A4サイズのポータブルDJシステム「FJ1」を細こまかく見みて、裏話うらばなしも聞きいてきた！

　アスキー編集へんしゅう部ぶの大塚おおつかと申もうしますこんにちは。ベースミュージックとサウナ（つまり低音ていおんと高温こうおん）が大好だいすきです。

　先日せんじつ開催かいさいされたプロ向むけ放送ほうそう機材きざいの展示てんじ会かい「Inter BEE 2023」でいくつかのブースを回まわったのですが、実じつは個人こじん的てきに、会場かいじょうに行いく前まえから大だい注目ちゅうもくしていたブースがありました。それがこちら、宮城みやぎ県けん仙台せんだい市しに本社ほんしゃを置おくミューシグナルさんのブースです。

　展示てんじのメインコンテンツは、音声おんせいをワイヤレスで飛とばす「ミュートラックス」製品せいひんの紹介しょうかいだったのですが、筆者ひっしゃが注目ちゅうもくしていたのはそこではありません（ごめんなさい）。A4サイズに“全部ぜんぶ入いり”のポータブルDJシステム、「FJ1」の試作しさく機き展示てんじです。

　DJ機器ききに興味きょうみのある方ほうならご存ぞんじかもしれませんが、今いまから7年ねん前まえの2016年ねんに、「GODJ Plus」というポータブルDJシステムのクラウドファンディングが実施じっしされました（製品せいひん出荷しゅっかは2017年ねんから）。

　GODJ Plusは、A4サイズのコンパクトな本体ほんたいに、2台だいのターンテーブル（デジタルプレイヤー）とDJミキサー、FX（エフェクター）、サンプラー、さらにはけっこうな音量おんりょうが出でる高音こうおん質しつスピーカーまでを収おさめた、まさに“全部ぜんぶ入いり”の画期的かっきてきな製品せいひん。当時とうじの音楽おんがくジャンルにおける国内こくないクラウドファンディング記録きろくを塗ぬり替かえるほどの人気にんきを集あつめたのです。ASCII.jpでも何なん度どか記事きじで取とり上あげていましたね。筆者ひっしゃも1台だい持もっていますが、本格ほんかく的てきにDJをやるわけではない筆者ひっしゃでも十分じゅうぶん楽たのしめるマシンです。

　DJプレイに必要ひつような機能きのうをまるっと搭載とうさいしており、なおかつどこにでも持もち運はこべる手軽てがるさから、発売はつばいから6年ねんが経たった今いまでも愛用あいよう者しゃは多おおいようです。たとえばプロDJのプロハンバーガーさん（a.k.a. DJ JET BARON）は、長年ながねんにわたって小しょう箱はこから大箱おおばこ、フェスまで、GODJ Plusを持もち歩あるいてDJプレイをしてきたことを長文ちょうぶんのツイートで紹介しょうかいされています。エモい。

　GODJ Plusは2019年ねんに最終さいしゅうロットを販売はんばいした後のち、入手にゅうしゅできなくなってしまいましたが、新しん会社かいしゃミューシグナルの立たち上あげ、開発かいはつチームの再さい結集けっしゅうを経へて、後継こうけい機きであるFJ1開発かいはつプロジェクトがスタートしました。

　発表はっぴょうによると、FJ1は、GODJシリーズの操作性そうさせいわるを極力きょくりょく踏襲とうしゅうしつつ、最新さいしんの技術ぎじゅつやハードウェアを盛もり込こんだ「GODJシリーズの正統せいとう進化しんか形がた」になるとのこと。

　特とくに、プロセッサの動作どうさ周波数しゅうはすうがGODJ Plusの約やく25倍ばいに（58MHzから1.6GHzへ）、メインメモリは500倍ばいに（8MBから4GBに）パワーアップするため、ソフトウェア的てきに実現じつげんする機能きのう（幅広はばひろい音源おんげんフォーマットへの対応たいおう、高こう負荷ふかなエフェクトの追加ついか、操作性そうさせいわるの改善かいぜんなど）でもかなりの進化しんかが期待きたいできます。こりゃあ楽たのしみだ。

