高齢こうれい実力じつりょく者しゃがずっと実権じっけんを握にぎり続つづけるキヤノンと富士ふじフイルムとセコム

キヤノン製品せいひんのロゴ

　新しん年度ねんど入いりの4月がつは、社長しゃちょう交代こうたいの節目ふしめでもある。今年ことしは、どんな企業きぎょうで社長しゃちょう交代こうたいが行おこなわれるのか。今回こんかいは、2016年度ねんどの社長しゃちょう交代こうたいの傾向けいこうを見みてみたい。

　16年ねんは、経営けいえい陣じんの対立たいりつで社長しゃちょうが交代こうたいするケースが目立めだった。コーポレートカバナンス・コード（企業きぎょう統治とうち指針ししん）が導入どうにゅうされ、経営けいえいの透明とうめい化かを求もとめる圧力あつりょくが高たかまってきたことが背景はいけいにある。

　もうひとつ、社長しゃちょう交代こうたいの場面ばめんで創業そうぎょう者しゃや創業そうぎょう家かが存在そんざい感かんを示しめすことが多おおかったという特徴とくちょうがある。

　流通りゅうつう大手おおてのセブン＆アイ・ホールディングス（HD）は、前ぜん会長かいちょう兼けんCEO（最高さいこう経営けいえい責任せきにん者しゃ）の鈴木すずき敏文としふみ氏しが提案ていあんした、セブン-イレブン・ジャパン社長しゃちょう・井い阪ばん隆一りゅういち氏しの解任かいにん案あんが創業そうぎょう家かと社外しゃがい取締役とりしまりやくの反対はんたいで否決ひけつされ、鈴木すずき氏し自身じしんが昨年さくねん4月がつに退任たいにんすることとなった。そして井い阪ばん氏しがセブン＆アイHDの社長しゃちょうに昇格しょうかくした。

　セブン＆アイHDでは、そのトップ交代こうたいの余震よしんが続つづく。鈴木すずき氏しの次男じなん、鈴木すずき康弘やすひろ氏しが昨年さくねん末まつに取締役とりしまりやくを退しりぞき、その一方いっぽうで創業そうぎょう者しゃの伊藤いとう雅俊まさとし名誉めいよ会長かいちょうの次男じなん、伊藤いとう順じゅん朗ろう取締役とりしまりやくが同どう12月がつ、常務じょうむ執行しっこう役員やくいんに昇格しょうかくした。

　旅行りょこう業ぎょう大手おおてのエイチ・アイ・エス（H.I.S.）は昨年さくねん11月がつ、創業そうぎょう者しゃの澤田さわだ秀雄ひでお氏しが12年ねんぶりに経営けいえいトップに復帰ふっきした。同社どうしゃは、九州きゅうしゅうのリゾート施設しせつ、ハウステンボスの再建さいけんに成功せいこうしたが、主力しゅりょくの旅行りょこう業ぎょうの業績ぎょうせきに鈍化どんかの兆きざしが出でてきたことから、グループを再ふたたび成長せいちょう軌道きどうに戻もどすため、澤田さわだ氏しが陣頭じんとう指揮しきを執とる。

　警備けいびサービス業ぎょう首位しゅいのセコムは昨年さくねん5月がつ、前田まえだ修司しゅうじ会長かいちょうと伊藤いとう博ひろし社長しゃちょうが解職かいしょくされ、日本銀行にっぽんぎんこう出身しゅっしんの中山なかやま泰男やすお氏しが社長しゃちょうに就ついた。創業そうぎょう者しゃで取締役とりしまりやく最高さいこう顧問こもんの飯田いいだ亮あきら氏しが前田まえだ氏しと伊藤いとう氏しのクビを切きったといわれている。

　キヤノンは昨年さくねん3月がつ、眞榮田まえだ雅也まさや氏しが社長しゃちょう兼けんCOOに就任しゅうにんしたが、会長かいちょう兼けん社長しゃちょう兼けんCEOだった御手洗みたらい冨士夫ふじお氏しは会長かいちょう兼けんCEOとして引ひき続つづきグループ全体ぜんたいを統括とうかつする。御手洗みたらい氏しが“最高さいこう実力じつりょく者しゃ”である構図こうずに変かわりはない。

　富士ふじフイルムホールディングスは昨年さくねん6月がつ、助野すけの健児けんじ氏しが社長しゃちょう兼けんCOOになった。古こ森もり重隆しげたか会長かいちょう兼けんCEOは続投ぞくとうし、経営けいえいの最終さいしゅう決定けってい権けんを握にぎり続つづけている。

　ファナックは昨年さくねん6月がつ、13年ねんぶりに社長しゃちょうが交代こうたいした。CEOとCOOのポストを設もうけ、稲葉いなば善治よしはる氏しが会長かいちょう兼けんCEO、山口やまぐち賢治けんじ氏しが社長しゃちょう兼けんCOOに就ついた。

