2022.01.08 「私わたしは男おとこでフェミニストです」書評しょひょう 別べつ視点してんを学まなぶ 他人たにんだからこそ 評者ひょうしゃ: トミヤマユキコ / 朝あさ⽇新聞しんぶん掲載けいさい:2022年ねん01月がつ08日にち 私わたしは男おとこでフェミニストです 著者ちょしゃ:チェ スンボム 出版しゅっぱん社しゃ:世界せかい思想しそう社しゃ ジャンル:社会しゃかい・時事じじ ISBN: 9784790717645 発売はつばい⽇: 2021/11/19 サイズ: 19cmせんちめーとる/193p 「私わたしは男おとこでフェミニストです」 [著ちょ]チェ・スンボム フェミニストの男おとこ。その存在そんざいに違和感いわかんを抱いだく人ひとがいる。なぜ男おとこなのにフェミニズムを? 女おんなに褒ほめられたいから? それって下心したごころ? 疑問ぎもんを解消かいしょうしたければこのエッセーを読よむといい。 「男おとこフェミ」の著者ちょしゃは、韓国かんこくの男子だんし高だかに勤つとめる30代だいの教師きょうし。国語こくごの授業じゅぎょうを通つうじて生徒せいとにフェミニズムを熱心ねっしんに伝つたえるが、初はじめからそうだったわけではない。 大学だいがく時代じだいの彼かれは、フェミニズムを学まなぶ後輩こうはい男子だんしに「男おとこなのに何なにのためにフェミニズムの勉強べんきょうをしているの?」と尋たずねている。彼かれにも「フェミニズムは女おんなのもの」と思おもっていた時期じきがあったのだ。そんな彼かれに後輩こうはいはこう告つげる。「男おとこだからよくわからないんです、学まなばないと」……たしかにそうなのだ。自分じぶんには関係かんけいないと遠とおざけたり、論拠ろんきょ不明ふめいの私見しけんを述のべたりと、フェミニズムをよく知しらない人ひとほど、自力じりきでなんとかしようとする。でも、本当ほんとうは勉強べんきょうした方ほうがいい。その方ほうが迷子まいごにならないで済すむから。 「他人たにんのことだから無む関心かんしんでいられたが、他人たにんのことだから学まなぶこともできそうだった」と考かんがえた彼かれは、フェミニズムのお陰かげで家父長制かふちょうせいに組くみ敷しかれてきた母ははの人生じんせいを再さい検討けんとうすることができたし、国語こくごの教科書きょうかしょに載のっている小説しょうせつの主人公しゅじんこうが実じつは女おんなの人ひとにひどいことをしていると感かん付つくこともできた。フェミニズムという別べつ視点してんを手てに入いれたことで、自分じぶんを取とり巻まく世界せかいの見みえ方かたが変かわったのだ。 親族しんぞくの集あつまりで、女おんなたちに交まじって家事かじをやっただけなのに、みんながざわついたという話はなしが「あるある」すぎて笑わらってしまった。日本にっぽんのお正月しょうがつや法事ほうじなどでもよくある風景ふうけいだ。男おとこが飲のみ食くいしたものを男おとこが片付かたづけるのはおかしい、という感覚かんかくこそがおかしいのに。 些細ささい(ささい)に思おもえるような、だけど大事だいじな場面ばめんを少すこしずつ変かえていこうとする著者ちょしゃをついつい褒ほめたくなるけれど、そうやって男おとこを持もち上あげるのもよくない。彼かれは、それが当あたり前まえの世よの中なかを目指めざしているのだから。 ◇Seungbum Choi 1984年ねん生うまれ。韓国かんこく・江こう陵りょう市しの明倫めいりん高等こうとう学校がっこう教師きょうし。共著きょうちょに『フェミニスト先生せんせいが必要ひつよう』(未み邦訳ほうやく)。 韓国かんこく文学ぶんがく 一覧いちらん Prev 小泉こいずみ今日子きょうこさんが語かたる韓国かんこく文学ぶんがくの魅力みりょく、現地げんちから有名ゆうめい作家さっかも…「K-BOOKフェス」オンラインと書店しょてんで開催かいさい Next 「ペイント」イ・ヒヨンさんインタビュー もし子こが親おやを選えらべたら? 近きん未来みらいに託たくす、幸しあわせな家族かぞくのかたち