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なばたとしたかさんの絵本「こびとづかん」 コビトって本当にいるんですか?|好書好日
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なばたとしたかさんの絵本えほん「こびとづかん」 コビトって本当ほんとうにいるんですか?

ぶん日下くさか淳子じゅんこ写真しゃしん佐々木ささき孝憲たかのり

――ある主人公しゅじんこうの「ぼく」がつけたへんなもの、それは、コビトのがらだった! そんなストーリーからはじまる、なばたとしたかさんの絵本えほん『こびとづかん』(ロクリンしゃ)。普段ふだんかくれているコビトたちを、「ぼく」はいろいろな方法ほうほうつかまえていく。そこには、どものころ昆虫こんちゅう採集さいしゅう夢中むちゅうになったあの時代じだいを、おもさせてくれるようなワクワクかんがある。

 ふうもないのにれるとか、一本いっぽんだけくされていたりするのをて、その何気なにげない現象げんしょうが「コビトの仕業しわざだったらたのしいな」とおもったのが、このほんえがいたきっかけでした。ほんなかで、このコビトという存在そんざいは、動物どうぶつ昆虫こんちゅうおなじ「自然しぜんなかもの」です。どもたちは、ちゃんとそれをわかってくれていて、コビトをさがしにかけたり、生態せいたいたのしんだりしてくれています。コビトさがしをすると、普段ふだん見過みすごしてしまっているものに、あらためてづかされることもあります。木々きぎ気配けはいなにかをかんじて、ぼくおなじように「新種しんしゅのコビトかもしれない」と想像そうぞうして、たのしんでくれているんです。

 どもたちに「コビトって本当ほんとうにいるんですか?」とかれたときは、「コビト研究けんきゅう」の立場たちばから「もちろんいるよ!」ってこたえています。そして「コビトの形跡けいせきはどこかにあるはずだから、それをたのしんでね」ってはなしています。たしかにることはできない存在そんざいかもしれませんが、「気配けはい」をかんじてもらうのは大切たいせつだとおもっています。気配けはいかんじていろんなことを想像そうぞうするのは面白おもしろいですよね。

『こびとづかん』(ロクリン社)より
『こびとづかん』(ロクリンしゃ)より

 そういえば、ぼくちいさいころこわがりだったのに、えないもの・不思議ふしぎなものに興味津々きょうみしんしんでした。確認かくにん生物せいぶつほん妖怪ようかい図鑑ずかんのようなものばかりんでましたから。そのせいか、気配けはい物音ものおと敏感びんかんで、だれかにられているようなかんじがしたり、ふすまがちょっとひらいているだけでなにかを想像そうぞうしてこわがっていたんです。でもいつのころからか、「ちょっと面白おもしろもの仕業しわざなんだ」と想像そうぞうめぐらせるうちに、だんだんそれがたのしくなってしまいました。「しょうもないことをしでかすオリジナルの確認かくにん生物せいぶつ」をたのしむようになったんです。このとき経験けいけんが、いまのコビトにつながっているのは間違まちがいないですね。

――2006ねんにはじめて『こびとづかん』が出版しゅっぱんされたときは、その独創どくそうてき物語ものがたりに、はじめは敬遠けいえんする大人おとなすくなくなかったという。しかしおおくのどもたちに支持しじされ、08ねんに『こびとだい百科ひゃっか』を、10ねんには『こびと観察かんさつ入門にゅうもん』と、次々つぎつぎにコビトの図鑑ずかんシリーズが発売はつばいされた。

 はじめて「コビト」を出版しゅっぱんしゃんだのは、2004ねんくらいだったとおもいます。自分じぶんどもだったら、ボロボロになるまでみたくなるような「図鑑ずかん」をイメージしていましたが、実際じっさいどんなほんになるのか想像そうぞうはできていませんでした。ぼく作品さくひんてくれた編集へんしゅうしゃさんは、面白おもしろいからほんにしましょうとってくれたものの、かれもどういうかたちにしようかと相当そうとうなやんでいたようです。当時とうじコビトのようなキャラクターは絵本えほんにはいなかったし、ぼく表現ひょうげん独特どくとくの「さ」があって、どうれられるかなやみどころでした。

 ところがある編集へんしゅうさんがコビトのラフをいえかえったら、それを小学生しょうがくせいむすめさんが一目いちもくではまってしまい、クラスのみんなにせたいとしたそうなんです。1にちだけという条件じょうけんで、むすめさんにラフをしてみたところ、クラスちゅう話題わだいになったとのことでした。

