「きたー！」めくるよろこび　「子こどもの本棚ほんだな」オススメ本ほん３冊さつ

「でんしゃ　くるかな？」

　動物どうぶつたちと男おとこの子こが横よこ一いち列れつに並ならび、キョロキョロしながら待まっています。「くるかな？　くるかな？」めくると電車でんしゃがやってきて「きたー！」とみんな大だいよろこび。まためくると「ばいばーい」と電車でんしゃを見送みおくります。
　期待きたいし、実現じつげんし、余韻よいんに浸ひたる、うれしさの三拍子さんびょうし。繰くり返かえすほどに高たかまる登場とうじょう人物じんぶつの気持きもちが、のびやかな絵えと短みじかいせりふから伝つたわります。絵本えほんのみんなの期待きたいと興奮こうふんを、小ちいさい読者どくしゃも共有きょうゆうします。最後さいごにやってきた黄色きいろい電車でんしゃに、手てをつないで乗のり込こんで「しゅっぱーつ！」。
　絵本えほんの醍醐だいご（だいご）味あじ、めくるよろこびを、こんな風ふうに体験たいけんしてしまった赤あかちゃんは、もう読よむのを止とめられませんね。読よんであげる大人おとなにも、笑顔えがおが伝染でんせんするでしょう。（きくちちき作さく、福音館書店ふくいんかんしょてん、税ぜい抜ぬき８００円えん、０歳さいから）【絵本えほん評論ひょうろん家か・作家さっか　広松ひろまつ由希子ゆきこさん】

「わたしのあのこ　あのこのわたし」

　主人公しゅじんこうは、環境かんきょうも性格せいかくも違ちがう小学しょうがく５年生ねんせいの２人ふたりの少女しょうじょ、秋あきとモッチ。未婚みこんの母親ははおやと暮くらす秋あきが父親ちちおやからもらった大事だいじなレコードに、ある日ひモッチの弟おとうとがうっかり傷きずをつけてしまう。２人ふたりの少女しょうじょは仲なかたがいするが、モッチの弟おとうとの発熱はつねつを契機けいきにまた仲直なかなおりをする。豊ゆたかな感受性かんじゅせいをもつ子こどもたちの、何なにかをふっと不思議ふしぎに思おもう気持きもち、意地悪いじわるをどうしてもやめられないときの気持きもち、仲直なかなおりのきっかけがつかめなくてもどかしく思おもう気持きもち、とまどいや迷まよいなどが、この著者ちょしゃならではの巧たくみな描写びょうしゃで表現ひょうげんされている。（岩瀬いわせ成子しげこ著ちょ、ＰＨＰ研究所ぴーえいちぴーけんきゅうしょ、税ぜい抜ぬき１４００円えん、小学校しょうがっこう高学年こうがくねんから）【翻訳ほんやく家か　さくまゆみこさん】

「オン・ザ・カム・アップ　いま、這はいあがるとき」

　アフリカ系けいアメリカ人じんの女子じょし高校生こうこうせいのブリは、貧困ひんこんから抜ぬけ出だすために、ラッパーとして成功せいこうすることを夢見ゆめみている。自身じしんのラップが話題わだいになり始はじめた矢先やさき、高校こうこうの警備けいび員いんに薬物やくぶつ所持しょじの嫌疑けんぎをかけられて暴力ぼうりょくを受うける。そのことが学内がくないやネットで広ひろがり、黒人こくじんに対たいする偏見へんけんや差別さべつに対たいして抗議こうぎの声こえが上あがるが――。「這（は）いあがれ、もうだれにもとめられない」ではじまるブリのラップからは、彼女かのじょの強つよい決意けついが感かんじられ、心しんの叫さけびが聞きこえてくるようで胸むねにずしんと響ひびく。（アンジー・トーマス著ちょ、服部はっとり理佳りか訳やく、岩崎いわさき書店しょてん、税ぜい抜ぬき１７００円えん、中学生ちゅうがくせいから）【ちいさいおうち書店しょてん店長てんちょう　越こし高こう一夫かずおさん】＝朝日新聞あさひしんぶん2021年ねん2月がつ27日にち掲載けいさい