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「宗教の行方」書評 仏教・キリスト教 根底から探る|好書好日
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宗教しゅうきょう行方ゆくえ書評しょひょう 仏教ぶっきょうキリスト教きりすときょう 根底こんていからさぐ

評者ひょうしゃ谷行たにいきじんあさ新聞しんぶん掲載けいさい:2022ねん12がつ10日とおか
宗教しゅうきょう行方ゆくえ 現代げんだいのための宗教しゅうきょうじゅうこう 著者ちょしゃ八木やぎ 誠一せいいち 出版しゅっぱんしゃ法藏館ほうぞうかん ジャンル:哲学てつがく思想しそう宗教しゅうきょう心理しんり

ISBN: 9784831810618
発売はつばい⽇: 2022/08/26
サイズ: 19cmせんちめーとる/380p

宗教しゅうきょう行方ゆくえ」 [ちょ八木やぎ誠一せいいち

 本書ほんしょは、宗教しゅうきょう可能かのうせいを、とくに仏教ぶっきょうとキリストきょう共通きょうつうてんからさぐ連続れんぞく講義こうぎ記録きろくである。
 はん世紀せいき以上いじょうにわたり独自どくじ思想しそうひらけ(ひら)いてきた著者ちょしゃ八木やぎ誠一せいいちは、教会きょうかい内村うちむら鑑三かんぞう弟子でしであったちちのもとにまれ、キルケゴールで学位がくい論文ろんぶんいたのちドイツでまなび、帰国きこくすると聖書せいしょがく日本にっぽんにおける先駆せんくしゃとしてひろ注目ちゅうもくあつめた。しかし以降いこう、キリストきょう枠組わくぐみからラディカルに逸脱いつだつしていった。
 その発端ほったんは、留学りゅうがくちゅう偶然ぐうぜん仏教ぶっきょう出会であい、キリストきょう仏教ぶっきょうとは根底こんていにおいてかさなるものであり、問題もんだいはその根底こんていにあるなにかであり、宗教しゅうきょうそのものではないのではないか、というかんがえが芽生めばえたことにあった。そしてそのかんがえを積極せっきょくてき展開てんかいしていったために、かれ学者がくしゃとしての道程どうてい平坦へいたん(へいたん)ではなくなった。キリストきょうからは異端いたんとされ、仏教ぶっきょう歓迎かんげいされるわけでもなく、さらに哲学てつがくからは宗教しゅうきょう軽視けいしされる。自分じぶんのやっていることをどうべばいいのかからないので、とりあえず「宗教しゅうきょう哲学てつがく」といっているという。
 本書ほんしょは、宗教しゅうきょう本質ほんしつを「統合とうごう」にみる。それは、キリストきょうが「かみくに」、浄土じょうどきょうが「阿弥陀あみだふつねがい」とぶ、人間にんげん平和へいわてき共生きょうせいである。そこでは、自由じゆうあいが、また独立どくりつせい共同きょうどうせいが、同時どうじ成立せいりつする。そんなことは絵空事えそらごとだとおもひとがほとんどだろう。著者ちょしゃも、これは人間にんげん努力どりょくでは獲得かくとくできないとする。しかし、世界せかいにはこれをうながつよちからはたらいており、よってこれは人間にんげんにとって本来ほんらいてき自然しぜんみちだという。宗教しゅうきょうつたえようとしてきたことは、このちからかくれた存在そんざいなのだと。「宗教しゅうきょう行方ゆくえ」は、これを現代げんだい通用つうようする言葉ことばかたり、その実現じつげんもとめることに見出みだし(みいだ)される。
 みずみずしいかたりによる、宗教しゅうきょうへの非凡ひぼんみが、新鮮しんせん魅力みりょくてきである。個人こじんてきには、本書ほんしょろんが、わたし交換こうかん様式ようしきろんかさなるところがおおいことにも、感慨かんがいおぼえた。
    ◇
やぎ・せいいち 1932ねんまれ。東京工業大とうきょうこうぎょうだい名誉めいよ教授きょうじゅ新約しんやく聖書せいしょ神学しんがく宗教しゅうきょう哲学てつがく)。著書ちょしょに『〈はたらくかみ〉の神学しんがく』など。

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