学校や部活動、そして職場。人生で一度くらいは、何かしらのユニフォームに身を包んだことはあるだろう。
現在、日本では官民含めておよそ90%の組織団体がユニフォームを制定している。海外の映画やニュースなど、中学生や高校生が私服で通学している姿を目にしたことがある方も多いと思うが、このことからもわかるように、日本は海外と比べても、ユニフォームの需要が非常に高い「ユニフォーム大国」なのだ。
数字的なところでみてみると、その市場規模は、コンサートやフェスなどに代表される、ライブ・エンタメ業界と同程度の5,000億円にのぼる。これだけの市場規模をもち、目にしない日がないくらい身近な存在であるユニフォームだが、その存在が改めて意識される機会は滅多にないのが実際だろう。
知っているようで知らない。そんなユニフォームのニッチな世界を垣間見ることができる書籍『なぜ、ユニフォームは、働く人を美しく魅せるのか? ―― 仕事服(ユニフォーム)の「なぜ」と「魅力」をこの一冊に』(長尾孝彦著、ダイヤモンド社刊)が、このたびダイヤモンド社より刊行された。
著者である長尾孝彦氏は、国内有数のユニフォームメーカーである住商モンブラン社の代表。住商モンブラン社は、ドクターや看護師といった医療従事者、飲食店や食品工場、そしてアミューズメント施設など、サービス業のための『サービスユニフォーム』を取り扱っている会社だ。
五大商社の一角を担う、住友商事出身で、数十年にわたり繊維畑を歩んできた著者が、ユニフォームの製造からマーケティング、さらには経営的な要素までを網羅的に語った、これまでにない書籍となっている。
■超大手グローバルアパレルメーカーですら参入を断念したユニフォーム業界
実は、ユニフォームビジネスは一般的なアパレルビジネスとはまったく違う。
本書では、アパレル企業での社長経験ももつ著者いわく、ユニフォーム業界では、生産方法から在庫量、流通のスピード、求められるデザインや機能、品質のレベルなど、アパレルの常識が一切通用しないという。
例えば、ユニフォームに求められる特有の機能や要素として、次の4つのポイントがある。
長時間の作業や動きやすさを求める「快適性」。
ユニフォームを着る人と職場を守る「安全性」。
工業洗濯での私服の数倍となる過酷な洗濯条件に耐えられる「洗濯耐久性」。
5年後、10年後でも陳腐化しないデザインを考慮した「継続性」。
この4つを具体的に見ていこう。
まずは「快適性」。
1日の中で、私服よりも長く着用するユニフォームは、着る人の負担を減らすための工夫が施されている。
例えば、看護師は毎日何度も患者の点滴を取り換える作業があるが、その際に腕を上げ下げする。このとき、肩周りがごわついたユニフォームでは体に大きな負荷がかかるので、伸縮性のある生地が使われている。また、女性の看護師の場合、半袖の脇部分から下着が見えないようなデザインになっているのも特徴の一つだ。
続いては「安全性」だ。
着る人の安全性を守るユニフォームは、着用シーンによって優先順位は異なるが、防火性、UVカット、防寒性、職場での事故防止などに対応できることが求められている。