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『テルアビブ・オン・ファイア』が皮肉で包んで提示したパレスチナとイスラエルの情勢|第31回東京国際映画祭
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2018.11.05 [インタビュー]
『テルアビブ・オン・ファイア』が皮肉ひにくつつんで提示ていじしたパレスチナとイスラエルの情勢じょうせい
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©2018 TIFF

パレスチナとイスラエル将校しょうこうこいちるひるメロ「テルアビブ・オン・ファイア」が人気にんきはくしているなか、パレスチナじんのADが毎日まいにちかよっている検問けんもんしょ主任しゅにんから脚本きゃくほんのアイデアをもらったことで、おもいもよらない事態じたいがふたりにおとずれる。脚本きゃくほんづくりではぐくまれる友情ゆうじょうつむぎながら、イスラエル、パレスチナの複雑ふくざつ情勢じょうせいわらいと皮肉ひにくつつんでえがす。パレスチナじん監督かんとく、サメフ・ゾアビの才気さいきあふれるストーリーテリングがこのましいコメディ。

--この作品さくひんをどのように形作かたちづくられていったかをおしえてください。

サメフ・ゾアビ監督かんとく以下いか、ゾアビ監督かんとくわたし最初さいしょ長編ちょうへん映画えいが『Man Without a Cell Phone』(10)はコメディでした。いかにパレスチナじん苦労くろうしながら、イスラエルにんでいるかをえがいたのです。政治せいじてきなメッセージも、キャラクターも物語ものがたり好評こうひょうでした。おなじスタイルでつぎ作品さくひんりたいなとおもいました。
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--パレスチナとイスラエルの問題もんだいは、いまもヒートアップしていますね。

ゾアビ監督かんとく:パレスチナとイスラエルはそれぞれがつよ意見いけんっています。コメディに仕立したてることはリスキーだし、かたよってしまったらあぶないことになってしまいます。さまざまなひとにアドバイスをけ、いろいろな意見いけんされ、くだけでつかれました。そのときひらめいたのです。この状況じょうきょうをストーリーにしたらいい。いろんなひとから意見いけんわれ、こまりぬくクリエイターの物語ものがたりおもいついたわけです。

--過激かげきになりすぎない、ギリギリのエンタテインメントとしてストーリーをどのように構築こうちくされたのですか?

ゾアビ監督かんとく:キャラクターを大前提だいぜんていにした成長せいちょう物語ものがたりかくに、物語ものがたりかんがえました。たとえば、ひるメロの製作せいさくという設定せっていはありましたが、政治せいじてき内容ないようにするのはからくわえたことです。改稿かいこうするたびにすこしずつ政治せいじてきなものがくわわり、わたし自身じしん政治せいじてきかんがかた成長せいちょうしていきましたが、キャラクターを面白おもしろくすることにしんくだきました。

--登場とうじょう人物じんぶつ市井しせいにいる普通ふつうひとですね。

ゾアビ監督かんとく:パレスチナとイスラエルの問題もんだい白黒しろくろがはっきりしていて、体制たいせい反対はんたいしているひとたちも、けようとしているひとたちもかたまっています。この体制たいせいで、普通ふつうきているひとえがきたかったのです。

--主人公しゅじんこうは、毎日まいにち検問けんもんしょとおらないといけない設定せっていです。監督かんとく自身じしんおな体験たいけんをされているのですか?

ゾアビ監督かんとく日常にちじょうてきしています。パレスチナじんにとってもあれは日常にちじょう茶飯事さはんじとくにウエストバンクにひと時々ときどき検問けんもんしょ通過つうかできないこともこります。パレスチナじんのなかには、あれだけうみちかいのにたことがいちもないひともいます。おおきな牢獄ろうごくのようなものです。

--ヤニブ・ビトンさんは検問けんもんしょ所長しょちょうやくですが、どんな印象いんしょうけられましたか?

