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「こどもの目をおとなの目に重ねて」書評 生きものとして人間をとらえる|好書好日
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「こどものをおとなのかさねて」書評しょひょう きものとして人間にんげんをとらえる

評者ひょうしゃ長谷川はせがわ逸子いつこあさ新聞しんぶん掲載けいさい:2020ねん11月07にち
こどものをおとなのかさねて 著者ちょしゃ中村なかむら 桂子けいこ 出版しゅっぱんしゃ青土おうづちしゃ ジャンル:エッセイ

ISBN: 9784791773046
発売はつばい⽇: 2020/08/26
サイズ: 19cmせんちめーとる/198p

こどものをおとなのかさねて [ちょ中村なかむら桂子けいこ

 JT生命せいめい研究けんきゅうかん館長かんちょうつとめられ、「生命せいめい」というつくった著者ちょしゃが、新聞しんぶん雑誌ざっしいたものをまとめたほん。コロナかれた序文じょぶんには、人間にんげんきもののひとつであり、自然しぜん一部いちぶという視点してん大切たいせつさがしるされているが、コロナ以前いぜんかれたひととの交流こうりゅうをつづったエッセーからもそれは色濃いろこつたわってくる。
 開館かいかん当初とうしょ来館らいかんしていた絵本えほん作家さっか加古かこ里子さとご(さとし)さん。技術ぎじゅつでもあったさんのほんづくりの出発しゅっぱつてんは、どもたちが興味きょうみ森羅万象しんらばんしょうについてどもなりの理解りかいができるようなほんつくりたい、というおもいだったとかえる。自然しぜんえがいたさんの絵本えほんは『かわ』からはじまり、次第しだいに『うみ』『地球ちきゅう』『宇宙うちゅう』とひろがった。身近みぢかなことを起点きてんにして、全体ぜんたいをとらえ、自然しぜんなかわたしたちがいるということを実感じっかんさせてくれたとしるす。わたしも、建築けんちく仕事しごとなかで、自然しぜん生活せいかつ、コモンズやひととのつながりをかんがえて設計せっけいする住宅じゅうたく建築けんちくを、大切たいせつおもっている。
 社会しゃかい学者がくしゃ鶴見つるみ和子かずこさんとの対話たいわ回想かいそうしたかいでは、水俣病みなまたびょう調査ちょうさにあたった鶴見つるみさんが、米国べいこくまなんだ社会しゃかいがくなにやくつのかと自問じもんしたことにれ、「発展はってん」というものは「それぞれの土地とちにある自然しぜん文化ぶんか歴史れきし、そこにいるひとびとがうちにもっているものからてきてはじめて本物ほんものである」とみちびした彼女かのじょ思想しそう素晴すばらしさを指摘してきする。学問がくもん専門せんもんしていくなかで、研究けんきゅうしゃつね自身じしん学問がくもん日常にちじょうとつなげてかんがえなければとかんじたという。また、民俗みんぞく学者がくしゃ生物せいぶつ学者がくしゃである在野ざいや研究けんきゅうしゃ南方みなかた熊楠くまぐすの「きものとして自然しぜんふかかかわったかた」にもひかれている。権力けんりょくなかはいらず、自律じりつし、ひろ視野しやつ……。鶴見つるみさんと熊楠くまぐすとおして著者ちょしゃは、現代げんだいから、未来みらいへのつながりをかんがえる。
 「きものの面白おもしろさのひとつは、わっていくこと」。自然しぜんなかで、たりまえぎる日常にちじょう大切たいせつさを意識いしきしていけたらしあわせだと、わたしおもう。
    ◇
なかむら・けいこ 1936ねんまれ。JT生命せいめい研究けんきゅうかん名誉めいよ館長かんちょう著書ちょしょに『ちいさききものたちのくにで』など。

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