 このいちけんで、方向ほうこうせいかたまったのはたしかです。ぼくえがくコビトはいままでたこともない奇妙きみょう姿すがたで、大人おとなかられば「気持きもちがわるい」とおもわれるかもしれないけれど、むねって「どもにけた絵本えほん」にしようとかんがえたのです。

『こびとづかん』(ロクリン社)より
『こびとづかん』(ロクリンしゃ)より

 発売はつばい当初とうしょ、『こびとづかん』は「こわいから児童じどうしょたなにはけない」などの意見いけん多々たたありましたが、ぼく作品さくひんたいしてのおもいは、どもたちが一番いちばん理解りかいしてくれているとかんじています。これまで一切いっさいほんまなかったが、コビトのほんだけは夢中むちゅうになってみ、これでおぼえたというお手紙てがみもたくさんいただきます。サインかいなどで、ボロボロになったコビトのほんってきてくれるもいて、本当ほんとううれしいです。

 コビトのほんがきっかけで、動物どうぶつ昆虫こんちゅうにはまってしまったというお手紙てがみもいただきます。キノコに由来ゆらいしたコビトもいるんですが、あるはそこから実在じつざいのキノコに興味きょうみき、いまではキノコ図鑑ずかん熟読じゅくどくしているといています。将来しょうらい、キノコ博士はかせになるかもしれませんね。

――9月くがつにちまで、川崎かわさき市民しみんミュージアムにて、企画きかくてん「なばたとしたか こびとづかんの世界せかい」が開催かいさいされている。「こびとづかん」シリーズの原画げんがほか、コビトたちの生態せいたいがわかるフィギュア、コビト以外いがい絵本えほんやCMなどの作品さくひん展示てんじ。なばたさんが力強ちからづよさや生々なまなましさを、間近まぢかかんじられる。

 コビトの絵本えほん作品さくひんしたのちかたえようということで、写真しゃしん使つかった観察かんさつガイド『こびとだい百科ひゃっか』『こびと観察かんさつ入門にゅうもん1』『新種しんしゅ発見はっけん! こびとだい研究けんきゅう』を制作せいさくしました。そのとき表現ひょうげんしたのが、今回こんかい展覧てんらんかい展示てんじしているかみ粘土ねんどせいのフィギュアです。立体りったいでの表現ひょうげんは、コビトのなまあたたかさとか、とおったかんじがせているとおもいます。もっとも、どもたちのまえではフィギュアではなく、「コビトの剥製はくせい」とっていますが(笑)。

 2015ねん刊行かんこうした大型おおがた図鑑ずかん『こびと大図おおずあきら』の原画げんが展示てんじしています。これは266たいのコビトを網羅もうらする本格ほんかく図鑑ずかんです。これだけのコビトをえがくには、いま時代じだいペンタブレット(コンピューターじょうえがくデジタルの技法ぎほう)でえがくのが圧倒的あっとうてき効率こうりつがよかったのですが、どうもきれいになりすぎてしまって、いちからかみうええがなおすことにしました。ぼくども時代じだいんでいた図鑑ずかんって、不鮮明ふせんめいなぐらいのあやしさが想像そうぞうりょくひろげてくれたがしますし、かえって印象いんしょうのこっています。ひとつひとつしゅえがくのはすごい大変たいへんでしたが、展覧てんらんかい原画げんがでは、手描てがきならではのパワーもかんじてほしいとおもいます。

 コビト研究けんきゅうは、これからもライフワークとしてつづけていきたいですね。29さいでデビューしていま42さいですが、60さいとか70さいになっても「コビト研究けんきゅう」でいたいとおもっています。

 つい最近さいきん東京とうきょうのある幼稚園ようちえんで、どもたちがあまりにも『こびとづかん』でがっているからって、まねかれたことがあるんですよ。先生せんせいがコビトにまつわるおはなしをして、コビトのさがかた基準きじゅん果物くだもの動物どうぶつつけにったり、みんなで地図ちずつくってみたり、独自どくじあそかた見出みいだしてくれていました。ぼくがそだった石川いしかわけん鶴来つるぎまちでも、「こびとづかんのまち」としてまちおこしをしています。まちのあちこちにコビトの気配けはい形跡けいせきのこしています。「こびとづかん」をきっかけに、いろんなことをまなんでくれたり、コミュニケーションツールとして活用かつようしてくれているのをると、ますます研究けんきゅうとしての意欲いよくいてきてしまいます。

 こん現在げんざいぼくあたまなかにあるものをふくめると、コビトは270種類しゅるいくらい。これからもそのかずえていくでしょう。いつかまた新刊しんかんとして発表はっぴょうしますので、どうかたのしみにしていてください。

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