西田にしだそう千佳ちかのRandomTracking

だい435かい

西田にしだえらぶWWDC 19「AV目線めせんの10だいニュース」。iOSからの独立どくりつ機能きのう改善かいぜん

米国べいこく時間じかんの6がつ3にち、アップルは年次ねんじ開発かいはつしゃ会議かいぎ「WWDC 2019」を、べいサンノゼで開催かいさいした。

WWDCが開催かいさいされている、べい・サンノゼのマッケナリーコンベンションセンター。じつ正面しょうめんがLEDかなにかでひかるようになっている。開催かいさい前日ぜんじつよる撮影さつえい

今年ことし発表はっぴょうは、日々ひび苦労くろうしている開発かいはつしゃうようなメッセージ映像えいぞうからスタートしている。かれらにアップルが感謝かんしゃしつつ、「つぎはこうなるから一緒いっしょにさらにがんばろう」と鼓舞こぶするのがWWDCの役割やくわりであり、開発かいはつしゃ会議かいぎとはそうしたものだ。

基調きちょう講演こうえん冒頭ぼうとうのビデオより。苦労くろうした仕事しごと完成かんせいしたときよろこびと達成たっせいかんみな共通きょうつうの、至高しこうときだれもがこんな表情ひょうじょうになる
アップルのティム・クックCEO

30周年しゅうねんむかえるアップル最大さいだい年次ねんじイベントだが、筆者ひっしゃもWWDCを取材しゅざいするようになってずいぶんつ。そのなかで、毎年まいとしが「シンプルに面白おもしろとし」だったか、というとそうではない。分析ぶんせきすれば興味深きょうみぶかいが発表はっぴょう自体じたいおおきなおどろきはなかったとしもあれば、シンプルに発表はっぴょうにワクワクしたとしもある。ネタがおおいとおもったとしもあれば、そうでもないとしもあった。

今年ことしはここすうねん一番いちばんの「アタリみのる」だ。ひとつひとつはけっしておおきなジャンプではない。だが、すうねんかけて準備じゅんびした「これからにたいする明確めいかく意思いし」が、それぞれの発表はっぴょうからけてえるような基調きちょう講演こうえんだった、といえるのではないだろうか。

本誌ほんしけには、とくにAVにから部分ぶぶんおおはなしを、ランキング形式けいしき解説かいせつしていこう。興味きょうみのあるものだけをひろみしていただいてもかまわないが、全体ぜんたいむと、アップルの戦略せんりゃくのイメージがよりつかみやすくなるだろう。

だい1:iTunesはなず、ただるのみ

「iTunesがなくなる!」

そんな見出みだしがSNSをめぐっている。基調きちょう講演こうえんでも、まるでありしおもすように、過去かこのMacばんiTunesのスクリーンショットが多数たすう紹介しょうかいされた。

いまやなつかしい歴代れきだいiTunes。この姿すがた見納みおさめだ

いちにアルバムをすうひゃくまいあるくことが不思議ふしぎでない生活せいかつをあたりまえのものにし、音楽おんがくをCDからダウンロード販売はんばいへと移行いこうさせ、映画えいがもディスクからはなったiTunesが「なくなる」となれば、たしかに衝撃しょうげきだろう。

だが、である。

「iTunesがなくなる」のはただしい。しかし、おおくのひとがiTunesの愛称あいしょうおもす「コンテンツストアサービス」がなくなるかというと、まったく、全然ぜんぜんそんなことはないのだ。

アップルのソフトウェアエンジニアリング担当たんとう上級じょうきゅうふく社長しゃちょうであるクレイグ・フェデレギは、壇上だんじょうでこう解説かいせつした。

「iTunesという“アプリケーション”は、まれて以来いらい様々さまざま機能きのう搭載とうさいしてきた。カレンダーやSafariも搭載とうさいしちゃおう。ほら、バッチリでしょ?」

iTunesにカレンダー機能きのうを……というのは冗談じょうだん。あまりにiTunesが「なんでもふくろ」していた現状げんじょうみずか皮肉ひにくった

もちろんこれはジョークだ。そんなことなどありない。

初期しょきにはCDをリッピングして楽曲がっきょく管理かんりするツールだったiTunesは、iPodの管理かんりがけていた。一方いっぽう映像えいぞうサービスがスタートし、iPhoneに代表だいひょうされるiOSデバイスの管理かんり担当たんとうすることになると、どんどん機能きのう肥大ひだいしていった。もはや「自分じぶんがかかわる一部いちぶ機能きのう」しか、みな使つかっていないのではないか。