　そんなわけで筆者ひっしゃは、Inter BEEでの試作しさく機き展示てんじにいそいそと駆かけつけたわけです。

FJ1試作しさく機きをじっくり眺ながめつつ、詳くわしい説明せつめいを聞ききました

　ミューシグナルのブースでは、同社どうしゃ代表だいひょうであり開発かいはつ者しゃでもある宮崎みやざきさんに、FJ1の進化しんかポイントから開発かいはつの裏話うらばなしまで、詳くわしくお話はなしをうかがうことができました。興奮こうふんしていた筆者ひっしゃは取材しゅざいということをすっかり忘わすれ、宮崎みやざきさんの写真しゃしんを撮とり忘わすれたわけですが（本当ほんとうにごめんなさい）、こちらの方ほうです。

　以下いかでは、宮崎みやざきさんにうかがった進化しんかポイントや裏話うらばなしをまとめてみます。

　なお、FJ1は現在げんざい開発かいはつ中ちゅうのプロダクトであり、掲載けいさい写真しゃしんは試作しさく機きのもの、記載きさいした機能きのうなどは現時点げんじてんでの構想こうそうとなります。来年らいねんの製品せいひん発売はつばいまでに変更へんこうされる可能かのう性せいがある点てんにはご注意ちゅういください。

■本体ほんたいサイズ：アルミ筐体きょうたいの採用さいようで薄うすくシャープになる

　まずは本体ほんたいサイズから。FJ1もGODJ Plusと同おなじく「A4サイズ」と表現ひょうげんされていますが、実際じっさいには少すこしだけ小ちいさくなっています。タテの長ながさはほぼ変かわりませんが、ヨコ幅はばは1、2センチほど短みじかいでしょうか。

　そして、宮崎みやざきさんが強調きょうちょうされていたのが「本体ほんたいを薄うすくすることができた」こと。GODJ Plusは本体ほんたいがプラスチック製せいだったため、強度きょうどを保たもつためにどうしても厚あつみを持もたせる必要ひつようがありました。一方いっぽう、FJ1ではアルミ筐体きょうたいを採用さいようしたことで強度きょうどの心配しんぱいがなくなり、多おおくの部品ぶひんを詰つめ込こみつつも薄うすくできたとのこと。

　実際じっさいに見比みくらべると、本体ほんたいのデザインそのものも、丸まるみのあったGODJ Plusと比くらべてかなりシャープな印象いんしょうです。スピーカー部分ぶぶんの長ちょう孔あなパンチング処理しょりも、アルミで本体ほんたい強度きょうどが増ましたからこそ実現じつげんできたデザインではないでしょうか（ここは筆者ひっしゃの想像そうぞうですが）。

■タッチパネル液晶えきしょう：横長よこながで鮮明せんめいな画面がめんは身近みぢかにある“アレ”の流用りゅうよう！

　FJ1で目めを引ひくのが、横長よこながのタッチパネル液晶えきしょうです。GODJ Plusでは左右さゆうに1枚まいずつ、合計ごうけい2枚まいのパネルを搭載とうさいしていましたが、FJ1では左右さゆうを貫つらぬく1枚まいのパネルとなり、中央ちゅうおうにも表示ひょうじエリアが拡大かくだいしています。そして画面がめんの解像度かいぞうど、明あかるさ、鮮明せんめいさも大幅おおはばにアップしています。

　ここで宮崎みやざきさんに「この液晶えきしょう画面がめんのサイズ、どこかで見みたことありませんか？」とクイズを出だされました。はて……？ こんなに細長ほそながいスマホは見みたことないし……？

　これまでのGODJシリーズでは、ほかの用途ようと向むけに大量たいりょう製造せいぞうされている液晶えきしょうパネルを流用りゅうようすることで、生産せいさんコストを抑おさえていました。たとえばGODJ Plusでは、デジタルカメラの背面はいめんディスプレイの液晶えきしょうパネルを流用りゅうようしていたそうです（ちなみにその後ご、デジカメの製造せいぞう台数だいすうが減へって液晶えきしょうパネルも入手にゅうしゅしづらくなり、GODJ Plusはもう生産せいさんできないとのこと）。

　それでは、FJ1の横長よこなが液晶えきしょうパネルは何なにを流用りゅうようしたものか？ 正解せいかいは「自動車じどうしゃのルームミラーモニター」でした。なるほど！

　最近さいきんの自動車じどうしゃには、背後はいごを映うつすルームミラーをカメラ＋モニター映像えいぞうに置おき換かえたものがありますが、宮崎みやざきさんはそれを見みて「あれ？ これ使つかえるんじゃない？」と気きづいたとのこと。自動車じどうしゃのパーツならば生産せいさん数すうも多おおく入手にゅうしゅ困難こんなんになりにくそうですし、1枚まいの横長よこながパネルにしたことで表示ひょうじ領域りょういきも拡大かくだいする。一石二鳥いっせきにちょうですね。

