藤本ふじもとけんのDigital Audio Laboratory

だい1014かい

コンパクトでおともよし。話題わだいのFIIOアクティブスピーカー「SP3 BT」使つかってみた

SP3 BT

先日せんじつ、ニュース記事きじながめていてになった製品せいひんが、中国ちゅうごくメーカーのFIIO Electronics(FIIO)が発売はつばいしたアクティブスピーカー「SP3 BT」だ。

型番かたばんからも想像そうぞうできるとおり、Bluetooth対応たいおうのスピーカーなのだが、記事きじなか個人こじんてきとどまったのはデジタル入力にゅうりょく対応たいおうしたスピーカー、というてんだった。具体ぐたいてきにはUSBにくわえて、S/PDIFコアキシャル、S/PDIFオプティカルのそれぞれにも対応たいおうしているところだ。

S/PDIFだけでなく、KEFやELACのアクティブスピーカーのなかにはHDMIまで直接ちょくせつ入力にゅうりょくできるモデルも存在そんざいするそうだが、個人こじんとしては、しばらくデジタル入力にゅうりょく対応たいおうしたスピーカーをさわっていなかった。

そこで、デジタル入力にゅうりょく対応たいおうした最新さいしんスピーカーがどんなものかためしてみたいとおもい、編集へんしゅうつうじてSP3 BTをりることにした。じつうれ価格かかく64,900えん前後ぜんこうという、そこそこの値段ねだんのスピーカーだが、結構けっこう使つかえそうな機材きざいだったので、紹介しょうかいしてみよう。

S/PDIFの入力にゅうりょくができるスピーカーが

どんなスピーカーをえらぶかはひとによって、ちがうところだし、それぞれの主義しゅぎ主張しゅちょうがあるところだ。アクティブスピーカーなんてものはゆるせない、というひともいるだろし、外部がいぶにアンプをくなんて面倒めんどうすぎる、というひともいるだろう。もちろん設置せっちする場所ばしょ使用しよう目的もくてきによってもちがってくるので、ここでどれがいいとかわるいとかをべるつもりは毛頭もうとうない。

が、個人こじんてきむかしからいいな、とおもっているのが、デジタル信号しんごう直接ちょくせつ入力にゅうりょくできるスピーカーだ。いまでこそBluetoothスピーカーはそこらなかにあるし、さまざまなメーカーからUSBスピーカーがているので、デジタル入力にゅうりょくなんてたりまえといえばたりまえなのだが、S/PDIFの入力にゅうりょくができるスピーカーがきなのだ。

20ねんちかまえはEDIROL(Roland)が「MA-10D」、「MA-15D」というDTM用途ようとのモニタースピーカーをしていたり、ONKYOがWAVIOシリーズとして「GX-D90」、「GX-77M」といったものをしていて、個人こじんてきにも使つかっていた。

MA-10Dにおいては現在げんざいもときどきして使つかっているが、こうしたS/PDIF入力にゅうりょく可能かのうなスピーカーだと、基本きほんてきには配線はいせんでノイズがったり、音質おんしつ劣化れっかする心配しんぱいがないし、レベル設定せっていさえおなじにすれば、いつでもおなおん再現さいげんできるという部分ぶぶん魅力みりょくだ。

もちろんデジタル入力にゅうりょくといったって、このスピーカー内部ないぶにD/Aコンバーターがはいっていて、それでアナログして、アナログのアンプをとおして、スピーカーからおとてくるので、デジタルのままおとるわけではないけれど、どんなプレイヤーでも基本きほんてきおなおんるし、可変かへんする要素ようそがほとんどないのがいいのだ。

スピーカーがとってもコンパクト

あんまりこまかなスペックもずにせたところ、とどいたはこ想像そうぞうしていたよりちいさくてちょっとおどろいた。なかけてみると、ステレオペアのスピーカーとACアダプター、ケーブルるいてきたのだが、スピーカーがとってもコンパクトなのだ。iPhone 15 Proとならべてみるとおおきさの雰囲気ふんいきかるだろうか?