そこでアップルは、次期じきmacOS「Catalina」で、iTunesという「アプリ」におおなたをるう。

シンプルに「楽曲がっきょく管理かんり購入こうにゅう」を担当たんとうする「Music」、ポッドキャストを担当たんとうする「Podcast」、そして映像えいぞう担当たんとうする「Apple TV」の3つでカバーすることになり、iTunes「アプリ」はその使命しめいえる。

これまでのiTunesがになってきた機能きのうは、基本きほんてきに3つのアプリにかれる

では、各種かくしゅデバイスの管理かんりはどうなるのか? macOS自体じたいおこなうのだ。表示ひょうじ機能きのうは、ファイルブラウザーである「Finder」に移行いこうする。iPhoneなどをMacにつないでも、iTunesはポップアップしてこない。

iPhoneなどの機器きき管理かんり機能きのうは「Finder」の仕事しごとに。専用せんようアプリはなくなる

これはどういうことなのか? そのあたりは、アップルの歴史れきしともひもいている。

iPodがアップルの中核ちゅうかく製品せいひんだったころ(まだスティーブが元気げんきで、名文めいぶんをガンガンはなっていた時期じきだ)、アップルは「デジタルハブ戦略せんりゃく」を標榜ひょうぼうしていた。Macを車輪しゃりん中心ちゅうしん(ハブ)にして、そこに様々さまざまなアップル製品せいひんがつながるという構造こうぞうだ。ハブであるMacでうご管理かんりアプリが「iTunes」だった。

だが、いま姿すがたちがう。iPhoneというスタンドアローンデバイスが中心ちゅうしんとなり、データなどはクラウドサービスである「iCloud」に集約しゅうやくされるようになった。機器きき同士どうしをケーブルでつなぐ必然ひつぜんせいはない。もはやiTunesはハブではないのだ。だから、その役割やくわり最初さいしょ仕事しごと、すなわち「音楽おんがく」にもどってくる。

これでおわかりだろう。

アップルの説明せつめいなかに、「音楽おんがく配信はいしんとしてのサービス」がわる、楽曲がっきょく管理かんりアプリがえる、といったはなし一切いっさいない。むしろサービスは、これからのアップルのはしらであり、ちからはいってもえることはありえない。解体かいたいされるのはあくまで「アプリ」だ。

ただ、Windowsばんについてはあつかいがことなる。OSがわでiOSデバイスを管理かんりする機能きのう搭載とうさいされないからだ。「複雑ふくざつだ」という矛盾むじゅんわらないので、Windowsでもあつかいが将来しょうらいわっていく可能かのうせいはあるが、いまはなんのアナウンスもない。

WindowsばんのiTunesは出来できくないので、そろそろおやく御免ごめんときではないだろうか。正直しょうじき「ときめかない」ので、感謝かんしゃささげて退場たいじょうしてもらおう。

だい2:iPhoneからひとちしていく「iPadOS」

OSとして一番いちばんおおきくわったのが「iPad」だ。なにしろ、名前なまえが「iOS」から「iPadOS」にわったのだから。名前なまえわった理由りゆうは、iPhoneからiPadの「独立どくりつ」である。

過去かこのiPadは、iPhoneのOSを使つかって画面がめんおおきなデバイスをつくったようなところがある。(実際じっさいには、iPadの原型げんけい開発かいはつするところから、さき電話でんわとしてのiPhoneに派生はせいしたようだが)

iPadが「おおきな画面がめんでコンテンツを道具どうぐ」という性質せいしつつよかった時代じだいはそれでもかった。だが、デベロッパーはどんどんだい規模きぼでクリエイティブなアプリをつくるようになり、ユーザーもPCのような「日々ひび作業さぎょう使つかえる」ものをもとめるようになる。アップル自身じしんも、とくに2015ねんのiPad Pro登場とうじょう以降いこう、「クリエイティブな機器きき」という方向ほうこうせいしている。

