中小ちゅうしょう企業きぎょう同士どうしのM＆A、なぜ急増きゅうぞう？深刻しんこく化かする後継こうけい者しゃ不足ふそく、誤あやまると業績ぎょうせき停滞ていたいのリスクも

「Thinkstock」より

「現象げんしょうの裏うらにある本質ほんしつを描えがく」をモットーに、「企業きぎょう経営けいえい」「ビジネス現場げんばとヒト」をテーマにした企画きかくや著作ちょさくも多数たすうあるジャーナリスト・経営けいえいコンサルタントの高井たかい尚之なおゆき氏しが、経営けいえい側がわだけでなく、商品しょうひんの製作せいさく現場げんばレベルの視点してんを織おり交まぜて人気にんき商品しょうひんの裏側うらがわを解説かいせつする。

　ニュースなどでよく耳みみにする「M＆A」（企業きぎょうの合併がっぺい・買収ばいしゅう）という言葉ことばに対たいして、どのようなイメージを持もつだろうか？

　一般いっぱん的てきな感覚かんかくとしては、大だい企業きぎょう同士どうしの合併がっぺいや、大だい企業きぎょうによる急きゅう成長せいちょう企業きぎょうの買収ばいしゅう–といったところかもしれない。そして報道ほうどうされる事例じれいの大半たいはんが、少すくなくとも片方かたがたは著名ちょめいな会社かいしゃだ。

　だが近年きんねんは、世間せけん的てきには無名むめいの国内こくない中小ちゅうしょう企業きぎょう同士どうしのM＆A事例じれいも多おおい。その実相じっそうを探さぐってみた。

●尾おを引ひく「2012年ねん問題もんだい」

　1991年ねん創業そうぎょうでM＆A業界ぎょうかいの老舗しにせといえる日本にっぽんM＆Aセンターは、主おもに中堅ちゅうけん・中小ちゅうしょう企業きぎょうのM＆A案件あんけんを仲介ちゅうかいする。同社どうしゃは東証とうしょう一部いちぶ上場じょうじょう企業きぎょうで、分ぶん林はやし保弘やすひろ会長かいちょうや三宅みやけ卓たく社長しゃちょうは経済けいざいメディアに何なん度ども登場とうじょうしているので、ご存ぞんじの方ほうも多おおいだろう。同社どうしゃの2014年ねん3月がつ期きの売上うりあげ高だかは105億おく4700万まん円えん（前期ぜんき比ひ146.2％）、営業えいぎょう利益りえきは54億おく4800万まん円えん（同どう160％）と大幅おおはばに伸のびており、過去かこ最高さいこうの業績ぎょうせきとなった。営業えいぎょう利益りえき率りつは実じつに51.7％に達たっする。

　同社どうしゃの業績ぎょうせきを押おし上あげているのが、M＆A案件あんけんの成約せいやく数すうの増加ぞうかだ。昨年度さくねんどは過去かこ最多さいたとなる256件けんの仲介ちゅうかいを成約せいやくした。月つき平均へいきんで21件けん成約せいやくしている計算けいさんになる。

　M＆A増加ぞうかの理由りゆうとして挙あげられるのは「2012年ねん問題もんだい」だ。同年どうねんから団塊だんかい世代せだい（1947～49年ねん生うまれ）の経営けいえい者しゃが勇退ゆうたい期きの65歳さいを迎むかえ、中小ちゅうしょう企業きぎょうの後継こうけい者しゃ不足ふそくの問題もんだいが顕在けんざい化かしたのだ。この傾向けいこうは、49年ねん生うまれが勇退ゆうたい期きを迎むかえた現在げんざいも続つづく。

　後継こうけい者しゃ不足ふそくの中身なかみについては説明せつめいが必要ひつようだろう。

「経営けいえいを取とり巻まく環境かんきょうが厳きびしいので、最近さいきんは子供こどもに無理むりに会社かいしゃを継つがせず、本人ほんにんの好すきな道みちを歩あゆませる風潮ふうちょうとなっています。また血縁けつえん関係かんけいのない従業じゅうぎょう員いんの場合ばあいは、多おおくの現げんオーナーが行おこなっている個人こじん保証ほしょうを肩代かたがわりすることは難むずかしく、仮かりに可能かのうだとしてもそこまでして継つぎたくはないと考かんがえるだろう。こうした要因よういんから、年商ねんしょう10億おく円えん未満みまんの中小ちゅうしょう企業きぎょうでは約やく7割わりが後継こうけい者しゃ不足ふそくに陥おちいっています」（日本にっぽんM＆Aセンター）

　子供こどもに無理むりに継つがせないとしているのは、経営けいえい難なんの企業きぎょうや借かり入いれのある企業きぎょうばかりではなく、黒字くろじ企業きぎょうも多おおいという。先々さきざきのことを考かんがえ、余力よりょくのあるうちに事業じぎょうを他社たしゃに譲渡じょうとしておこうとの考かんがえによるものだ。そこで、M＆Aによる会社かいしゃの売却ばいきゃくが検討けんとうされる。