SP3 BTのはこ
スピーカーとどうこりぶつ
iPhone 15 Proとのサイズ比較ひかく

5インチのスピーカーであるYAMAHAの「MSP 5 Studio」とならべてみると、そのちいささがよくわかるはず。また先日せんじつ紹介しょうかいしたCearのスピーカー「pavé」とならべてみるとこんな具合ぐあいだ。

YAMAHAスピーカー「MSP 5 Studio」とのサイズ比較ひかく
Cearスピーカー「pavé」との比較ひかく

さて、このSP3 BT。ステレオペアといっても片方かたがたおや各種かくしゅ入力にゅうりょく電源でんげん入力にゅうりょく搭載とうさいされていて、もう片方かたがたがそこにつながるというわせになっている。おやあいだ専用せんようの8ピンのDINケーブルで接続せつぞくするかたちとなっている。

背面はいめん
おやは8ピンのDINケーブルで接続せつぞくする

ちなみにウーファーのサイズは3.5インチで、前述ぜんじゅつのRolandのMA-10Dとおなじなのだが、ならべてみると結構けっこうおおきさのがある。それでいてMA-10Dは10W+10Wなのにたいし、SP3 BTはウーファーが30W、ツイーターが10Wとなっていて、よりパワフルなスペックになっている。

3.5インチウーファーのRoland「MA-10D」との比較ひかく前面ぜんめん
背面はいめん

またMA-10DやONKYOのGX-77Mなどはおやみぎスピーカーでひだりスピーカーと固定こていになっていたが、FIIOのSP3 BTはおやにL/Rえスイッチが搭載とうさいされているので、どちらに設置せっちしてもOKというのも便利べんりなところ。もっとも基本きほんおやにRIGHTとかれているのでおなじくみぎスピーカーであることが基本きほんのようだ。

背面はいめんのL/Rえスイッチ

もうひとついいなとかんじたのが、スピーカーの台座だいざとなるシリコンせいのラバースタンドが2種類しゅるい付属ふぞくしているというてん

2種類しゅるいのラバースタンドが付属ふぞくする

標準ひょうじゅんはスピーカーが水平すいへい設置せっちされるのだが、もうひとつのラバースタンドにえると角度かくどかたちになっている。具体ぐたいてきには7傾斜けいしゃとのこと。そのため、デスクトップ環境かんきょう設置せっちする場合ばあい、リスニングポイントに指向しこうせいをつけることができ、よりきやすくなるのだ。しかもこのスタンドはシリコンせいインシュレーターとしても機能きのうし、スピーカーがはっする振動しんどう吸収きゅうしゅうすることで、音質おんしつへの悪影響あくえいきょう抑制よくせいするとのことだ。

水平すいへいのラバースタンドをけた場合ばあい
角度かくどきのラバースタンドをけた場合ばあい

さっそく電源でんげんれてみて、またビックリ。スピーカーのした部分ぶぶん左右さゆうともにひかり、あかあお点滅てんめつはじめたのだ。

中国ちゅうごくメーカーということもあり、派手はでなのがきなんだな、というのが率直そっちょく印象いんしょう。マニュアルをると、これはBluetoothのペアリングモードを意味いみしているとのことで、iPhoneとペアリングしてみたところ、あおみどりでゆっくりとあかるくなったりくらくなったりをかえ状態じょうたいに。これがAAC接続せつぞく意味いみしているとのこと。

じつはこのFIIO SP3 BTにはQualcommのQCC5124というBluetoothチップが搭載とうさいされており、AACやSBC接続せつぞくはもちろんのこと、LDAC、aptX/atX LL、aptX HD、aptX Adaptive、LDACにも対応たいおうしており、どのコーデックに接続せつぞくしたかによって、LEDのいろわる仕掛しかけになっているようだ。

では、一番いちばんになっているS/PDIFとの接続せつぞくはどうなっているのだろうか? おやのリアにコアキシャル、オプティカル端子たんしがあるので、ここにそれぞれを接続せつぞくし、信号しんごうながしてみたがおとはBluetoothのまま。

デジタル入力にゅうりょく対応たいおうする

そこでINPUT/PAIRボタンをしてみると、LEDがむらさきになるとともにオプティカルのおとわった。さらにもう一度いちどしてみると今度こんどはLEDが黄色おうしょくになるとともにコアキシャルにわったのだ。

オプティカルは「むらさきしょく
コアキシャルは「しょく

さらにボタンをすとオレンジ=USB、水色みずいろ=RCA、みどり=3.5mmステレオミニ、そしてもとのBluetoothとかえかたちになっている。たしかにLEDがあるおかげでどの入力にゅうりょくているか一目瞭然いちもくりょうぜんではあるけれど、ちょっと主張しゅちょうぎなのでは……というのが個人こじんてき感想かんそうではある。