そうなるとになるのは、「iOS由来ゆらい制約せいやくが、PCてき使つかかた阻害そがいしている」ことだ。かといって、いまのmacOSにタッチをつけて2-in-1にしても、iPadのもっている快適かいてきさは実現じつげんできない。「iOSからまれて、iPadらしい操作そうさ方法ほうほうで、PCやMacとならんで仕事しごとができる」ようになる必要ひつようがあった。iPadのOSが「iPadOS」になったのはそういうことだ。

おなじアプリを複数ふくすうひらいたり、マルチタスクでの切替きりかえ改善かいぜんしたり、USBメモリーやSDカードがあつかえるようにしたりといったことは、PC・Macならたりまえにできることだ。それを「iPadの操作そうさ体系たいけい」のなかとしむことに、アップルは相当そうとう時間じかんをかけたのだろう。

iPadOSではマルチタスクけい機能きのうふたた強化きょうか単一たんいつアプリウインドウの複数ふくすう同時どうじ利用りようや、スライドオーバーによるアプリ切替きりかえ使つか勝手がってがっている

昨年さくねんあき現行げんこうのiPad Proがとき、「インターフェイスがUSB Type-Cにわったのに、USBメモリーなどが使つかえないし、写真しゃしん以外いがいのファイルをあつかうのも困難こんなんである」ことを批判ひはんした。だが、その状態じょうたいもようやく改善かいぜんされる。写真しゃしんをいったん「写真しゃしんアプリ」にインポートすることなく、Lightroomなどのアプリで使つかうこともできるようになるのだ! イラストレーターがApple PencilでえがいたのデータをUSBメモリーにれてひとわたす、なんてことも「ようやく」あたりまえにできるようになる。

USBメモリやSDカードもようやく「普通ふつう使つかえる」ように

iPad Proは、Apple Pencilのレイテンシー(描画びょうが遅延ちえん)がさらにみじかくなる。現在げんざいの20ミリびょうですら、おおくのひとには十分じゅうぶんだったろう。だが、さらに半分はんぶんの「9ミリびょう」になった。しかも「OSのアップデートだけ」でだ。

iPad ProでのApple Pencilのレイテンシーが9ミリびょう短縮たんしゅく。イラストレーターの方々かたがたにはとくにうれしい改善かいぜんだろう

こうしたてんふくめ、iPadを「普通ふつう道具どうぐとして使つかえる」環境かんきょうがかなり整備せいびされる。2ねんまえの「iOS 11」からつづ方針ほうしんだが、ようやく、ようやく「みんながそうなってしい」とおもっていたかたちへと進化しんかした、といっていいだろう。

だい3着々ちゃくちゃく進化しんかする「ARKit 3」、ついにひとがCGのなか

今回こんかいしん機能きのうのうち、ビジュアルめんでもっともおおきなインパクトがあったのは、iOS/iPadOSけのARの進化しんかだろう。

ARKit 3では、ひと姿すがたをARにむために重要じゅうような「People Occlusion」とよばれる機能きのう搭載とうさいされた。オクルージョンとは「隠蔽いんぺい」のこと。「CGでひと隠蔽いんぺいする」「ひとでCGを隠蔽いんぺいする」ことで、大幅おおはばにリアリティをす。同様どうようのオクルージョンは「ポケモンGO」のナイアンティックが次世代じせだい技術ぎじゅつとして開発かいはつ表明ひょうめいをしており、それを先取さきどりするもの、ともえる。

この機能きのう価値かちをわかりやすくしめすものとしてデモされたのが、Mojang(マイクロソフト傘下さんか)の「Minecraft Earth」だ。先日せんじつトレイラーが発表はっぴょうされて話題わだいになったが、実機じっきプレイの様子ようす公開こうかいされるのは今回こんかいはじめて。ひとがMinecraftのオブジェクトに「かくれ」、さらにMinecraftの世界せかいはいってしまう様子ようすは、ARゲームを次世代じせだいすすめた、素晴すばらしいビジュアルインパクトをっている。

