「Thinkstock」より 薄毛に悩む男性は増えており、その数は1200万人ともいわれる。また、ヘアケアに関連する市場は年々拡大を続け、矢野経済研究所の試算によると、2013年度の事業者売上高ベースで4323億円に達するという。
近年は病院で投薬治療することもできるようになり、薄毛治療に明るい兆しが見えてきている。
その一方で、美容クリニックや発毛・増毛サービス、カツラメーカーなどによる薄毛男性の奪い合いは激しさを増し、それに伴ってトラブルも頻発している。
今回は、そんなトラブルの事例を紹介しよう。
29歳のA氏は、20代前半から薄毛が気になりだし、毛髪クリニック・X社(仮名)の無料診断を申し込んだ。そこで頭皮マッサージなどの施術と抜け毛要因などの解説を受けたという。
説明によると、壮年型の薄毛で、今後加齢とともに進行するので、すぐに治療を始めるべきとのことで、A氏はサービスを受けると答えた。しかし、その金額は80万円を超えており、社会人になったばかりのA氏は払うことはできないと一度断ったが、ローンを組めば大丈夫だと説得され、その場でローンの契約までしてしまった。
1年近く定期的に施術を受け、さらに家ではカウンセラーに勧められるままに購入したX社製のシャンプーや育毛剤などを使い続けたが、薄毛は進行し続けた。気になったA氏がX社に相談したところ、「施術を受けていなかったら、もっと進行していました」「抜け毛の量は減ってきているので、あと半年もすれば髪が増えるサイクルになってきます」などと説得され、さらに半年ほど施術を受け続けた。その間も、育毛剤などの購入は続け、そのたびにローン残高は増え続けていた。
なかなか効果が見えないことに業を煮やしたA氏は、再度説明を求めた。すると、X社が開発したマッサージ器があるので、それを購入するようにと勧められた。断ったA氏だったが、その後2時間近く個室で2人のカウンセラーから説得を受け、購入してしまった。
半信半疑の状態で、施術を受け始めてから2年近くがたった頃、ローンの額は120万円を超えていた。まったく効果を実感できなかったA氏は、X社本社に問い合わせたが、「もう少ししたら効果を実感できる」などと引き延ばすだけで、まともに取り合ってもらえなかったという。さらに、「あと半年で発毛効果を実感できる」などと説明した担当者は退職しており、連絡がつかないと説明を受けた。A氏が施術を受け続けた約2年のうちに3人も担当が替わったが、短いサイクルで入れ替えることで責任の所在をうやむやにしているようだ。