USBは「オレンジ」いろ
RCAは「みずいろ
ステレオミニは「みどりしょく

ちなみにRGBというボタンがあるので、これをしてみると、選択せんたくちゅう入力にゅうりょくチャンネルのLEDのいろ一時いちじてき変更へんこうできるようになっており、各種かくしゅしょく設定せっていできるほか、カラフルにいろ変化へんかするモードなども設定せっていできる。ここに消灯しょうとうというのがあるとよかったのだが、そうしたモードはないようだった。

すごくクッキリした解像度かいぞうどたかおとでよかった

で、肝心かんじんおとはどうなのか? さきほどのラバースタンドで角度かくどをつけてデスクトップじょう設置せっちしていてみた。

デスクトップじょう設置せっちしていてみた

これはあくまでも主観しゅかんてき個人こじん感想かんそうだが、すごくクッキリした解像度かいぞうどたかおとでよかった。

モニタースピーカーという位置いちづけの製品せいひんではないけれど、それにちか傾向けいこうで、へん色付いろづけもなく、細部さいぶまでしっかりとくことができるサウンド。いてうと3.5インチだからなのか、低音ていおん物足ものたりないかんじだ。

が、リアをるとVOLUMEというノブのとなりにBASSというノブがある。最初さいしょいたときは、このBASSを中央ちゅうおうあたり、つまり-4dBでしべる設定せっていしていたのだが、これを0dBでしべるげると、結構けっこういいかんじになる。

マニュアルを確認かくにんしたところ「BASSブーストは初期しょきでは最大さいだい設定せっていされています。さまざまな使用しようシナリオやデスクトップの配置はいちおうじて適切てきせつ調整ちょうせいすることができます。比較的ひかくてきせま部屋へやでスピーカーをかべせて設置せっちする場合ばあいは、低温ていおん適切てきせつげることを推奨すいしょうします。しかし、ひろ部屋へやはなれた場所ばしょ設置せっちされている場合ばあいは、初期しょき設定せっていのままで問題もんだいありません」とのこと。勝手かってなか設定せっていしていたのが間違まちがいだったようだ。

なお、機材きざい返却へんきゃくしてからづいたのだが、FIIO ControlというBluetoothコントロールアプリがあり、これを使つかうことで10バンドのパラメトリックEQでこのみのおと調整ちょうせいすることが可能かのうとのこと。まあ、下手へた調整ちょうせいはしないほうがいいが、部屋へや形状けいじょうなどによっては多少たしょううごかすことで、よりよいチューニングにすることもできそうだ。

コントロールアプリで、10バンドのパラメトリックEQが調整ちょうせい可能かのう

最後さいごにもうひとためしてみたのが、USBオーディオ。SP3 BTにはUSB Type-Cの端子たんしがあるのだが、ここにWindowsマシンを接続せつぞくしてみた。

とくにドライバがあるわけではなく、USBクラスコンプライアントなデバイスとしてすぐに認識にんしきし、使つかうことが可能かのう。ASIOには対応たいおうしていないが標準ひょうじゅんのドライバで44.1kHzきろへるつ、48kHzきろへるつ、96kHzきろへるつのサンプリングレート、16bitおよび24bitの分解能ぶんかいのう利用りようすることができるようになっていた。

以上いじょう、FIIOのデジタル入力にゅうりょく対応たいおうのアクティブスピーカー「SP3 BT」について紹介しょうかいしてみたが、いかがだろうか? コンパクトだし、おとはいいし、さまざまなソースに接続せつぞくできるという意味いみ使つか勝手がってがいい機材きざいだった。ちょっぴりたかいけど、わるくない選択せんたくだとおもう。

藤本ふじもとけん

リクルートに15ねん勤務きんむしたのち、2004ねん有限ゆうげん会社かいしゃフラクタル・デザインを設立せつりつ。リクルート在籍ざいせき時代じだいからMIDI、オーディオ、レコーディング関連かんれん記事きじ中心ちゅうしん執筆しっぴつしている。以前いぜんにはシーケンスソフトの開発かいはつやMIDIインターフェイス、パソコンよう音源おんげん開発かいはつたずさわったこともあるため、現在げんざいでも、システムまわりの知識ちしきふかい。 著書ちょしょに「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音はつねミク&かがみおとリン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNNしんしゃ)などがある。またブログがたニュースサイトDTMステーション運営うんえいするほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当たんとうガイドもつとめている。Twitterは@kenfujimoto