Minecraft Earthをはじめて実機じっきプレイ。People Occlusionを活用かつようした、ひとがCGのなかはいってしまうような表現ひょうげんのインパクトがおおきい

このほかにも、全身ぜんしんのモーションキャプチャに対応たいおうしたり、複数ふくすうかお同時どうじ認識にんしきしたり、「Collaborative Sessions」とばれる、複数ふくすうじん同時どうじおなじAR世界せかいたのしめる機能きのう搭載とうさいされたりと、かなりおおきな進歩しんぽがある。

現状げんじょう、ARアプリはそこまでポピュラーではない。だが、現在げんざい利用りようすうにかけず、将来しょうらいけて必要ひつよう要素ようそをとにかくげているのではないか、とおもえるくらい、アップルはこの分野ぶんや積極せっきょくてきだ。

かれらは明示めいじしないものの、ARKitを「いま機器ききだけでない、さらにさき存在そんざい」にけた基盤きばん技術ぎじゅつ」と位置いちづけているのではないか。

問題もんだいは、そういうつぎのデバイスが「いつてくるのか」だが。

なお、ARKit 3にかんするくわしい情報じょうほう以下いかのページに記載きさいされている。興味きょうみがあるほう詳細しょうさいをご確認かくにんいただきたい。

・Get Ready for ARKit 3
https://developer.apple.com/augmented-reality/arkit/

だい4:macOSとiPadはより「仲良なかよし」に

しんmacOSである「Catalina」は、iPadとの連携れんけい目立めだ機能きのうアップデートになった。

しんmacOSの愛称あいしょうは「Catalina」に

iPadをサブディスプレイとして使つかう「Sidecar」が注目ちゅうもくされるが、それ以上いじょうに、iPadOS/iOSけに開発かいはつされているアプリをすくない手間てまでmacOSようにする「Project Catalyst」の意味いみおおきい。

iPadをMacのサブディスプレイする「Sidecar」。サードパーティーが実現じつげんしていた機能きのうが、OSにまれパターンの進化しんか
iPadようアプリをMacけに提供ていきょうしやすくする「Project Catalyst」。macOSアプリの市場いちば活性かっせい目的もくてき

iPadは「有料ゆうりょうアプリがれる市場いちば」として注目ちゅうもくされている。ペンやカメラ、タッチといったあたらしい要素ようそおおことも、開発かいはつしゃきつける要因よういんかもしれない。

だがやはり、おおきいのは「市場いちばせい」だ。Macようのアプリもニーズがないわけではない。だが、消費しょうひしゃが「あたらしいiPadアプリ」にかっており、過去かこくらべてMacようアプリにかわなくなったのも事実じじつだろう。

そこで重要じゅうようになるのが「Project Catalyst」だ。アプリの開発かいはつプロジェクトを、まずマネタイズのしやすいiPadけとしてげ、その、パフォーマンスやキーボード入力にゅうりょくなど、「Macのほう部分ぶぶん」にも着目ちゃくもくし、すくない工数こうすうでMacばんつくる。そうすれば、開発かいはつしゃにとっては収益しゅうえき機会きかいはさらにおおきくなる。

OSを単純たんじゅんにひとつにすれば、こうした問題もんだいはいらないだろう。だが、この10ねんで、PCのUIでタブレットのニーズはたせず、タブレットの機能きのうでPCのニーズがたせないこともわかっている。両方りょうほうからあゆみよったOSをつく過程かていで、アプリの開発かいはつ環境かんきょう共通きょうつうしてらくにする……ということが重要じゅうようなのだろう。

だい5:アップルは独自どくじデータで地図ちずを「ふたたび高度こうど

アップルは地図ちずサービスにかなりちかられている。地図ちずようのデータを収集しゅうしゅうする通称つうしょう「アップルカー」は、日本にっぽんでもなん目撃もくげきされている。

アップルのデータ収集しゅうしゅうしゃ世界中せかいじゅうはしり、独自どくじ地図ちずサービスようデータをつくっている

そこでつくられたデータでアップルは地図ちずをふたたびリニューアルする。といっても、まずは2019ねんないにアメリカをカバーし、「そのくに来年らいねんに」という段階だんかいだ。だから、日本にっぽんにいつるのかはまだわからない。

