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「異端の皇女と女房歌人」書評 和歌で表現した魂の自由|好書好日
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異端いたん皇女おうじょ女房にょうぼう歌人かじん書評しょひょう 和歌わか表現ひょうげんしたたましい自由じゆう

評者ひょうしゃ三浦みうらしをん / あさ新聞しんぶん掲載けいさい:2014ねん04がつ13にち
異端いたん皇女おうじょ女房にょうぼう歌人かじん 式子内親王しきしないしんのうたちのしん古今ここんしゅう角川かどかわ選書せんしょ 著者ちょしゃ田渕たぶち 美子よしこ 出版しゅっぱんしゃ:KADOKAWA ジャンル:小説しょうせつ文学ぶんがく

ISBN: 9784047035362
発売はつばい⽇: 2014/02/22
サイズ: 19cmせんちめーとる/254p

異端いたん皇女おうじょ女房にょうぼう歌人かじん 式子内親王しきしないしんのうたちのしん古今ここんしゅう [ちょ田渕たぶち美子よしこ

 『百人一首ひゃくにんいっしゅ』にもはいっている式子内親王しきしないしんのう和歌わか、「たまいとぐちえなばえねちょうらへばにんぶることのよわりもぞする」は、「内親王ないしんのう自身じしんの、めた恋心こいごころうたったもの」と解釈かいしゃくされることがおおい。しかし実際じっさいは、「しのこいくるしむ男性だんせいになりきってうたった和歌わか」なのだそうだ。
 式子内親王しきしないしんのうは、後鳥羽上皇ごとばじょうこう文学ぶんがくサロンの一員いちいんだった。そこには和歌わか才能さいのうにあふれた人々ひとびとつどい、たがいに切磋琢磨せっさたくま(せっさたくま)していた。身分みぶん性別せいべつ関係かんけいなく、うた実力じつりょくのみによってみとめられる世界せかいがあった。
 「創作そうさくぶつ内容ないよう作者さくしゃ自身じしん経験けいけん感情かんじょう」という平板へいばんおもいこみが、本書ほんしょむと見事みごとくつがえされる。いまよりもずっと行動こうどう範囲はんい制限せいげんされていた中世ちゅうせい初期しょき女性じょせいたちは、異性いせいになりきってそのしんうたい、まだ風景ふうけいのなかでばたいていた。うたは、彼女かのじょたちのたましい自由じゆうをもたらす表現ひょうげん方法ほうほうだったのだ。
 うたきた女性じょせいたちの、ほこたか自由じゆう精神せいしんあつ切実せつじつおもいを現代げんだいによみがえらせた良書りょうしょだ。
    ◇
 角川かどかわ選書せんしょ・1944えん


 

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