来年の参議院議員選挙へ向けて「経済最優先」を掲げる安倍晋三首相の携帯電話料金引き下げ指示を受けて、高市早苗総務大臣は先週火曜日(9月29日)、専門のタスクフォースを設置する方針を明らかにした。10月19日に第1回会合を開催し、年内により低廉で利用しやすい携帯電話の通信料金を実現するための方策を取りまとめるという。
だが、政府が問題として認識できているのは、ひとつの端末を長期間使う利用者の支払う料金が、端末を頻繁に替える利用者に対する“補助金化”している問題と、通話やデータ通信の格安プランがライトユーザーに使いにくい仕組みになっている問題の2つぐらいだ。しかも、政府はその2つに対する有効な解決策を持ち合わせていない。
加えて、もうひとつ大きな問題が存在することを政府は見逃している。それは、数千、数万件の契約をする法人(大口)に対し、携帯大手3社が1契約につき月額500~1000円という破格の安値で携帯電話サービスを提供しているという事実だ。我々個人ユーザーからその5~10倍の料金を徴収するのとは、別物のビジネスが存在する。
抜本的な携帯料金の引き下げを実現したければ、この格差問題の徹底的な実態調査と、法人・個人間の極端な格差を認めない新たな規制の枠組みづくりが不可欠だ。さもないと、ひずみは解消しないだろう。
9月29日の閣議後の記者会見で、高市総務大臣は「このたび、『ICTサービス安心・安全研究会』の下に『携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース』を設け、検討を開始することとなりました」と切り出した。安倍首相にも「12月に一定の方向性を出したい」と報告し、「よろしくお願いします」と承認されたという。
その具体策として、「私が思いつく方向性は、第1に、データ通信のライトユーザーや通話の『かけ放題』が不要な方々のニーズに対応した料金プランの多様化。第2に、端末価格と通信料金が事実上一体化してわかりにくい状況を、サービス・料金を中心とした競争へ転換できないか。第3に、MVNO(仮想移動体通信事業者)サービスの低廉化、多様化を通じた競争を更に促進する」といった腹案を開陳した。
続く質疑の中で、第2の問題に踏み込んで、「電話番号を変更せずに携帯電話事業者を乗り換えるということを、しょっちゅうされる利用者に対しては、料金割引やキャッシュバックが行われていて、正規料金を払う長期利用者に比べて、少し不公平なんじゃないか」という問題意識も示した。だが、最後には、「MVNOというのは、大手の携帯電話事業者に比べると割安な料金設定をしていますので、そのサービスの一層の普及を通じて、料金の値下げ競争というのが進むと期待をしています」と述べ、これまで同様、MVNOの新規参入や普及の促進が値下げの切り札と結論付けたのである。