値上ねあげで成功せいこうする飲食いんしょく店てんと失敗しっぱいする店みせの「5つの違ちがい」…感動かんどう店てんに共通きょうつうするサービスとは

　みなさん、こんにちは。元もとグラフィックデザイナーのブランディング専門せんもん家か・松下まつした一いち功こうです。

　前回ぜんかいは、飲食いんしょく店てんの2大だい目標もくひょうである「リピート率りつの向上こうじょう」と「単価たんかアップ」をする前まえにやっておきたい下しも準備じゅんびや、心得こころえておきたいポイントの基本きほんとして、日本にっぽんの飲食いんしょく店てんの単価たんかが安やすくなった2つの理由りゆうや「サービス軸じく」のブランディングの必要ひつよう性せいをご説明せつめいしました。後半こうはんとなる今回こんかいは、具体ぐたい的てきな取とり組くみについてお伝つたえします。

飲食いんしょく店てんが大事だいじにするべき5つのポイント

（1）お客きゃくさんがプラスに感かんじるサービスを提供ていきょうする

　飲食いんしょく店てんのブランディングにおいて、絶対ぜったいに外はずせないのがサービスです。ただし、一口ひとくちにサービスと言いっても、いろいろな種類しゅるいがあります。たとえば、寒さむい日ひにはブランケットを用意よういしておく、行列ぎょうれつ回避かいひのために整理せいり券けんを配くばる、といったことをサービスのひとつとして挙あげる方ほうがいるかもしれません。

　確たしかにこれらはサービスには違ちがいないのですが、お客きゃくさんが感かんじるマイナスをゼロに戻もどしているだけなので、本当ほんとうのサービスとは言いえません。お客きゃくさんがプラスに感かんじることこそが、本当ほんとうのサービスです。そこを勘違かんちがいしないように気きをつけましょう。

（2）コンセプトを持もち、広ひろめる

　サービスと同様どうように大切たいせつなのが、お店みせのコンセプトです。ターゲットはどういった人ひとなのか、その人ひとたちが快適かいてきに過すごせるために何なにを提供ていきょうできるのか、などを明確めいかくにして、それを広ひろめる努力どりょくをすることが、真しんのブランディングの第一歩だいいっぽです。

　例れいとして、テレワークのビジネスマンをターゲットにしたお店みせで考かんがえてみましょう。この場合ばあい、全席ぜんせきに電源でんげんコンセントを設置せっちする、Wi-Fi完備かんび、パソコンや本ほんを置おけるように少すこし大おおきめのテーブルにする、隣となりが気きにならないように席せき間あいだの距離きょりを空あける、作業さぎょうに集中しゅうちゅうしやすいような音楽おんがくを流ながす、といった工夫くふうをすると喜よろこばれると思おもいます。そして、快適かいてきに過すごせる上うえに仕事しごとも捗はかどるとなれば、フードやドリンクの価格かかくが少々しょうしょう高たかかったり、多少たしょうほかのサービスに落おち度どがあったとしても、多おおくのビジネスマンが来店らいてんしたり、リピーターになったりすると思おもいませんか？

　こうしたコンセプトをはっきりと提示ていじし、そのサービスポイントに注力ちゅうりょくすることで、それにマッチしたお客きゃくさんが足あしを運はこんでくれるようになるのです。

（3）コンセプトを全ぜんスタッフで共有きょうゆうする

　いくら素晴すばらしいコンセプトを立たてたとしても、スタッフ全員ぜんいんに行いき渡わたっていないと意味いみがありません。コンセプトにマッチしたお客きゃくさんが来店らいてんしても、スタッフがそれに合あったサービスを提供ていきょうできなければ、お客きゃくさんはガッカリしてしまうでしょう。

　これは、意外いがいとできていないお店みせが多おおいのが現実げんじつです。アルバイトやパートのスタッフに仕事しごとのやり方かたを教おしえる際さいに、接客せっきゃく方法ほうほうだけでなく、どういうお客きゃくさんをどういうふうにおもてなししたいのか、お店みせのコンセプトと自分じぶんたちの行動こうどう指針ししんをしっかり伝つたえましょう。

（4）お客きゃくさんと顔見知かおみしりになる

　どのお店みせにも、よく足あしを運はこぶ常連じょうれんさんはいるものです。飲食いんしょく店てんの2大だい目標もくひょうのひとつの「リピート率りつの向上こうじょう」は、「常連じょうれんさんを増ふやせるかどうか」にかかっていると言いえます。