あたらしい地図ちずではいえいちけんいちけん立体りったいされ、Googleマップにおける「ストリートビュー」に相当そうとうする「Look Around」という機能きのう用意よういされる。Look Aroundはストリートビューより相当そうとう撮影さつえいデータがおおいようで、まるでアニメーションのようになめらかにまちちゅう移動いどうできる。

みぎがこれまでの、ひだりあたらしいデータによるアップルの地図ちず。LIDARを使つかって立体りったい構造こうぞうをデータしており、建物たてものいちけんいちけんが3Dになっている
Googleマップにおける「ストリートビュー」に相当そうとうする「Look Around」。データのリッチさによる「かいぞうかん」「なめらかさ」が特徴とくちょう

Googleも地図ちずデータを自前じまえ用意よういし、表示ひょうじ検索けんさく能力のうりょく高度こうど、データ更新こうしん速度そくど高速こうそく注力ちゅうりょくしている。結果けっかとして、日本にっぽんでは「地図ちず品質ひんしつ劣化れっか」もあって非難ひなんされた。だが本質ほんしつのひとつは、これからの地図ちずサービスにおいて、「過去かこのカーナビや表示ひょうじ用地ようちとはかんがかたちがうデータ」がもとめられるようになっているということであり、大手おおてプラットフォーマーは、そこで地道じみちにおかね時間じかん技術ぎじゅつりょく使つかっている……ということなのだ。

だい6:アップルはふたたび「プロ機材きざい」に本気ほんき

ビジュアルてきに「もっともインパクトのある発表はっぴょう」は、あたらしい「Mac Pro」と、その実質じっしつてき専用せんようディスプレイである「Pro Display XDR」の存在そんざいだろう。くわしくは実機じっきレポートを用意よういしたので、そちらをごらんいただきたい。

しんMac Pro(みぎ)とPro Display XDR(ひだり)

Mac Pro。そのデザインは「って賛否さんぴ両論りょうろん」だが、パワーだけはだれ否定ひていできない。

アップルはPro Display XDRをマスターモニターであるソニーのBVM-X300と比較ひかくしていた。「それだけの能力のうりょくがある」ということなのだろうが、さすがにこの比較ひかくはアンフェアだ。あれはPCようのモニターのように「それを直接ちょくせつ作業さぎょうする」ものではなく、「作業さぎょうしつつ確認かくにんするため」の専用せんよう機器ききだからだ。だから、解像度かいぞうど使つか勝手がってはPCモニターにおとる。しかし、いろ輝度きど忠実ちゅうじつさや均質きんしつさでは確実かくじつ一定いってい信頼しんらいける製品せいひんだ。価格かかくちがうが方向ほうこうせいちがうものなので、本来ほんらい比較ひかくには相応ふさわしくない。

ただ、これだけの品質ひんしつのディスプレイと、8K/30pのProRes RAW編集へんしゅう指向しこうしたプロけMacがることの価値かちわらない。

だい7:XboxとPS4のゲームコントローラーが「アップル標準ひょうじゅん」に!

ゲームファンにとって一番いちばんおどろきは、Apple TVけのゲームパッドとして「Xbox One S」と「PlayStation 4」のコントローラーに対応たいおうしたことではないだろうか。

アップル製品せいひんで「PlayStation 4」と「Xbox One S」のコントローラーが利用りよう可能かのうに。専用せんようコントローラーからついに決別けつべつした

じつはこれ、Apple TVだけのはなしではない。iPhoneやiPadでも、iOS 13/iPadOS 13が登場とうじょうすると、これらのコントローラーがあらゆるアップル製品せいひん使つかえるようになる。従来じゅうらいは「Made for iPhone(MFi)」認証にんしょうけた専用せんようのコントローラーしか使つかえなかったが、「世界せかいひろ普及ふきゅうしている2つのコントローラー」(ティム・クックCEO)がそのまま使つかえることになって、利便りべんせいす。

このてんについては、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、マイクロソフトともに正式せいしきなアナウンスと歓迎かんげいのコメントを公表こうひょうしている。