■DJプレイ操作そうさ：CUEポイント×4をボタン一発いっぱつで呼よび出だし可能かのうに

　実際じっさいのDJプレイでは、スライダーやノブ（ツマミ）、ボタン類るいを使つかって操作そうさを行おこなうわけですが、これらの配置はいちやデザインも少すこし変化へんかがあります。

　まず大おおきな変更へんこう点てんとしては、HI/MID/LOの3つのイコライザー（EQ）ノブがタテに並ならぶデザインになっていることです。標準ひょうじゅん的てきなDJミキサーの配置はいちに合あわせた変更へんこうですね。左右さゆうのプレイヤーにモニターボタンが付ついたのも同様どうようで、使つかいやすそうです。

　個人こじん的てきに注目ちゅうもくしたのは左右さゆう4つずつあるボタンです。GODJ Plusでは左右さゆう8つずつ搭載とうさいしていましたが、その機能きのうはサンプラーの再生さいせい（パッド）のみでした。FJ1ではこれが、3種類しゅるいの機能きのうをスイッチで切きり替かえられるボタンに進化しんかします。

　3つの機能きのうの1つめは、これまでと同おなじサンプラーの再生さいせいパッド。2つめは曲きょくのピッチ（BPM）コントロール／リセット、そして3つめがCUE（キュー、再生さいせい開始かいし位置いち）の呼よび出だしです。なかでもCUEポイントの呼よび出だしは、あらかじめ設定せっていした4つのポイントをボタン一発いっぱつで呼よび出だせるようになるので、DJプレイでかなり便利べんりに使つかえそうです。

■ミュートラックスに対応たいおう：ワイヤレスで音おとを飛とばせる！ 面白おもしろそう

　もうひとつ、宮崎みやざきさんは「FJ1には、ミュートラックスの親おや機き（サーバー）機能きのうも内蔵ないぞうする予定よていです」とこっそり教おしえてくれました。え、ミュートラックスとは？

　ここで話はなしはブース展示てんじのメインコンテンツに戻もどります。ミュートラックスとは、無線むせんLANを使つかって音声おんせいを飛とばせる技術ぎじゅつです。Bluetoothオーディオとの違ちがいは、長距離ちょうきょり（100メートル以上いじょう）、複数ふくすう台だい接続せつぞく（1台だいの親おや機き×10台だい以上いじょうの子こ機き）、安定あんてい通信つうしん（携帯けいたい電話でんわや電子でんしレンジなどほかの機器ききの影響えいきょうを受うけにくい）の3つ。デジタル制御せいぎょにより、子こ機きどうしの同期どうきを1.2ミリ秒びょう以内いないの精度せいどで取とっているため、たとえば会場かいじょうの前方ぜんぽうと後方こうほうに設置せっちしたスピーカーを、タイミングをずらさず鳴ならすといったことも可能かのうです。

　FJ1にミュートラックスが搭載とうさいされるとどうなるのか。ワイヤレスで音おとが飛とばせるので、FJ1とスピーカーが柔軟じゅうなんに設置せっちできるようになります。それだけでなく、大おおきな音おとが出だせないお店みせや場所ばしょでも、複数ふくすうの場所ばしょに子こ機きと小ちいさなスピーカーを設置せっちして鳴ならせば、空間くうかん全体ぜんたいをひとつの音おとで包つつみ込こめる。ほかにもいろいろと使つかえそうで面白おもしろそうです。

＊　＊　＊

　FJ1は現在げんざいクラウドファンディングを実施じっししており、出荷しゅっか開始かいしは来年らいねん（2024年ねん）8月がつからが予定よていされています。したがって、まだまだこれからも製品せいひんとして作つくり込こみを進すすめるとのこと。たとえば「中央ちゅうおうの波形はけい表示ひょうじですが、開発かいはつチーム内ないでは、横よこではなく縦たてに流ながれるほうがいいんじゃないか、というアイディアも出でています」と話はなされていました。

　特とくにソフトウェア部分ぶぶんは出荷しゅっか直前ちょくぜんまで（あるいは出荷しゅっか開始かいし後ごもアップデートで）作づくり込こみができますから、クラウドファンディングへの参加さんかと合あわせて、「こういう機能きのうがほしい！」というアイディアを寄よせてみるのもよいのではないでしょうか。