　たとえば、たまに訪おとずれるお客きゃくさんの顔かおや好すきなメニューなどを覚おぼえておくと、相手あいては「この店員てんいんさんは、たくさんいるお客きゃくさんの中なかで自分じぶんの顔かおや好このみを覚おぼえてくれている！」と感動かんどうすることでしょう。そうすれば、世間せけん話ばなしをかわすようになったりして自然しぜんと距離きょりが近ちかづいていき、「気心きごころの知しれた店員てんいんさんがいるお店みせ」として、足あししげく通かよってくれるはずです。

　お店みせ側がわにとっては仕事しごとが増ふえることになりますが、自分じぶんがリピーターになるような理想りそうのお店みせを想像そうぞうすれば、お客きゃくさんがプラスに感かんじるサービスとはどういうものかが、自おのずと見みえてくるはずです。お店みせのコンセプトを広ひろめると同時どうじに、リピーターの立場たちばに立たって、お客きゃくさんに提供ていきょうするべきサービス価値かちを改あらためて考かんがえてみましょう。

（5）サービスの質しつで価格かかくを決きめる

　前回ぜんかいもお伝つたえしたように、日本にっぽんの飲食いんしょく業界ぎょうかいは価格かかく競争きょうそうの末すえに全般ぜんぱん的てきに低てい価格かかくになっています。しかし、その流ながれに乗のってはいけません。まわりの安やすいお店みせにつられると、「低てい単価たんか×客数きゃくすう」の負まけのループに陥おちいってしまい、コロナ禍かのような予想よそう外がいの出来事できごとが起おきたときに、経営けいえいが大おおきく左右さゆうされることになります。

　そうならないためにも、お客きゃくさん一いち人にんひとりに自分じぶんたちが提供ていきょうすベきサービスを突つき詰つめ、それに見合みあった価格かかくを自分じぶんたちで決きめることが大切たいせつです。その結果けっか、単価たんかが高たかくなり、「このお店みせは高たかいから」と足あしが遠とおのくお客きゃくさんもいるかもしれませんが、逆ぎゃくに「その価格かかくでも行いきたい」と思おもうお客きゃくさんもいるものです。そういったお客きゃくさんをひとりでも多おおくつくることに注力ちゅうりょくしましょう。

　すでに低てい価格かかくで経営けいえいしているお店みせの場合ばあいは、まずは（1）～（4）のポイントを押おさえて、お客きゃくさんがついてきてくれる自信じしんが持もてたら単価たんかをアップするといいと思おもいます。

感動かんどうした2つの飲食いんしょく店てんの共通きょうつう点てん

　最後さいごに、最近さいきん行おこなって感動かんどうしたお店みせを2つご紹介しょうかいします。ひとつ目めは寿司すし屋やさんです。

　そのお店みせは、お客きゃくさんと向むき合あうことを徹底てっていしていて、席せきはカウンターのみ。食たべ終おわったちょうどいいタイミングで、次つぎの一いち皿さらを出だしてくれました。さらに、「白身しろみ魚ぎょにはこれ、マグロにはこれ」と、料理りょうりに合あわせるお酒さけも決きめて出だしてくれました。魚さかなと酒さけのおいしい組くみ合あわせという新あたらしい情報じょうほうを知しることで、より食事しょくじを楽たのしむことができました。

　2つ目めはとんかつ屋やさんです。こちらのお店みせは絶妙ぜつみょうな火加減ひかげんで調理ちょうりしているようで、レアではないけれど、うっすらとピンク色ぴんくいろをしたジューシーなとんかつを出だしてくれました。また、とんかつに合あわせるソースやスパイスの組くみ合あわせ、料理りょうりにマッチするお酒さけを提案ていあんしてくれました。

　この2つのお店みせに共通きょうつうしているのは、「オリジナルの食たべ方かたを提案ていあん」してくれたところです。以前いぜんお伝つたえした、マーケティング脳のうではなくブランディング脳のうで経営けいえいしているのでしょう。

　お店みせのコンセプトを明確めいかくにし、サービスの価値かちで単価たんかを決きめることは簡単かんたんではありませんが、お客きゃくさんたちに長ながく愛あいされるお店みせを目指めざして、ぜひ検討けんとうしてみてください。

（松下まつした一いち功こう／ブランディング専門せんもん家か、構成こうせい＝安倍川あべかわモチ子こ／フリーライター）