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パレスチナとイスラエル
将校が
恋に
落ちる
昼メロ「テルアビブ・オン・ファイア」が
人気を
博しているなか、パレスチナ
人のADが
毎日通っている
検問所の
主任から
脚本のアイデアをもらったことで、
思いもよらない
事態がふたりに
訪れる。
脚本づくりで
育まれる
友情を
紡ぎながら、イスラエル、パレスチナの
複雑な
情勢を
笑いと
皮肉で
包んで
描き
出す。パレスチナ
人監督、サメフ・ゾアビの
才気溢れるストーリーテリングが
好ましいコメディ。
--この
作品をどのように
形作られていったかを
教えてください。
サメフ・ゾアビ監督(以下、ゾアビ監督):
私の
最初の
長編映画『Man Without a Cell Phone』(10)はコメディでした。いかにパレスチナ
人が
苦労しながら、イスラエルに
住んでいるかを
描いたのです。
政治的なメッセージも、キャラクターも
物語も
好評でした。
同じスタイルで
次の
作品も
撮りたいなと
思いました。
--パレスチナとイスラエルの
問題は、
今もヒートアップしていますね。
ゾアビ監督:パレスチナとイスラエルはそれぞれが
強い
意見を
持っています。コメディに
仕立てることはリスキーだし、
偏ってしまったら
危ないことになってしまいます。さまざまな
人にアドバイスを
受け、いろいろな
意見が
出され、
聞くだけで
疲れました。その
時に
閃いたのです。この
状況をストーリーにしたらいい。いろんな
人から
意見を
言われ、
困りぬくクリエイターの
物語を
思いついたわけです。
--
過激になりすぎない、ギリギリのエンタテインメントとしてストーリーをどのように
構築されたのですか?
ゾアビ監督:キャラクターを
大前提にした
成長物語を
核に、
物語を
考えました。
例えば、
昼メロの
製作という
設定はありましたが、
政治的な
内容にするのは
後から
付け
加えたことです。
改稿するたびに
少しずつ
政治的なものが
加わり、
私自身の
政治的な
考え
方も
成長していきましたが、キャラクターを
面白くすることに
心を
砕きました。
--
登場人物は
市井にいる
普通の
人ですね。
ゾアビ監督:パレスチナとイスラエルの
問題は
白黒がはっきりしていて、
体制に
反対している
人たちも、
押し
付けようとしている
人たちも
凝り
固まっています。この
体制で、
普通に
生きている
人を
描きたかったのです。
--
主人公は、
毎日検問所を
通らないといけない
設定です。
監督自身も
同じ
体験をされているのですか?
ゾアビ監督:
日常的に
行き
来しています。パレスチナ
人にとってもあれは
日常茶飯事。
特にウエストバンクに
住む
人は
時々、
検問所で
通過できないことも
起こります。パレスチナ
人のなかには、あれだけ
海に
近いのに
見たことが
一度もない
人もいます。
大きな
牢獄のようなものです。
--ヤニブ・ビトンさんは
検問所の
所長役ですが、どんな
印象を
受けられましたか?
ヤニブ・ビトン(以下ビトン):
検問所は、
検問する
側もされる
側も、ない
方がいいと
考えています。ただ、この
作品の
設定では、
所長と
主人公の
出会いの
場になりました。
通常と
違ってお
互い
話し
合う、
目と
目を
見て
話す、そして
一緒に
何かをやる、
一緒に
脚本を
書いていく、そういった
共同作業をすることは
普通は
考えられません。そうした
出会いを
描けたことが、いちばん
嬉しかったですね。
ゾアビ監督:もうひとつ
付け
加えると、あのふたりの
平等の
関係性をアピールしたかったのです。ふだんは
検問する
側とされる
側、
決して
対等ではありません。それが、
私たちに
押し
付けられたオスロ
合意(93
年にイスラエルとパレスチナ
解放機構の
間で
同意された
協定)だと
思います。この
作品では、ふたりは
脚本を
書くという
状況になって、
初めて
目と
目を
合わせて
話し
合うことができます。イスラエルから
強制的に
合意させられたものでは
何の
解決も
見いだせないという
思いを
込めました。
--ヤニブ・ビトンさんを
起用した
経緯を
教えてください。
ゾアビ監督:
彼は「ユダヤ
人がやってくる」という
人気コメディドラマに
出ています。ユダヤ
人の
歴史を
描いてすごく
面白いのです。
起用した
理由は、すばらしい
演技者であるからです。もちろん
期待通りでした。
--
描かれるテレビのソープオペラは、イスラエルで
放映されている
番組という
設定ですね。
ゾアビ監督:あの
設定はフィクションですが、
以前、アラブの
国、エジプトのテレビドラマが
放映されて
人気を
博したことがあります。パレスチナ
人は、イスラエル
人が
自分たちをヨーロッパ
人だと
思いたがっていると
指摘します。イスラエルはアラブ
諸国に
囲まれていて、アラブの
文化も
知りたい
一方で、ヨーロッパ
人と
自負しているのです。
ビトン:イスラエルではエジプトの
国民的歌手が
人気で、アラブの
映画も
見るしアラブの
食べ
物も
食べる。それが
僕は
平和への
鍵だと
思います。イスラエル
人が
自分たちの
立場を
認め、アラブも
認めればいいのです。
ゾアビ監督:この
作品のように、アラブ
人とイスラエル
人が
一緒に
脚本を
書くことは、
今はまだ
現実ではありません。だけども
常に、そうありたいという
願いが
心の
中にあります。
--どういう
経緯で
監督の
道を
志されたのでしょうか。
ゾアビ監督:
何かメディアに
携わりたいとは
思っていましたが、
映画監督を
目指していたわけではありません。
最初に
短編を
撮ったときに、1
回限りでいいと
思っていたらカンヌで
受賞してしまった。だからなんとなく
辞められなくなってしまいました(笑)。
最初の
長編は、「ドラメディ(Drama+Comedy)」と
言われました。
何かの
間違いでコメディになったと
思われたのですね。
私は「ドラメディ」
世界を
常に
求めています。
先日、『パラダイス・ナウ』(05)の
監督、ハニ・アブ・アサドから
脚本を
頼まれて
書きました。ガザ
地区の
歌手の
話です。
--
監督はイスラエル
映画界に
与されている
感じなのですか?
ゾアビ監督:
私はイスラエルに
住むパレスチナ
人。パスポートはイスラエル
人です。イスラエル
人もパレスチナ
人も
一緒に
描かないと、
作品は
現実的なものにはなりません。
一概にパレスチナ
人がみんな
同じではありません。
(
取材/
構成 稲田隆紀 日本映画ペンクラブ)