ヤニブ・ビトン(以下いかビトン)検問けんもんしょは、検問けんもんするがわもされるがわも、ないほうがいいとかんがえています。ただ、この作品さくひん設定せっていでは、所長しょちょう主人公しゅじんこう出会であいのになりました。通常つうじょうちがっておたがはなう、もくはなす、そして一緒いっしょなにかをやる、一緒いっしょ脚本きゃくほんいていく、そういった共同きょうどう作業さぎょうをすることは普通ふつうかんがえられません。そうした出会であいをえがけたことが、いちばんうれしかったですね。
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ゾアビ監督かんとく:もうひとつくわえると、あのふたりの平等びょうどう関係かんけいせいをアピールしたかったのです。ふだんは検問けんもんするがわとされるがわけっして対等たいとうではありません。それが、わたしたちにけられたオスロ合意ごうい(93ねんにイスラエルとパレスチナ解放かいほう機構きこうあいだ同意どういされた協定きょうてい)だとおもいます。この作品さくひんでは、ふたりは脚本きゃくほんくという状況じょうきょうになって、はじめてもくわせてはなうことができます。イスラエルから強制きょうせいてき合意ごういさせられたものではなん解決かいけついだせないというおもいをめました。

--ヤニブ・ビトンさんを起用きようした経緯けいいおしえてください。

ゾアビ監督かんとくかれは「ユダヤじんがやってくる」という人気にんきコメディドラマにています。ユダヤじん歴史れきしえがいてすごく面白おもしろいのです。起用きようした理由りゆうは、すばらしい演技えんぎしゃであるからです。もちろん期待きたいどおりでした。

--えがかれるテレビのソープオペラは、イスラエルで放映ほうえいされている番組ばんぐみという設定せっていですね。

ゾアビ監督かんとく:あの設定せっていはフィクションですが、以前いぜん、アラブのくに、エジプトのテレビドラマが放映ほうえいされて人気にんきはくしたことがあります。パレスチナじんは、イスラエルじん自分じぶんたちをヨーロッパじんだとおもいたがっていると指摘してきします。イスラエルはアラブ諸国しょこくかこまれていて、アラブの文化ぶんかりたい一方いっぽうで、ヨーロッパじん自負じふしているのです。

ビトン:イスラエルではエジプトの国民こくみんてき歌手かしゅ人気にんきで、アラブの映画えいがるしアラブのものべる。それがぼく平和へいわへのかぎだとおもいます。イスラエルじん自分じぶんたちの立場たちばみとめ、アラブもみとめればいいのです。

ゾアビ監督かんとく:この作品さくひんのように、アラブじんとイスラエルじん一緒いっしょ脚本きゃくほんくことは、いまはまだ現実げんじつではありません。だけどもつねに、そうありたいというねがいがしんなかにあります。
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--どういう経緯けいい監督かんとくみちこころざされたのでしょうか。

ゾアビ監督かんとくなにかメディアにたずさわりたいとはおもっていましたが、映画えいが監督かんとく目指めざしていたわけではありません。最初さいしょ短編たんぺんったときに、1かいかぎりでいいとおもっていたらカンヌで受賞じゅしょうしてしまった。だからなんとなくめられなくなってしまいました(笑)。最初さいしょ長編ちょうへんは、「ドラメディ(Drama+Comedy)」とわれました。なにかの間違まちがいでコメディになったとおもわれたのですね。わたしは「ドラメディ」世界せかいつねもとめています。先日せんじつ、『パラダイス・ナウ』(05)の監督かんとく、ハニ・アブ・アサドから脚本きゃくほんたのまれてきました。ガザ地区ちく歌手かしゅはなしです。

--監督かんとくはイスラエル映画えいがかいあずかされているかんじなのですか?

ゾアビ監督かんとくわたしはイスラエルにむパレスチナじん。パスポートはイスラエルじんです。イスラエルじんもパレスチナじん一緒いっしょえがかないと、作品さくひん現実げんじつてきなものにはなりません。一概いちがいにパレスチナじんがみんなおなじではありません。

取材しゅざい構成こうせい 稲田いなだたかしきの 日本にっぽん映画えいがペンクラブ)
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