プロ経営けいえい者しゃが相次あいついで退任たいにんに追おい込こまれた

　昨年さくねんは、創業そうぎょう家かが三顧さんこの礼れいをもって迎むかえた「プロ経営けいえい者しゃ」にとっても、受難じゅなんな年としだった。

　ベネッセホールディングスでは昨年さくねん6月がつ、アップル日本にっぽん法人ほうじんや日本にっぽんマクドナルドホールディングスのトップを歴任れきにんした原田はらだ泳およげ幸こう会長かいちょう兼けん社長しゃちょうが、わずか2年ねんで業績ぎょうせき不振ふしんの責任せきにんを取とらされて辞任じにんした。後任こうにんの福原ふくはら賢一けんいち社長しゃちょうは、就任しゅうにんから3カ月かげつで退任たいにんし、社外しゃがい取締役とりしまりやくで米べい投資とうしファンドのカーライル・グループの日本にっぽん法人ほうじん社長しゃちょうの安達あだち保たもつ氏しと交代こうたいした。短期間たんきかんにトップ2人にんが入いれ替かわるという異常いじょう事態じたいだ。創業そうぎょう家か出身しゅっしんで最高さいこう顧問こもんの福武ふくたけ總一郎そういちろう氏しの意向いこうとされる。

　LIXILグループは昨年さくねん6月がつ、GE（ゼネラル・エレクトリック）出身しゅっしんの藤森ふじもり義明よしあき社長しゃちょう兼けんCEOがトップの座ざを追おわれた。後任こうにんには工具こうぐ通販つうはん大手おおてMonotaRo（モノタロウ）会長かいちょうの瀬戸せと欣哉きんや氏しが就ついた。創業そうぎょう家か一族いちぞくで取締役とりしまりやく会かい議長ぎちょうの潮田うしおだ洋一郎よういちろう氏しがトップ人事じんじを主導しゅどうした。

　いずれのケースも、創業そうぎょう者しゃや創業そうぎょう家かがキングメーカーであることを見みせつけた。

コンビニ3社しゃで社長しゃちょうが交代こうたい

　また、コンビニエンスストア大手おおて3社しゃの社長しゃちょうも交代こうたいした。

　親会社おやがいしゃであるセブン＆アイHDのお家いえ騒動そうどうに揺ゆれたコンビニ首位しゅいのセブン-イレブン・ジャパンは昨年さくねん5月がつ、古屋こや一樹かずき氏しが社長しゃちょうに就ついた。

　ローソンは昨年さくねん6月がつ、ユニクロを展開てんかいするファーストリテイリング社長しゃちょうを務つとめたこともある玉たま塚づか元一げんいち氏しが、社長しゃちょうを退しりぞき会長かいちょうになり、社長しゃちょうには親会社おやがいしゃの三菱商事みつびししょうじ出身しゅっしんの竹たけ増ぞう貞さだ信しん氏しが就任しゅうにんした。

　ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスの統合とうごうで発足ほっそくしたユニー・ファミリーマートホールディングスの持もち株かぶ会社かいしゃの社長しゃちょうには、ファミマの上田うえだ準じゅん二に会長かいちょうが昨年さくねん9月がつに就任しゅうにん。新生しんせいファミマの社長しゃちょうには澤田さわだ貴司たかし氏しがスカウトされた。

　一方いっぽうで、業績ぎょうせき不振ふしんや不祥事ふしょうじによる引責いんせき辞任じにんも目立めだった。

　IHIは社長しゃちょう兼けんCOOに満岡みつおか次郎じろう氏しが、川崎重工業かわさきじゅうこうぎょうは社長しゃちょうに金きむ花はな芳則よしのり氏しが就ついた。マンションの耐震たいしん偽装ぎそう工事こうじで注目ちゅうもくされた旭化成あさひかせいは、小堀こぼり秀毅ひでき氏しが社長しゃちょうになった。不正ふせい会計かいけい問題もんだいから再生さいせいを目指めざす東芝とうしばは綱川つなかわ智さとし氏しが再建さいけん社長しゃちょうの重責じゅうせきを担になうが、米べい原子力げんしりょく子会社こがいしゃウエスチングハウス（WH）関連かんれんの巨額きょがく損失そんしつが明あきらかになり、前途ぜんとは多難たなんだ。

　燃費ねんぴ不正ふせい問題もんだいに揺ゆれた三菱自動車工業みつびしじどうしゃこうぎょうは相川あいかわ哲郎てつろう社長しゃちょうが昨年さくねん6月がつに引責いんせき辞任じにんし、益子ましこ修おさむ会長かいちょうが社長しゃちょうを兼務けんむ。日産自動車にっさんじどうしゃの資本しほん参加さんかを得えて、再建さいけんに取とり組くむことになった。昨年さくねん10月がつ、日産にっさん会長かいちょう兼けん社長しゃちょうのカルロス・ゴーン氏しが三菱自みつびしじの会長かいちょうを兼務けんむすることになった。益子ましこ氏しはゴーン氏しの強つよい要請ようせいで社長しゃちょうを続投ぞくとうしたが、社内しゃないには益子ましこ氏し続投ぞくとうに強つよい拒否きょひ反応はんのうがある。

　経営けいえい危機ききに陥おちいっていたシャープは、台湾たいわんの鴻おおとり海うみ（ホンハイ）精密せいみつ工業こうぎょうが買収ばいしゅう。昨年さくねん8月がつ、鴻おおとり海うみの戴正呉ご副ふく総裁そうさいがシャープの社長しゃちょうに就ついた。
（文ぶん＝編集へんしゅう部ぶ）