SIEコメント


マイクロソフト・Xbox Live担当たんとうディレクターのラリー・“Major Nelson”・ハリーブのコメント


もちろんこれは、アップルがあきにスタートする定額ていがくせいゲームサービス「Apple Arcade」への下地したじづくり。非常ひじょう納得なっとくのいく施策しさくだ。

とくにPS4の場合ばあいには、「リモートプレイ」が先日せんじつ正式せいしきにiOSにも対応たいおうしているのがおおきい。これまではコントローラーのボタンすうが、iOSけとPS4けではちがっていた。しかし、純正じゅんせいコントローラーが使つかえるなら、もはやなんの問題もんだいもない。

だい8:Apple WatchもiPhoneから「ひとち」へ

Apple WatchようのwatchOSは、意外いがいおおきなバージョンアップになる。健康けんこう管理かんりけい機能きのうももちろん改善かいぜんしているのだが、筆者ひっしゃがこの記事きじ注目ちゅうもくするのはべつ部分ぶぶんねらいはiPadにており、「iPhoneからの独立どくりつ」がポイントだ。

従来じゅうらいのApple Watchは、その能力のうりょくかぎられていたこともあり、アプリの処理しょり主体しゅたいは「iPhoneがわ」だった。だが、それではできることもかぎられてくるし、アプリをすまでの動作どうさおそくなる。そのため現在げんざいのwatchOSでは、watchOSようのアプリが時計とけいない転送てんそうされてうごくようになっている。

だがそれでも、その動作どうさには制限せいげんがある。バッテリーやデータ容量ようりょういすぎないように、という配慮はいりょからだ。

だが、つぎのwatchOSでは制限せいげんゆるくなり、より「Apple Watchだけ使つかう」ことを想定そうていした進化しんかとなった。

まず、App Storeが実装じっそうされ、iPhoneなしでアプリがインストールできるようになった。AppStoreは、キュレーションもレビューもあり、iPhoneなどとおなじレベルのものだ。

watch OSないにApp Storeが。Apple Watchだけでアプリが追加ついかできるようになった

そしてAVてきおおきな進化しんかは、「ストリーミングAPIを使つかったアプリ」がつくれるようになったのがおおきい。音楽おんがくやスポーツ中継ちゅうけいなどのアプリは、これまでApple Watchアプリとしてはつくりづらかった。フィットネスにとくしたもの、球場きゅうじょうなどでラジオわりに使つかうものなど、iPhoneけとはまたちがう「おとたのしむ」体験たいけんがありるのではないだろうか。

ストリーミングがWatchけアプリで使つかえるようになったため、音声おんせい中継ちゅうけい音楽おんがくのアプリがつくりやすくなる。写真しゃしんはMLBの中継ちゅうけいアプリ

だい9:AirPodsで「音楽おんがくのシェア」が可能かのう

完全かんぜんワイヤレスがたヘッドフォンの代名詞だいめいしとなったAirPods。アップルはこれもひとつの「プラットフォーム」にしようとしているふしがある。今回こんかいはOSのなかでなく、「Siriをからめた機器きき」として、AirPods・HomePodなどの改善かいぜんについて発表はっぴょうおこなわれた。

とくおおくのひと関係かんけいがあり、興味深きょうみぶかいのはAirPodsにかかわる進化しんかだろう。iOS 13では「Audio Sharing」という機能きのう搭載とうさいされる。これは、ちかくにいるりあいとBluetooth経由けいゆでの音楽おんがくを「シェア」する機能きのう。ヘッドフォンの片方かたがたわたすように、それぞれのAirPodsでおな音楽おんがくく。そのためには、iPhone同士どうしちかづけて認証にんしょうするかたちになる。

Audio Sharingでちかくのひとに「おとのおすそわけ」も可能かのう

また、iOS純正じゅんせいのアプリだけでなく、メッセージアプリやチャットアプリなどの着信ちゃくしんメッセージをげ、返答へんとうする機能きのう搭載とうさいされる。

どちらも、AirPodsをつけっぱなしにするような生活せいかつでの利便りべんせいたかめる機能きのうえる。

ただその性質せいしつじょう本来ほんらいは「AirPodsでなければ使つかえない機能きのう」とはおもえない。のヘッドフォンでも可能かのうなのではないか。そのあたり確認かくにんがまだアップルがわにできていないが、とにかく、「iOS 13世代せだいでは、ヘッドフォンをつけっぱなしにした生活せいかつをより想定そうていしている」とかんがえてさそうだ。

