい」ですが、みなさんは、その
主役のスーパーボールの
大きさ(
直径26mm)に
月を
縮尺したら、
地球はどれくらいの
大きさになると
思いますか?
直径40mmのピンポン
玉サイズでしょうか?それとも、
直径65mmのテニスボールの
大きさでしょうか?
正解は95mm
程度でソフトボールサイズになります。
また、
小惑星探査機「はやぶさ」が
地球に
無事帰還したことで
一躍有名になった
小惑星イトカワを
縮尺すると、その
大きさは4ミクロンとなり、
酵母菌や
乳酸菌と
同程度のサイズになります。
イトカワってほんとに小さな惑星なんですね。
ではソフトボールサイズの
地球からスーパーボールサイズの
月までの
距離はのどれくらいになると
思いますか?
地球から
月までの
平均距離はおよそ38
万kmなので、
縮尺すると2.8m
離れていることになります。
ちなみに、
太陽は
直径が
地球の109
倍なので、
直径約10mの
小さな
天文台のドーム
程度の
大きさとなり、
地球から
太陽までの
距離はおよそ1
億5000
万kmなので、ソフトボール
大の
地球から
天文台ドームまでの
距離は
約1.2km
程度となります。
また、この1.2kmの
距離を
自転車で8
分20
秒(
時速8.64km)かけて
走ったとすれば、その
自転車は
光の
速度で
走ったことになります。
宇宙を縮尺してみると身近なものでイメージできるんだね。
物理好きな
方はご
存知かもしれませんが、ビッグバン
宇宙論で
知られたロシア
生まれのアメリカの
物理学者ジョージ・ガモフの
著書の
中に、アルベルト・アインシュタインの
特殊相対性理論を
分かりやすく
解説した「
不思議の
国のトムキンス」 (ガモフ
全集第1
巻 -
全13
巻・
別巻3
巻-)という
一般向けの
科学啓蒙書があります。その
中の
第一話「のろい
町」の
舞台となっている
町は、
光の
速度が
時速10km
程度しかないので、
自転車に
乗って
走っただけでもローレンツ
短縮や
光のドップラー
効果、ウラシマ
効果が
現れ、
町のいたるところで
相対性理論が
予言する
不思議な
現象が
起こります。
月をスーパーボールサイズにまで
縮尺した
世界は、そんな
相対性理論を
身近に
感じられる「のろい
町」のような
不思議な
空間を
思い
起こさせます。
相対性理論が
導く
不思議な
世界の
話はまた
別の
機会に
譲るとして、ここからさきは
光の
速度よりはるかに
遅い
宇宙ロケットの
話に
移ります。
ペンシルロケットから
始まった
日本のロケット
開発が、
小惑星「イトカワ」の
名前の
由来にもなった
糸川英夫教授を
抜きにしては
語れないように、またアメリカのロケット
開発が、ゴダードやアポロ
計画のフォン・ブラウンを
抜きにしては
語れないように、それらロケット
開発の
技術的ベースとなっている
多段式ロケットを
語る
上で、
旧ソ連の
科学者コンスタンチン・E・ツィオルコフスキーを
抜きに
話を
進めることはできないでしょう。
彼は、「ロケットが
十分な
推力を
得るためには、
移動体部分の
質量は
全体に
比べてできるだけ
小さいことが
望ましく、
必要の
無くなった
部分は
切り
離すべきだ」という
考えに
基づいて
多段式ロケットを
考案し、1897
年に
世界で
最初のロケット
理論を
発表しました。さらに
彼は、
多段式ロケットでなければ
人工衛星を
衛星軌道に
乗せる
第1
宇宙速度(およそ
秒速7.9km)に
達することができないとも
考えていました。
理論発表から
一世紀以上が
経過した
今も、
衛星打ち
上げ
機は
全て
多段式となっていて、
彼の
考えが
正しかったことを
裏付ける
結果となっています。
また、そのことが
彼を「ロケット
工学の
父」
呼ぶ
所以でもあるのです。そんな
彼の
偉業を
称えて、
後に
月の
裏側で
発見された
直径約185kmの
美しい
漆黒のクレーターに「ツィオルコフスキー・クレーター」と
彼の
名が
冠されました。
月ロケットと
言えば、「アポロ」や「かぐや」を
思い
浮かべる
方も
多いと
思いますが、これらの
探査機を
運ぶロケットも
多段式ロケットになっています。
重力を
振り
切って
月へ
向かうには、
衛星打ち
上げ
時に
必要な
第1
宇宙速度を
超え、さらに
