日本にっぽんHP、不当ふとう解雇かいこ判決はんけつ後ごの社員しゃいんに病院びょういん検査けんさを受うけさせ、「要よう治療ちりょう」と無給むきゅう休職きゅうしょくを命令めいれい

日本にっぽんヒューレット・パッカード本社ほんしゃビル（「Wikipedia」より／Rs1421）

　企業きぎょうによる不当ふとう解雇かいこ事件じけんが後こうを絶たたない。現在げんざい、東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょで係争けいそう中ちゅうの大手おおてIT企業きぎょう、日本にっぽんヒューレット・パッカード（以下いか「日本にっぽんHP」）の社員しゃいんをめぐる労働ろうどう事件じけんもその一ひとつだ。

　K氏し（仮名かめい／40代だい）は、日本にっぽんHPに2000年ねんに入社にゅうしゃ。職種しょくしゅは一貫いっかんしてシステムエンジニアで、仕事しごとは順調じゅんちょうだった。しかし、06年ねん半なかばから状況じょうきょうは一変いっぺんした。

　K氏しによると、職場しょくばで嫌いやがらせに遭あうようになり、同僚どうりょうから執拗しつように陰口かげぐちをささやかれ続つづけたというのである。嫌いやがらせの中心ちゅうしんは女性じょせいの事務じむ員いんだったという。例たとえば、昼食ちゅうしょく時じにK氏しのプライベートの知人ちじんの女性じょせいについて、何なにも知しらないはずの同僚どうりょうが突然とつぜん、「こうしているうちにも、君きみの家いえに誰だれか女性じょせいが奥おくさんのフリをして上あがり込こんでいるかもしれないよ」などと、話はなしの中なかで頻繁ひんぱんになんの脈絡みゃくらくもなく、男女だんじょ間あいだのいざこざを想起そうきさせる言葉ことばを出だしてくるようになった。同僚どうりょうたちによる不自然ふしぜんな会話かいわや、これみよがしに聞きこえてくる噂うわさ話ばなしにより、K氏しは次第しだいに仕事しごとに集中しゅうちゅうできなくなっていった。

　噂うわさの内容ないようには、K氏しが社外しゃがいの友人ゆうじんに酒さけの席せきで漏もらした、社内しゃない人事じんじに関かんする情報じょうほうもあったという。それは通常つうじょうなら社内しゃないの人間にんげんが知しり得えない情報じょうほうのはず――そう感かんじたK氏しは、何者なにものかに盗ぬすめ撮つまみ、盗聴とうちょう、つけ回まわしなどのストーキングをされ、その情報じょうほうがメーリングリスト、SNS、ネット掲示板けいじばん、チャットなどを通つうじて流ながされ、同僚どうりょうたちが情報じょうほうを共有きょうゆうしているに違ちがいない、と推測すいそくしている。

●休職きゅうしょくを認みとめない日本にっぽんHP

　その後ご、K氏しは仕事しごとを続つづけることが難むずかしいと感かんじるほど疲弊ひへいし、有給ゆうきゅう休暇きゅうかを取とりながら、会社かいしゃに嫌いやがらせの実態じったい調査ちょうさを頼たのんだが、会社かいしゃ側がわは調査ちょうさした上うえで「被害ひがい事実じじつはなった」と回答かいとうした。それに対たいしK氏しが再さい調査ちょうさを依頼いらいし、会社かいしゃ側がわが「やはり被害ひがい事実じじつはない」とするやり取とりが5～6回かい続つづいた。そうこうしているうちに、有休ゆうきゅうが残のこりわずかになってきたので、K氏しは休職きゅうしょく申請しんせいしたが、認みとめられなかった。

　しかし、ちょうどその頃ころ、会社かいしゃの「ビジネス倫理りんりヘルプライン」から調査ちょうさ申請しんせいを受領じゅりょうした、との連絡れんらくも入はいったばかりだった。調査ちょうさ中ちゅうなのに、なぜ休職きゅうしょくが認みとめられないのか、日本にっぽんHPには特例とくれいの休職きゅうしょく制度せいどもあり、その社内しゃない規則きそくの精神せいしんからすれば当然とうぜん、調査ちょうさ中ちゅうに出社しゅっしゃする必要ひつようはないとK氏しは主張しゅちょうする。

　社内しゃない調査ちょうさ中ちゅう、直属ちょくぞく上司じょうしから出社しゅっしゃ要請ようせいのメールが何なん度どかあったが、K氏しは、現在げんざい調査ちょうさ中ちゅうであること、および被害ひがいの訴うったえに対たいして、部署ぶしょの異動いどうなどなんの配慮はいりょも取とられずに再さい就業しゅうぎょうを求もとめるのは無理むりがあるとメールで伝つたえた。

　その後ご、ビジネス倫理りんりヘルプラインから「申告しんこくされるような嫌いやがらせはなかった」との回答かいとうがあった。K氏しは納得なっとくできず、「嫌いやがらせにかかわった社員しゃいんのPCやサーバーを調しらべれば証拠しょうこが出でてくるはずなので調しらべてほしい」と求もとめたが、回答かいとうは変かわらなかった。