だい10:「映像えいぞう窓口まどぐち」として改善かいぜんつづくtvOS

Apple TVはハードウエアの名称めいしょうから「アップルの映像えいぞうサービスの窓口まどぐち」になった。iPhoneやiPadのうえには「Apple TVアプリ」が登場とうじょうし、macOSにも、あき登場とうじょうのCatalinaにはApple TVアプリが搭載とうさいされる。サムスンやLG、ソニーのテレビにも、年内ねんないに「Apple TVアプリ」が提供ていきょうされる。

ハードウエアとしてのApple TVはもうスローダウンなのか……とおもっていたが、そうでもないようだ。tvOSもアップデートし、のApple TVアプリとUIの統一とういつはかられた。とくにハードとしてのApple TVにとって重要じゅうようなのは「マルチユーザー」機能きのう搭載とうさいだろう。サービスとしてのApple TVには、コア機能きのうとして「レコメンド」がまれている。だから、Netflixなどの動画どうがサービスがそうであるように、マルチユーザーし、使つかひとわせて最適さいてき状態じょうたいにするのは当然とうぜんといえる。

マルチユーザー機能きのう搭載とうさいに。レコメンドが強化きょうかされるなら必須ひっす進化しんか

また、音楽おんがくにあわせて歌詞かし表示ひょうじされる機能きのうもつく。おな機能きのうはiOSなどの音楽おんがくアプリにも搭載とうさいされるようなので、Apple Musicの基本きほん機能きのうになる、ということなのだろう。

音楽おんがく進行しんこうにあわせて歌詞かし表示ひょうじされるようになる

番外ばんがい:「For All Mankind」がたのしみでしょうがない

アップルはあき開始かいしのプレミアム映像えいぞう配信はいしんサービス「Apple TV+」で準備じゅんびされているオリジナルコンテンツについて、1つのタイトルの名前なまえ内容ないよう発表はっぴょうした。

タイトルめいは「For All Mankind」。べいソのつき着陸ちゃくりく競争きょうそうで、アメリカでなくソ連それん勝利しょうりした世界せかいえがいた、いわゆる「オルタナティブ・ヒストリー」ドラマだ。海外かいがいドラマき・SFドラマきの筆者ひっしゃにいきなりさったので、個人こじんてきたのしみでしょうがない。

Apple TV+オリジナルタイトルのひとつ「For All Mankind」。筆者ひっしゃだい好物こうぶつなジャンルのドラマなので、いまから配信はいしんたのしみだ

こういう、「自分じぶんにとって期待きたいできる作品さくひんをいくつ用意よういしてくれるか」が、これからのサブスクリプションサービスへの加入かにゅうのカギだ。もう「おとくかどうか」でえら時代じだいではない。

西田にしだ そう千佳ちか

1971ねん福井ふくいけんまれ。フリージャーナリスト。得意とくいジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電かでん、そしてネットワーク関連かんれんなど「電気でんきかデータがながれるもの全般ぜんぱん」。おもに、取材しゅざい記事きじ個人向こじんむ解説かいせつ記事きじ担当たんとう朝日新聞あさひしんぶん読売新聞よみうりしんぶん日本経済新聞にほんけいざいしんぶん週刊しゅうかん朝日あさひ、AERA、週刊しゅうかん東洋とうよう経済けいざい、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿きこうするほか、テレビ番組ばんぐみ雑誌ざっしなどの監修かんしゅうがける。
 近著きんちょに、「顧客こきゃく直送ちょくそうする」「漂流ひょうりゅうするソニーのDNAプレイステーションで世界せかいたたかったおとこたち」(講談社こうだんしゃ)、「電子でんし書籍しょせき革命かくめい真実しんじつ未来みらいほん ほんのミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞あさひしんぶん出版しゅっぱん)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
 メールマガジン「小寺こでら西田にしだの『マンデーランチビュッフェ』」を小寺こでら信良のぶよし共同きょうどう配信はいしんちゅう。 Twitterは@mnishi41