多段式ロケットで
第2
宇宙速度(
脱出速度、およそ
秒速11.2km)まで
加速しなければなりません。また、
前述の
小惑星探査機「やはぶさ」も
多段式ロケットにより
第2
宇宙速度まで
加速されました。

さらに、
第3
宇宙速度というものもあります。
これは
太陽系を
抜け
出すのに
必要な
速度で、およそ
秒速16.7kmになります。
今のところ、この
第3
宇宙速度を
超えた
探査機はパイオニア10
号、11
号、ボイジャー1
号、2
号の4
機しか
存在しません。
これらの
探査機はまず
多段式ロケットで
打ち
上げられ、
惑星や
衛星などの
重力や
公転運動を
利用し、(スイングバイ
航法)
第2
宇宙速度から
第3
宇宙速度へと
加速しました。
※【写真右】 ボイジャー1号 Image credit: NASA
中学生の自由研究(自由工作)にスーパーボールロケットはいかが?
大きさの違うスーパーボールを使った多段式ロケットの実験です。
多段式スーパーボールロケットは、
中学生が
理科で
習う、
身近な
物理現象「
力と
圧力」(1
学年)、「エネルギーの
移り
変わり」(3
学年)に
沿った
内容となっています。
夏休みの
自由研究テーマや
教材を
使った
理科の
授業などにご
利用ください。
一般的にスーパーボールは
反発係数(
跳ね
返り
係数)が
高くとてもよく
弾みます。このスーパーボールの
性質を
使って、
多段式ロケットの
実験をしてみましょう。
★必要な工具
ドライバー、
千枚通し、カッターまたはハサミ。
その
他、ピンセット、
目玉クリップがあると
便利です。
左のように、クリップ
類は
糊付けした
羽をロケット
本体に
固定するときに
使用します。
金具類は、あらかじめ
長さを
揃えたタコ
糸に
結んでおきましょう。
3
段目のスーパーボール(
小)には、
位置エネルギーから
変換された
運動エネルギーがスーパーボールの(
大)から(
中)へと
移り
継がれて
加わりますのでしっかりと
固定してください。
ボールが
飛んでいかないようにしっかり
固定できるものであれば、
下の
材料の
中のタコ
糸や
金具類は
手元にあるもので
代用してもかまいません。もし
実験中にネジやヒートンが
外れてしまう
場合は、
金具の
上からビニールテープでボールに
巻きつけて
固定してみてください。
スーパーボール(
大)に
挿す
竹串やスーパーボール(
中・
小)に
挿すストローは、
深く
挿し
過ぎると
弾まない
原因になるので
注意が
必要です。
スーパーボール(
大)には
竹串を
直径の1/3まで
挿し、スーパーボール(
中・
小)は
直径の2/3の
長さのストローを
中央まで
差し
入れてください。
★材料
● スーパーボール(
大60mm・
中36mm・
小26mm)3
個
● ストロー2
本(
穴の
直径が4mmと6mm
各1
本)
● ビニールテープ
● セロハンテープ
● のり
又は
木工用ボンド
●
真鍮ヒートン2
個
●
木ねじ2
個(
右の
画像より
少し
長めが
良いようです)
● タコ
糸 50cm(
強く
切れにくいものを
使用)
●
厚紙(
羽は
こちら からダウンロードできます)1
枚
●
竹串、または
竹ひご1
本(17~18cm)
★作り方
- ①スーパーボール(大)の真ん中に竹串を立てます。
- ②スーパーボール(小・中)の真ん中に小さな穴を開け、ドライバーで徐々に広げ4mm弱の穴にします。
- ③そこに穴の長さより短く切った直径4mmのストローを挿し入れます。
- ④ボールを串に通したらボールが飛ばないように小さいボールと大きいボールをタコ糸で付けます。
- ⑤直径6mmのストローを6cmに切ります。
- ⑥その先端に2cm幅に切ったビニールテープを巻き付け錘にします。
- ⑦糊付けしたロケットの尾翼をストローの後ろにセロハンテープで貼りつけたら出来上がりです。
※シャトルの尾翼は上の画像からダウンロードしてください。
★飛ばし方
- 右のように竹串の上部を指でつまみ、そのまま指を離して落下させます。
- このロケットは非常に良く飛びます。まず最初は低い位置(20~30cm)から始めてください。
- 右のロケットを立ち上がった状態で手を伸ばしアスファルトの地面へ落下させたところ、なんと
- 電柱を軽く飛び越えていきました。(10m以上?)
☆実験してみよう
①ロケットを作る前に、まずスーパーボールを使って次のことを試してみましょう。
スーパーボール(
大)とスーパーボール(
中)を
両手に
持って
同じ
位置から
下に
落とすとどうなるでしょう?
● スーパーボール(
大)の
方が
高く
跳ね
上がる?
● スーパーボール(
中)の
方が
高く
跳ね
上がる?
● どちらも
同じぐらい
跳ね
上がる?
②スーパーボール(大)の串にスーパーボール(中)を通し、①と同じ位置から落としてみましょう。
スーパーボール(
中)はどのくらい
跳ねるでしょうか?
● ①の実験のときとだいたい同じ位置に跳ね上がる?
● ①の実験のときより跳ね上がらない?
● ①の実験のときより高く跳ね上がる?
③次の条件で完成したロケットを一定の高さから落としてみましょう。
最初はロケットを低い位置から落としてみてください。
● そのままの状態でロケットを落としてみる
● スーパーボール(大・中)の2つをビニールテープで固定して落としてみる
● スーパーボール(大・中・小)の3つをビニールテープで固定して落としてみる
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☆考察
スーパーボールロケットがシャトルを発射するまでの物理過程
エネルギーは
相互に
変換されたり、
移り
変わったりします。
手に
持ったスーパーボールロケットが
持つ
位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)は、
手を
離した
瞬間から
運動エネルギーへとしだいに
変換され、
地面衝突直前には
全て
運動エネルギーに
変換されます。
スーパーボールロケットが
地面に
衝突したとき、
運動エネルギーの
一部は、わずかながら
熱エネルギーに
変換され
外部に
放出されます。
その
後スーパーボールが
持つ
弾性により
運動エネルギーは
向きを
逆方向に
変え、(
作用反作用の
法則)
今度は
落下時とは
逆に
運動エネルギーを
徐々に
位置エネルギーに
変換させながら、スーパーボール(
大)から(
中)、(
中)から(
小)へと、さらに
衝突していく
過程で
運動量を
変化させ、
最後にシャトルを
高く
飛ばす
運動エネルギーになります。
つまり、もとの
位置よりも
高く
跳ね
上がる
理由は、エネルギーが
重いほうから
軽いほうへと
移ったからです。
一見不思議に
見えるシャトルを
高く
打ち
上げるエネルギーも、
元をたどればスーパーボールロケット
自体が
落下開始直前に
持っていた
位置エネルギーに
他なりません。
その
位置エネルギーが
運動エネルギーに
変換されシャトルを
飛ばしているのです。
スーパーボールロケットが
持つ
位置エネルギーは
形を
変えながらスーパーボール(
大)、(
中)、(
小)、さらにはシャトルへと
移っていきますが、
衝突や
摩擦で
外へ
逃げてしまう
熱エネルギーなども
含めて、エネルギー
全体の
量は
変わることがありません。(エネルギー
保存の
法則)
画像出典: ●フリー
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米国ジェット
推進研究所収録画像